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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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163/302

163 防壁前でのレベル上げ⑤


 膨れ上がったファンガスタイガー種の総数は10万を超えているが、ハイ ファンガスタイガーを基点に円形に広がっているので実質的にはその4分の1ほどの数がシルルン達に押し寄せていた。


 上空に浮かぶフィン達はシルルンの言いつけを守っており、魔法による遠距離攻撃を仕掛けて確実にファンガスタイガー種を倒している。


 ファンガスタイガー種の群れは状態異常の息を吐いて反撃するが、射程距離が3メールほどしかなく上空にいるフィン達には届かず、一方的に数を減らしており、その近くにはダイヤを抱えたザラも上空にいた。


「『破壊光線』!!」


「『石槍』」


 ダイヤの体からまばゆい閃光が放たれて、ファンガスタイガー種の群れが次々と消滅していき、ザラは無数の尖った石を放ち、ファンガスタイガー種の群れは体を貫かれて奇声を上げて倒れていく。


 倒す術がないと理解したファンガスタイガー種の群れは、この場から逃げ出そうとするが有利だった数が災いして混乱状態に陥る。


「もっとだ!! もっと殺すぞザラ!!」


「分かりました」


 ダイヤとザラは容赦なく攻撃し、ファンガスタイガー種の数は急速に減っていく。


 地上で戦うブラックは戦場を縦横無尽に駆けており、その動きを捉えることはファンガスタイガー種には不可能だった。


「……倒しても倒してもいっぱいいるデス」


 プルは口から『火のブレス』を吐きながら、スゲェ剣を振り回している。


 激しい炎に身を焼かれたファンガスタイガー種は狂ったように暴れており、その炎が仲間達に燃え移って辺り一帯は火の海だ。


「フハハッ!! 増えろ増えろっ!! アース!!」


 ブラックはアースの魔法を唱えて、ファンガスタイガー種を倒しているが、その死体は『胞子』の苗床になっている。


 プルは真剣にファンガスタイガー種を倒しているが、ブラックは遊んでいるのだった。

 

 一方、生え茂る木々を枯らしながら進むファンガスタイガー種の群れをゼフドとロシェールが迎撃する。


「はわわわわっ!? 待ってくださいよシルルンさん!!」


 シルルンが振り返るとシーラとカイが追いかけてきていた。


「シーラ達は待機してたほうがいいんじゃない?」


「でも、不安で……」 


「じゃあ、ゼフドとロシェールの取りこぼしを倒すといいよ」


 ゼフドとロシェールは凄まじい速さでファンガスタイガー種の群れを斬り殺しているが、全てを倒すことは不可能で横を通り過ぎていく。


 シルルンは「戻ってきて」と思念でプニに伝えた。


 プニはすぐにシルルンの前にテレポートの魔法で現れた。


「どうしたデシかマスター?」


「うん、プニがリーダーになって、シーラとカイのレベルを上げてほしいんだよ。ラーネは好きに暴れてきていいよ」


「分かったデシ!!」


「フフッ……分かったわ」


 ラーネは抱きかかえていたシロをプニの頭の上に残して、獰猛な笑みを浮かべて『瞬間移動』で掻き消え、プニはシーラとカイの前へとふわふわと移動した。


「シーラとカイは攻撃手段が物理しかないデシから、とにかく攻撃するデシ」


 シーラとカイは頷いて、ゼフト達の横を通り抜けていくファンガスタイガー種の群れに突撃した。


「危ないから口の中に入るデシ」


 プニは『触手』を伸ばして頭の上にいるシロを掴んで口の中にいれ、『魔物解析』で表示したシーラとカイのステータスを視ながら魔法を唱えた。


「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」

「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」


 プニは範囲魔法でパラライズの魔法を唱え、4発の魔法がファンガスタイガー種の動きを止める。


「動きが止まった!?」


 魔法の範囲内にいた30匹ほどのファンガスタイガー種の動きが止まったが、シーラとカイもビックリして動きを止めた。


 シロはプニの口の中から出てきて、頭の上に移動し、キョロキョロと辺りを見回している。


 親愛度の低いペットはマスターの命令をなかなか聞かないのだ。


「援護はするデシから攻撃するデシ!!」


 プニはそう言いながら頭の上にいるシロを『触手』で掴んで口の中に入れた。


 レッサー ファンガスタイガーはシールドの魔法を所持しており、ヒールの魔法と『再生』も所持しているので、圧倒的な攻撃力がなければ持久戦になるのだ。


 だが、パラライズの魔法でシールドの魔法とヒールの魔法を唱えられないので攻撃力の高いシーラとカイは動けないレッサー ファンガスタイガーを大顎と鋏でバラバラにしていく。


 しかし、パラライズの魔法で30匹ほどが動けなくなっているが、ファンガスタイガー種の群れはゼフド達の横を通り抜け、どんどん押し寄せてシーラとカイは囲まれる。


「数が多すぎるデシ!!」


 プニは判断に迷い、再びシロが口の中から出てきて頭の上に乗って佇んでいる。


 囲まれたシーラとカイは状態異常の息を大量に浴びて行動不能に陥った。


「猛毒、麻痺、眠り、暗闇、幻覚デシか……」


 『魔物解析』で表示しているシーラとカイの体力が猛毒により、秒単位で大幅に減っていく。


 プニは『触手』でシロを掴んで10メートルほど上昇する。


「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」

「キュアボールデシ!! キュアボールデシ!!」


 プニは範囲魔法でパラライズの魔法を唱えて、ファンガスタイガー種とシーラ、カイもろとも動けなくし、キュアボールの魔法を唱えてエメラルドのように光り輝く玉がシーラとカイに吸い込まれて、状態異常が回復する。


「パラライズデシ!! パラライズデシ!!」

「ヒールボールデシ!! ヒールボールデシ!!」


 プニは再び範囲魔法でパラライズの魔法を唱えて、押し寄せてくるファンガスタイガー種の動きを止めてから、ヒールボールの魔法を唱えて金色に輝く玉がシーラとカイに吸い込まれて体力が全快する。


「……危なかったデシ」


 プニは『触手』を口の中につっこんで、トマトを取り出してシロの前にもってくる。


 シロはムシャムシャと夢中でトマトを食べており、プニは再びシロを口の中に入れた。


「今デチ!! 突撃デチ!!」


 待機組にいたはずのプニニとトントンが動けないファンガスタイガー種の群れに突撃していく。


「……」


 プニは疲れたような顔で、トントンの背中を見つめるのだった。


 ゼフト達やプニ達の横を通り抜けたファンガスタイガー種の群れは待機組に襲い掛かる。


「アキ以外は突撃して下さい」


 メイは言うと同時に『絶界』を発動し、漆黒の球体に包まれた。


 仲間達は散開して突撃するが、アキは漆黒の球体を見つめて面食らった表情を浮かべている。


「な、なんなのそれ?」


「『絶界』という能力です。効果はあらゆる攻撃を防いでくれます。ですのでアキは私に構わず、キュアの魔法で皆さんのサポートに徹して下さい」


「ちぇ、サポートか……」


 アキは不満そうな顔をしている。


「我慢してください。この中で状態異常を回復できるのはアキしかいないのですから」


「分かってるわよ、言ってみただけ……」


 アキは踵を返してゆっくりと歩きながら仲間達の動向を探るが、背筋が凍るような感覚を覚えて反射的に振り返る。


 すると、凍てつく冷気を帯びた巨大な氷の刃が凄まじい速さで通り過ぎていき、ファンガスタイガー種の群れに直撃し、100匹ほどが切り裂かれながら周辺が一瞬で凍りついた。


「……メイもなかなかやるじゃない」


 アキは満足そうな笑みを浮かべて歩き出し、散開した仲間達は危なげなくファンガスタイガー種を倒していく。


 『瞬間移動』したラーネはファンガスタイガー種の群れの真っ只中にその身を投じた。


 紅蓮の剣を抜き放ったラーネは身体を回転させながら炎を放つ。


 灼熱の炎に身体を焼かれたファンガスタイガー種の群れは、一瞬で炭へと変わり、周辺は火の海になって数千匹が即死した。


「フフッ……フフフッ……もっとよもっとっ!!」


 恍惚な表情を浮かべたラーネはさらに『瞬間移動』して、別の地点のファンガスタイガー種の群れの真っ只中に出現し、紅蓮の剣から炎を放って焼き殺す。


 ラーネは蟻の群れを踏み潰すかのようにファンガスタイガー種を蹂躙するのだった。


「う~ん、まだ3万近くいるね……」


 シルルンは『魔物探知』でファンガスタイガー種の数を視ながら呟いた。


 押し寄せてきたファンガスタイガー種の数はおよそ3万で、それを正面から迎撃したのがシャイン達だ。


 これにより、ファンガスタイガー種は左右に割れ、右側をダイヤ達やフィン達が攻撃しており、左側をゼフド達とプニ達が攻撃しているのだ。


 左右を突破したファンガスタイガー種を待機組が倒しており、プル達は主に右側で暴れ回っていた。


 最大戦力であるラーネは凄まじい数を倒しているが、密林のほうに広がったファンガスタイガー種を攻撃しているので、こちらの数は減っていないのだ。


「たぶん、1万くらいは倒してると思うけど、『胞子』で増えてるんだろうね」


 シルルンはゼフドとロシェールに視線を向けると、両者は肩で息をしていた。


「下がって休憩しなよ」


 シルルンはゼフド達の方に歩きながら声を掛けた。


「俺はまだやれます!!」


 ゼフドは荒い息を吐きながらシルルンに顔を向け、戦うことを止めずに頑なだった。


「いや、そうだろうけど、これはペット達の経験値稼ぎなんだからゼフド達が無理する必要はないし、気楽にやればいいんだよ」


「えっ!?」


 ゼフドは面食らったような表情を浮かべた。


「あはははっ!! この状況でまだペット達の経験値稼ぎと言い切るのは清清しい。さすが私の主!!」


 ロシェールはすでに戦うのを止めて歩き出しており、気がそがれたゼフドも踵を返して戦うのを止めた。


 2人が下がったことにより、一斉にファンガスタイガー種がシルルンに目掛けて襲い掛かる。


 シルルンは薙ぎ払う様に『念力』を振るうと襲い掛かった全てのファンガスタイガー種が砕け散った。


 いきなり爆発したように見えたファンガスタイガー種の群れは驚き戸惑って後ずさり、ゼフドとロシェールは目を大きく見張って息を呑んだ。


「普通に倒しても意味ないし、どうやって倒そうかな……」


 ファンガスタイガー種の群れはシルルンの様子を窺いながらじりじりと近づいていく。


「あっ、そうだ!! 『猛毒』を試してみよう」


 シルルンは身体から猛毒を大量に生成して毒液が出現し、近づいてくるファンガスタイガー種の群れに『念力』で撒き散らした。


「ピギヤァアアアアァアアァアアアアアアアァァァァ!!」


 猛毒を浴びたファンガスタイガー種の群れは耳をつんざくような奇声を上げてのたうち回り、痙攣して動かなくなった。


「……さすがメデューサの猛毒だね」


 シルルンは『魔物解析』で猛毒に触れた全ての個体を視ており、息絶える時間と毒液の量に注目してニヤリと笑った。


 動かなくなった50匹ほどの死体にファンガスタイガー種の群れは一斉に『胞子』を飛ばすが、着床してもすぐに枯れ落ちた。


 シルルンはどんどん猛毒を生成して『念力』で撒き散らし、襲い掛かってくるファンガスタイガー種の群れは奇声を上げてのたうち回って死んでいく。


「う~ん……要は1滴当てればいいんだからもっと効率のいい当て方はないかな……」


 シルルンは大量に猛毒を生成し、口に含んだ水をブーッと霧のように吐き出すイメージで『念力』を操作して毒液を飛ばす。


 接近するファンガスタイガー種の群れは、為す術なくバタバタと倒れていき、シルルンは試行錯誤の結果、『念力』による擬似毒霧を完成させる。


 しかも、シルルンがイメージしたのは巨人の口で、『念力』により作り出した発射口は5メートルを超えているのだ。


 これにより、接近するファンガスタイガー種の群れ5000匹ほどが何もできずに即死した。


 周辺には激痛に顔を歪めて横たわるファンガスタイガー種の死体が散乱し、地面にはいたるところに猛毒の水溜りができており、この地獄絵図を目の当たりにしたゼフドとロシェールは目を見張って絶句し、身じろぎもしない。


「あはは、『猛毒』と『念力』はなかなかよい組み合わせだね」


 だが、ファンガスタイガー種は死体を踏み越え、『胞子』を撒き散らしながら押し寄せてくる。


 シルルンは『念力』で地面の砂を大量に浮かび上がらせて、その砂の一部を弾にして放った。


 猛毒を含んだ無数の砂がファンガスタイガー種の群れを貫き、一粒でも当たればファンガスタイガー種は奇声を上げてのたうち回って死んでいき、シルルンは夢中になって砂を放ちまくる。


「マスター?」


 背後から声を掛けられ我に返ったシルルンが振り向くと、そこにはプニがふわふわと浮いていた。


「敵が来なくなったデシ」


 砂を飛ばすことに夢中になったシルルンが、押し寄せてくるファンガスタイガー種の群れを1匹も通さなかったからだ。


 シルルンの前には万を超えるファンガスタイガー種の死体が散乱しており、これにより左側の進軍は止まった。


「あはは、倒しすぎちゃったみたいだね。じゃあ、中央に進んでみようか」


「デシデシ!!」


 シルルンが歩き出し、その後をプニ、シーラ、カイ、トントンが追いかける。


 起きたことがいまだに信じられないゼフドとロシェールは無表情で歩き出したのだった。


 中央ではシャイン達が戦いを繰り広げており、周辺は火の海だ。


「はわわわわっ、火事ですよ火事!!」


 シャイン達は燃え上がる炎の中を構うことなく移動し、ファンガスタイガー種の群れを攻撃している。


「あはは、いい勝負だね」


「何がですか?」


「増える早さと焼け死ぬ早さだよ」


「えっ!? こんな状況で増えてるんですか!?」


「うん、シャイン達が攻撃しなければ増えるほうが早いと思うよ」


「火を消すデシか?」


「僕ちゃん達は中央にいるハイ ファンガスタイガーを倒しにいこうか」


「デシデシ!!」


 シルルン達は火の海を迂回して進み始めるが、炎の中からファンガスタイガー種の群れが躍り出てきて、地面を転がり火を消そうと必死だ。


「あはは、シーラ、カイ、トントンで攻撃」


 シーラ達は一斉に攻撃を仕掛けてファンガスタイガー種の群れは瞬殺され、シルルン達は再び進みだす。


 火の海を通り過ぎ、中央に近づいていくと魔物同士が戦いを繰り広げていた。


「えっ!? あれはハーヴェンとマーニャ達だね……何か変な草の魔物もいるけど」


「あれはプラントタイガーデシ!!」


 10匹ほどいる巨大なプラントタイガーが無数のつるを繰り出して、ファンガスタイガー種の群れを攻撃しており、ファンガスタイガー種は防戦一方だった。


「なるほどね。プラントタイガーが天敵だったんだ」


 数千匹ほどいたファンガスタイガー種の群れは急速に数を減らし、残ったハイ ファンガスタイガーも何もできずにつるに養分を吸われてペラペラになり、二枚貝のような葉身にパクッと食べられた。


「あはは、先に倒されちゃったね」


 シルルン達はハーヴェン達の元に歩き出す。


「まーっ!!」


「プリュウ!!」


「メェ~!!」


「ペぺ!!」


 シルルンに気づいたマーニャ達は一斉に駆け出して、シルルンの胸に飛び込んだ。


 シルルンは優しくマーニャ達の頭を撫でていく。


 マーニャ達はとても嬉しそうだ。


「シルルンか……なぜお前達がここにいる?」


「茸を倒したら急激に増えちゃってね。その後始末だよ」


「原因はお前かっ!!」


「あはは、茸を倒しただけでこんなになるなんて思わないでしょ?」


「まぁな……だが、拠点に行く手間が省けた。準備はいいか?」


 ハーヴェンは探るような眼差しをシルルンに向ける。


「うん、構わないよ。でも茸はどうするの?」


「茸はこいつらが根絶やしにするだろう」


 10匹ほどいるプラントタイガーの半数は動いていないが、残り半数は四散してどこかに行った。


 こうして、シルルン達はハーヴェンと合流したのだった。

面白いと思った方はモチベーションが上がるので、ブックマークや評価をよろしくお願いします。


プラントタイガー レベル30 全長約6メートル

HP 3000

MP 1300

攻撃力550

守備力400

素早さ350

魔法 ヒール ウインド

能力 胞子吸収 茸吸収 再生 MP回復 スタミナ回復 茸族特効


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