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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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145/302

145 グリフォンの縄張り 改

 

 シルルンたちは四本のルートが交わる激戦区を抜け、魔物が追ってこないことを確認してから休憩していた。


 「確かこの先はグリフォンの縄張りだよね?」


 「はっ、その通りですな」


 「鷲獅子族の縄張りを通過すると天馬族、そして龍族の縄張りですね」


 シルルンの問いに、キルとカティンが思念で返す。


 「だよねぇ、その三種族はペットにしたいんだよね」


 「りゅ、龍族もですか……」


 「うん、できたらの話だけど」


 「……」


 カティンとキルは何か言いたそうな素振りを見せたが結局、何も言わなかった。


 休憩を終えたシルルンたちは進軍を開始し、グリフォン種の縄張りに入ってすぐに、シルルンは空から接近する魔物の群れを察知する。


 それは500匹ほどのグリフォン種の群れだった。


 「鍬形族が何の用だ!!」


 群れの先頭にいる巨大なグリフォンが威嚇するように言い放ったが、鷲獅子グリフォン語なのでシルルンたちには分からなかった。


 「ぐっ!? またこれか……」


 ダイヤたちやペットたちは恐怖でガタガタと身を震わせている。


 「あのでかいのは高レベルのハイ・ グリフォンだね……」


 グリフォン種は上半身が大鷲で下半身が獅子という魔物で、このハイ・グリフォンの全長は10メートルを軽く超えていた。


 「……なかなか強烈な『威圧』ですな」


 「『能力耐性』がなかったら動けるかどうか……」


 「まーっ!!」


 仲間たちが攻撃されたと思ったマーニャは『炎刃』を放ち、炎の刃が一直線にハイ・グリフォンに目掛けて飛んでいく。ハイ・グリフォンは上昇して炎の刃を躱したが、炎の刃は曲がってハイ・グリフォンを追いかける。


 「――っ!? 馬鹿なっ!?」


 炎の刃に背後から身体を貫かれたハイ・グリフォンは黒焦げになって墜落し、地面に激突して大穴があいた。


 だが、ハイ・グリフォンは生きており、ふらふらしながら大穴から這い出てくる。


 「……へぇ、マーニャの攻撃を受けてまだ生きてるんだ……まだるかい? こっちは戦う気はないんだけどね」


 シルルンは『魔物契約』でハイ グリフォンに話し掛ける。


 「なっ!? なぜ人族がここにいる!? 鍬形族が攻めてきたのではないのか!?」


 「いや、違うよ。スタッグ・ビートルたちは僕ちゃんのペットなんだよ」


 「なっ!?」


 ハイ・グリフォンは目を大きく見張り、絶句する。


 「で、僕ちゃんたちと戦う気なのかい?」


 「……いや、ちょっと待て……この頭に直接響く言葉はお前の能力なのか?」


 ハイ・グリフォンは人族語でシルルンに問い掛けた。


 「……へぇ、人族語を話せるんだ。君の推測通り、頭に直接響く言葉は僕ちゃんの能力だよ」


 「ほう……ではさらに問うが、我らと戦う気がないのならここに何をしにきたのだ?」


 「君たちをペットにしようと思ってきたんだよ」


 「ふっ、やはりそうか……歓迎するぞ人族よ。お前は何日、ここに滞在することになるのか楽しみだな」


 「えっ!? ここに人族が来たことがあるの?」


 シルルンはビックリして目が丸くなる。


 「まぁな……だが、お前のように地上から来た人族は初めてだ。普通は魔物に乗って空から来るものだ」


 「あはは、そうなんだ」


 シルルンは魔法の袋から緑色の果物を取り出し、ハイ・グリフォンの前に置く。


 「これはドライアドの実!? 希少なはずだがいいのか?」


 グリフォン種がドライアドの実を入手するには、人型系の魔物を殺したときに持っていたのを奪う以外に方法がなかった。


 言うまでもなく、弱い人型系の魔物がドライアドの実を持っている確率は極めて低い。


 「うん、構わないよ」


 「では、ありがたく頂く」


 ハイ・グリフォンは緑色の果物を食べて、体力が全快した。


 「ぬう、あれほどの深手が果物一個で全回復するとは凄まじい回復力だな……」


 敗れたはずのハイ・グリフォンが人族と話しているのを上空から視認したグリフォン種の群れは、次々と降下し始めて彼の後ろに並んでいく。


 「で、ペットになってくれそうな個体はいるのかな?」


 「まぁ、基本的に戦士はダメだ」


 「戦士ってどういう意味?」


 「通常種以上のことだ」


 「じゃあ、ペットにしていいのは下位種だけってこと?」


 「まぁ、基本的にはそうなるな……あとは我らの元を離れたはぐれ個体だな」


 「ん? 基本的にはってどういうこと?」


 「ここにくる人族は【魔物使い】か【鷲獅子騎士】という職業らしい」


 「……へぇ、ビックリしたよ……詳しいんだね……」


 「特に【鷲獅子騎士】の職業の者は惚れた個体に出会うと交渉に入ることが多い。交渉が成立すれば戦士でもここを離れる場合がある」


 「なるほどね」


 「だが、その場合、心を通わすのに年単位の時間をここで過ごすことになるがな……」


 「えっ!? 何年もここにいるんだ……」


 「ふっ、当たり前だ。そう簡単に我らの信を得られるはずがないだろう」


 「え~~~っ!? 僕ちゃんグリフォンもペットにしたいけど、ペガサスもドラゴンもペットにしたいんだよ」


 「欲張りな奴だな……本当にその三種族をペットにするつもりなら、お前はここで年老いて死ぬだろうな……」


 「……いや、僕ちゃん自信あるからそうはならないよ。とにかく、下位種がいるところに案内してよ」


 「ほう、えらい自信だな……だが、確かにお前は今までにここに来た人族とは毛色が違うような気がするがな……」


 シルルンの後ろにいる大量のペットたちを一瞥したハイ・グリフォンが歩きだす。


 グリフォン種の群れはハイ・グリフォンを追いかけず、次々と飛び立って空へと消えていった。


 「ここから近いの?」


 「まぁな……下位種の縄張りは戦闘経験を積みやすいように縄張りの境界線近くにあるからな」


 「そうなんだ」


 シルルンはハイ・グリフォンの横に並んで歩き、ペットたちはシルルンの後についていく。


 しばらく森を歩いているとシルルンたちは開けた場所に出た。


 その中央には30匹ほどのグリフォン種が身を寄せ合って固まっていた。


 「うわぁ~~っ!! 可愛いですね!! 赤ちゃんでしょうか?」


 「あのモフモフは赤ちゃんなのかい?」


 「そうだ」


 身を寄せ合っているレッサー・グリフォンの赤ちゃんの全長は50cmほどだ。


 シルルンたちはレッサー・グリフォンの赤ちゃんたちをしばらく眺めていると、空からグリフォンが飛来した。


 グリフォンの前脚にはラット種が数匹掴まれており、レッサー・グリフォンの赤ちゃんたちは一斉にラット種の死体に群がり、嘴で死体をバラしながら食べている。


 「ああやって餌を与えるのは飛べるようになるまでだ。そこから先は自身の力で魔物を倒して戦士を目指す」


 「へぇ~、厳しいんだね」


 すると、空から多数の下位種の群れが開けた場所の端のほうに飛来し、下位種の群れは仕留めた魔物の死体をガツガツと食べている。


 「ほう、まだこんなに生き残っているのか……」


 「……その言い方だと通常種になれる個体は少ないの?」


 「そうだな、良くて三割ほどだな……」


 「え~~~~っ!? マジで!?」


 あまりのショックにシルルンは放心状態に陥った。


 「勇敢な者は単独で、賢い者たちは複数で狩りをしている。だが、種族的に我らが強くても運が悪ければ敗れる……強い魔物はいくらでもいるからな」 


 そこに一メートルほどの大きさのレッサー・グリフォンたちが森の中から姿を現し、魔物を食べているレッサー・グリフォンたちに果敢に襲い掛かっている。


 「あぁん? あいつらは餌を奪おうとしてるのか?」


 「いや、あれは力を認めてもらうためにやっているのだ。認められれば一緒に狩りに出ることが許される」


 攻撃しているレッサー・グリフォンたちはほとんどが一メートルほどの大きさだが、中にはかなり小さい個体も交ざっていた。


 「頑張れ!! 頑張れ!!」


 シーラは三匹ほどいる小さい個体に感情移入し、応援していた。


 3匹の内2匹は50cmほどの大きさだが、残り1匹は30cmほどの大きさしかなかく、3匹は果敢に攻撃しようとするが、下位種が羽ばたく風圧で吹っ飛んで近づくことすらできないでいた。


 「いやいや、あのサイズはおかしいだろ……赤ちゃんが50cmなのにそれと同じ大きさでそれより小さいのもいるじゃん」


 「虚弱というやつだ。人族にはいないのか?」


 「――なっ!?」


 思わずハイ グリフォンを見つめたシルルンは、ガツンと頭に衝撃を受けたような顔をした。


 (魔物だから完全に失念していたよ……プルとプニ、そしてプニニも虚弱だったのに……スライムダイヤモンドにいたっては助けることもできなかったのにね……)


 シルルンは考え込むような表情を浮かべている。


 「だが、あの三匹はマシなほうだ……身体の一部が欠損して生まれてくる個体などはだいたいが途中で死ぬからな……」


 「……」


 シルルンは押し黙ったまま何も返さなかった。


 下位種に認められたのは半数ほどで、認められた個体たちは下位種と共に飛び立っていき、残りの個体は森の中に消えていった。


 「グルゥ……」


 だが、三匹の小さい下位種はしょんぼりしており、餌を貰っている赤ちゃんたちを見つめている。


 「か、可哀相ですぅ……きっとお腹が減っているんですよ……」


 三匹の小さい下位種は、メスの通常種の後ろ脚にしがみついたが、翼の一撃で吹き飛ばされ地面を転がった。


 「グ、グルゥ……」


 今度は端にいるまだ飛び立っていない下位種たちの元に駆け寄るが、先ほどと同様に翼の一撃で吹き飛ばされた。


 それでも三匹の小さい下位種は同じことを繰り返している。


 そして三匹は誰にも相手にされないまま体力を消耗し、内一匹が痙攣して動かなくなった。


 「ひ、酷い!! 酷いです!!」


 「ちっ、胸糞悪くて見てらんねぇな……」


 「グルゥ!! グルゥ!!」


 「グルゥ!! グルルゥ!!」


 痙攣して立ち上がれない個体に二匹の下位種が寄り添い、助けを求めて鳴いたが、グリフォン種に動く気配は全くなかった。


 しかし、金色の光が痙攣している個体を包み込み、痙攣していた個体は痙攣が止まって立ち上がり、三匹の小さい下位種はそれをやった者を見上げた。


 シルルンが祝福の短剣を使い、体力を回復させたのである。


 「やぁ、君たち……大変だったね」


 シルルンは魔法の袋から赤色の果物を三個取り出し、三匹の小さい下位種の前に置いてから、しゃがみ込んで目線を合わせ、『魔物契約』でコンタクトを試みた。


 「……グルゥ?」


 三匹の小さい下位種は首を傾げたが、目の前に置かれた赤色の果物に目が釘つけだ。


 「あはは、食べてもいいんだよ」


 三匹の小さい下位種はガツガツと赤色の果物を食べ始め、そのあまりの美味しさに瞳を輝かせている。


 シルルンは三匹の頭を優しく撫でていく。


 三匹はとても嬉しそうだ。


 シルルンが踵を返して仲間たちの元に戻ろうとすると、三匹の小さい下位種はシルルンの足にまとわりついて離れなかった。


 「すごいですシルルンさん!! すごく懐かれてますね!!」


 「グルゥ!!」


 「グルゥ!!」


 「グルルゥ!!」


 三匹の小さい下位種はシルルンの脚をよじ登って胸にしがみついて鳴いており、首の後ろにしがみついているうさポンはビビッて動けなかった。


 「この三匹は僕ちゃんが連れていくけど謝礼は何がいいの? その謝礼にうまみがあるからここに来る人族は歓迎されてるんでしょ?」


 「……察しがいいな。下位種1匹でポーション500本だな。あとは1日滞在する度にポーション1本だ」


 「その数だと今はポーションの相場が跳ね上がってるからキツイ条件だと思うけどね。でも、まぁ、ここに来れるぐらいの冒険者なら最上級職だと思うからなんとかなるかもしれないけど」


 「何? ポーションに相場があるのか?」


 「うん。今は品薄だから値段が跳ね上がってるし店にもなかなかないんだよね」


 「ほう、そういうこともあるのか……」


 「だから、今手元に1500本のポーションは無いから待ってほしいんだよね。手に入れる手段はあるから」


 「お前から謝礼を受け取るつもりはない。その三匹は元より切り捨てるつもりだった個体だからな……」


 「じゃあ、僕ちゃんの気持ちとしてドライアドの実を置いてくよ」


 シルルンは魔法の袋から緑色の果物を100個取り出し、地面に置いた。


 「なっ!? 希少なドライアドの実を100個だと!? いいのか?」


 ハイ・グリフォンは探るような眼差しをシルルンに向けている。


 「うん」


 シルルンはドライアドの実を大量に持っているが、恩を売るためにあえてそのことは言わなかった。


 「感謝する」


 シルルンは小さいグリフォンたちを見ただけで、三匹を包み込む透明の結界を作り出し、一瞬でテイムに成功する。


 「ミニシリーズ二匹をペットにしたその快挙により、褒賞ぎふとを与える。だがしかし……勇者である私でも成し得なかったことを他の者ができるとは思わず、冗談半分でこの褒賞を設定したんだがな……」


 勇者の声はそこで終わる。反射的に空を見つめていたシルルンは、紙のようなものがヒラヒラと落ちてくるのが見えて、その紙を掴む。


 「……こ、これは地図だね……えっ!? これだけ!? 能力はもらえないの!?」


 不満そうな顔をしたシルルンは辺りを見回している。


 シルルンは【勇者の隠れ家の地図】を手に入れた。


 「ていうか、ミニシリーズを二匹をテイムしたって言ってたけど、どういうことなんだよ?」


 シルルンは怪訝な表情を浮かべてマーニャたちを見つめている。


 マーニャたちだけでも四匹いるからだ。


 シルルンは逡巡するが全く解らなかった。


 「あっ、そうだ……君たちの名前を考えないとね……」


 だが、この時、始めてシルルンは『魔物解析』でグリフォンたちを視て、シルルンの顔が驚愕に染まった。


 「……なるほど、君がミニシリーズだったんだね」


 シルルンは一番小さいグリフォンを両手で持ち上げて満面の笑みを浮かべた。


 「グルゥ!!」


 ミニ・グリフォンは元気一杯だ。


 「でも、何で二匹なんだよ!? 五匹いるだろ……?」


 シルルンは余計に解らなくなったのだった。


 「……で、君の名前は……フィンだ」


 「グルゥ!! グルゥ!!」


 名前を気に入ったようでフィンはとても嬉しそうだ。


 「う~ん……君たちの名前はね……君がグリーで君がグララだよ」


 シルルンはオスのグリフォンの名前をグリーにし、メスのグリフォンの名前をグララにした。


 二匹はとても喜んでおり、シルルンは額から流れる汗を腕で拭って安堵した。


 こうして、グリフォン三匹が新たにシルルンのペットに加わり、シルルンたちは南下してペガサス種の縄張りに向かったのだった。 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も楽しませていただきました。 ちなみに、ハイとレッサーだとハイは上級でレッサーは下級みたいな感じになるのでしょうか?
[一言] うおぉー、新しいギフトだ~! どんなアイテムか楽しみです~♡ マジックバックの肥やしにならないよね……?
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