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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
大穴攻略編

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14 ドレドラ将軍 修

 

 大穴へと続く坂の工事が完了し、軍が大穴を囲む柵内への入場を許可した。


 そのため、柵内には大勢の商人たちが押し寄せて露店が並んでおり、キャンプ村から娼婦たちが殺到して賑わっている。


 大穴に立ち入るには冒険者ギルドが発行する許可証が必要であり、許可書を受け取るということは命の保証はないということだ。


 だが、興味本位で大穴に進入しようとする者たちが続出し、屈強な門番たちに遮られていた。


 一方、ロレン将軍の命により、Aポイントからドレドラ将軍(准将)が兵士千名を率いてA1ポイントに向けて出陣した。


 十二時間後にヒーリー将軍(准将)が兵士千名を率いて出陣し、A1ポイント占領後にバルレド将軍(少将)が【上級兵士】千名を率いて出陣予定なのだ。


 上級兵士たちの中には最上級職である【聖騎士】たちの姿もあり、冒険者たちはどのタイミングで出発しても構わないとの指示が軍から発せられていた。


「よし! 俺たちは追従するぞ!! 続け!!」


「てめえら、気合入れてくぞコラッ!!」


「俺たちも行くぞ!!」


 冒険者たちの隊長が号令を掛けて、仲間たちを率いて軍に追従していく。


「今回の相手は魔物だ……楽勝だろ? たっぷり稼げよ出発だ」


 傭兵隊長は見下すような冷笑を浮かべており、傭兵たちが嘲うようにニヤニヤしながら軍に追従していく。 


 そして、それぞれの隊長たちが檄を飛ばし、半数以上がドレドラ将軍に追従したのだった。


「スラッグの旦那、俺たちはどうしますかい?」


 ベータは探るような眼差しをスラッグに向ける。


「最初から成り行きを見たいからな……当然追従だ」


 スラッグは真剣な硬い表情を浮かべている。


 彼は護衛としてベータを雇っており、ベータを隊長として他に五名の冒険者がスラッグを護衛する。

 

 他にはスラッグの女奴隷秘書五名も同行している。


 奴隷には種類があり、その違いは奴隷証書の有無である。


 奴隷証書とは奴隷契約を結ぶ証書のことで、奴隷証書で契約を交わしていない奴隷は主人の命令に背くことが可能だ。


 だが、奴隷証書で契約した奴隷は死に繋がるような命令は以外は背くことが不可能で、主人を裏切ることができなくなるのだ。


 つまり、奴隷証書自体に特殊な力があるということである。


 奴隷証書で契約するには、奴隷証書の上に手を置いて「あなたの奴隷になります」と宣言すると契約は完了する。


 奴隷証書は二枚に分かれて主人と契約した奴隷の胸の中に吸い込まれるが、本人の意思でのみ奴隷証書を取り出すことできるのだ。


 奴隷証書の種類は一年契約と永久契約の二種類がある。


 奴隷屋で販売されている奴隷の大半が永久契約で、一年契約は博打などによる借金返済に多くみられる。


 さらに奴隷証書には特記事項があり、そこに書かれた内容は命令できない仕組みになっている。


 例えば、性交渉不可や転売不可など特記事項が増える度に、奴隷証書自体の値段が上昇することになる。


 一年契約奴隷証書 十万円

 永久契約奴隷証書 五十万円

 特記事項一点追加 十万円


 上記の値段は国や店によって変動する。  


 スラッグの女奴隷秘書たちの全員が危機的状況の中、スラッグに助け出されたという経緯があった。


 そのため、女奴隷秘書たちは恩を返す為にスラッグの仕事を手伝いたいと申し出たが、ギルドマスターであるスラッグは機密情報を扱う立場なのでこれを断った。


 だが、彼女たちは奴隷証書を持参して、スラッグに哀願したのでスラッグは仕方なく了承したのだ。


 女奴隷秘書たちの奴隷証書の種類は一年契約で、性交渉不可の突起事項が追加されていた。


 そして、一年が経過して女奴隷秘書たちは契約の更新をスラッグに申し出たが、スラッグは信用できると考えて彼女たちの更新は必要ないと判断した。


 しかし、それをスラッグの妻が許さなかった。


 端整な顔立ちのスラッグは女性に人気があったが、妻は絶世の美女で競争率は高く高嶺の花だった。


 だが、彼は意を決して告白し、妻のハートを射止めたのだ。


 スラッグは彼の同僚たちから非難の嵐にさらされたが、彼は心の底から嬉しかったのだ。


 ところが、結婚して二年も経たずにスラッグの妻の体重が百キログラムを軽く超える巨漢に変貌し、「給料が安い」「食い物が不味い」「死ぬ気で働け」などの罵倒が連日続いた。


 さらに、スラッグが女奴隷秘書を家に連れ帰った際には妻は逆上してスラッグを半殺しにしたのだ。


 スラッグから経緯を聞いた妻は納得したが、女奴隷秘書たちを自分の世話にばかり使っていた。


 それでも、スラッグは泣かなかったという。


「旦那はいいよなぁ、こんな美人な奴隷が五人もいてよぉ。俺にも一人ぐらい分けてくれよ」


 ベータは冗談交じりにスラッグに言った。


「奴隷だが恋愛は自由だ」


 スラッグは当たり前のように言った。


「マジかよ!?」


 大きく目を見張ったベータは金髪でスレンダーな女奴隷秘書の前に立つ。


「どうか俺と付き合ってくれ」


 頭を深々と下げたベータは唐突に告白した。


 だが、金髪でスレンダーな女奴隷秘書は「ペッ!!」と唾を地面に吐いてベータは失恋に終わった。


「ぎゃははははっ!! なにいきなり振られてるんだよ!!」


 ベータの部下たちが大爆笑し、ベータは赤面して頭を掻いた。


「隊長さんよぉ、あんた腕はいいが顔は並以下なんだから分を弁えないといけねぇぜ」


 ベータの部下がにやけた顔で忠告する。


「……お前とあんまり変わらんだろ?」


 ベータは不服そうに部下に反論した。


「いや、あんたはぶっちぎりだよ!!」


「ぎゃはははっ!!」


「あんた正気かよっ!?」


 一瞬面食らってぽかんとした部下たちは腹を抱えて笑い転げている。


 ベータはその夜、生まれて初めて枕を濡らしたのだった。





















 ドレドラ将軍率いる千名はA1ポイントの部屋の前に到着した。


 ドレドラ将軍は側近に指示を出し、側近は即座に五十名の部隊を六隊編成して部屋の中に突入させた。


 六つの部隊は部屋の出入り口を半包囲するように展開し、ドレドラ将軍は兵士百名を率いて部屋の中へと進軍して六つの部隊が展開する中央に本陣として布陣した。


 残りの兵士六百名は洞穴内に留まり、指示があるまで待機する。


 部屋の中央には五百匹を超える魔物の群れが佇んでおり、その魔物の群れが兵士たちに向かって一斉に突撃した。


 魔物たちの先頭はハイ ラットで固められており、その数は百を超えていた。


 ハイ ラットの全長は二メートルほどで上位種としては弱い部類の魔物だが、【兵士】を上回る程度の強さは備えている。


 ハイ ラットたちの突撃を兵士たちはかろうじで受け止めたが包囲陣は崩れかけており、そこにレッサー ラットたちが噛み付き攻撃を間断なく兵士たちに繰り返す。


 さらに天井を駆けきたレッサー モールたちやレッサー ラットたちが包囲内に飛び込むと同時に、アースワーム種たちが本陣の地中から姿を現して兵士たちの脚に絡みつく。


「ちくしょう!! 放せ!!」


「前からも来るぞっ!!」


「うわあぁあああああぁっ!!」


 アースワーム種たちに気を取られていた本陣の兵士たちは、天井から飛び込んだレッサー モールたちやレッサー ラットたちに強襲されてパニック状態に陥った。


「下にばかり気をとられるなっ!! 上からも来るぞ!!」


 側近が険しい表情で声を張り上げる。


 天井を駆ける魔物の群れは次々に本陣に飛び込んで兵士たちに噛み付き、兵士たちはバタバタと倒れていく。


 しかも、魔物の群れは三本の洞穴からとどまることなく溢れ出てきている状況だ。


「ええぃ、怯むなっ!! 【弓兵】を出撃させて天井の魔物を撃ち殺せっ!!」


 ドレドラ将軍は側近に命令し、側近は即座に弓兵を出撃させる。


 洞穴に待機していた弓兵百名は、部屋の中に突入して天井の魔物に目掛けて一斉に矢を放つ。


 無数の矢は天井を駆ける魔物の群れに突き刺さり、一撃では死なないものの魔物の群れは包囲内に墜落し、本陣の兵士たちは混乱から回復した。


「よし!! 俺たちは包囲内に落ちてくる魔物を狩るぞ!!」


 傭兵隊長は号令をかけて、傭兵たちは包囲内に入って天井から落下してくる魔物たちを囲んで倒していく。


「俺たちも行くぞ!!」


 冒険者の隊長が声を張り上げて、冒険者たちは包囲内の魔物たちに突撃した。


「俺たちは弓兵を守るぞ!」


 別の冒険者の隊長が叫び、冒険者たちは弓兵部隊の前に出て魔物たちの動きを警戒する。


 これを皮切りに、洞穴内で静観していた冒険者たちや傭兵たちが次々に包囲内に入って戦闘を開始した。


 これにより、崩れかけた包囲陣が修復されて、ドレドラ将軍は傷ついた兵士を洞穴内に運び込ませて前衛を入れ替える。


 しばらくすると魔物の増援が止まり、ドレドラ将軍はA1ポイントの制圧に成功したのだった。


 軍の死者数は百名を超え、負傷者は四百名を超える接戦だった。


 だが、部屋の制圧には成功したが先に続く三本の洞穴から魔物が出現し、これを冒険者たちや傭兵たちが狩り続けている状況だ。


「ひゃははは!! 稼ぎ時だ!! どんどん殺せ!!」


「いらっしゃい!! そして死ねっ!!」


「ぎゃはははっ!! 笑いが止まらんぜっ!!」


 洞穴の前で傭兵たちが洞穴を半包囲して、洞穴から出てくる魔物を次々に殺しており、残り二つの洞穴の前も同様だ。


 三本の洞穴は右から


 A1aルート

 A1bルート

 A1cルート


 と名付けられた。


「各ルートに百名編成で偵察を出せ」


 ドレドラ将軍は側近に命令し、側近は即座に三部隊を編成して洞穴へと送り出した。


 しばらくすると、ヒーリー将軍率いる兵士千名がA1ポイントに到着する。


 だが、ドレドラ将軍から戦況報告を受けたヒーリー将軍は百名もの死者が出たことに対して驚きを隠せなかった。


 各ルートに偵察を出したことにより、洞穴から魔物が出現することはなく、冒険者たちや傭兵たちは洞穴の前で休息していた。


 しかし、A1cルートから魔物が出現し、魔物の数は少数で傭兵たちに瞬殺されたが、彼らは洞穴から魔物が現れたことを軍に報告した。


「馬鹿なっ!! 偵察隊が全滅したのか!? 洞穴にはとんでもない化け物がいるやもしれん」 


 ドレドラ将軍は考え込むような顔をした。


「おそらくそうでしょうね……」


 ドレドラ将軍の言葉に、ヒーリー将軍は同調して頷いた。


「だが、どうする? 兵の数を増やしたところで狭い洞穴の中では意味がない」


「では、逆に出てくるのをここで迎え討つのはどうでしょうか?」


「……うむ、さすがヒーリー将軍だ。その策でいくとしよう」


 ドレドラ将軍はヒーリー将軍の提案を受け入れ、A1cルートへの再偵察を見送り、他のルートからの偵察が帰還するのを待つのだった。





































 A1aルートに進軍した偵察隊百名は五十キロメートル地点で部屋を発見した。


 部屋の広さは直径五百メートルほどで、魔物の群れは三十匹程度だった。


 偵察隊は魔物の群れを即座に殲滅し、部屋を調べると先に続く洞穴が三本掘られていた。


 だが、それとは別に直径十メートルほどの部屋が十箇所発見された。


 その部屋の中には様々な死体が乱雑に積まれており、その中の一箇所で軍の支給品や学園の制服、そして人の骨が大量に発見されたのだ。


 つまり、この部屋は魔物の食料庫だった。


 これを目の当たりにした兵士たちの顔は殺気に満ちており、彼らは今にも叫びだしたい衝動を必死に抑えていた。


「お前らの気持ちは痛いほど分かる。だが、ここにある遺品を家族の元へ届けるのが我々が第一にすることではないか? 魔物への報復はその後からでも遅くはあるまい」 


 だが、そう兵士たちに語りかける偵察隊隊長の顔も憎悪と怒りで酷く歪んでいた。


 偵察隊は全ての遺品を回収し、A1ポイントに帰還したのだった。


 一方、 A1bルートに進軍した偵察隊百名は、五十キロメートル地点で部屋を発見したが即座に引き返した。


 部屋に魔物の大群がいたからだ。


 しかも、そのほとんどがアント種だった。


「この大穴の主は虫の魔物とも共存しているのか……」


 偵察隊隊長は戦慄を覚えて、速やかに撤退したのだった。




















 A1cルートに進軍した偵察隊百名は、軍首脳部に全滅したと思われていたが健在だった。


 彼らは二十キロメートルほど進軍した地点で、上方向に伸びる洞穴を発見したのだ。


 つまり、洞穴は分岐していたのだ。


「ぬう、引き返すべきか……」


(いや、それでは偵察の意味がない……だが上に繋がっている洞穴はどうするべきだ? 隊を二分するとリスクも上がる……)


 偵察隊隊長は上方向に伸びる洞穴を放置する判断を下して先に進んだ。


 だが、この時点で彼は分岐する洞穴の存在を知らせるために後方に斥候を放っていたのだ。


 しかし、斥候は上方向に伸びる洞穴から出現した魔物たちに背後から襲われて死亡したのだった。


 そのため、軍首脳部に情報が伝わらず、A1ポイントに魔物が出現する事態に陥ったのだ。


 偵察隊は五十キロメートル地点で部屋を発見した。部屋の広さは直径五百メートルほどで魔物の数は二十匹ほどだった。


 即座に部屋の中に突撃した偵察隊は魔物の群れを瞬殺し、部屋の調査を始めた。


「な、なんか臭くないか?」


「だ、だよなぁ……俺もさっきから臭うんだが……」


 眉を顰めた兵士たちは手で鼻を塞いだ。


「お。おえぇぇぇ!!」


 唐突に兵士の一人が歩きながら嘔吐した。


「この臭いは何なんだよっ!?」


「臭すぎるだろっ!!」


「臭ぇ!? 臭ぇ!! 超臭ぇ!!」


「鼻で息をするなっ!! 口で息をしろっ!!」


 激臭に顔を歪める兵士たちは絶叫した。


「……」


 鼻で息をするのをやめた兵士たちは手で鼻を塞いで立ち止まる。


「ぐっ、今度は目が痛い」


「め、目が痛いっ!! 目がぁああぁぁ!?」


「目を閉じろっ!!」


 あまりの激臭に兵士たちは目が充血して涙を流し、目をあけてはいられなくなった。


「お、おええぇぇ!!」


「おえっ!」


 兵士たちは鼻を手で塞いで目を閉じているにも拘わらず、地面に次々と倒れて突っ伏したまま嘔吐する。


「絶対におかしいだろ……」


「ど、毒ガスの類じゃないのか?」


 兵士たちは困惑した表情を浮かべている。


 それでも彼らは進軍を継続するが臭いは激しくなる一方で、口から泡を吹いて倒れる者や、白目を剥いて失神する者が続出して進軍が止まった。


「ぬう、何をしておるっ!! 進軍だ進軍っ!!」


 偵察隊隊長は怒りの形相で兵士たちに命令した。


「……こいつ頭おかしいだろ」


「いかれてやがる……」


 忌々しげな表情を浮かべる兵士たちが視線を偵察隊隊長に転じると、偵察隊隊長は苦悶の表情を浮かべて歯を食いしばっていた。


 この時点で、偵察隊隊長は意識を失った者たちや体調不良の者たちは洞穴まで撤退させており、兵士たちは脱落者を大勢出しながらも部屋の中央まで進軍すると、そこには二メートルほどの山が無数に点在していた。


 兵士たちは山を調べると、その山は魔物の糞だった。


 つまり、この部屋は魔物たちの便所だったのだ。


 すると、無数の糞の山から魔物が這い出してきた。


「な、なんだこの化け物はっ!?」


 その光景を目の当たりにした兵士たちの顔が驚愕に染まる。


「うわぁあああああああああぁぁ!!」


「ぎゃぁあああぁぁあああああああぁぁぁ!!」


「た、助けてくれっ!!」


 魔物の群れは次々に兵士たちに襲い掛かり、兵士たちを糞の中へと引きずり込んでいく。


 この魔物の正体はレッサー ヘドロだった。


 ヘドロ種は『物理耐性』と状態異常の魔法や能力を多数所持している魔物だ。


 『物理耐性』は物理攻撃を六十パーセントの確率で無効できる能力である。


「ど、どうしたんだ!?」 


「お、おいっ!! 何をする!? やめろっ!!」


 唐突に数人の兵士たちが抜刀し、困惑して後ずさる兵士たちに襲い掛かる。


「ぎゃあああぁぁぁ!?」


「うぎゃぁああああぁぁ!!」


 レッサー ヘドロたちの『幻惑』により、混乱した兵士たちは剣で兵士たちの首を斬り落とした。


「……く、来るなっ!!」


 兵士は真っ青な顔をして後ずさる。


 無数にある糞の山から続々とレッサー ヘドロとヘドロが這い出てきて、兵士たちに襲い掛かる。


 ヘドロ種の群れは兵士たちに目掛けて一斉に『強酸』や『溶解液』を放ち、液体を浴びた兵士たちの身体は一瞬で溶け落ちて、兵士たちは即死した。


 兵士たちは必死の形相で逃げ惑うがヘドロ種の群れは兵士たちに襲い掛り、兵士たちを次々に糞の山の中へと引きずり込んでいく。


「全軍撤退!!」


 偵察隊隊長が声を張り上げ、兵士たちは背を向けて一斉に走り出した。


 だが、逃げ遅れた兵士二人がレッサー ヘドロの群れに囲まれた。


「た、助けてくれっ!!」


「クソがっ! どけっ!! 来るなっ!!」


 兵士たちは恐怖に顔を歪めて叫んだ。


 偵察隊隊長は迷うことなくレッサー ヘドロの群れに突撃し、兵士たちは包囲を突破することに成功した。


 だが、今度は偵察隊隊長がレッサー ヘドロの群れに囲まれていた。


「た、隊長っ!?」


 悲痛な声を上げた兵士たちは決死の表情を浮かべてレッサー ヘドロの群れに突撃しようとした。


「来るなっ!! 行けっ!!」


 恐ろしく真剣な面持ちで偵察隊隊長は言い放った。


 偵察隊隊長はレッサー ヘドロに向かって突進し、剣を振るってレッサー ヘドロを斬ったが、レッサー ヘドロは全くダメージを受けていなかった。


 レッサー ヘドロは『溶解液』を吐き、液体を浴びた偵察隊隊長は下半身が溶けて崩れ落ちた。


「……生き延びろよ」


 偵察隊隊長は瞳に強い意志を込めて兵士たちをを見上げたが、レッサー ヘドロに食いつかれて糞の中へと消えていった。


「た、隊長……」  


 愕然としていた兵士たちは意を決して身を翻し、部屋の出入口を目指して全力で走った。


 ヘドロ種たちは意外にも足が速く、撤退する兵士たちを執拗に追いかけるが、兵士たちは命からがら部屋からの離脱に成功した。


 だが、洞穴には半数ほどの兵士たちが激臭による体調不良で待機していた。


「早く逃げろっ!! 走れ走れっ!!」


 鬼気迫る表情の兵士たちが休憩していた兵士たちの横を駆け抜けていく。

 

 休憩していた兵士たちは訝しげな顔で振り返ると、そこには二十匹ほどのヘドロ種が接近していた。


「な、なんだあの魔物はっ!?」


「うわぁああああああああぁぁぁ!!」


 驚愕した兵士たちは我先にと逃走したが、ヘドロ種の執拗な攻撃の前に帰還できた者はごく少数だった。



















 C1ポイントから進軍したC隊千名は、三十キロメートル地点で部屋を発見した。


 その部屋の広さは直径三百メートルほどで、魔物の数は三百匹ほどだった。


 迷わずC隊は突撃したが、ラットが五十匹、モールが十匹ほどいたのでその戦いは苛烈を極めた。


 C隊は制圧には成功したが、この戦いによる死者数は二百名を超え、負傷者は四百名にも及んだ。


 負傷者は毒や麻酔によるものが大半を占めており、毒は出血毒なので毒消しでの治療は可能だが、麻痺には毒消しは効果が無く、キュアの魔法による治療が必要だ。


 だが、C隊には【僧侶】がおらず、自然回復するにはかなりの時間を要することになる。


 この部屋から先に繋がる洞穴は一本だけで、C隊隊長はこの部屋をC2ポイント、先に続く洞穴をC2ルートと名付けた。


 負傷者が回復次第、C隊は八百名でC2ルートに進軍するのだった。


挿絵(By みてみん)

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アースワーム レベル1 全長約4メートル

HP 400~

MP 10

攻撃力 10

守備力 50

素早さ 20

魔法 無し

能力 巻きつき HP回復



ハイ ラット レベル1 全長約2メートル

HP 300~

MP 100

攻撃力 160

守備力 100

素早さ 100

魔法 無し

能力 統率 毒爪 毒牙


ハイ ラットの毛皮 1500円


レッサーヘドロ レベル1 全長約1メートル

HP 200~

MP 50

攻撃力 20

守備力 20

素早さ 50

魔法 スリープ

能力 捕食 悪臭 毒 溶解液 幻惑 HP回復 酸 物理耐性



ヘドロ レベル1 全長約2メートル

HP 400~

MP 100

攻撃力 40

守備力 40

素早さ 100

魔法 スリープ ダークネス

能力 捕食 激臭 毒 溶解液 幻惑 HP回復 強酸 物理耐性

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[良い点] うんこつえええええ!!!
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