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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
大穴攻略編

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17 バルレド将軍 修


 A2ポイントにバルレド将軍率いる上級兵士九百名が到着し、休むことなくベル大尉を自身の指揮下に戻したバルレド将軍は、遊撃としての部隊、六隊と自らの本隊を編成した。


 隊の編成は次の通りである。


 一隊から六隊は各隊上級兵士百名と司祭五名と斥候五名

 本隊 バルレド将軍 ベル大尉 聖騎士九名 上級兵士二百名 上級弓兵百名 魔法師五十名 司祭二十名 斥候二十名


 包囲陣からバルレド将軍率いる六隊が進軍を開始し、バルレド将軍は部屋に展開するアント種の群れを殲滅するように各隊に命令した。


 アント種の群れと戦いを繰り広げる各隊は、アント種の群れをたちどころに殲滅されていく。


 そして、各隊の周辺には冒険者たちや傭兵たちの姿もあり、その数は六百名にも上る。


 バルレド将軍が冒険者や傭兵の追従を許可しているからだ。


 遊撃部隊は魔物の数が少数なら冒険者たちに任せて先に進むので進軍速度は早く、遊撃部隊の隊長たちは部屋の調査結果を報告するために斥候を放ち、斥候たちがバルレド将軍に調査内容を報告した。


 部屋から伸びる洞穴の情報


 上に伸びる洞穴が三本

 下に伸びている洞穴が一本

 傾斜なく伸びている洞穴が一本


「傾斜がない洞穴があるのか……」


 バルレド将軍は顔を顰めている。


 即座に彼は本隊を率いて傾斜なく伸びている洞穴に向かって進軍した。


 部屋の魔物たちは遊撃部隊によって殲滅されているので難なくバルレド将軍率いる本隊は洞穴の前に到着した。


 傾斜なく伸びている洞穴の入口は見上げるほど巨大で、縦横の長さは二十メートルほどもあった。


「この洞穴に進軍する!!」


 バルレド将軍は本隊を率いて傾斜なく伸びている洞穴に進軍を開始した。


「将軍お待ちくださいっ!! この洞穴は明らかに異常です。進軍するなら全軍であたるべきです」


 ベル大尉は真剣な硬い表情で進言した。


「ぬう……ベル大尉の言うことには聞くべき点がある」


 その言葉に、ベル大尉は安堵したような顔した。


「ベル大尉はここに残り、部隊を束ねて追ってくるがいい。皆は儂に続けっ!!」


「――っ!? 了解しました」


 一瞬不服そうな表情を浮かべたベル大尉は即座に敬礼した。


 本隊を率いるバルレド将軍は洞穴の中に突入すると、自らが先頭に立って進軍したのだった。


 バルレド将軍率いる本隊が十キロメートルほど進むと、ハイ アント率いるアント種の群れが姿を現した。

 

 ハイ アントたちはバルレド将軍たちに向かって猛然と突撃する。


「がはははっ!! 来おったかっ!!」


 バルレド将軍は特大のミスリルハンマーをハイ アントに目掛けて振り下ろし、ミスリルハンマーが直撃したハイ アントの体は激しく陥没した。


 だが、その程度ではハイ アントに対して致命傷にはならず、ハイ アントは右前脚の爪をバルレド将軍に振り下ろした。


 その刹那、聖騎士たちの一人がバルレド将軍の前に庇うように立ち、爪の攻撃を剣で受け止めた。


 聖騎士はこの場に九名いるが、皆一様に必死の形相を浮かべていた。


 彼らは下がって指揮を執ってくれとバルレド将軍に進言したいが、それを行えばベル大尉のように外されるだけなので彼らには将軍を護る以外に選択肢はなかった。


 しかし、兵士たちの見解は違った。


 彼らからすれば、自分たちと同じ土俵である最前線という死地での戦いに身を投じるバルレド将軍の姿に、彼らは尊敬の念を抱かずにはいられなかったのだ。


 そのため、彼らの士気は狂ったように高かった。


「将軍をお護りしろ!!」


 兵士たちは一斉にハイ アントたちに襲い掛かり、瞬く間にハイ アントたちは殲滅された。


 バルレド将軍率いる本隊は進軍を開始すると、一定の間隔でアント種の群れと遭遇し、それを全て殲滅しながら進軍すると行き止まりだった。


 兵士たちは拍子抜けしたような表情を浮かべていたが、聖騎士たちは安堵に表情を緩ませていた。


 だが、訝しげな表情を浮かべるバルレド将軍は、行き止まりの壁の土を手に取って凝視している。


「ぬう、この土はおかしい……」


 ハンマーを振りかぶったバルレド将軍は行き止まりの壁に目掛けてハンマーで強打すると、壁が崩れて奥に繋がる部屋が出現した。


「なっ!?」


 聖騎士たちは大きく目を見張った。


「奴らは洞穴を塞いでおったのじゃ」


 直ちに兵士たちは壁を破壊し、バルレド将軍率いる本隊は部屋に踏み入った。


 部屋の大きさは直径三百メートルほどで、部屋の最奥にはとてつもなく巨大な魔物の姿があった。


「やっぱりいたか!!」


 バルレド将軍は会心の笑みを浮かべた。


 巨大な魔物の正体はアント種の女王であるクイーン アントだ。


 クイーン アントの全長は十五メートルを超える巨体で、その周囲には五百匹ほどのアント種がクイーン アントを護っており、その中には巨大な魔物が交ざっていた。


 その魔物は全長八メートルを超えるキング アントだった。


「儂に続けっ!! 突撃じゃ!!!」


 バルレド将軍はクイーン アントに目掛けて突撃し、クイーン アントを護っていたアント種の群れが一斉にバルレド将軍に向かって突進した。


「上級兵士は続け!! あとの者は後方から支援しろ!!」


 聖騎士たちは声を張り上げて、バルレド将軍を追いかけた。


「がはははっ!! どけっ!! 道を開けろ!!」


 狂ったように突撃してくるアント種の群れをバルレド将軍はミスリルハンマーを自在に操って叩きのめして道を切り開く。


 そこに聖騎士たちが加わることで突破力に拍車が掛かり、バルレド将軍たちは一気にクイーン アントに接近した。


「もらったぁ!!」


 大きく跳躍したバルレド将軍はミスリルハンマーを振りかぶってクイーン アントに目掛けてミスリルハンマーを振り下ろした。


 だが、キング アントが凄まじい速さでバルレド将軍に襲い掛かる。


 しかし、聖騎士たちの五名がキング アントに向かって突進してキング アントの攻撃を受け止めて、バルレド将軍のハンマーの一撃がクイーン アントに胴体を打ちつけた。


「まだまだぁ!!」


 バルレド将軍はミスリルハンマーを振り回してクイーン アントを滅多打ちにした。


「キシャヤァアアアアアアァァアアアアァァァッ!!」


 これには堪らずにクイーン アントが耳をつんざくような奇声を上げた。


 上級弓兵たちは一斉に矢を放ち、無数の鉄の矢がアント種の群れを貫くと、上級兵士たちがアント種の群れに突撃してアント種の群れに止めを刺した。


「我々も将軍に続け!!」


 クイーン アントに突撃した上級兵士たちは総攻撃を仕掛ける。


 これに対して上級弓兵たちは何もできずに静観していた。


 クイーン アントに戦力が集中しているために、下手に矢を放てば仲間に当たる可能性を懸念したからだ。


 だが、上級兵士たちの攻撃力ではクイーン アントの守備力を上回ることができず、クイーン アントにダメージを与えることは不可能だった。


 そのため、ダメージ源になるのはバルレド将軍と聖騎士四名による攻撃だけになる。


 しかし、聖騎士たちはクイーン アントの攻撃からバルレド将軍を護っているのでダメージが蓄積され難い状況にあり、クイーン アントは『HP回復』で体力を回復していた。


 『HP回復』は一分間に一度、最大HPの値の十パーセントが回復する能力である。


 一方、キング アントと戦いを繰り広げている聖騎士たちも苦戦していた。


 キング アントはクイーン アントよりも防御力が高く、その数値は『堅守』を反映させると九百を上回っていた。


 そのため、物理攻撃ではダメージを与えることができない聖騎士たちは魔法による攻撃を仕掛けていた。


 だが、キング アントは魔法に長けており、聖騎士たちはパラライズの魔法に抵抗するのが難しく、麻痺して『毒爪』の一撃や攻撃魔法をくらって大ダメージを受けていた。


 それでも聖騎士たちの顔には余裕の笑みが浮かんでいた。


 防御型の彼らはヒールの魔法やファテーグ(スタミナ回復)の魔法を所持しているので長期戦は想定内だからだ。


 戦いは長期戦へと移行して彼らは最終的には勝てると踏んでおり、後方から魔法師たちにも魔法攻撃を行わせていたが、最終局面でキング アントは嘲笑いながらヒールの魔法を唱えて自身の体力を回復したのだ。


 さらにキング アントは凄まじい速さで飛行してクイーン アントの傍に飛来し、ヒールの魔法を唱えてクイーン アントの体力も回復させた。 


 クイーン アントはファテーグの魔法を唱えて、キング アントのスタミナが全快する。


「馬鹿なっ!!」


 バルレド将軍は雷に打たれたように顔色を変える。


 最早、聖騎士たちや魔法師たちの魔力は枯渇寸前であり、傷ついた上級兵士たちの回復に努めている司祭たちもそれは同様で、戦局は絶望の一途をたどっていた。


 つまり、バルレド将軍は間違いだらけだったということになる。


 その筆頭がダメージを与えることができない上級兵士たちを戦わせた上に、彼らが受けたダメージを司祭たちに回復させていたことだ。


 次点でクイーン アントとキング アントの両方を同時に相手にしたことが挙げられる。


 せめてキング アントに火力を集中していれば、勝算があったかもしれないが後の祭りだった。


 キング アントは前脚の爪を聖騎士に目掛けて振り下ろし、爪が聖騎士の体を切り裂く。


「ぐうわぁああああああああぁぁぁ!!」


 聖騎士は苦悶の表情で断末魔の絶叫を上げた。


「将軍、最早撤退すべきかと」


 聖騎士は恐ろしく真剣な表情でバルレド将軍に進言した。


「ぬぅ、最早ここまでか……」


 苦渋の表情を浮かべるバルレド将軍は撤退の号令を掛けた。


「殿は我々が務めます。将軍は先にお下がりください」


「分かった……」


 バルレド将軍は頷いて、聖騎士たちから離れて後方に下がった。


 だが、キング アントはバルレド将軍が一人になった瞬間を見逃さなかった。


 敵の頭を狙うのは人も魔物も同じだからだ。


 キング アントは上空に上昇してエクスプロージョンの魔法を唱え、光り輝く球体がバルレド将軍に直撃し、爆発に巻き込まれたバルレド将軍は吹き飛んだ

 

「がぁあああぁぁああああああああぁぁぁ!!」


 バルレド将軍の口から絶叫がほとばしる。


 上空から凄まじい速さで飛行したキング アントは凶悪な牙を剥き出しにしてバルレド将軍に襲い掛かり、バルレド将軍の首を食い千切った。


 バルレド将軍は胴体から大量の血を噴出させて絶命したのだった。


「そ、そんな馬鹿な……」


「しょ、将軍……」


 あまりの出来事に兵士たちは放心状態に陥った。


「よくも将軍をっ!!」


「この化け物がぁ!!」


 クイーン アントと戦闘を繰り広げていた聖騎士たちが激昂し、キング アントに突撃した。


「全軍撤退だ!!」


 キング アントと戦っていた聖騎士が声を張り上げ、兵士たちは一斉に後退した。


 バルレド将軍の亡骸を抱えた聖騎士は洞穴出入口まで後退してから振り返ると、キング アントを抑えていた聖騎士たちはすでに力尽きていた。


「ぐっ……」


 生き残った聖騎士たちは、散っていった聖騎士たちに祈りを捧げて部屋を後にしたのだった。


















 バルレド将軍、死す。


 冒険者たちや傭兵たちに衝撃が駆け抜けた。


「マジかよ!? 精鋭部隊だったんだろ?」


「なんでも、蟻の王にやられたみたいだぜ?」


「そんなに強えぇのか蟻の王は!?」 


「聖騎士たちも半数はやられたみたいだ」


「信じられん話だな。王とはいえ、たかが蟻だろ?」


「……分からんのは聖騎士が十人もいてなんでそうなったんだ?」


「そんなん分かるわけないだろ!?」


「それより、今後どうなるかだろ?」


「確かにな……聖騎士が半数になってるんだろ? 勝てるのか?」


 冒険者たちや傭兵たちは分かれて談笑しているのが普通だったが、今回ばかりはその垣根を越えて語り合っていた。


 だが、一番驚愕したのはベル大尉だった。


 ベル大尉は遊撃部隊を率いて洞穴内部に進軍を開始し、一キロメートルほど進んだところで聖騎士たちと鉢合わせたのだ。


 彼女は兵士たちにバルレド将軍の所在を尋ねると、案内されたのは聖騎士たちのところで、聖騎士たちは将軍の亡骸を運んでいた。


「そんな馬鹿な……」


 バルレド将軍の亡骸を見つめるベル大尉は呆然とした。


 聖騎士たちに事の顛末を聞いた彼女は自分がいれば勝てなくとも将軍を護りきれたはずだと自責の念に陥ったのだった。


 そして、ベル大尉からバルレド将軍が戦死したことを告げられた将軍たちは放心状態に陥ったのだ。


 将軍たちはバルレド将軍に哀悼の意を表したのだった。
















 




 現在、包囲陣に押し寄せていたアント種の群れは全て殲滅されていた。


 将軍たちはこの部屋をA2ポイントと名付けた。


 そして、二千名の援軍が到着したことにより、将軍たちはまだ調査していない四本の洞穴に各百名の偵察隊を進軍させた。


 残るはクイーン アントとキング アントの洞穴のみで将軍たちは軍議を開いており、そこにはギルドマスターのスラッグの姿もあった。

 

「多数の兵士を率いても高い防御力に遮られて意味がない。討伐するなら精鋭だけで行くべきだ」 


「現在、精鋭と言えるのは聖騎士五名と我ら将軍の七名しかおらん。これでは前回より少数ではないか?」


 ヒーリー将軍の言葉に、ドレドラ将軍は不満げな表情を浮かべる。


「精鋭が少ないなら冒険者と共闘すれば補える」


「だが、信じていいものか? 危なくなれば逃げ出すのではないか?」


 ドレドラ将軍は訝しげな眼差しをヒーリー将軍に向けた。


「冒険者にラーグという聖騎士がいる。ロード アントの一匹は彼らの隊で討伐されている。彼ならば大丈夫でしょう」


「ほう、聖騎士がいるのか」


 ドレドラ将軍の表情が一変した。


「おそらく、彼ならば快諾してくれるでしょう」


 スラッグは自信に満ちた眼差しをドレドラ将軍に向ける。


「だが、その冒険者にクイーン アントを任せたとして我らでキング アントを倒しきれるかが問題だ。奴はヒールの魔法を使うがどう対処する?」


 腕を組んだドレドラ将軍は難しそうな表情を浮かべている。


 すると、何かが転がるような轟音が聞こえてきたので、その場にいる全員が不審げな表情で音が聞こえる方向に顔を向けた。


「なっ!?」


 その場の誰もが自身の目を疑わずにはいられなかった。


 そこには巨大な蟻の首が二つあり、それはクイーン アントとキング アントの首だったのだ。


 悠然と歩くアウザーが槍で二つの首を叩いて転がして運んできたのだ。


「いくらだ?」


 アウザーは貫くような鋭い視線をスラッグに向ける。


「……に、二匹で一億で、ど、どうだ?」


 スラッグは恐怖に怯えたような表情でそう答えた。


「いいだろう」


 アウザーはスラッグの傍に控えていた奴隷秘書に、一億円を受け取って去っていった。


 こうして、クイーン アントとキング アントはアウザーに討ち取られたのだった。

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職業一覧


兵士→上級兵士 

弓兵→上級弓兵

魔法使い→魔法師→大魔導師→賢者

魔法使い→魔法師→暗黒魔法師

僧侶→司祭→聖職者→賢者

僧侶→司祭→暗黒司祭

僧侶→闇坊主



クイーン アント レベル1 全長約15メートル

HP 10000~

MP 500

攻撃力 300

守備力 400

素早さ 200

魔法 シールド ファテーグ

能力 統率 以心伝心 毒牙 毒霧 毒爪 豪食 HP回復 堅守



キング アント レベル1 全長約8メートル

HP 4000~

MP 1000

攻撃力 700

守備力 600

素早さ 400

魔法 エクスプロージョン ブリザー パラライズ ヒール

   マジックドレイン

能力 統率 以心伝心 毒牙 毒霧 毒爪 堅守 強酸 魔法軽減



クイーン アントの殻 100万円

キング アントの殻 200万円

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