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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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174/302

174 第1ポイントでの攻防


「獣人たちが投降するって言ってますぜ!!」


 グリドは血相を変えてガドーに報告した。


「奴らどういうつもりだ?」


 第1ポイントの拠点で指揮を執るガドーは怪訝な顔をした。


「分かりませんが獣人たちしか見当たりませんね」


「どういう魂胆かは分からんが話ぐらいは聞いてやるか」


 ガドーはグリドを伴って拠点から出た。


 外にはガドーに雇われている2000を超える冒険者たちが拠点の出入口前を半包囲するように布陣しており、それに対して獣人たちは200ほどしかいなかった。


 ガドーたちが包囲陣まで歩いていくと、重装備な男たちがガドーを囲むように立った。


 彼らはガドーの奴隷なのだ。


「どういうつもりだ?」


 ガドーは訝しげな眼差しを獣人側のボスであるディーダに向ける。


「どうもこうもねぇ、そのままの意味だ。俺は勝算がない戦いはしないたちなんだ」


 ディーダはしたり顔で答えた。


「……亜人たちはどうしたんだ?」


「あいつらは山賊共を攻撃するらしい。そもそも俺たちは山賊に拠点を追われてここに来たからな……」


「ビャクス山賊団か……」


 ガドーは険しい表情を浮かべた。


「お前ら人族は区別がつかねぇんだよ。つまり、俺たちはお前らが山賊だと思ってたんだ。だが捕らえたお前らの仲間は山賊じゃねぇって言うじゃねぇか……」 


「要するにお前らは俺たちが山賊だと思って攻撃したと言いたいのか?」


「そういうことだ。まぁ、亜人たちは怒りが収まらねぇみたいで反撃のチャンスを窺うみたいだがなぁ」


「……だが第2ポイントは元々人族が支配していたのをお前らが奪っただけの話だろうが」


 ガドーは失笑を漏らした。


「それは俺たちじゃねぇ。俺たちも代替わりはしてるからなぁ。俺たちからすればお前ら人族が俺たちのポイントを奪ったんだよ」


「なっ!? ぐっ……」


 ガドーは面食らって言葉を詰まらせた。


 彼は強引なやり方で先代からポイントを奪っており、言い返すことができなかったのだ。


「で、俺たちの投降は認めてくれるのか? 近い内に奴らがここに攻めてくるだろう。戦力は多いほうがいいんじゃないか?」


「確かに戦力は欲しい……だが、お前たちを信用できん」


「なら、奴隷証書で契約すればいいんじゃないか?」


「なっ、なんだとっ!?」


 ガドーは雷に打たれたように顔色を変える。


「但し条件がある。奴隷契約するのはこのポイントのボスであること。そして、奴らと戦わせろ。この2つを呑むなら俺たちは奴隷契約する用意がある」


「……な、なぜそこまでする?」


「俺は奴らが許せねぇんだよ。だが、俺は亜人たちと違って勝算がない戦いはしないたちって言っただろ」


「なるほどな……確かに俺たちと共に戦えばお前たちの復讐は果たせるだろうな……いいだろう……お前たちを奴隷として受け入れてやろう」


 ガドーはグリドに目配せすると、グリドは拠点の中へと走って行った。


「じゃあ、まず俺からだな」


 ディーダは剣を放り投げ、両手をあげて歩き出した。


「そこで止まれっ!!」


 ガドーは奴隷たちに護られており、冒険者たちがディーダを取り押さえても、ディーダは全く抵抗しなかった。


 拠点の中から走って戻ってきたグリドは、警戒しながらディーダの傍まで歩いていく。


 デイーダは右腕だけが解放されており、グリドはデイーダの右手の上に奴隷証書を置いて振り返る。


「どうやら本当に奴隷になるようだな」


 ガドーは奴隷たちに護られながらデイーダの前まで歩いていき、奴隷証書の上に手を置いた。


「俺はあんたの奴隷になるぜ」


 デイーダはそう宣言して奴隷証書は2枚に分かれてガドーとデイーダの胸の中に消えた。


「ふぅ……」


 ガドーを護る奴隷たちや冒険者たちから安堵の溜息が漏れた。


 冒険者たちに取り押さえられていたディーダは解放されてガドーの横に立った。


「次はお前の仲間たちだな」


「いや、人数分の奴隷証書を渡してくれたら、俺がいったんマスターになるぜ。その後、譲渡したらあんたは楽だろ?」


「そうだな、そうするか。グリドは奴隷証書を取って来い。俺は中で休む」


 頷いたグリドは拠点の中へと走っていき、ガドーは奴隷たちに目配せして身を翻した。


 奴隷たちがガドーから離れて包囲陣へと歩き出した瞬間――


 ディーダは凄まじい速さでガドーに襲い掛かり、片手でガドーの顔面を掴んで持ち上げた。


「ば、馬鹿なっ!? なぜ俺に逆らえるっ!?」


 ガドーの顔が驚愕に染まる。


「くくっ、なんでだろうなぁ? おっと動くなよ、動いたらこいつの頭が弾けるぜ」


 ディーダは身を翻して抜刀したガドーの奴隷たちに睨みを利かせる。


 彼に奴隷証書の効力が及ばないのは彼が『契約破壊』を所持しているからだ。


 『契約破壊』はあらゆる契約を破壊できるのだ。


 彼はこの能力で奴隷契約された獣人たちを解放して仲間に加えており、獣人側のボスの座に登りつめたのだ。


「ぐっ……」


 ガドーの奴隷たちは悔しそうな顔で身を打ち震わせており、包囲陣を形成する冒険者たちはこの光景を目の当たりにして唖然とした。


「な、何が望みだ……?」


「そうだな、今度はお前が俺の奴隷になれ」


「……わ、分かった……言う通りにする……お前たちも動くなよ」


 苦痛に顔を歪めるガドーは奴隷たちに釘を刺した。


「ガ、ガドー様……」


 奴隷証書を抱えて戻って来たグリドは愕然とした。


「丁度いい、こいつに1枚握らせろ」


 グリドは躊躇いながらガドーの手に奴隷証書を握らせて、ディーダは奴隷証書の上に手を置いた。


「お、俺はあんたの奴隷になる……」


 ガドーが宣言すると奴隷証書は2枚に分かれてデイーダとガドーの胸の中に消えた。


「くくっ、言っただろ? 俺は勝算がない戦いはしないたちだってなぁ」

 

 ディーダは手を離してガドーを解放し、不敵な笑みを浮かべた。


 彼が身の危険も省みずにこのような強硬手段に打って出たのは深刻な食糧問題があったからだ。


 エレメンタル種に襲撃された彼らは纏まった食料を持ち出せず、短期決戦を迫られたのだ。


 第1ポイントを手中に収めたディーダは仲間たちを拠点に呼び寄せたが、冒険者たちは去っていった。


 だが、東に進んだことが災いしてエレメンタル種の群れと遭遇して全滅し、ディーダたちはポイントにある金目の物や食料を掻き集めて、ポイントを破棄してエレメンタル種から逃げるべく南に進軍したのだった。






 ヒーリー将軍率いる3000名は斥候であるケツからもたらされた情報を元に、西の中間ポイントを通過して中層を目指して進軍していた。


「中層はもうすぐです。ですが中層の手前でベル将軍の部隊が野営をしていました」


 斥候から帰還したケツがヒーリー将軍に報告する。


「解せんな……なぜそんなところで野営しているのだ」


 ヒーリー将軍は訝しげな顔をした。


 しばらく進軍するとケツが言ったように、ルートから外れた平地に多数のテントが張られていた。


「ここで一時休憩だ。私はベル将軍に会ってくる」


「はっ」


 側近は即座に指示を出して部隊を停止させた。


 ヒーリー将軍は側近と共にテントに向かって歩きだした。


「俺たちもついていきますよ」


 ラーグがヒーリー将軍に話し掛け、その傍らにはホフターの姿もあった。


「もちろんだ。おそらく何かがあったはずだからな……」


 ラーグとホフターはヒーリー将軍に追従し、ヒーリー将軍たちは野営地の前に到着する。


「ヒ、ヒーリー将軍っ!?」


 見張りの兵士たちは驚きの表情を浮かべて慌てて敬礼した。


 ヒーリー将軍たちは野営地の中に入って一際大きいテントに向かって歩いていくが、ヒーリー将軍は訝しげな表情を浮かべていた。


 兵士たちの顔には悲壮感が漂っており、3000名で出撃したにも拘わらず、半数ほどしかいないからだ。


 ヒーリー将軍たちは一際大きいテントの前で歩みを止めた。


「失礼する」


 そう声を掛けてヒーリー将軍たちはテントの中に入ると、ベル将軍と側近たちがテーブルを囲んで議論を交わしていた。


「しょ、将軍っ!?」


 ベル将軍は驚きの表情を浮かべており、ベル将軍と側近たちは慌てて立ち上がって敬礼した。


 それに対してヒーリー将軍と側近が敬礼を返す。


「なぜこんなところで野営をしているんだ?」


 ヒーリー将軍は探るような眼差しをベル将軍に向ける。


「そ、それは……」


 ベル将軍は深刻な表情を浮かべて事の顛末を語りだした。


「山賊に戦略級の攻撃手段を持つ者がいるというのか……」


 ヒーリー将軍たちは驚きを禁じ得なかった。


「……議論の結果、100名の部隊を多数編成して4つある門を同時攻撃することにしました」


 ベル将軍は意を決したような表情を浮かべている。


「しかし、それでは的になるだけではないのか?」


「それは覚悟の上です」


 ベル将軍は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「おそらく100というのは門を攻める上での最小単位であり、各部隊との距離をとっていれば戦略級の攻撃を撃たれても壊滅するのは100で、門を同時に攻めるのは戦略級の使い手が4つの門の内、1つしか守れないからでしょうね」


 ラーグは話に割って入り、彼はベル将軍たちが立てた作戦の意図を推測して語った。


「……その通りだ」


 ベル将軍は驚いたような顔をした。


「もっと言えば、戦略級の攻撃に回数制限があると想定しているのでしょう」


 ラーグの言葉にベル将軍は頷いた。


「なるほどな……だがここの兵力では各門に3部隊ほどしか送り込めん。中層にエレメント種がまだいないのならば私も協力しよう」


「はっ、ありがとうございます」


 こうして、ヒーリー将軍たちは軍を率いて直ちに出撃したのだった。

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