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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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185/300

185 エレメンタル種との戦い⑥


 第1ポイントを占拠して休息していたシルルンたちは、本営と合流するために東に向かう。


 第1ポイントは、アミラたちが調査しており、シャインが守りについている。


 第2ポイントにはカティンとキルが守りについており、残りのペットたちはプニの口の中に移動した。


 シルルンたちが隣のエリアの上層に繋がるルートの前に到着すると、すでにハイ ウォーター エレメンタルたちも到着しており、周辺は水浸しになっていた。


「あれ? 意外に早いね」


「そっちこそ早いだろ。それでハイ アース ファイヤー エレメンタルは倒せたのか?」


「まぁね。だからあとはここだけだよ」


「……」


 ハイ ウォーター エレメンタルは何も発しなかった。


 彼には顔がないので表情は読み取れないが、絶句していたのだ。


「だけど、上層を守ってる魔物たちはよく持ち堪えてるね」


「上層を支配している連中が変わってなければ、蛸女スキャラ族と水馬ケルピー族だからな。共に湖での戦いを得意としている」


 ハーヴェンが真剣な硬い表情で答えた。


「ふ~ん、そうなんだ……」


 だが、シルルンは訝しげな表情を浮かべていた。


「では、攻め上がるぞ」


 ハイ ウォーター エレメンタルの言葉にシルルンたちは頷いて、上層を登っていく。


 先頭を進軍するのは、無論、ハイ ウォーター エレメンタルで、水、風、氷、雷の上位種たちも後に続く。


 その数は500を超える。


 後続の通常種や下位種たちが溶岩に変わった地面に、水や氷を放って水浸しにしており、シルルンたちはそこにいた。


「ねぇ、シルルン。先頭には行かないの?」


「これは結局、エレメンタル同士の戦いだからね……僕ちゃんたちが終わらせるのはなんか違うと思うんだよね」


 シルルンは酒をグビグビ飲んでおり、すでに彼は観戦モードだった。


「そりゃそうだけど……」


 リザは不満そうな顔をした。


「まぁ、支援はするけどね。たぶん、ハイ ウォーター エレメンタルたちじゃ勝てないと思うから」


「……」


 その言葉にリザは大きく目を見張った。


 ハイ ウォーター エレメンタルたちは上層に到着し、水や氷を放って溶岩を水浸しにしていく。


 すると、上空から無数のファイヤー エレメンタル種の群れが接近する。


「な、なんて数だ……」


 ハーヴェンは驚きのあまりに血相を変える。


 ファイヤー エレメンタル種の数は3万を軽く超えており、ハイ ファイヤー エレメンタルの群れが一斉にハイ ウォーター エレメンタルたちに襲い掛かる。


 ハイ ウォーター エレメンタルは上位種たちに迎撃命令を出し、空中で上位種同士の戦いが繰り広げられる。


 属性の相性的にはハイ ウォーター エレメンタルたちが有利だが、上位種の数ではファイヤー エレメンタル種が上回っており、その数は600を超えているのだ。


 いくら相性的には有利でも、上位種の数が100以上も違うとハイ ウォーター エレメンタルたちのほうが不利で、地の利も地面が溶岩なのでファイヤー エレメンタル種に有利だった。


 だが、ハイ ウォーター エレメンタルたちの後続部隊が到着し、一斉に水や氷を溶岩に放って拠点を作成していく。


 しかし、ファイヤー エレメンタル種の通常種や下位種が、水浸しの地面に炎を放って溶岩に変える。


 それに対してウォーター エレメンタル種の通常種や下位種が、溶岩に水を放って陣地の奪い合いが始まる。


 地上での戦いは、数的には3万対3万で、ハイ ウォーター エレメンタルたちのほうが有利だった。


「うわぁ、空の戦いはすごいことになってるわね……」


 空を見上げるリザやルアンたちは驚きの表情を浮かべている。


 上空では1000を超える上位種たちが炎や水で攻撃し合っており、それはリザたちほどの力を持った者でも入り込めない戦いだった。


「ぶちのめすデスか?」


 プルはトマトをむしゃむしゃ食べながら言った。


「あはは、僕ちゃんたちはここの魔物たちがどうなってるか見に行ってみようか。リザたちはここで地上の戦いに加わってよ」


「分かったわ」


 リザたちは頷き、シルルンたちは北東の方向に凄まじい速さで飛んでいった。


「なんで北東に行くデシか? 北東にはほとんど魔物はいないデシよ?」


「うん、だから逆に気になったんだよね」


 シルルンたちが北東に到着すると、10匹ほどの魔物の群れがいた。


「クーシーっていう魔物デシ!!」


 プニは『解析』で魔物の群れを視て言った。


 クーシー種は犬のような姿をした精霊で、巨大な真っ白な毛並みのクーシーが、他の個体の前に出て護るように立ちはだかる。


「人族がこんなところに何用だ?」


 身体中が血塗れの真っ白なクーシーが視線をシルルンに向けて人族語で訊ねる。


「いや、別に用はないんだよ。僕ちゃんたちはハイ ウォーター エレメンタルたちと同盟して、ここに攻め上がってきたんだよ」


「何ぃ? 戦況はどんな感じなんだ?」


「今のところは五分って感じだね」


「……そうか、それなら早々に引き上げたほうがいい。奴らにはとんでもない化け物がいるからな」


 真っ白なクーシーは落胆したような表情を浮かべている。 


「あはは、ボロボロなのに他の種族の心配をするなんて、君たちはいい奴みたいだね」


 シルルンは思念でプニにクーシーたちを回復するように命令し、プニはふわふわと『飛行』してクーシーたちの前まで移動した。


「エリアヒールデシ!!」


 プニはエリアヒールの魔法を唱え、クーシーたちは金色の光に包まれる。


「なっ!? 体力が全快しただと!?」


 真っ白なクーシーたちは驚きのあまりに血相を変えており、シルルンもビックリしたような顔をプニに向けていた。


 ヒールの魔法はプルとプニをもってしても、範囲魔法で回復するのは不可能だったからだ。


「エリアヒールはレベル100を超えたら目覚めたデシ!!」


 プニはふわふわと『飛行』して、シルルンの肩にのり、フフ~ンと胸を張った。


「へぇ、便利な魔法に目覚めたね」


 シルルンは優しげな顔でプニの頭を撫でた。


 プニはとても嬉しそうだ。


 真っ白なクーシーの後ろに隠れているクーシーたちの内、赤毛のクーシーが歩きだしてシルルンの脚に顔を摺り寄せている。


「あはは、人懐っこい個体だね……まぁ、もう少しの辛抱だよ。ファイヤー エレメンタル種とアース エレメンタル種は僕ちゃんたちが倒すからね」


 目を細めたシルルンが赤毛のクーシーの頭を撫でながら言った。


「何? 五分ではなかったのか?」


 真っ白なクーシーは訝しげな眼差しをシルルンに向ける。


「それはエレメンタル同士での話だよ。僕ちゃんたちが加われば勝てるからね」


「なっ、なんだと……」


「中層もここと同じで大地は溶岩に変えられて、ファイヤー エレメンタル種とアース エレメンタル種の縄張りになってたんだけど、全滅させたから残りはここだけなんだよ」


「そ、それは本当なのか?」


 真っ白なクーシーは信じられないといったような表情を浮かべている。 


「あはは、本当だよ。僕ちゃんの縄張りも中層にあるから倒す必要があったんだよね。それより聞きたいのは、スキャラ種とケルピー種のことなんだよ。悪い奴らなのかい?」


 赤毛のクーシーの体を優しく撫でるシルルンは、探るような眼差しを真っ白なクーシーに向ける。


「……人族がどういう定義で善悪をはかるのかは分からないが、少なくとも蛸女族と水馬族にこの上層以外の領土欲はないだろう」


「それが分かれば充分だよ。じゃあ、僕ちゃんたちは西に行ってみるよ」


 じゃれついてくる赤毛のクーシーの頭を優しく撫でるシルルンは、残念そうにブラックに乗って西の方角に凄まじい速さで飛んでいった。


 彼は赤毛のクーシーをペットにしたかったが、クーシー種は10匹ほどしかいないので断念せざるを得なかったのである。


「西にはアース エレメンタル種がいっぱいいるデシ!!」


 プニが『気配探知』で探りながら『解析』で視て、シルルンに報告する。


「そうみたいだね……」

 

 その言葉にシルルンは頷いた。


 戦場に到着したシルルンたちは、雲がある高さまで上昇して戦いを観察する。


 戦いを繰り広げているのはアース エレメンタル種の群れと、ケルピー種の群れだった。


 アース エレメンタル種の群れは湖の水面に展開しながら、水中に潜むケルピー種の群れに石を飛ばして攻撃しているが、水の抵抗により速度も威力も削がれていた。


 開戦当初の彼らは、水に潜ってケルピー種と戦っていたが、水中での戦いは動きが鈍り、水中の戦いに特化しているケルピー種に手酷くやられて、現在のような戦術にいたっている。


 だが、ケルピー種は、エレメンタル種のように数を増やせないので劣勢だった。


「う~ん、なるほどねぇ……かなり、際どかったみたいだね」


 シルルンは難しそうな顔で呟いた。


「なにがデスか?」


「うん、僕ちゃんたちが上層に来るのがもう少し遅かったら、クーシー種は全滅してたってことだよ。おそらく、ハイ アース ファイヤー エレメンタルたちが最初に攻めたのはここなんだよ」


「でもいないデシよ?」


「まぁね……たぶん、ケルピー種と相性の悪いファイヤー エレメンタル種がボコボコにやられて、ハイ アース ファイヤー エレメンタルはファイヤー エレメンタル種をクーシー種にぶつけたんだよ。それで長期戦になると考えたハイ アース ファイヤー エレメンタルは西に移動したんだよ」


「でもでも最初は西だっかもしれないデシ」


「それだとケルピー種の数より、スキャラ種の数が少ないのが自然だと思うんだよ」


「ほんとデシ……ケルピー種よりスキャラ種の方が多いデシ!!」


 プニは『気配探知』と『解析』で、両者の数を比較して驚いたような顔をした。


「けど、このままハイ ウォーター エレメンタルたちを待ってたら、ケルピー種とスキャラ種がやばいね」


「ぶちのめすデスか?」


 プルは嬉しそうな顔をする。


「うん、プルたちは全力の魔法を叩き込んでよ」


「分かったデス!! マジカルライズデス!!」


「マジカルライズデシ!!」


 プルとプニはマジカルライズの魔法を唱えて、体が淡く輝いた。


「……マジカルライズ?」


 訝しげな顔をしたシルルンは『魔物解析』でプルを視てみると、マジカルライズの魔法は魔法力が一定時間向上する魔法だった。


「ぷるるるるる……」


「ぷにににににに……」


 プルとプニは『魔力増幅』を発動し、頬っぺたを膨らまして唸っている。


「あはは、斬り込むよ!!」


「了解!!」


 ブラックは上空から一気に急降下し、アース エレメンタル種の群れに襲い掛かる。


 彼らの数は6万を超えており、上位種の数は600ほどだ。


 ハイ アース エレメンタルたちは戦闘には参加しておらず、湖から離れた陸地で『召喚』を発動して数を増やしていたが、ブラックはそこに突っ込んだ。


 シルルンは両手に持った不死鳥の剣と太陽剣フレアで、ハイ アース エレメンタルたちを斬り裂いていく。


 ブラックのあまりの速さに、ハイ アース エレメンタルたちは何もできずに数を減らしていき、瞬く間に100匹ほどが瞬殺される。


 彼らは何が起こっているのか分からずに、戸惑うように辺りを見回しているが、ブラックを視認することすらできずに全滅した。


「いけるデス!!」


「デシデシ!!」


「じゃあ、あの辺だね」


 シルルンは湖の砂浜に向かって指差した。


 そこにはアース エレメンタル種たちが大量に佇んでいた。


「了解!!」


 ブラックは凄まじい速さで砂浜まで移動した。


「エクスプロージョンデス!! エクスプロージョンデス!!」

「エクスプロージョンデス!! エクスプロージョンデス!!」


「エクスプロージョンデシ!! エクスプロージョンデシ!!」

「エクスプロージョンデシ!! エクスプロージョンデシ!!」


 プルとプニは『並列魔法』と『連続魔法』でエクスプロージョンの魔法を唱えて、8発の爆発が重なり合って大爆発を引き起こし、砂浜周辺にいた3万のほどのアース エレメンタル種が消し飛んだ。


「あはは、とんでもない威力になってるね。だけど、まだ半分残ってるからもう一回」


「分かったデス!!」


「デシデシ!!」


 プルとプニは満足げな表情で頷いて、再び『魔力増幅』を発動して頬っぺたを膨らまして唸りだした。


「この間に僕ちゃんたちは散ってるアース エレメンタル種を倒すよ」


「了解!!」


 ブラックは凄まじい速さで空を駆け回り、シルルンが剣でアース エレメンタル種の群れを斬り殺していく。


 やがて、プルたちの魔力が溜まり、プルたちは魔法を放ってアース エレメンタル種の群れは全滅したのだった。


 水面から顔を出したケルピー種の群れは驚きの表情を浮かべながら、水面の上にふわふわと浮いているシルルンたちを見つめている。


「できればスキャラ種を助けに行ってくれないかな?」


 シルルンは水面から顔を出しているケルピー種の群れに問い掛けた。


「……わ、分かった。貴公の加勢に感謝する」


 そう返したケルピー種の群れは、トプンっと水中に消える。


「う~ん、どうしょうかなぁ……」


 シルルンは『超魔物探知』で、西の魔物の数と本営と戦うエレメンタル種の数を視て顔を顰めた。


 本営と戦うエレメンタル種の数があまり減っていないので、彼はこのままではスキャラ種がもたないと思ったからだ。


「仕方ないね……本営に戻るよ」


「了解」


 ブラックは凄まじい速さで南の方角に飛んでいったのだった。

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