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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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183/302

183 エレメンタル種との戦い⑤


「……エレメンタル種の群れはどうやら下層には下りて来ないようだな、なぁ?」


「そうみたいだけど、いつまでそうかは分からないよ」


 中層に広がる溶岩を見つめるホフターの問いに、ラーグが答えた。


 彼らは中層に入った辺りで、中層の様子を眺めていた。


 エレメンタル種はエリア内の全てを溶岩に変えておらず、南側にまでは進行してこなかったのだ。


 ラーグたちは軍と共に中層に入る手前で駐留しており、その理由はビャクスから受けた『放屁』によるダメージが深刻だからだ。


 ラーグや聖騎士たちのキュアの魔法では応急処置にしかならず、聖職者たちのキュアの魔法で一命を取り留めたが、それでもぶり返すので完全に治るまで治療することになったのだ。


「ここにいたのか? 一応、全員が回復したようだがとりあえず、今日一日様子をみるらしい」


 ラーグたちに言葉を投げかけたのはベル将軍だった。


「ビャクスか……この俺が何もできないほど強い男だった、なぁ?」


「それは俺も同じだよ……山賊なんかにあれほどの男がいることがいまだに信じられないよ」


「だが、そのビャクスもエレメンタル種に敗れてビャクス山賊団は壊滅した」


「……だから余計に腹が立つ」


 ベル将軍の言葉に、ホフターが悔しそうな顔で返したが、ラーグは顔を顰めていた。


 本当にビャクスが死んだのか彼は疑っているからだ。


「何にせよ、あとはエレメンタル種をどうするかだが、これはもう完全に勇者案件だと私は思う……」


「まぁ、そうだろうね」


 ラーグは頷いて肯定した。


 だが、そこに斥候に出ていたラーグ隊の大怪盗が、慌てた表情で駆けてきた。


「エレメンタルの群れと単騎で戦ってる奴がいる!!」


 大怪盗は声を張り上げた。


「はぁ? そんなことができる奴は勇者ぐらいなもんだろ、なぁ?」


「俺もそう思うよ。セルドじゃないのかい?」


 ラーグは探るような眼差しを大怪盗に向けた。


「……い、いや、シ、シルルンなんだ」


 大怪盗は深刻そうな顔で言った。


「はぁ? なんであいつがここにいるんだよ!?」


「……シルルンは森の魔物の討伐に行ってるからね」


 ラーグは訝しげな顔をした。


「勇者が黒いロパロパなんかに乗ってないだろっ!! 信じられないと思うがそのロパロパは凄まじい速さで空を縦横無尽に飛んでるんだよ……」


「なっ!?」


 ラーグとホフターは驚きのあまりに血相を変える。


「シルルンか……彼ならあり得るかもな……」


 ベル将軍は真剣な硬い表情を浮かべている。


 そもそも武学に通う少年が、ハイ スパイダーを瞬殺し、アース ドラゴンまで屠ったのは事実なのだ。


 それを認められたら話は早いはずだと彼女は思うのだった。


 そこに、緑色のドラゴンがラーグたちの前に飛来した。


「ば、馬鹿なっ!? なぜここにドラゴンがいるんだっ!?」


 ラーグたちは血相を変えて身構えた。


「驚かせてすまない」


 ドラゴンの背の上から、ローブを着た者が降り立った。


「ヒーリー将軍っ!! 生きておられたのですねっ!!」


 ベル将軍は瞳に涙を浮かべて歓喜に身体を打ち震わせている。


「あぁ、シルルンに助けられたんだ」


「なっ!? ということは戦ってるのはシルルンなのかっ!?」


 ホフターは信じられないといったような表情を浮かべている。


「では、俺は行くぞ……」


 ルアンがそう短く声を発して、ラーグたちは大きく目を見張った。


「あぁ、これまで本当に助かった。シルルンによろしく伝えてくれ」


 ヒーリー将軍は深々とルアンに頭を下げて、頷いたルアンは飛び立って行った。


「……あのドラゴンはシルルンのペットなのかい?」


「あぁ、そうだ。シルルンの拠点はこの鉱山にあってな、私はそこで匿われていた。そこにはドラゴン以外にも強力なペットがいたぞ」


「……」


 ラーグは複雑そうな表情を浮かべて身じろぎもしない。


「やるじゃねぇかシルルン……こんなところで人知れずに戦ってるなんて、まるで本物のヒーローじゃねぇか」


「ふふっ、ヒーローか……シルルンには相応しいかもな。私は戦略級の使い手と一騎討ちをしたんだ」


「あの戦略級の使い手と戦ったんですか!?」


 ベル将軍は雷に打たれたように顔色を変える。


「だが、あまりにも強く、まるで相手にならずに私は敗れたんだ」


「俺たちもビャクスと戦ったけど、こっちは10人以上いたのに話にならなかったよ……」


 ラーグは自嘲気味に肩をすくめた。


「だろうな……だが、シルルンは600人ほどの山賊を前にしても全く怯まずに立ち向かい、戦略級の使い手と一騎討ちして勝利したんだ」


「なっ!? あいつは勝ったのか!!」


 ホフターの顔が驚愕に染まる。


「だから、私たちはここから引き上げるぞ。後はシルルンたちがなんとかするからな」


「……シルルンたちと言うことは、彼以外にも誰かいるんですか?」


「上層を支配している獅子族と水精霊族たちとシルルンは同盟して戦っているんだ。 信じられないだろ?」


 その言葉に、ベル将軍たちは呆けたような表情を浮かべるのだった。


 こうして、ヒーリー将軍たちは鉱山から撤退したのだった。















 シルルンたちはエレメンタル種の上位種を狙って倒していた。


 中層に展開するエレメンタル種はこのエリアで最後だが、その数は10万を超えていた。


 シルルンは上位種を特定して倒すと同時に、プルとプニが周辺のエレメンタル種の群れに魔法を唱え、エレメンタル種の群れは為す術なく消滅して、その数を急速に減らしていく。


 プルとプニはレベルの上限がなくなったことにより、シルルンと同様に急激にレベルが上がっており、魔法の威力もさらに跳ね上がっていた。


 種族名からも分かるようにプルとプニは魔法に特化した個体だからだ。


「これで上位種はほとんど倒したデシ」


 プニが『気配探知』のウィンドウを視ながら言った。


「うん、あとはハイ アース ファイヤー エレメンタルのところにいるやつぐらいだね」


「デシデシ」


「じゃあ、北に行こうか」


「了解」


 ブラックは凄まじい速さで北の方角に突き進んでいく。


 すぐにキャンプ村が見えてくるが、キャンプ村は焼き払われて無残な姿を晒していた。


 ハイ アース ファイヤー エレメンタルは西門があった付近に佇んでおり、その周辺には数十匹もの上位種が徘徊していた。


「大きいデス!!」


 ハイ アース ファイヤー エレメンタルの全長は14メートルを超えているのだ。


「あはは、プルとプニは強力な魔法を叩き込んでよ」


「分かったデス!!」


「デシデシ!!」


 プルとプニは『魔力増幅』を発動し、ブラックは凄まじい速さでハイ アース ファイヤー エレメンタルに目掛けて突撃する。


 シルルンは魔法の袋から閃刃の弓(薄い青色のミスリルの弓)と水撃の弓を取り出して、『念力』で掴んで上位種たちに狙いを定めて『十六連矢』を放つ。


 16発の風の刃と16発の水弾が上位種たちの頭に降り注いで、上位種たちは一瞬で全滅する。


 シルルンの『念力』は彼自身にしか見ることはできないが、見えるとしたら彼の体から4本の腕が生えているように見えるだろう。


 彼は『念力』を試行錯誤しながらいろいろな方法で使用して、4つ同時に動かすことに成功していた。


 ちなみにこれはシルルンが平常時の場合においての話で、『叛逆』を発動すると3倍の12本の腕を生やすことができるのだ。


 『能力耐性』を所持するエンシェント ハイ ホーネットが、シルルンの『念力』にボコボコにされたのは12本の腕で殴られまくったからだった。


 ハイ アース ファイヤー エレメンタルは5本の巨大な火柱を出現させ、巨大な火柱はハイ アース ファイヤー エレメンタルの周囲を回るように動いており、それが外に向かって凄まじい速さで広がってシルルンたちに襲い掛かる。


「フハハッ!! 遅い遅すぎるっ!! 話にならんわ!!」


 ブラックは迫り来る巨大な火柱をこともなげに躱し、一瞬でハイ アース ファイヤー エレメンタルに肉薄して、シルルンが『サンダーウェーブ』を放った。


 鞭のようにうごめく無数の稲妻がハイ アース ファイヤー エレメンタルに直撃して、ハイ アース ファイヤー エレメンタルの動きが止まる。


「へぇ、なかなか強いね」


 シルルンは『魔物解析』でハイ アース ファイヤー エレメンタルの体力を視て呟いた。


「オラッ!!」


 ブラックは『触手』でハイ アース ファイヤー エレメンタルを殴りつけた。


 彼は勢いでハイ アース ファイヤー エレメンタルを殴ったが、『触手』は大火傷しており、無言で『治療』で治した。


 麻痺から回復して動き出したハイ アース ファイヤー エレメンタルに、シルルンは再び『サンダーウェーブ』を放ち、鞭のようにうごめく無数の稲妻が瞬いた。


 稲妻が直撃したハイ アース ファイヤー エレメンタルは再び麻痺して動けなくなり、シルルンはプルとプニに顔を向ける。


「ぷるるるるる……」


「ぷにににににに……」


 プルとプニは頬っぺたを膨らませて唸っており、それを見たシルルンは微笑ましそうに目を細めた。


「たまったデス!!」


「デシデシ!!」


 プルとプニは満足げな表情を浮かべている。


「あはは、じゃあ撃っていいよ」


「ウォーターデス!! ウォーターデス!!」

「ウォーターデス!! ウォーターデス!!」


「ウォーターデシ!! ウォーターデシ!!」

「ウォーターデシ!! ウォーターデシ!!」


 プルとプニは『並列魔法』と『連続魔法』でウォーターの魔法を唱えて、8発もの巨大過ぎる水の刃がハイ アース ファイヤー エレメンタルに襲い掛かる。


 ハイ アース ファイヤー エレメンタルは『土壁』を発動し、巨大過ぎる土の壁がハイ アース ファイヤー エレメンタルの前に出現する。


 だが、水の刃は易々と土の壁を貫通し、ハイ アース ファイヤー エレメンタルに直撃して、凄まじい水蒸気を放ちながらハイ アース ファイヤー エレメンタルは消滅したのだった。


「やったデス!!」


「デシデシ!!」


「あはは、まぁ、こんなもんだろうねぇ」


 シルルンは優しげな表情でプルとプニの頭を撫でる。


 プルとプニはとても嬉しそうだ。


「あとは雑魚だけだねぇ」


 シルルンは『魔物探知』で周辺を探り、プニも『気配探知』で辺りを探るが、彼は訝しげな顔をしてテレポートの魔法を唱えてシルルンの肩から消えた。


 プニは流動する溶岩の上でふわふわと浮いており、まだ溶岩に変わっていない大地の上に転がっている岩石をじーっと見つめている。


「プニタッチデシ!!」


 プニは『触手』を伸ばして岩石に触れて、『解析』で岩石を視て満足そうな顔をしてシルルンたちの元に戻って行った。


「……」


 (あぁん? なんだったんだ今のスライムは?)


 岩石は、岩石にはあるはずもない目を動かして周囲を探る。


 すると、周辺を徘徊していたハイ アース ファイヤー エレメンタルたちの姿が消えていた。


 (ちぃ、やっとどっかに行きやがったか……)


 岩石は『変態』を発動したが、何も起こらなかった。


 (あぁん? なぜ元に戻らん!?)


 岩石は何度も『変態』を発動したが、姿が変わることはなかった。


「で、何しに下に行ってたんだい?」


 シルルンは探るような眼差しをプニに向けた。


「ビャクスっていう人族が石に化けてたデシ!! 悪者だから魔法と能力を奪ってきたデシ!!」


 プニは誇らしげな顔で言った。


「ビャクス? 確か山賊の頭領の名前だよね? あはは、石に化ける能力なんかもあるんだね……けど、それを奪われたら元に戻れないからこれからのことを思うと悲惨だね」


 シルルンは満面の笑みを浮かべながらプニの頭を撫でた。


 プニはとても嬉しそうだ。


 シルルンたちはその場から凄まじい速さで移動してエレメンタル種の群れを倒していき、日が沈み始めた頃にはエリア内のエレメンタル種の群れを全滅させて第1ポイントの前にいた。


「あはは、ここも誰もいないようだから僕ちゃんの拠点にするよ」


 シルルンは魔法の袋から巨大な氷を取り出して溶岩に目掛けて投げまくり、プルとプニもブリザーの魔法を唱えまくって、第1ポイントの出入り口前は水浸しになった。


「ブラックはラーネを連れて来てほしんだよ」


「了解」


 ブラックは頷いて、凄まじい速さで東の方角に飛んで行った。


「じゃあ、中も水浸しにするよ」


 プルとプニは頷いて、シルルンたちは第1ポイントの中に入る。


 すると、そこにはフワフワした物体が、一匹浮いていたのだった。

面白いと思った方はモチベーションが上がるので、ブックマークや評価をよろしくお願いします。


ビャクス 水使い レベル35 重装魔戦士 レベル30

HP 8000

MP 4400

攻撃力 4400+ミスリルソード

守備力 3400+ミスリルファイタースーツ

素早さ 3900+ミスリルブーツ 力の腕輪+10

魔法 ブリザー ウインド ヒール アンチマジック

能力 統率 二重職 合算 水壁 水球 水刃 水閃 水操作 水竜巻 擬態 放屁 威圧 剛力 鉄壁 魔法耐性

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― 新着の感想 ―
[一言] ビャクスのオチが…(笑) 一生岩なのか…(笑)
[一言] 石から戻れなくなるか、、、 これは石そのものにかわるのかしら? それとも見た目が石なだけなのかしら? どちらにせよ、動けないでしょうね。
[気になる点] 石から戻れないビャクスは鑑定したら何て出るんだ? 声聞こえる?? [一言] みんなどれだけ成長したかステータス見たいです。
感想一覧
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