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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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162/302

162 ハーヴェンの動向②


「な、なんだこの状況は……!?」


 視界全てがファンガスタイガー種で埋め尽くされた光景を目の当たりにして、ハーヴェンは驚きのあまりに絶句する。


「まっ?」


「ペペッ?」


 ハーヴェンの頭の上に乗っているマーニャとペーガは不思議そうな顔をして首を傾げた。


 ドーラとメーアはハーヴェンの背中から跳び降りて、ファンガスタイガー種の群れの中に突撃して食いつき、生きたままガツガツと食い始める。


 ファンガスタイガー種の群れは一斉にドーラとメーアに襲い掛かるが、その攻撃を余裕で躱しながらドーラとメーアはムシャムシャとファンガスタイガー種たちを食べていく。


「お、おい、そんなものを食って大丈夫なのか……」


 ハーヴェンは呆れたような表情を浮かべている。


「……お前達は食わないのか?」


「まーっ!!」


「ペペッ!!」


 マーニャとペーガはハーヴェンの頭の上から動く気配がなかった。


「……どうやら、食わんようだな」


 マーニャとペーガは雑食で何でも食えるが、ミルクと果物を好むのだ。


 ドーラとメーアは次々に襲い掛かるファンガスタイガー種の群れに対して、噛みつき攻撃だけで迎撃し、食い散らかしている。


 辺りには身体の一部を食われて絶命したファンガスタイガー種の死体が散乱しており、ファンガスタイガー種はその死体に目掛けて『胞子』を放って新たなファンガスタイガー種が誕生する。


「なるほどな……こいつらはそうやって増えたのか……」


 (だが、それが分かったところでこの数ではどうすることもできん……さて、どうしたものか……)


 ハーヴェンが逡巡していると目の前をゆっくりと通過する魔物が視界に入り、ハーヴェンは思考を中断する。


 つる草のような魔物がゆっくりとファンガスタイガー種に近づいているのだ。


 柄は当然、虎柄でつるを手足のように動かしてゆっくりと進んでいる。


 生えている葉の中には、葉が二枚貝のように重なって生えているものもあり、葉の縁には凶悪そうな牙が多数並んでいた。


 まるでつる草と食虫植物が合わさったような魔物だった。


「見たこともない魔物だな……」


 ハーヴェンの視線はつる草の魔物を追いかける。


 ファンガスタイガー種の群れに近づいたつる草の魔物は、素早くつるを伸ばしてファンガスタイガー種の身体に突き刺した。


 するとファンガスタイガー種の身体がみるみる内に萎んで紙のようにペラペラになった。


 つる草の魔物がつるを引き抜くと二枚貝のような葉身がペラペラになったファンガスタイガー種をパクッと食べた。


 多数のファンガスタイガー種がドーラとメーアに襲い掛かる中、異変に気づいた一部のファンガスタイガー種がつる草の魔物に標的を変えて襲い掛かる。


 だが、無数のつるに貫かれ養分を吸収されてペラペラになったファンガスタイガー種達は、二枚貝のような葉身にパクパクと食べられていく。


「!?」


 この光景を目の当たりにしたファンガスタイガー種の顔が驚愕に染まる。


 つる草の魔物はお構いなしにファンガスタイガー種に近づき、無数のつるでファンガスタイガー種を貫いて養分を吸収していく。


 怒りに顔を歪めたファンガスタイガー種の群れが一斉に『胞子』を飛ばし、無数の『胞子』がつる草の魔物に直撃する。


 しかし、いくら待ってもつる草の魔物に直撃した『胞子』が発芽する気配はなかった。


 逆につる草の魔物が一回り大きくなり、無数のつるにファンガスタイガー種の群れは貫ぬかれて養分を吸収されて急速に数を減らしていく。


「くくくっ、なるほどな……あの草が茸の天敵という訳か……」


 ハーヴェンはファンガスタイガー種の群れと戦いを繰り広げるドーラとメーアを一瞥し、自身はつる草の魔物に接近する。


「やはり、俺達には見向きもしないか」


 つる草の魔物はハーヴェンが傍にいても気にすることなく無数のつるでファンガスタイガー種を貫いて養分を吸収し、数が少なかった二枚貝のような葉身もいつのまにか増えており、近づくファンガスタイガー種に襲い掛かり、食いついて肉を引き千切りながらパクパクと食らっている。


 ハーヴェンは周辺を見渡してため息を吐いた。


「迂回するのは面倒だな……」


 ファンガスタイガー種は生い茂る木々や草花、そして土からも養分を吸収して大地を砂に変えながら爆発的に増えており、戦かわずに進むには増える速度を計算しながら遠回りしなければならなかった。


「……ついて行ってみるか」


 (こいつは迷うことなく何かを目指して一直線に進んでいるように思える……だが、何よりも驚きなのは驚異的な成長速度だ)


 ハーヴェンがつる草の魔物を見たときは1メートルほどの大きさだったが、今では2メートルを超えているのだ。


「ま~っ!!」


「ペペペッ!!」


 マーニャとペーガはじーっとつる草の魔物を見つめていたが、一転してつる草の魔物に跳び移ってつるや二枚貝のような葉身を前脚でつついている。


 それでも攻撃されることはなかった。


「おい、チビ達、こいつについていくぞ」


 ハーヴェンはつる草の魔物と共に移動し始め、ドーラとメーアはファンガスタイガー種を食い殺しながらそれを追いかけていく。


 砂地に変わり果てた大地をハーヴェン達が進んでいくと、多数の魔物達の群れがあちこちでファンガスタイガー種の群れと戦いを繰り広げていた。


 多数の魔物達の群れはファンガスタイガー種の数と『胞子』により、次々と倒され養分になっていく。


 だが、つる草の魔物はそんなこととは関係なく、無数のつるでファンガスタイガー種を攻撃して養分を吸収し、無敵だった。


「……成長速度が尋常ではないと思ったが、こいつはどこまで大きくなるんだ?」


 ハーヴェンはつる草の魔物を見上げて訝しげな表情を浮かべている。


 すでにつる草の魔物は6メートルを超えているのだ。


 一方、ドーラとメーアは追従しながらファンガスタイガー種と戦い続けており、マーニャとペーガはまだつる草の魔物に乗っていて、どんどん大きくなるので楽しそうだ。


 つる草の魔物は襲い掛かってくるファンガスタイガー種を皆殺しにしながら突き進んでいるが、ハーヴェンの歩みが止まる。


「……いきなり、どうしたんだ? なぜ、動かない?」


 つる草の魔物を追従していたハーヴェンは怪訝な表情を浮かべている。


 つる草の魔物は無数のつるや二枚貝のような葉身でファンガスタイガー種を攻撃しているが動く気配がない。


「ちぃ、俺としたことが見誤ったのか?」


 ハーヴェンは振り返り、進んできた道のりを見つめて苛立ちを露にした。


「……やれやれ、進むにしても戻るにしてもこの数だ……骨が折れそうだな……」


 (いまさら戻る気にもなれん……前をチビ達に攻撃させて後ろは俺が対処するか? いや、チビ達を俺の背に乗せて一気に突き抜けたほうがマシか……)


 ハーヴェンは後者でいくことを即断し、マーニャ達を呼び戻そうとした時、つる草の魔物の一際大きい二枚貝のような葉身が何かを飛ばした。


 その何かはつるに捕えられたレッサー ファンガスタイガーに直撃して身体の内部に入り込み、レッサー ファンガスタイガーはもがき苦しんで奇声を上げた。


 瞬く間にレッサー ファンガスタイガーは紙のようにペラペラになり、その中から10cmほどのつる草の魔物が10匹ほど出てきて、親であるつる草の魔物のつるにしがみついた。


「ほう……どうやら俺が動く必要はなさそうだな」


 つる草の魔物はつるを動かし、自身の身体に子供達を移動させる。


 それを見ていたマーニャとペーガは瞳を輝かせて、つるや葉の上を跳び移りながら一目散に子供達がいる場所に移動した。


 マーニャとペーガは子供達を前脚でつんつんつついているが、子供達はつる草の魔物がつるで捕獲したレッサー ファンガスタイガーにつるを突き刺して養分を吸収するのに夢中だ。


「しばらく休憩になりそうだな……」


 ハーヴェンはつる草の魔物を見上げて一瞥してから、座り込んで目を閉じた。


 時間にして5分ほどが経過し、ハーヴェンが目を開けると、成長した子供達がファンガスタイガー種と戦いを繰り広げており、それを後方からマーニャとペーガが座って見つめている。


「想定よりもかなり早い」


 10cmほどだった子供達は50cmほどまで成長しており、密集してゆっくり進みだした。


「なっ!?」


 ハーヴェンは思わず、つる草の魔物に視線を向けると、すでに枯れ果てていた。


「……お前らはそうやって命を繋ぐのか……」


 そう呟いたハーヴェンは身を翻して歩き出した。


 密集した子供達は強く、襲い掛かるファンガスタイガー種は為す術なく餌になるだけで、1メートルほどまで成長すると密集を解き、広がって戦いだした。


 こうなると周辺のファンガスタイガー種は全て狩られてしまい、追従するドーラとメーアにファンガスタイガー種がまわってこなくなった。


「くくくっ、凄まじい火力だ……」


 マーニャとペーガは、再びハーヴェンの頭の上に座っており、ドーラはハーヴェンの背中に乗った。


「メェェエエエエエエエエエエェェェェッ!!」


 しかし、メーアは子供達に対抗して『伸縮自在』の能力で20メートルまで巨大化してファンガスタイガー種に襲い掛かった。


「な、なんだと!?」


 ハーヴェンは雷に打たれたように顔色を変える。


 大口を開けたメーアは一噛みでファンガスタイガー種を5匹ほど殺し、凄まじい速さで移動しながら食い殺していく。


「どうなってやがる……」


 ハーヴェンは振り返り、背に乗るドーラに視線を向けると興味がないのか眠りについていた。


 子供達とメーアは競うようにファンガスタイガー種を皆殺しにしていく。子供達は5メートルを超えたところで3匹が右に進路を変え、さらに3匹が左に、残り4匹がそのまま直進する。


 そして、6メートル超えたところで4匹の子供達は動かなくなった。


「1匹が10匹の子供を産むとして次は40匹か……最早、茸の全滅は時間の問題だな」


 不敵な笑みを浮かべるハーヴェンは座り込んで目を閉じたのだった。

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