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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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161/302

161 防壁前でのレベル上げ④


「あはは、さすがハイ タイガー!! 1匹倒しただけでうさポンが進化したよ」


(やっぱり、特殊な能力はヤバ過ぎる……できるだけ早くペット達には対抗手段を持たせないといけないようだね)


 歓喜の表情を浮かべているシルルンは、その反面、焦りを覚えていたのだった。


「うさポンはラビットボール グレートになったデシ!!」


「えっ!? マジで!? その進化形態はハイ ヘドロみたいだね」


 シルルンは抱きかかえているうさポンを見てみると見た目は全く変わらずに可愛らしい兎のままで、すぐに『魔物解析』でうさポンを視てみた。


「やべぇ!? ステータスが10倍になってるよ!! あはは、やっぱり、うさポンは強くなると思ってたんだよ!!」


 シルルンはうさポンを両手で掲げてクルクル回転して大はしゃぎだ。


「あは、さっきの輝きはうさポンちゃんが進化したからなんですか?」


「うん、そうなんだよ。うさポンは並みの上位種なら余裕で倒せるぐらいに強くなったんだよ」


「えっ!? そんなに強くなったんですか!?」


 首を傾げて困惑しているうさポンをアキがマジマジと見つめていると、その視線に気づいたうさポンはビビッて大慌てでシルルンのシャツの中に逃げ込んだのだった。


「……あは、怖がりなのは進化しても一緒みたいですね」


「そうみたいだね……けど、これで茸の洞窟で万が一に襲われても大丈夫だから良かったよ。あとはシーラ、カイ、ライト、シャドーのレベル上げだね」


 カイ、ライト、シャドーは突然、石になったハイ タイガーを前脚でつついて警戒している。


 そこにルアンの話を聞き終えた仲間達がシルルンの元に戻って来た。


 なぜか大半の者が瞳をキラキラさせてシルルンを見つめていた。


「じゃあ、行こうか」 


 シルルン達は西に向かって進んでいく。


 防壁から少し南下したことで木々が生え茂り、移動し難いのだが巨体のルアンとローズが先頭を進んでいるので木々はなぎ倒されシルルン達は楽に進めるのだった。


「あれは虎柄の蜂デス!!」


 3匹の蜂の魔物が密林の奥から飛んできて、キチキチと警戒音を鳴らしている。


「でも、蜂って元々が虎柄みたいな柄だよね?」


「じゃあ、あれはホーネット種かビー種デスか?」


「う~ん、その可能性が高いと思うけどねぇ」


「違うデシ!! あれはレッサー ウォスプデシ!!」


「えっ!? 違うのかよ!?」


 シルルンはビックリして思わず、プニに顔を向けた。


「フフッ……それでホーネット種と比べて強いのかしら?」


 ラーネはプニの口の中から出てきて、プニの頭の上に座っている。


「プニには分からないデシ……でも、下位種なのに攻撃力は100で、魔法も能力も使えるから強いと思うデシ!!」


「マスター!! すぐにあの3匹をペットにしてちょうだい」


「えっ!? う、うん」


 シルルンは見ただけで巨大な透明の球体を作り出し、3匹のレッサー ウォスプをまとめて包み、一瞬でテイムに成功する。


 3匹のレッサー ウォスプはシルルンの前まで飛んできてシルルンをじーっと見つめている。


「で、どうするの?」


「その3匹をクイーンの元に連れていくからクイーンの命令も聞くように指示してほしいのよ」


「……なるほどね」


 シルルンは言われたように3匹のレッサー ウォスプに指示を出した。


「フフッ……先にハイブリットの候補が見つかって良かったわ」


 ラーネは満面の笑みを浮かべて、3匹のレッサー ウォスプと共に『瞬間移動』で掻き消えたのだった。


 シルルン達は再び、西に向かって進みだす。


 しばらくするとラーネがシルルンの肩に戻って来た。


「クイーンにはホーネット種のハイブリット候補だから高待遇で慎重に育てながら自然発生で数を増やしてくれって言っておいたわ」


「あはは、そうなんだ。近いうちにホーネット種もペットにしないとね」


「フフッ……楽しみだわ」


 そういってラーネはプニの口の中に戻っていき、それと同時にレッサー マッシュルーム タイガーが密林の中からピョンと跳んで姿を現した。


「……茸が2匹来たデス……1匹倒したらどうなるデスか?」


 プルは難しそうな顔でシルルンに尋ねた。


「う~ん……結局はビックリした1匹が逃げて、別の魔物が現れるだけじゃないかな」


「やってみるデス!!」


 プルは口の中からスゲェ剣を取り出し、『触手』を伸ばしてレッサー マッシュルーム タイガーの頭にスゲェ剣を突き刺した。

 

 レッサー マッシュルーム タイガーはポテッと倒れて即死し、残った1匹は驚愕して密林の中へと逃げていった。


「弱いデス……」 


「さあ、何が出てくるかな……レッサー ラットタイガーが数も多くて一番効率がいいから出てきてほしいよね」


 シルルン達は密林を眺めながらしばらく待っていると地響きのような足音が近づいてきて、巨大な人型の魔物がぬうっと密林から姿を現した。


「う、うおおぉ!? でかい上に気色悪い……」


 シルルンは思わず、後ずさり、女達も顔を背けて後退した。


「あれはハイ ファンガスタイガーデス!!」


 ハイ ファンガスタイガーの全長は4メートルを超えており、茸から手足が生えている訳ではなく、顔は茸で胴体や手足は茸が密集して構成されており、しかも虎柄なので不気味さを醸し出していた。


「くくくっ、上位種ってことは茸をった報復に来やがったのか」


 仲間達が尻込みする中、バーンは平気そうに言った。


「おそらくそうなのだろうな……」


 腕を組んだゼフドが不敵な笑みを浮かべてバーンの隣に並ぶ。


「茸を倒したから出てきたデスか……だったらプルがぶちのめしてやるデス!!」


「いや、逆にこれは大量に経験値を稼ぐチャンスだよ。ダイヤ、ザラで攻撃!!」


「やっと出番かよ!! 待ちわびたぜっ!!」


「分かりました」


 ダイヤとザラはプニの口の中から跳び出してハイ ファンガスタイガーに突撃する。


 怒り狂っているハイ ファンガスタイガーは右の拳を振り下ろし、ダイヤに叩きつけた。


「あぁ……ダ、ダイヤちゃんが……お、おのれ茸ぉ!!」


 ラフィーネは悲痛な表情を浮かべた後、一転して激昂して吠えてハイ ファンガスタイガーに突撃しようとする。


「効かねぇなっ!! 『破壊光線』!!」


 ダイヤの体からまばゆい閃光が放たれ、ハイ ファンガスタイガーの右腕が一瞬で消滅し、砂形体で浮遊するザラが『土操作』で地面の土を石の槍に変えてハイ ファンガスタイガーは無数の石の槍に身体を貫かれて激しい痛みで顔を歪ませる。


「ダ、ダイヤちゃん!?」


 ダイヤが反撃したのを視認したラフィーネは急停止して弾けるような笑顔を見せた。


 追い込まれたハイ ファンガスタイガーは無数の『胞子』を周辺に撒き散らした。


 『胞子』がダイヤの体に着床して発芽するが、ダイヤの体を貫通できずに枯れ落ちて、ザラのほうに飛ばした『胞子』は体を突き抜けて地面に落ちた。


「よぉし、ここからだ!! 後退するよ」


 シルルンの命令で仲間達はシルルンと一緒に後退していく。


「なぁ、大将。なんで後退するんだよ?」


「ファンガス種は『胞子』を飛ばしてそれが体に着床すると苗床にされて下位種になるんだよ」


「なっ!?」


 バーンは絶句し、仲間達も驚きの表情を見せている。


「アダックの時は地面が石だったからマシだったけど、ここは密林だからとんでもない数になると思うんだよね」


 シルルンが言ったように『胞子』は生い茂る植物に着床して無数の茸が誕生して、それが瞬く間に下位種に至ったのだった。


「な、なんて数だ!?」


「……マ、マジかよ」


 仲間達は戦慄して身じろぎもしない。


「おいおい、どうなってやがる!? 茸でいっぱいじゃね~かっ!?」


 誕生した数百匹のレッサー ファンガスタイガーは一斉に『胞子』を撒き散らして、密林がみるみるうちに枯れ果てていき、辺り一帯が砂地になった。


「――っ!?」


 目の前に広がる光景は仲間達の想像を絶するもので、アダックでファンガス種との戦いを見ていたリザやロシェールでさえ、口をパクパクさせている。


 ファンガスタイガー種が万単位まで一気に膨れ上がっているからだ。


「あはは、予想通りだね。フィン、グリー、グーラ、ライト、シャドーは上空から魔法で攻撃!! 絶対に近づいたらダメだからね」


 フィン達はコクリと頷いて一斉に空へと飛び立ち、我に返った仲間達はこの状況に全く動じていないシルルンを見つめて愕然としている。


「くくくっ、この状況で全く取り乱さないとは恐れ入ったぜ……大将は今までにどんな修羅場を潜り抜けてきたんだよ」


 バーンはどこか遠くを見つめて口から涎を垂れ流している。


「手伝うぜマスター」


「うん、ルアンもここで一気に経験値を稼いでほしい。けど、キツイ戦いになるよ」


 シルルンは探るような眼差しをルアンに向けた。


「はっ、望むところよ!!」


 ルアンは一直線に突き進んでファンガスタイガー種の群れに突撃し、数百のファンガスタイガー種が弾け飛んだ。


「ぐっ……か、体が痛てぇ!! それに全く動かねぇじゃねぇか……!?」


 ダイヤはファンガスタイガー種に囲まれて『痺れの息』や『猛毒の息』を浴びて顔を苦痛に歪めている。


 ザラは空から『石槍』を放ち、無数の尖った石がファンガスタイガー種に降り注ぎ、身体を尖った石に貫かれた10匹ほどが奇声を上げて倒れた。


「今ですね」


 ザラは空から一気に降下して動けないダイヤを抱えてシルルンの元に撤退する。


「ど、どうするのよシルルン……このまま増え続けたら手に負えなくなるわよ」


 リザの言葉に仲間達の視線がシルルンに集中する。


「あはは、それはないと思うよ」


「な、なんでなのよ!? どんどん増えてるじゃない」


 ファンガスタイガー種はハイ ファンガスタイガーを中心に急激な早さで円状に広がって増え続けているのだ。


「ここがタイガー種の縄張りだからだよ」


「えっ!? どういうこと?」


 リザは怪訝な表情を浮かべている。


「おそらく、シルルン様が言いたいのはファンガスタイガー種がそれほどの脅威ならこの縄張りはファンガスタイガー種が支配しているはずだという意味だと思います」


「さすがメイだね。たぶん、過去にもあったはずなんだよ。茸を倒してこうなるならね。だから、おそらくいるんだよ。ファンガスタイガー種の天敵がね」


 シルルン達は後退しながら増え続けていくファンガスタイガー種を見ていると、その増え方が停滞しだしたように見えた。


「確かに増え方がゆっくりになったわね……」


 仲間達はシルルンに尊敬の眼差しを向けている。


 だが、膨れ上がったファンガスタイガー種の数は10万を超えていた。


「よぉし、反撃にでるよ!! 能力軽減系の能力を所持していない者はここで待機してメイの指示に従ってね」


 能力軽減系の能力を所持していない者達は悔しそうに拳を握り締めている。


 そこにダイヤを抱えたザラが帰還した。


「ダイヤは状態異常で動けません」


「キュアデシ!!」


 プニがキュアの魔法を唱えて、ダイヤの状態異常が1回のキュアの魔法で回復する。


「糞がっ!! 鬱陶しい奴等だぜ!! 俺を抱えろザラ!! もう一回行くぞ!!」


 ザラは頷いてダイヤを『触手』で掴んで空へと飛んでいった。


「プル、プニ、ブラック、ラーネは遊撃しながら状態異常に陥った者を回復!! シャイン、ビークス、ローズはルアンと共にファンガスタイガー種を攻撃!!」


「行くデス!!」


「フハハッ!! 皆殺しにしてくれるわ!!」 


 プルはブラックの頭の上にピョンと跳び乗り、ブラックは嬉々としてファンガスタイガー種の群れに突撃し、それを追いかけるようにシャイン達も突撃する。


「フフッ……行くわよプニ」


 小さい姿のままのラーネがプニの頭の上に座ったままで声を掛けた。


 シロはラーネに抱っこされている。


「……分かったデシ!!」


 プニは待機組のほうに視線を向けてプニニとトントンが動かないことを確認してからそう応え、ファンガスタイガー種に向かってふわふわと飛んでいく。


「シルルン様、お供します」


「主よ、私もお供致します!!」


 ゼフドが不敵な笑みを浮かべてシルルンの前に立ち、ロシェールは歓喜の表情を浮かべてシルルンの前で跪いた。


 この2人の行動に待機組の者達は心底悔しそうな表情を浮かべている。。


「うん。だけど2人にはやりにくい相手だよ。ファンガスタイガー種は死体を残さず殺さないと胞子の苗床にされるからね」


「なるほど……確かにそれはやりにくいですね」


「なっ……それでは私は攻撃手段がないではないか……」


 跪いたままのロシェールは目を大きく見張り、わなわなと身を震わせる。


「まぁ、増えることが解っているならいいんだよ。殲滅が目的じゃないからね」


「は、はい!!」


 その言葉にロシェールは瞳をキラキラさせて立ち上がった。


「じゃあ、行こうか」


 ゼフドとロシェールは頷いてシルルンの脇を固めてシルルン達は歩き出す。


 ファンガスタイガー種の群れに突撃したルアンは1000匹ほどを弾け飛ばしたがそれだけだった。


 様々な状態異常攻撃を受けて動けない上に意識も混乱しており、正常な思考もできない状態だからだ。


 そこに無数のファンガスタイガー種を弾き飛ばしながらシャイン達が到着する。


「どうやら状態異常で動けないようだな……とりあえず周辺を征圧するぞ」


「それしかないわね」


「我はルアン殿の回復を試みる」


 シャインは『炎の息』をファンガスタイガー種の群れに吐き、100匹ほどが激しい炎に包まれて一瞬で炭になり、その炎が周りの個体にも燃え移ってファンガスタイガー種は混乱する。


「クククッ、よく燃える」


 ローズはファイヤボールの魔法を唱えて、巨大な火の玉がファンガスタイガー種の群れに直撃して、50匹ほどが一瞬で炭になる。


 シャインは『炎の息』を吐きまくり、ローズはファイヤの魔法、ファイヤボールの魔法を唱えまくり、周辺は火の海と化してファンガスタイガー種は焼け死んで急速に数を減らしていく。


 ビークスは何度もキュアの魔法をルアンに唱えている。


 ルアンは複数の状態異常を受けているので、プル、プニ級のキュアの魔法でなければ1回の魔法で回復させるのは不可能だからだ。


 6回ものキュアの魔法でルアンの状態異常は完全に回復した。


「すまん、手間をかけたようだな……それにしてもマスターが言ったきつい戦いとはこのことだったのか……」


 ルアンは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべている。


「あんたは俺達の影に隠れて遠距離攻撃に終始しろ」


「ぷっ」


 シャインの言葉にローズが失笑を漏らした。


「ぐっ、笑うなっ!! ……だが、そうさせてもらう。俺は早く上位種にならなければならないからな」


 ルアンは怒りの矛先をファンガスタイガー種に向け、ファイヤボールの魔法を唱えまくり、ファンガスタイガー種を殺しまくるのだった。

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レッサー ウォスプ レベル1 全長約1メートル

HP 100

MP 20

攻撃力100

守備力60

素早さ70

魔法 ポイズン

能力 統率 以心伝心 毒針 毒牙

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― 新着の感想 ―
[良い点] RPGを彷彿とさせる本格的なサクセスストーリー。キャラクターの個性が際立っていて、読んでいくうちに引き込まれてしまいますね。
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