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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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144/302

144 上層⑪


 シルルンたちは黒亜人の拠点を後にしてから無数の魔物と戦闘を繰り返し、その全てを皆殺しにしながら進軍していた。


「ていうか、結局、頂上に繋がるルートに出なきゃドラゴンがいるところに行けないなんて最悪だよね」


「お前にしては考えが浅はかだったな」


「……レベルUPが最優先だったからね」


 シルルンは当初、『魔物探知』と『魔物解析』を駆使して進軍していたが黒亜人たちにばかり遭遇するので、カティンとキルに上空からペガサスやドラゴンがいる縄張りの位置を調べてきてくれと指示を出した。


 だが、戻ってきたカティンとキルの話では、戻ったほうが近いことが判明したのだ。


 無論、このまま進んでもドラゴンの縄張りには辿り着けるのだが、黒亜人の縄張りを通り抜けてから、ドラゴンやペガサスがいる縄張りに登って行かなくてはならず、帰りのことを考えると無駄だとシルルンは判断したが、その代わりに四つのルートが交わる頂上に繋がるルートを通り抜けなければいけなくなったのだ。


「まぁ、頂上を目指している魔物の群れは進攻部隊だからそれなりに強いと思うけど、黒亜人の拠点にいた魔物のほどじゃないとは思うけどね……」


 シルルンたちは頂上のルートを目指して進軍していくと、道がとんでもない数の魔物で埋め尽くされていた。


「……な、なんて数だ」


「う~ん……ざっと一部隊二千から三千ぐらいの規模だね……」


 頂上のルートに集まる魔物の数は軽く六万を超えているのだ。


「おいおい……マジでここに突っ込むのかよ!?」


 ダイヤは絶句し、ザラは息を呑み、うさポンは危険を察知してシルルンのシャツの中に逃げ込み、シーラはガタガタと身体を震わせているが、マーニャたちはシルルンの首元にしがみついて顔をすり寄せて甘えており、平気そうだった。


「上空から見たときよりも増えてるね……じゃあ、僕ちゃんたちも突っ込むよ!!」


 シルルンたちは黒亜人の群れを貫いた時と同じ陣形で突撃したが、シルルンたちの突撃は急速に速度を失った。


「ちぃ、黒亜人の群れは貫けたのに突撃を止められちまったじゃねぇか!! なんでだよ!?」


「魔物が密集し過ぎてるからだよ……黒亜人の群れを貫いた時は黒亜人たちが左右に広がるスペースがあったけど今回は全くないからね」


 シルルンは前方の敵を皆殺しにしながら突き進み、マーニャの『炎刃』やペーガの『風閃』で魔物の群れを一掃してもすぐに魔物で埋まる状態なのだが、魔物の群れは全方向から襲い掛かっており、アメーバたちを囲んで守りながら進軍するスタッグ ビートルたちも魔物と密着し過ぎて魔法を使えずに大顎の攻撃に終始しているので進軍速度は遅くなる一方だ。


 だが、アメーバたちからすれば、進めば魔物の死体があるので奪い合いながら死体を『捕食』しているので嬉しそうだ。


「おい、クワガタたちがついてこれてないぞ」


「……だよねぇ」


 シルルンが足を止めて思念で「ドーラとメーアは最後尾、カティンは左、キルは右に移動して迎撃」と指示を出し、ドーラたちは移動する。


 ドーラたちが最後尾の攻撃に加わったことにより、ペットたちの進軍速度は上がってシルルンたちに追いついてくる。


「ここから先はペットたちに合わせて進むしかないね」


 シルルンは瞬く間に目の前の魔物を十匹ほど斬り裂くが、魔物の群れはその死体を乗り越えて襲い掛かってくる。


「魔物と密着し過ぎてて戦闘スペースが取れないから戦い難くて仕方ない……」


 戦闘スペースがない状態で、密集した魔物たちが襲い掛かってくるので、そこに避けることや下がることなどの戦術はなく、最早ただの肉弾戦だった。


 攻撃すれば必ず当たるが、それは魔物側も同じでスタッグ ビートルたちも攻撃を受けており、シルルンは襲い掛かってくる魔物の群れを皆殺しにしていくが、魔物の群れは構わずに死体を乗り越えて襲い掛かってくる。


「『破壊光線』!!」


「『石槍』」


「まーっ!!」


「ペペッ!!」


 ダイヤ、ザラ、マーニャ、ペーガが一斉攻撃し、次々に魔物を倒して死体が積み上がっていく。


 ターコイズとアメーバたちは大喜びで魔物の死体を『捕食』していき、シルルンたちの周りから魔物の死体が消えていく。


「あはは、これで戦い易くなったね……しばらくここで経験値を稼いでもいいかもね」


 シルルンは水撃の弓で水弾を撃ちまくって一発の水弾で魔物を二十匹ほど貫いており、魔物の群れは何も出来ずにただ死んでいく。


「『破壊光線』!! 『破壊光線』!! 『破壊光線』!! 『破壊光線』!!」


 ダイヤは破壊光線を連発し、疲れたら果物を食べて体力とスタミナを回復して、再び破壊光線を連発しており、マーニャたちも攻撃しまくり魔物の数を急激に減らしていく。


 だが、唐突に魔物たちが宙を舞う。


 しかも、四方向同時にだ。


 それぞれの群れの精鋭部隊が魔物をふっ飛ばしながらシルルンたちに目掛けて突撃しており、シルルンたちは囲まれる。


「やべぇ!? ハイ メデューサの群れだ!! 瞳を見たらダメだよ!!」


 シルルンが声を張り上げる。


 ダイヤ、ザラ、シーラは慌てて目を閉じたが、マーニャとペーガは意味が分からなかった。


 マーニャは『炎刃』を放ち、炎の刃がハイ メデューサを突き抜けて後ろの魔物もろとも一瞬で焼き殺した。


 ペーガも上空から『風閃』を放ち、とんでもない突風がハイ メデューサに匹を貫いて後方にいた三十匹ほどの魔物も切り裂いて消滅した。


「おいっ!! 目を閉じると攻撃できないだろ!! どうすんだ!?」


「僕ちゃんが倒すまでの我慢だよ」


 シルルンも目を閉じており、『魔物探知』でハイ メデューサの位置を探る。


 しかし、ハイ メデューサたちの瞳が一斉に怪しく輝く。


「ペペッ!?」


 宙に浮いているペーガは瞳を閉じておらず、石化の魔眼をまともに受けて『能力耐性』で無効にしたが、その内の一発が『能力耐性』を貫通し、ペーガが石化して地面に落ちた。


「まーーっ!?」


 石になって動かなくなったペーガを見たマーニャは心配そうな声で鳴き、ペーガを口に咥えてシルルンの元に走る。


「ま~~っ!? ま~~っ!?」


 マーニャはシルルンの足に頭を擦りつけて鳴いており、目を閉じていて状況が分からないシルルンは不審に思って下を見るとペーガが石化しているのが目に入った。


「ペーガ!? やりやがったなっ!!」


 シルルンは怒りに身を震わせて激昂し、『魔物探知』でハイ メデューサの位置を特定して水撃の弓で狙いを定めて『十六連矢』を放った。


 水弾は吸い込まれるようにハイ メデューサたちの頭上に降り注ぎ、頭から貫かれて胴体を貫通し、身体内部から大量出血して10匹ほどいたハイ メデューサは全て即死した。


 右側で戦うキルたちの元には大量のハイ ゴブリンが襲い掛かっていた。


 スタッグ ビートルの素早さを大きく上回るハイ ゴブリンだが、この場所では動き回るスペースがなく、スタッグ ビートルたちの大顎の餌食になっていた。


「クククッ、ここに来たのが運の尽きだ!! 残念だったな」


 キルが大顎でハイ ゴブリンの胴体を切断して胴体から血を噴出してハイ ゴブリンは即死する。


 だが、スタッグ ビートルたちに大顎で切断されながらもハイ ゴブリンは0距離で攻撃魔法を唱えて自爆していき、配下のゴブリン ファイターたちも倣って次々と0距離から攻撃魔法を唱えて爆砕し、スタッグ ビートルたちはダメージを受けていた。


「ぐっ……自爆覚悟では防ぎきれん」


 左側で戦うカティンたちはハイ ケンタウロスの群れと戦いを繰り広げていたが、ハイ ケンタウロスたちはスタッグ ビートルたちのステータスを上回っていた。


 スタッグ ビートルたちはハイ ケンタウロスたちに剣や槍の攻撃を受けて著しくダメージを受けて後方に下がり、アメーバたちに果物をもらって体力を回復しながら戦っているので劣勢だった。


 カティンにいたっては『閃光矢』と『連矢』の一斉攻撃を受けて今にも死にそうな状況だ。


「どうやらここまでのようですね……」


 カティンは決死の覚悟でハイ ケンタウロスたちに目掛けて突撃したのだった。


 最後尾で戦うドーラたちはハイ ナーガの群れと戦いを繰り広げており、スタッグ ビートルたちはハイ ナーガが片手で振るうハルバードの一撃を大顎で受けようとするが大顎は切断されて宙を舞う。


 ハイ ナーガが片手で振るうハルバードの一撃の威力は凄まじく、直撃すればスタッグ ビートルも一撃で即死するほどの威力なのだ。


 さらに爪の一撃を食らえば『猛毒』に侵され、スタッグ ビートルでも五秒ほどで全身から血を噴出して力尽きるのだ。


 スタッグ ビートルたちだけでは全滅する状況だがドーラとメーアは強かった。


 特にドーラはハイ ナーガたちが振るうハルバードの集中攻撃を受けても平然としており、『業火』を放って地獄の炎に焼かれたハイ ナーガは一瞬で炭になって即死し、前脚の一撃がハイ ナーガの『物理耐性』を貫通すれば一撃で砕け散った。


 メーアはドーラの後方から『凍結』を放ち、凍てつく冷気にさらされたハイ ナーガは一瞬で凍って活動を停止させた。


 あまりのドーラの強さに恐怖したハイ ナーガたちは何もできずにドーラとメーアに皆殺しにされ、スタッグ ビートルたちは羨望の眼差しでドーラとメーアを見つめるのだった。


 ハイ メデューサたちを皆殺しにしたシルルンは『魔物探知』と『魔物解析』で周辺を探る。


 すると、左側でハイ ケンタウロスの群れと戦うカティンが虫の息だった。


「カティン!?」


 シルルンは即座に水撃の弓でハイ ケンタウロスの群れに目掛けて『十六連矢』を放つ。


 玉砕覚悟で突撃したカティンの前に水弾が降り注ぎ、ハイ ケンタウロスは頭から貫かれて血飛沫を上げて全滅した。


「なっ!?」


 カティンは呆然として身じろぎもしない。


「カティン!! 早く果物をもらって体力を回復するんだよ」


 シルルンが思念でカティンに指示を出す。


「は、はい、ありがとうございます……」


(あのハイ ケンタウロスの群れを一撃か……なんて恐ろしい方だ)


 動揺を隠し切れないカティンは思念で礼を返す。


 ハイ ケンタウロスの群れを皆殺しにしたシルルンはそれでも怒りが収まらず、怒りの思考を右側で戦う黒ゴブリンの群れに放った。


 すると、黒ゴブリンの群れ三千匹の内、後方にいた千五百匹ほどが操られたように前方の味方に襲い掛かったのだ。


 背後から唐突に仲間たちから攻撃された黒ゴブリンたちは混乱して同士討ちが始まった。


「な、なんだ!? 奴らはいったいどうしたというのだ?」


 キルは戸惑うような表情を浮かべている。


 シルルンは前方から突撃してくる魔物の群れにも怒りの思考をぶつけると、突っ込んできていた魔物の群れ千匹ほどが反転して魔物の群れと戦いだしたのだ。


「あぁん? 何で魔物の群れがいきなり反転して俺たちを守るように戦いだしたんだ?」


 ダイヤの言葉に、はっと我に返ったシルルンは状況を考察する。


「……これは僕ちゃんが無意識に『魔物号令』を発動した結果だと思うよ」


「『魔物号令』? なんだそれ?」


「僕ちゃんより弱い魔物に命令できる能力だよ……けど、これほどの数を操れるとは思ってなかったから軽視してたんだよね……」


「なっ!? 魔物を操るだと!? 最強じゃね~かっ!!」


 ダイヤの言葉にザラとシーラも無言で頷いている。


「……まぁ、かなり強い能力だとは思うけど最強ではないね」


「ま~っ……ま~っ……」


 マーニャが悲しそうな声で鳴きながら石になったペーガを前脚で揺すっている。


「プニがいれば一発で治せ……あっ!? もしかしたら紫色の果物で治せるかもしれない!!」


 シルルンは魔法の袋から紫色の果物を取り出して、手で握りつぶして汁をペーガにかけると、石化が解けてペーガはキョロキョロして戸惑っている。


「ぺッ!? ペペッ!! ペペッ!!」


 ペーガは瞳をうるうるさせてシルルンの胸に飛び込んで鳴いている。


「あはは、怖かったんだね……果物で治って良かったよ」


「ま~っ!!」


 マーニャもシルルンの胸に飛び込んできてペーガに頬ずりしており、シルルンはペーガとマーニャの頭を優しく撫でた。


 ペーガとマーニャはとても嬉しそうだ。


「よぉ~し!! じゃあ進もうか!!」


 シルルンたちは『魔物号令』で操っている千匹の後についていき、数が減れば再び『魔物号令』で操り、四つのルートが交わる激戦地点を悠々と抜けたのだった。

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[一言] 紫の果物があって良かったよ。 そして、万能かよ!
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