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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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179 エレメンタル種との戦い②


「……ここを基点に始めるか」


 ハイ ウォーター エレメンタルは空を見ながら言った。


 すると後方からウォーター エレメンタル種の群れが、ハイ ウォーター エレメンタルを守るように布陣した。


 数は2000ほどだ。


 さらに後方にはエアー エレメンタル種の群れが布陣している。


 数は1000ほどで、エアー エレメンタル種の全軍だ。


 ちなみに全体の数は1万ほどで、その割合は水6、氷3、風1、雷0.5だ。


 ウォーター エレメンタル種の群れは、周辺に水を放ち続けて湖を作り出し、半数ほどが空に展開する。


「まずは私が突っ込むわ」


 ローズは空を見上げて、不敵な笑みを浮かべている。


「なら、俺も行くとするか……」


 空を見上げたルアンは、ローズの横に並んだ。


「あはは、僕ちゃんたちは待機だよ」


「えっ!? なんでなのよ?」


 ローズは訝しげな眼差しをシルルンに向けており、ルアンも意外そうな表情を浮かべている。


「まず、エレメンタル同士の戦いを見てみる必要があるからね」


「……回りくどいわね」


「まぁ、焦る必要はないよ。近づいてくるエレメンタル種の群れは1000ぐらいだけど、全体の数は数十万規模だからね」


「――えっ!?」


「なっ!?」


 仲間たちは雷に打たれたように顔色を変える。


「だから効率良く戦わないとしんどいんだよね」


 シルルンはしたり顔で言った。


「効率良くか……だが、それほどの大群に勝てるものなのか?」


 ヒーリー将軍は不安そうな顔で言った。


「数もそうだが奴らは学習している……故に長期戦になるのは確かだな……」


 ハイ ウォーター エレメンタルの視線は、溶岩に変わった大地に向けられている。


「ふ~ん、前回の戦いでは大地は溶岩じゃなかったんだ」


「そうだ。敗北した奴らは、我らの戦術を真似たのだろう」


「あはは、やらせないけどね」


 腕を組んだシルルンは、余裕たっぷりに笑っている。


「ほう……」


 ハイ ウォーター エレメンタルは視線をシルルンに向けて、意外そうな声をもらした。


 上空ではすでに戦端が開かれており、数的には同数だが、こちらが有利に展開している。


 水と火では、水のほうが有利で、水と土では大差がないからだ。


 彼らはダメージを受けると、それぞれの属性の地形に降り立って、体力を回復させながら戦いを繰り広げている。


「なるほどな……エレメンタル同士の戦いはこうなるのか……」


「……一撃で倒すか、回復されないように1匹ずつ確実に倒すしかないわね」


 顔を顰めたルアンは、ローズの言葉に同調して頷いた。


「アース エレメンタル種が厄介ね……溶岩は水浸しにできるけど、アース エレメンタル種は水浸しでも体力を回復できるんでしょ?」


 リザの言葉に、仲間たちの視線はハイ ウォーター エレメンタルに集中した。


「その通りだ……お前たちはファイヤー エレメンタル種がこの戦争を起こしたと思っているのではないか?」


「何ぃ!? 違うのか?」


 ハーヴェンは驚きの表情を見せた。


「そもそも、この戦争はハイ アース エレメンタルが、ハイ アース ファイヤー エレメンタルに進化したことから始まったのだ」


「なっ!?」


 仲間たちは驚きのあまりに血相を変える。


「だが、俺たちが戦ったのはハイ ファイヤー エレメンタルだったはずだ」


「お前が我らと戦ったのはそうだ。お前はこのエリアでしか戦っていないからな……」


「ぐっ……」


「我らは死力を尽くして戦ったが、倒しきることができなかった」


「……なら、俺の『気配探知』が捉えている個体が、ハイ アース ファイヤー エレメンタルなのか?」


 ハーヴェンは訝しげな眼差しをハイ ウォーター エレメンタルに向ける。


「気配探知……それは能力なのか?」


「ちっ、精霊族は持ってないのか……」


 ハーヴェンは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「まぁ、『気配探知』は、かなり上位な能力だからねぇ。だけど、探知に関しては万能だけど、個体の強弱は分からないんじゃないの?」


「……そ、そうなのか? 俺は『気配探知』しか持ってないから分からん」


「僕ちゃん『魔物探知』を持ってるけど、この能力じゃ全く分からないからね。強弱が知りたいなら解析系がいるんだよ」


 その言葉にハーヴェンは心底、驚いたような顔をしていた。


 彼は自分が感じる嫌な気配が、単なる思い込みだったことを知って、愕然としたのだ。


「で、君たちには上位種から進化した個体はいないのかい?」


「我らの側にはそんな者は存在しない。そのような進化をしたのは土精霊族が初めてなのだ」


「ふぅん、そうなんだ……」


「だが、可能性はあるかもしれん。なぜならば土精霊族と互角に戦えるのは、我ら水精霊と風精霊だけだからな」


「えっ!? 雷が一番強いんじゃないの!?」


 シルルンは驚きのあまりに血相を変える。


「無論、我ら自然精霊族以外の者たちと戦うならば、雷精霊は無類の強さを誇るだろう。だが、我らの中では水精霊、氷精霊、土精霊を苦手としている」


「そ、そうなんだ」


「だからと言って、下位種が上位種に勝てるほどの差はない。まぁ、結局は出力ちから次第ということだ」


「なるほどね……それでサンダー エレメンタル種が一番後ろにいるんだ」


 シルルンは納得できない表情で、後方を見つめるのだった。


 後方に陣取っていたエアー エレメンタル種が空に浮かび上がって戦いに参戦する。


 すでにファイヤー エレメンタル種の数は著しく減っており、エアー エレメンタル種の群れは、遠距離から風を飛ばして、アース エレメンタル種は風の刃に切り裂かれて数を減らしていく。


 緒戦はハイ ウォーター エレメンタルたちの圧倒的勝利で終わったのだった。


「う~ん……こうなるとウォーターの魔法があんまり意味がないね……ルアンたちはアース エレメンタル種を主に攻撃してよ」


 シルルンは頭を掻きながら、苦笑いを浮かべた。


 彼はどうやってアース エレメンタル種の数を減らそうかと考えていたが、効果的な方法はないと思ったからだ。


「まぁ、そうなるだろうな」

 

「そうね……火精霊は水精霊たちでなんとかできそうだけど、問題は土精霊よね」


 ルアンたちは真剣な硬い表情を浮かべている。


「マルはがんばるのっ!!」


「うん。とりあえず、このエリアを奪い返すよ。プルはリーダーとして指揮を頼むよ」


「分かったデス!!」


 プルは自信に満ちた表情を浮かべており、シルルンの肩からシュパッと飛行して、マルの頭の上に着地した。


「なっ!? シルルンはどうするのよ?」


「僕ちゃんは上位種を倒して回るよ。そうすれば『召喚』できなくなるからね」


「なるほどね……」


 仲間たちは合点がいったような顔をした。


「じゃあ、任せたよ」


 そう言って、シルルンは一瞬で上空に消えていったのだった。


「それで、どうするんだプル?」


 ルアンは探るような眼差しをプルに向ける。


「な、なんだと!? プルというのはあの可愛らしいスライムのことか?」


 ヒーリー将軍は驚きのあまりに血相を変える。


「そうだ」


「だ、大丈夫なのか?」


「それは分からん……だが、プルは一番の古参だからな。序列としては当然だろう」


「……」


 ヒーリー将軍は目を見張り、絶句したのだった。


「ぶちのめしに行くデス!!」


 マルの頭の上で、プルはピョンピョン跳ねながら言った。


「分かったのっ!!」


 マルは空へと上昇して西の方角に突き進んでいく。


「行くぞ」


 ルアンとローズは羽ばたいて浮かび上がり、マルを追いかけたのだった。









 シルルンたちは凄まじい速さで空を駆け抜けている。


「このエリアにはそんなに数はいないみたいデシ」


「……まぁ、ざっと3万位だね」


 シルルンは氷撃の剣でハイ アース エレメンタルを斬り裂いて言った。


 彼は『超魔物探知』で周辺を探りながら、『超集中』と『魔物解析』も併用しており、上位種の所在を捉えて倒しているのだ。


 すでに上位種は300匹ほど倒されていた。


 ダイヤたちは、シルルンの左肩にのろうとしたが、あまりの速さに吹っ飛んでプニの口の中に戻った。


 彼らは大気を喰う『風殺し』のスキルを取得していないからだ。


「もうこのエリアには上位種はいないみたいデシ」


 プニは自身にしか見えないウインドウを視ながら言った。


 彼はどうやってシルルンが、上位種の位置を特定しているのか疑問に思って、シルルンに尋ねたのだ。


 そのため、彼も『気配探知』『集中』『解析』を同時に発動しており、敵の位置と強さを視ることができるようになったのだ。


「ブラック、東に進んでよ」


「承知!!」


 ブラックは凄まじい速さで空を翔るが、シルルンは訝しげな表情を浮かべていた。


 彼は東の方角に魔物の反応を捉えていたからだ。


 シルルンたちは険しい山道の上空に到着すると、そこには巨大な漆黒の魔物が1匹で佇んでいた。


「カ、カース ホーネットデシ!! レベルもカンストしてるデシ!!」


 プニは驚きのあまりに血相を変える。


「君はここで何をしてるんだい?」


 シルルンは探るような眼差しをカース ホーネットに向ける。


「ほう、人族のくせに我を前にして、臆することなく話し掛けてくるとは驚いたぞ」


 人族語で言い放ったカース ホーネットは、不敵な薄笑いを浮かべた。


「へぇ、人族語を話せるんだ」


「我はここから周辺を観察して、これからの行動指針を考えていた」


「最初に言っておくけど、ここから東のエリアは僕ちゃんの縄張りなんだよね」


「ほう……東は虎族が支配していたはずだがどうしたのだ?」


「僕ちゃんたちが潰したんだよ」


「……ほう、それで虎族がいなくなっていたのか」


 その言葉にシルルンは顔を顰めた。


「それで、今後の行動は決まったのかい?」


「いや、まだだ。我らは情報を収集するが、決めるのはクイーンだからな」


「こっちとしては、そっちが仕掛けてこないなら戦う必要はないと思ってるんだよ」


「……分かった。その旨、クイーンに伝えておこう」


「いや、僕ちゃんをクイーンの元に連れてってほしんだよ」


「なっ!?」


 カース ホーネットは雷に打たれたように顔色を変える。


「不安なら、エンシェントも一緒で構わないから」


「馬鹿なっ!? なぜエンシェントの存在を知っているっ!?」


 カース ホーネットは動揺を隠し切れずに狼狽えた。


 彼は対峙直後から『威圧』を放っていたが、シルルンは全く動じていなかった。


 つまり、同格以上だということだ。


 故に強さもそうだが知識に対しても訝しさを彼は覚えており、そこから導き出された答えは勇者ではないのかという疑惑だった。


「で、連れてってくれるのかな?」


「……応じなければお前はどうするつもりだ?」


 カース ホーネットは訝しげな眼差しをシルルンに向けた。


「今から乗り込むつもりだよ」


「――っ!?」


 大きく目を見張ったカース ホーネットは、難しそうな表情を浮かべている。


 彼はこの時点でシルルンのことを勇者だと断定しており、戦闘は回避するべきだと考えていた。


 雀蜂族の切り札はエンシェント1匹のみだが、人族の勇者は何人もいるからだ。


「いいだろう、ついてこい」


 こうして、シルルンたちはカース ホーネットと共に雀蜂族の拠点に向かったのだった。

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[一言] ホーネット属とも仲良くね
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