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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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143 上層⑩


 ハイ オークたちを倒した精鋭たちは次々とシルルンの元に戻り、シルルンは『反逆』を解除した。


 精鋭アメーバたちが「死体を食べたい」と思念で強請り、シルルンが了承すると精鋭アメーバたちはうれしそうに死体の元に駆けて行く。


 だが、精鋭スタッグ ビートル10匹中、2匹がハイ オークたちを倒した場所から動いておらず、突如、白い輝きに包まれた。


 その輝きは一瞬で精鋭スタッグ ビートル2匹は6メートルを超える巨体になっていた。


「うおっ!? し、進化しやがった!!」


「あははっ!! 追い風だよ!!」


 シルルンは喜びに打ち震えた。


 ハイ スタッグ ビートルに進化した2匹がシルルンの元にやってくる。


「こんなに早く上位種に進化できたのはマスターのおかげです。ありがとうございます!!」


「うむ。我もそう考えていた。さすがは我らのマスターですな」


 2匹のハイ スタッグ ビートルが思念でシルルンに言った。


「あはは、最高のタイミングで進化してくれて助かったよ。それになかなか流暢に話すね。君たちは僕ちゃんのペットじゃなくても上位種に進化してたら自我意識に目覚めてたかもね」


「褒めていただいてうれしく思います」


「有難き幸せ」 


「ふ~ん、片方は優しい感じで、もう片方は堅い感じだね。で、君たちの名前なんだけどハサミンとカティンのどっちがいい?」


「私はカティンでお願いします!!」


 優しい感じのハイ スタッグ ビートルが間髪を容れずに思念で返した。


「えっ!?」


 反応が遅れた堅い感じのハイ スタッグ ビートルは困惑して固まった。


「じゃあ、君はカティンで、自動的に君はハサミンだね」


「……ハ、ハサミン?」


 堅い感じのハイ スタッグ ビートルは一瞬呆然としたが、思わずカティンを見つめた。


「良い名前をつけて頂きありがとうございます」


 カティンは堅い感じのハイ スタッグ ビートルと視線を合わさずにしれっと言った。


「……」


 (こ、こいつ……)


 堅い感じのハイ スタッグ ビートルはカティンを睨みつけた。


「うん、気に入ってもらえて良かったよ。ハサミンも気に入ったかい?」


「……ご、ご再考を……我はもう少し強そうな名前を望んでおります」 


「えっ~~~っ!? ハサミン良い名前なのにもったいないなぁ……じゃあ、ガシガシはどう?」


「……」


 堅い感じのハイ スタッグ ビートルは押し黙ったままだ。


「……う~ん、強そうな名前……ガシガシがダメならチョンパはどう?」


「……」


「……う~ん、ならキルはどうかな?」


「――っ!? キルこそ我が待ち望んでいた名前です!! さすがマスターですな!!」


「ふぅ~、じゃあ、君の名前はキルだね」


 シルルンは額から流れる汗を腕で拭って安堵したが、カティンとキルは少しだけ不仲になった。


 オーク種の死体を『捕食』していた精鋭アメーバたちがシルルンの傍に帰還し、シルルンは魔法の袋から大量の果物を取り出し、ペットたちに食べさせるとペットたちの体力が全快した。


「よぉ~し!! 黒亜人の背後を貫いて外に出るよ!!」


「あぁん? 突撃はしないんじゃなかったのか?」


「マーニャたちが来たから状況が変わったんだよ」


 シルルンは魔法の袋から大量の果物を取り出して、アメーバたちに『捕食』させて体内で保管させた。


「その果物は道中で危なくなったら食べてもいいし、スタッグ ビートルたちも危なくなったらアメーバたちからもらって食べるんだよ」


 シルルンの言葉にペットたちは頷いた。


「じゃあ、陣形を変えるよ」


 シルルンはスタッグ ビートルたちでアメーバ50匹を囲む陣形に変えた。


「前衛は僕ちゃんとマーニャたちでやるからついてきてね」


 シルルンは魔法の袋からアダマンタイトソード、氷撃の剣、水撃の弓を取り出して、右手にアダマンタイトソード、左手に氷撃の剣、空中に水撃の弓が浮いている。


「突撃っ!!」


 シルルンは『反逆』を発動し、シルルン自身とマーニャたちのステータスが跳ね上がり、黒亜人の群れに目掛けて突撃する。


「まーっ!!」


「プリュウ!!」


「メェ~!!」


「ペペ!!」


 マーニャたちもシルルンを追いかけて突撃し、ペットたちもそれを追いかけた。


 黒亜人の群れに突っ込んだシルルンは両手に持った剣で黒亜人たちを斬り裂きながら、『念力』で操作した水撃の弓で『十六連矢』を放ち、16発もの水弾に次々と貫かれて黒亜人たちは即死していく。


 マーニャとメーアがシルルンの横に並んでマーニャは『炎刃』を放ち、メーアは『炎のブレス』を吐いて、炎の刃と灼熱の炎に焼かれた黒亜人たちは一瞬で炭になって即死する。


 突き進むシルルンたちの左後方の空中からドーラが『炎のブレス』を吐き続けており、灼熱の炎で黒亜人たちを焼き殺し、ペーガも右後方の空中から『風閃』を放ち、とんでもない突風が黒亜人たちを貫き即死させ、シルルンたちの突撃を援護して道を広げていく。


 背後を突かれた黒亜人たちは為す術なく一方的に倒されていき、背後から迫るシルルンたちに気づいて次々に逃げ出して黒亜人の群れは二つに割れて道ができた。


 そこにカティンとキルが率いるペットたちが突っ込んでいく。


「カティン!! 貴様だけには絶対に負けんぞ!!」


 キルは怒りをぶつけるように巨大な大顎で黒亜人たちを切断しながら突き進んでいく。


「先ほどは申し訳ないとは思っていますが、マスターに褒められるのは私です」


 カティンもその言葉使いとは裏腹に巨大な大顎で荒々しく黒亜人たちを貫き、切断して突き進む。


「マスターに褒められるのは我だ!!」


「私です!!」


 2匹は競い合いながら黒亜人たちをバラバラに切断していく。


 黒亜人たちは恐怖のあまりに逃げ出し、ペットたちがシルルンたちについていくのは簡単だった。


「『破壊光線』!! どこを見ても敵ばかりで圧巻だなっ!!」


「『石槍』!!」


 ダイヤは『破壊光線』を撃ちまくっており、ザラも『石槍』を連発している。


「……わ、私はとても怖いです」


 シーラはガタガタ震えながらシルルンを追いかけている。


 黒亜人の群れを貫いたシルルンたちの視線の先に巨大な部屋の出口が見えた。


「よし、ついてきてるね。外に出るよ!!」


 シルルンは振り返ってペットたち無事を確認してから巨大な部屋から外に出た。


 すると外では左右に分かれて魔物の群れが戦いを繰り広げていた。


「ん? 僕ちゃんたちには気づいていないみたいだね」


 シルルンは速度を落としゆっくりと進んでいくが、視線を感じて振り向いた。


 そこには6メートルを超えるミスリルの装備で身を包んだ巨人が訝しげな顔でシルルンを見ていたが、すぐに戦場に視線を戻した。


「や、やべぇ……オーガ ロードがこっちを見てたよ……」


 シルルンは『魔物解析』でオーガ ロードのステータスを視て顔が蒼ざめた。


「あぁん? オーガ ロード? そいつは強ぇのか?」


「……うん、強いよ。ステータスで言ったらエンシェント級だからね」


「あぁ? エンシェント? なんだそれ?」


「まぁ、一言で言ったら人族の切り札である勇者ですら勝てるかどうか分からない魔物のことだよ」


「なっ!? マ、マジかよ、そんなのがいやがるのか……」


「まぁね……でもオーガ ロードは右側の黒亜人の指揮を執ってるから襲ってはこないと思うけど……」


 右側で戦っているのはオーガ ロードが率いる100匹ほどのハイ オーガで、その相手は1000匹ほどのケンタウロス種の群れだった。


 ケンタウロス種は人族のような姿をしているがそれは上半身だけで下半身は馬のような姿をしており、遠距離から弓で矢を放ちハイ オーガの群れを攻撃している。


 その矢の攻撃のほとんどは大盾により弾かれているが、中には閃光のような矢弾も交ざっており、それを大盾で受けたハイ オーガが後方に下がってしまうほどの威力なのだ。


「なんかとんでもない威力の矢が交ざってるな」


「うん。200匹ほどが上位種なんだよね。その上位種が持ってる『閃光矢』と『連矢』の組み合わせだね。ていうか、人型だからか人族みたいな戦い方をしてるのに驚いてるよ」


 ハイ オーガたちは大盾を前面に出して前進しようとするが、ハイ ケンタウロスが放つ『閃光矢』を大盾に受けて押し戻されている。


「うがぁあああああああああああああああぁぁぁぁ!!」


 だが、その状況に痺れを切らした1匹のハイ オーガが大盾を前面に出して突撃しながら咆哮した。


「な、なんだあいつ!? 狂ったように速くなりやがった!!」


「あれはステータスが3倍以上に跳ね上がるダークネスの魔法だよ」


「マジかよ……」


「だけど理性を失って暴走するんだけどね」


 暴走したハイ オーガは大盾を投げ捨てて凄まじい速さでケンタウロス種の群れに目掛けて突撃する。


 ケンタウロス種が一斉に狙い撃ちするが、ハイ オーガは全ての矢を躱してケンタウロス種の群れに一気に肉薄して斧を振るう。


 一瞬で50匹ほどのケンタウロス種が斬り殺されるが、魔法を受けたハイ オーガの動きが元の速さに戻り、槍や剣で武装したハイ ケンタウロスに囲まれて滅多切りにされて血飛沫を上げて即死した。


「なかなか熱い特攻だったが殺られちまったな……」


「……亜種のケンタウロス メイジがディスペルの魔法でダークネスの魔法を掻き消したんだよ」 


「なっ!? そんな魔法があるのか……」


 オーガ種とケンタウロス種との戦いは再びケンタウロス種が遠距離から一方的に矢を放つ展開に戻り、シルルンは左側の戦いに視線を向けた。


「や、やべぇ!? ハ、ハイ ヘドロがいるよ……」


 シルルンは雷に打たれたように顔色を変える。


「……確か『物理無効』を持ってるんだよな?」


「うん、その通りだよ……」


 左側で戦いを繰り広げているのは10匹のハイ ヘドロと2000匹ほどのメデューサ種だった。


 メデューサ種は人族のような姿をしているが頭髪が蛇の魔物なのだ。


「こっちは面白いなぁ!! やっぱり近接戦闘は見ごたえがあるぜ」


 メデューサ種は300匹ほどでハイ ヘドロと正面から戦いを繰り広げており、メデューサ種の瞳を見たハイ ヘドロは石化して動きが止まり、さらに爪で切りつけられると『麻痺』や『猛毒』に犯されてハイ ヘドロはもがき苦しんでいる。


 だが、ハイ ヘドロはスロー魔法やカースの魔法を唱えてメデューサ種の動きを鈍らせて『触手』で殴り、メデューサ種は20を超える状態異常に犯されて、耳をつんざくような奇声を上げて即死するか、地面をのた打ち回って苦しんだ挙句にハイ ヘドロに『捕食』されるのだ。


「……すげぇ壮絶な戦いだな」


「うん、だけどこのままいけば数が多いメデューサ種が勝つだろうね……」


 しかし、終わってみれば300匹ほどいたメデューサ種は全滅し、ハイ ヘドロは健在だった。


「なぁ? ハイ ヘドロは石化してなかったか? 奴らは状態異常に陥っても勝手に回復するのかよ?」


「いや、ハイ ヘドロはそんな能力を持ってないから僕ちゃんもおかしいと思ってたんだよ」


 シルルンは頭を傾げながら試しにハイ ヘドロの周辺を『魔物探知』で探ってみると、ハイ ヘドロの後方に2匹の魔物の反応があった。


「ひぃいいいいぃ!? ハイ ヘドロの亜種がいるよ!! 『擬態』で姿を隠してたんだよ!! ハイ ヘドロ グレート……こんな亜種のパターンもあるんだ……」


「そいつが状態異常を治してたのか?」


「うん、そうだけどグレートというだけあってハイ ヘドロよりも遥かに厄介な化け物になってるよ」


「あぁ? どう厄介なんだよ?」


「まず、物理、魔法、能力、魔導具による攻撃が反射するから攻撃手段がないんだよ」


「なっ!?」


 これにはダイヤはおろかザラもシーラも絶句した。


「それに魔法や能力もいっぱい持ってるけど『魔法必中』とストップの魔法がヤバイ……この組み合わせは高確率で動きが止められてしまうからね……」


「……マ、マジで化け物だな」


「だね……現時点では勝てる気がしないよ」


 だが、再びメデューサ種は300匹ほどでハイ ヘドロに向かって突撃した。


「……ば、馬鹿なんじゃないのかあの蛇頭は?」


「おそらくハイ ヘドロ グレートの存在を知らないから勝てると思ってるんだよ」


 シルルンたちは左右の戦いを横目にしながらゆっくりと進んで静かに戦場を後にしたのだった。

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