164 タイガーの縄張り①
シルルン達はハーヴェンに先導されてタイガー種の縄張りを進んでいく。
「俺はすでに浅いエリアの縄張りは全て潰した。残りの縄張りはおそらく4つだ」
「えっ、そうなんだ」
シルルンは『魔物探知』で探ってみると真ん中のエリアに魔物の集団が3つ、深いエリアに魔物の集団が1つあることを探知した。
「たぶん、ハーヴェンの友達を殺した奴は深いエリアにいると思うんだよ」
「俺も十中八九そうだと思うが、まずは真ん中のエリアの縄張りを全て潰すつもりだ」
「まぁ、その辺は任せるよ」
シルルンは歩きながら「ハーヴェンと合流したから集合」とペット達に思念で伝えた。
最初に戻って来たのがラーネで、その次はブラックとプルが空から降りてきた。
だが、その後が続かなかった。
「そういえば、僕ちゃんの場所を伝えてないから分からないよね」
「フフッ……さすがにそれじゃ分からないわね。でも、あなたはよく分かったわね」
ラーネは視線をブラックに向ける。
「フハハ!! 速さが違うわ速さが!!」
「じゃあ、ブラックはシャイン達とフィン達とダイヤ達を呼んできてよ」
ブラックは頷いてプルと共に空へと消えていった。
「ラーネはリザ達を連れてきてね」
「フフッ……分かったわ」
ラーネは『瞬間移動』で掻き消えた。
「おそらく、この辺りから真ん中のエリアだろうな。作戦はどうする?」
ハーヴェンは歩みを止めてシルルンに視線を向けた。
「とりあえず、縄張りのボスを目指して正面から行こうよ。ボス以外の雑魚は僕ちゃん達が倒すから」
「ほう……」
「前衛はゼフド、ロシェール。ハイ タイガー以外を皆殺しにして進んでよ」
その言葉にゼフドとロシェールは頷いて不敵な笑みを浮かべた。
シルルン達は密林を進んでいくと開けた場所に出た。
そこには多数のタイガー種が佇んでおり、シルルン達と目が合ってしまう。
即座にゼフドとロシェールが抜刀してタイガー種の群れの中に突っ込んでいく。
「う~ん、さすがにこの数相手にゼフドとロシェールだけじゃ無理だろうね」
ハイ タイガーはいないが300匹ほどのタイガー種がいるからだ。
「じゃあ、僕ちゃん達ものり込もうか」
シルルンがシーラやカイに視線を向けてそう言った時に、ラーネが仲間達を連れて現れた。
「あはは、丁度いい時に戻ってきたよ。メイの指揮でタイガー種を殲滅」
仲間達は周囲を見渡してタイガー種の群れを視認すると、メイに顔を向けた。
「全員、突撃してください」
「あは、待ってました!!」
誰よりも早くアキはタイガー種の群れに突撃し、仲間達も次々に突撃していく。
「主を見ていると私はリーダーに向いていないとつくづく思い知る……見えている景色が違うんだろうな……」
「……」
ゼフドとロシェールは背中をつき合わせて、襲い掛かってくるタイガー種の群れを斬り殺していく。
「……だから私はこの局面を何も考えずに全力で戦うことができるんだ!!」
「ふっ、そうか……」
ゼフドはそう短く返し、ロシェールは完全に吹っ切れたような晴れ晴れとした表情を浮かべた。
「あは、お待たせっ!!」
満面の笑みを浮かべたアキが、鬱憤を晴らすかのように凄まじい速さでタイガー種の群れを斬り殺していき、そこに仲間達も加わって急速に数を減らしていく。
「突撃デチ!! 下位種を狙うデチ!!」
その言葉に反射的に反応したシロがプニの頭から跳躍してトントンの肩にのり、出撃していく。
「……ま、待つデシ!!」
一瞬、絶句したプニが大慌てで追いかけていく。
「ファイヤ」
レッサー タイガーに狙いを定めたトントンは駆けながらファイヤの魔法を唱え、激しい炎が一直線に伸びていく。
だが、レッサー タイガーは右に跳躍して躱し、大口をあけてトントンに襲い掛かる。
トントンは左手に持った盾を勢いよく突き出して、盾にぶち当たったレッサー タイガーは目を白黒させ、その隙を見逃さずに剣を振り下ろし、胴体を斬り裂いて鮮血が飛び散る。
胴体から血を滴らせるレッサー タイガーは後ろに跳躍してトントンを睨みつけた。
「いけるデチ!! 倒せるデチ!!」
プニニは大はしゃぎだが、その言葉に反射的に反応したシロが跳躍してレッサー タイガーの前に降り立った。
「――っ!?」
予想もしていなかったシロの行動にプニは時が止まったかのように凍りついた。
嘲笑うレッサー タイガーがシロに目掛けて前脚を振り下ろす。
「――テレポー」
プニが魔法を唱えるよりも早く、レッサー タイガーの前脚が振り下ろされるが、シロはヒョイというような感じで躱し、そのまま空中を移動してプニの頭に戻って来た。
プニはそれを呆然と見つめていた。
すると「シロは親愛度が30ぐらいしかないから、60になるまでは目を離したらダメだよ」と思念の声が頭に響いた。
「マ、マスター!?」
瞬間的にプニはシルルンに顔を向けた。
「……あ、ありがとデシ、マスター」
時間の経過と共に遅れていた感情が噴出し、プニは大粒の涙を流していた。
「やっぱり、マスターはすごいデシ……」
シルルンの前には、彼にしか視えないペット達のステータスが表示され、並んでいるのだ。
シロはシルルンのペットではないが、当然、ステータスは表示されていて一番弱いので監視対象になっており、その行動からペット達を1匹も落とすつもりがないことが窺えた。
素早さを大きく上回るレッサー タイガーに翻弄されながらもトントンは、着実にダメージを積み重ね、動きが鈍ったところに『斬撃衝』を放ち、風の刃が首を切り離し、レッサー タイガーは胴体から大量の血を噴出させて力尽きた。
その瞬間、トントンは真っ白に輝く光に包まれ、装備品がガシャガシャと地面に落ち、プニニも落下した。
「トントンが進化したデチ!!」
プニニはトントンを見上げて瞳を輝かせた。
トントンは骨の色が白から青に変化しており、腕が合計6本になっていた。
「プニニ様、こちらへ」
トントンは掌を差し出し、プニニが掌にのると肩にのせた。
「えぇ~~っ!? マジで!? ボ~っと突っ立ってたトントンが自発的に行動して、しかも喋ってるよ!!」
(ていうか、トントンは進化できないと結論付けたのに進化できるのかよ!?)
「トントンはボーンアシュラに進化したデシ!!」
「左様、さすがはプニニ様のお父上、我のステータスを覗かれたようですな」
あまりの変わりようにシルルンとプニは面食らったような表情を浮かべており、トントンは地面に散乱した装備品を身に着けていく。
「おぉ!? 強ぇ!! レベル1なのにスケルトンプリンセスよりもステータスが高いっ!!」
シルルンは『魔物解析』でトントンを視て信じられないといったような表情を浮かべている。
「左様、さすがはお父上のマスターですな……ボーンとは修羅に至った者のこと」
「ていうか、ボーンは骨だろ」
シルルンは思わずつっこんだが、言って満足したのかトントンは聞いておらず、装備品を身につけたが鎧は着けていなくて骨が剥き出しで、何か言いたそうにチラチラとシルルンに視線を向けている。
「パパのマスター!! トントンは腕が増えたデチ!! 鎧が着れないから新しいのが欲しいデチ!!」
トントンがいつまで待っても鎧を着ないので、さすがに気づいたプニニが訴えた。
「……ていうか、6本腕用の鎧なんかさすがに持ってないよ」
「そうデチか……」
「無念……」
プニニとトントンは酷く落ち込んだ。
「まぁ、要は腕が出せればいいんだよ」
そんな2匹を見て苦笑するシルルンは地面に置かれた純白の鎧を手に取って、肩当を外して分解し、腕を出す部分を力で強引に広げて、トントンに渡した。
「おおっ!? 身につけることができましたぞ!! さすがはお父上のマスターですな」
「ありがとデチ!!」
プニニとトントンは大喜びしている。
「あはは、強引に広げただけだから拠点に戻ればガダンに頼んで調整してもらえばいいよ」
「……でも4本の腕は剥き出しデシ」
プニがさらに問題を提起した。
プニニとトントンは一瞬、はっとしたが、キラキラした瞳でシルルンを見つめた。
「まぁ、鎧を分解すれば腕のパーツは取れるけど色は揃えられないよ」
「それでいいデチ!! あと武器も4本欲しいデチ!!」
「分かったよ」
シルルンは魔法の袋から鉄の剣を4本とボロイ皮の鎧を2つ取り出して、腕の部分を引き千切ってトントンの前に置いた。
「お父上のマスター……ご冗談はおやめ下さい」
シルルンの顔に接触すれすれまで顔を近づけたトントンが真顔で言った。
「……ぷっ、やっぱりあの時、怒ってたんだね」
シルルンは笑いを堪えながら思わずそう呟いた。
「トントンは強くなったデチ!! もっといいのが欲しいデチ!!」
冗談が分からないプニニはぷんすか怒って抗議した。
「あはは、素材はミスリルで揃えるけど武器は剣でいいのかい?」
「……槍を4本でお願いします」
「ふぅん、槍ね……まぁ、うちには使い手がほとんどいないから丁度いいよ」
シルルンは魔法の袋から手当たり次第に武具を取り出して、ミスリルランス4本とミスリルアーマーを2つを発見してトントンに渡した。
トントンは鎧から腕のパーツを外して自身の腕に着けていき、4本の槍を手に持つとプニニは肩から跳び下りた。
「強そうデチ!!」
プニニは嬉しそうに瞳を輝かせ、跳躍してトントンの肩にのった。
「どうやら、終わったようだね」
シルルンは『魔物探知』により表示されたウィンドウから最後の魔物が消えたのを視認して、戦場に目を向けた。
300匹ほどいたタイガー種を仲間達が容易く殲滅できたのは、攻撃面ではリザとバーン、防御面ではアミラによりもたらさせた結果と言えるだろう。
リザとバーンはほぼ一撃でタイガー種を仕留めており、アミラはどれだけ攻撃されても無傷だった。
しかし、要所要所で敵を分断していたメイの指揮と攻撃がなければ苦戦を強いられたのは言うまでもない。
「じゃあ、進もうか。ルートは真っ直ぐだよ」
シルルンは仲間達に前衛を任せて歩き始める。
生い茂る木々の間を進んでいくとタイガー種の群れに襲われるが、仲間達は難なく倒して進んでいく。
「ハーヴェンはこのエリアに上位種は10匹以上いるって言ってたけど、10じゃなくて100の間違いじゃないの?」
「……それについては返す言葉もない。だが、俺も違和感を感じている」
「だよねぇ、今日だけで確か7匹ぐらい倒してるからね」
「ほう……だが、それはメスの上位種じゃないのか? 俺達と違って奴らは見分けがつき難いからな」
「あっ!? そうかもしれないよ!!」
「だが、俺達のルールではメスは上位種になっても縄張りに残れるんだがな……」
「へぇ、そうなんだ」
開けた場所に出たシルルンは辺りを見回してみると、仲間達は足を止めて待っていた。
「シルルン様、あそこにいるのはおそらく縄張りのボスだと思います」
シルルンは頷いて、メイが示す場所を見てみると奥の方にある岩の上に魔物の群れがいた。
「くくくっ、さて、どうする。タイミング的に一番厄介な時に来たようだな」
魔物の群れは全てがハイ タイガーで、数は6匹だ。一番大きい個体に寄り添うように他の個体が身を預けている。
「えっ? 何が?」
「……上位種6匹なんだぞ?」
ハーヴェンは訝しげな目をシルルンに向けた。
「あはは、何だそんなことか。ハーヴェンは気にしないでボスと話したらいいよ」
「なっ!?」
ハーヴェンは面食らったような顔をした。
「ほら、行くよ」
まるで緊張感のないシルルンがボスに向かって歩き出す。
「おい、ちょっと待て!! チビ達は連れていかないのか?」
ドーラとメーアはカイの背の上で眠っており、マーニャとペーガはシーラの背に乗って楽しそうに遊んでいる。
「問題ないよ」
振り返ったシルルンはそう言うと、再び歩き出した。
「お、おい、早まるなっ!! 俺とお前で上位種6匹は無理だろ……狼と虫はどうしたんだ?」
「ハイ タイガー6匹ぐらいなら僕ちゃんだけで倒せるよ。シャインとビークスは来てるけどまだ追いついてないんだよね」
「な、なんだと……?」
(この短期間の内にいったい何が起きたんだ……)
ハーディンの顔が驚愕に染まる。
遠ざかっていくシルルンの背中をハーディンは半ばやけくそな気持ちで追いかけた。
「何だお前らは? ……それにしても珍しい組み合わせだな」
ハイ タイガーは怪訝な表情を浮かべながら魔族語で言った。
「……お前は俺達の縄張りに攻め入ったことがあるか?」
「ある訳ないだろう。縄張りをもってる俺がなんでそんなことをする必要がある」
ハイ タイガーは呆れたような表情を浮かべており、他の上位種達も鼻で笑うような素振りを見せた。
「……どうやらこいつではないようだ」
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ、ボ……」
唐突に空から2匹の魔物が飛来し、シルルンの声を掻き消した。
「なっ!? りゅ、龍族だと!?」
余裕の笑みを浮かべていたハイ タイガーの顔が一変する。
「どうやら、いいタイミングだったようだな」
「あはは、倒していいよ」
驚愕していたハーヴェンはその会話を聞いて、さらに驚愕する。
(こ、こいつ、龍族までもペットにしていたのか……)
ローズはハイ タイガーの群れに一瞬で肉薄して頭を食い千切り、バリバリと食べている。
「お腹が減っていたのよね……茸は気持ち悪くて食べれなかったから」
2匹の個体が胴体から大量の血を噴出して痙攣して倒れた。
「は、速いっ!?」
反応できなかったハイ タイガー達が一瞬、遅れて後方に跳び退いた。
「――出遅れたようだ!!」
「残りは我らが頂く!!」
凄まじい速さでシルルンの横を駆け抜けたシャインとビークスがハイ タイガー達に襲い掛かる。
「ちょ、ちょっと待て!!」
ルアンも慌てて突っ込もうとするが、すでにシャインが2匹の首を食い千切っており、ビークスが1匹の胴体を大顎で切断していた。
残ったボスもシャイン、ビークス、ローズに一斉攻撃されて何もできずに肉片に変わり、ガツガツと食われていく。
「お、おい……」
ルアンは愕然としながらそれを見つめており、シャイン達はハイ タイガーの死体を次々に食い散らかしていく。
こうして、タイガー種の縄張りは残り3つとなった。
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トントン ボーンアシュラ レベル1 全長約2メートル
HP 4000
MP 1900
攻撃力 1080+ホワイトミスリルソード ミスリルランス×4
守備力 900+ホワイトミスリルアーマー ホワイトミスリルヘルム ホワイトミスリルシールド 青いマント
素早さ 900+ホワイトミスリルブーツ
魔法 シールド マジックシールド ヒール キュア ファイヤ アンチマジック エクスプロージョン カース デス
能力 剛力 鉄壁 統率 回避 斬撃衝 HP回復 MP回復 魔法耐性 威圧 駿足 能力耐性 速撃




