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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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150/302

150 メデューサの縄張り①

 

 ペット達はシルルンの命令通りにペガサス種の縄張りまで後退したが、シルルンは半日が経過しても目を覚ましていなかった。


「ポン……」


 うさポンは魔法の袋に前脚を突っ込んで緑色の果物を取り出して、草のベットの上に寝かされているシルルンに緑色の果物を前脚で絞り、汁を口に流し込んでは心配そうにシルルンを見つめている。


 彼はこれを何度も繰り返しており、シルルンの体力はすでに全快しているのだが、そんなことはうさポンは知らない。


 マーニャたちはそんなうさポンのことなど意に介さず、シルルンの腹の上で眠っていた。


「あなた達のマスターはすごいわね……今回のように強すぎる魔物と遭遇したとき、魔物使いのマスターはペットを囮にして逃げるのが普通よ。それなのにあなたたちのマスターは逆に前に出て戦い、あなた達を護った……そんなマスターは見たことがないわ」


 漆黒のペガサスの言葉を、ペット達は誇らしげな顔で聞いている。


「目が覚めたら私もペットにしてもらおうかしら……」


「そうするがいい。俺もそのつもりだからな……」


 緑色のドラゴンがしたり顔で言った。


 ピクリとも動けなかった緑色のドラゴンは瀕死だったが、シルルンとエルダー ハイ ドラゴンの戦いを最後まで見ていたのである。


「まさか、エルダー ハイ ドラゴンに勝つとはな……あの戦いは心が震えたぜ……」


「そうね……私もよく勝てたと思うわよ」


 緑色のドラゴンと漆黒のペガサスは熱い眼差しでシルルンを見つめるのだった。



 数時間後、シルルンはムクリと上体を起こして目を覚ます。


「――っ痛!? 身体はなんともないけど頭がガンガンする……」


 シルルンは魔法の袋から紫色の果物を取り出して食いつき、頭痛が回復する。


「ま~っ!!」


「プリュウ!!」


「メェ~!!」


「ペぺ!!」


 マーニャたちは一斉にシルルンの胸に飛び込んで顔を擦りつけて甘えており、うさポンも素早くシルルンの首の後ろにしがみつき、ペットたちも嬉しそうにシルルンを見つめている。


「……ペガサス種がいっぱいいるってことは僕ちゃんが言った通りに後退したようだね」


 シルルンは辺りを見回して満足げな表情を浮かべている。


「あなた、本当にエルダー ハイ ドラゴンを倒したの?」


 純白のペガサスは訝しげな目でシルルンを見つめている。


「うん、なんとか倒せたよ……あっ!? エルダー ハイ ドラゴンの死体を取りに行かなきゃ!! 素材は高額で売れそうだからね」


「エルダー ハイ ドラゴンの死体なら白い兎があなたの袋に入れたわよ。あんなに巨大なものが袋に入ったからビックリしたわよ」


「へぇ~、うさポンはよく見てるね」


「ポン!!」


 シルルンはうさポンの頭を優しく撫でる。


 うさポンはとても嬉しそうだ。


「で、これがエルダー ハイ ドラゴンの死体だよ」


 シルルンは魔法の袋からエルダー ハイ ドラゴンの首を途中まで出して見せた。


「ほ、本当だったのね……」


 純白のペガサスは驚愕し、それを見ていた多数のペガサス種も絶句して身じろぎもしない。


「ねぇ、あなたにお願いがあるの」


「俺もだ」


「あれ!? 君は殺されたんじゃなかったの?」


「いや、瀕死だっただけだ」


「そ、そうなんだ……それでお願いって何なの?」


「私をあなたのペットにしてほしいのよ」


「俺もだ」


「えっ!? そんなお願いなら大歓迎だよ」


 シルルンは2匹を見ただけで巨大な透明の結界を作りだして包み込み、テイムは一瞬で成功する。


「こ、これがペットになるということなの……」


「な、なんだ……? この込み上げてくる感情は!?」


「君は黒いからブラック、いや、クロ……う~ん、真っ黒だからヤミだね」


 漆黒のペガサスは満足そうに頷いた。


「君は緑だからミドリンだね」 


「ぷっ……」


 キルはその名前を聞いて思わず噴出した。


「ミ、ミドリン……?」


 緑色のドラゴンは不服そうな顔をした。


「えっ!? 嫌なの? ミドリン良い名前なのに……」


「そんな小動物のような名前は気に入らんな……俺はドラゴンなんだぞ……」


「じゃあ、エメラル……はいるから、ルアン……あとメロンかな?」


「メロンも嫌だ。だがルアンは気に入った」


「なら、君の名前はルアンだね」


 緑色のドラゴンは満足そうに頷き、シルルンは額に噴出す汗を腕で拭って安堵した。


「それじゃあ、中層にある僕ちゃんの拠点まで一気に戻るよ。ルートはドラゴンの縄張りを抜けたほうが近いよね」


 だが、その言葉にペット達は不安そうな顔をした。


「俺はよほどの理由がない限り、龍族の縄張りに入るのは反対だけどな……」


 ペット達の思いを代表してルアンが進言する。


「まぁ、エルダー ハイ ドラゴンみたいなのがそうそういるとは思えないけど、無理することはないよね」


 シルルンは南下するのを断念し、西に進軍したのだった。


 前衛はルアン、青と赤のハイ ワイバーン、カティンとキル、ターコイズ、ヤミだ。


「そういえば君達に名前をつけるのを忘れてたよ」


 シルルンは進軍しながら青と赤のハイ ワーバーンに思念で言った。


「……忘れてたのかよ」


「あはは、ドラゴンの縄張りだったから焦ってたんだと思うんだよ。で、君は青いからアクエリアスでどうかな?」


「忘れてた割にはいい名前じゃね~か!! 気に入ったぞ」


「じゃあ、君はアクエリアスだね……で、君は赤いから……う~ん、難しいね……ケチャプ、ベリー、ローズのどれがいいかな?」


「……変な名前だったらどうしょうかと思ってたけど、その中ならローズがいいわね」


「あはは、じゃあ、君はローズだね」


 赤いハイ ワイバーンは満足そうに頷いた。


「で、確か西に進むとメデューサ種の縄張りだよね」


「マスター!! 境界線辺りで蛇髪族が200匹ほど陣取っています。どうします?」


 上空から偵察していたカティンが思念でシルルンに報告した。


「うん、倒してよ」


 シルルンは『魔物解析』で上位種がいないことを確認してから指示を出した。


「分かりました」


 前衛たちはメデューサ種の群れに突撃した。


 結果、勝利はしたもののカティン、キル、ヤミ、ローズ以外は石化していた。


「え~~~っ!? マジで!? 龍族は最強じゃなかったのかよ!?」


 石化したペット達を見つめてシルルンは絶句した。


 呆然としているシルルンを横目に、うさポンは魔法の袋から紫色の果物を取り出して、多数の紫色の果物を抱えて石化したペット達の元にピョンピョンと跳んで行く。


 それと同時にアメーバ達がメデューサ種の死体に向かって嬉しそうに突撃して一斉に『捕食』していく。


 石化したルアンの元に到着したうさポンは果物を前脚で絞って汁をルアンの前脚にかけて、じーっと見つめている。


 すると巨体のルアンですら紫色の果物1個で石化から回復してうさポンは目を輝かし、今度は石化したアクエリアスの元にピョンピョンと跳んで行く。


「……ていうか、やっぱり、軽減系の能力は重要だね」


 (紫色の果物で石化が治せるのを知ってたから軽視してたけど、やっぱり『石化』はヤバイ……だけど、今後のことを思うと逆にここでメデューサ種に遭遇してて良かったかもしれない……)


 シルルンはカティンとキルを優しく撫でる。


 カティンとキルはとても嬉しそうだ。


「……私も石化してないんだけど?」


「……私も石化してないわ」


 ローズとヤミが声を揃えて不満そうな顔で言い、シルルンはローズとヤミを優しく撫でるとローズとヤミも嬉しそうにしている。


「アクエリアスは石化してるのにローズはなんで石化してないの?」


「ルアンもアクエリアスも舐めてかかって正面から仕掛けたからよ。私はそうじゃなかっただけの話よ」


 ローズは高い素早さを生かし、上空から一撃離脱を繰り返してメデューサ種を倒していたのだ。


 あまりに速いその速度にメデューサ種の群れは視認することすらできなかったのだ。


 ワイバーン種は正面から戦っても強いが、飛行速度を生かした戦いこそが真骨頂なのだ。


「……面目ない」


 石化から回復したルアンがシルルンに謝罪し、アクエリアスとターコイズはしょんぼりしており、石化を回復させたうさポンがシルルンの首の後ろに飛びついた。


「うん、軽減系の能力の重要性を再確認できたからいいよ」


 シルルンはうさポンを撫でながら言った。


「このまま進むとまたメデューサ種の群れと戦うことになると思うけど、その時は僕ちゃんとカティン、キルで戦うから他は下がっててね」


「私も戦うわよ。石化してないんだから」


「うん、じゃあ、ローズにも戦ってもらうよ」


 ローズは満足そうに頷き、シルルンたちは進軍を開始する。


 シルルンはカティンとキルを先行させ、シルルンたちが進んでいくと周辺には石化して半壊した魔物が多数転がっており、『石化』の強力さが窺える。


「……メデューサ種は何を食べて生きてるのかな? 魔物を石化させたら食べれないし」


「あぁ? そういえばそうだな……」


「……石化させた魔物を食ってるんじゃないのか?」


 ルアンが逡巡した後、そう答えた。


「えっ!? マジで!?」


 シルルンはビックリして目が丸くなった。


「だったら、最初から石を食べればいいだけの話じゃない。たぶん、『石化』を解いて食べるのよ」


「……違うと思うわ。結果が確定してる魔法や能力は戻せないはずよ。『石化』で言えば術者は解くこともできないし、術者が死んでも石化は解けないと思うわ」


 ローズの考えをヤミが否定した。


「じゃあ、何を食べてるっていうのよ」


「それは分からない。捕まえて聞いてみるしかないんじゃないかしら」


 ヤミの言葉にペットたちの視線がシルルンに集中する。


「えっ!? ヤダよ!! メデューサ種はいらないし……」


 シルルンは心底嫌そうに言った。


「マスター!! このまま進めば300ほどの群れがいます。攻撃を仕掛けますか?」


 先行しているカティンが上空からシルルンに報告した。


 シルルンは『魔物探知』でメデューサ種300を視てみると上位種が10匹いることを探知し、「上位種がいるから気をつけるんだよ」と思念で返した。


「この先に300匹ほどいるみたいだから、ローズは突撃。皆はとりあえず見学しててよ」


 シルルンはそう言って肩からダイヤとザラをシーラの背中の上に下ろしたが、うさポンだけは残した。


 魔法の袋から紫色の果物を取り出したシルルンは、うさポンに紫色の果物を手渡した。


「僕ちゃんが石化したら治してね」


 うさポンは神妙そうな表情で何度も頷き、首の後ろからシャツの中に身を隠す。


 ローズは翼を羽ばたかせて空中に浮き上がり、凄まじい速さで一気に加速して見えなくなり、シルルンもローズを追いかける。


 シルルンは一瞬でローズに追いつき、ローズの速度に合わせて並走する。


 すると、石で作られた建物が多数あり、カティンとキルが上空から魔法を唱えて石の建物を破壊していた。


「うん、いい判断だよ。あの高さだと『石化』の射程外だからね」


 だが、メデューサ種も魔法を唱えて反撃しており、魔法の撃ち合いになっていた。


 そこに魔法攻撃を掻い潜ったローズが上空から凄まじい速さで襲い掛かり、メデューサ種はローズの牙に切り裂かれて首が3つほど宙に舞い、首から血を噴出させて即死する。


「上位種はどこかな……」


 シルルンは『魔物探知』で上位種の所在を確認し、歩きながら『叛逆』を発動して紫のオーラを身体に纏った。


「う~ん、上位種は10匹共、カティンたちやローズの近くにいるようだね……まぁ、倒せるならいい経験値になると思うから倒してほしいけどね」


 ゆっくりと歩き出したシルルンは上位種がいる方角に進んでいくと、石の建物から5匹のメデューサが姿を現した。


 だが、5匹のメデューサの内、4匹が頭を破壊されて首から大量出血して即死した。


 シルルンが水撃の弓で水弾を放って頭部を撃ち抜いたからだ。


 瞬く間に仲間を殺されたメデューサの顔が驚愕に染まる。


 慌てて後方に跳躍して距離を取ったメデューサはシルルンに対して『石化』を放ち、目が怪しく輝いた。


「うん、それを待ってたよ」


 シルルンは不敵に笑った。


 『石化』はシルルンが所持する『能力耐性』により、無効化されメデューサは目を大きく見張る。


「あはは、ありがとう。『石化軽減』に目覚めたよ」 


 シルルンがこれほど早く『石化軽減』に目覚めた訳は、以前の『反逆』と『叛逆』はその発動効果が異なるからだ。


 『反逆』はステータスが2倍だったが、『叛逆』は3倍。


 そして、『反逆』は魔法や能力を受けると吸収して関連した耐性系能力に目覚めたり、その魔法や能力自体を奪うことがあったが低確率だった。


 しかし、『叛逆』はその確率が50%なのだ。


 さらに『叛逆』に目覚めると『叛特効』という能力にも目覚めるのだ。


 『叛特効』の効果は自身よりも強い者と戦う時、攻撃力が3倍になるというものだ。


 エルダー ハイ ドラゴンと戦った時のシルルンの攻撃力は『叛逆』に目覚めたことにより、18000まで上がっており、『叛特効』で54000まで上がっていたのだ。


 そこに反逆の槍の力も加わり、その攻撃力はとんでもない数値に達していたのだった。


 動揺したメデューサは『石化』を連続で放ち、4度目の『石化』を放ったところでシルルンは水撃の弓で水弾を放ってメデューサの頭が消し飛び、首から血を噴出して即死した。


「……さすが『叛逆』だね。たった5回の『石化』で『石化無効』と『石化』が手に入ったよ」


 シルルンは満足そうに上位種がいる地点に向かって歩き出したのだった。

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[一言] うわぁ~ん! やっとプニが出て来たと喜んでたのにぃ~ でもでも、皆シルルンの事を思い出したから いずれ全員集合できますね。 楽しみに待ってます♡
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