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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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137/302

137 上層⑤ 修


 シルルンたちは巨大な岩が散在する地点を進軍していた。


「ていうか、オーガキャンプの時もそうだったけど、入り組んだ場所が好きだね黒オーガたちは……」


「さっきの奴らの拠点を叩くのか?」


「うん。けど、どのくらいの数がいるか分からないからまずは戦ってみないとね」


 シルルンたちは先導する3匹のスタッグ ビートルを追いかけながら進んでいくと、並び立つ巨大な岩が見え始めて、その巨大な岩の前でスタッグ ビートルたちが待っていた。


 巨大な岩の間には5メートルほどの隙間があり、ペットたちを待機させたシルルンは隙間を覗き込んでみると巨大な洞穴が開いており、5匹の黒ゴブリンが見張りについていた。


「よし、乗り込むよ!! 精鋭たちは突撃して入り口周辺を征圧!!」


 シルルンの命令により、スタッグ ビートル10匹とアメーバ10匹が洞穴に向かって突撃して、見張りの黒ゴブリンたちはスタッグ ビートルたちに大顎で体を分断されて血飛沫を上げて崩れ落ち、精鋭たちが洞穴内部に侵入する。


 彼が言う精鋭とはシルルンが最初にテイムした10匹の個体のことで、強い個体を選んでテイムしているので通常種の中でも高レベル、高ステータスなのである。


「僕ちゃんたちも突入するよ!!」


「だ、大丈夫なんですか!?」


「そんなの分からないよ。やばかったら撤退するだけだよ」


 シルルンはペットたちを率いて洞穴に突入すると、洞穴内部は彼が思っていた以上に広かった。


 通路の幅と高さは10メートルを超えており、シルルンたちが通路を抜けると開けた部屋があり、その部屋には100匹ほどの黒亜人の姿があった。


 精鋭たちと黒亜人たちは対峙しているが、彼らの表情は驚愕に染まっていた。


 彼ら攻め込む側であり、拠点内に攻め込まれたのはこれが初めてだからである。


 シルルンたちが部屋に侵入したことによって黒亜人たちは我に返り、精鋭たちに突撃して戦端が開かれた。


「……く、臭ぇ!?」


 シルルンはあまりの腐臭に目が潤んで吐きそうだ。


「えっ!? そんなに臭いんですか? 私はそんなに臭いませんけど……」


「俺もそんなに臭わないぞ」


「マ、マジで!? 魔物の体が羨ましいよ……」


 シルルンはプニにキュアの魔法で治してもらおうかと思ったが、プニはいない。


 仕方なく彼は魔法の袋から紫の果物を取り出して、食べてみると目の潤みは治まったが臭いことには変わりなかった。


「定期的にこの果物を食べないとここにはいられないよ」


「……そ、そんなに臭いんですね」


「まぁ、オーガキャンプのテントの中よりはマシだけどね……」


 目が回復したシルルンは戦況を確認すると、精鋭たちは黒亜人の群れを圧倒しており、すでに半数ほどを倒していて精鋭たちのあまりの強さに一部の黒亜人は逃げ出している始末だ。


「うん、問題なさそうだね」


 シルルンは洞穴出口を10匹のアメーバに見張らせて、残りの30匹のアメーバを前面に配置し防御陣を敷き、40匹のスタッグ ビートルには精鋭たちが攻撃して弱った個体に止めを刺すように命令した。


 黒亜人の群れは瞬く間に数を減らしていくが、逃走した黒亜人が助けを呼んで部屋の奥にある洞穴から多数の黒亜人が駆けてきる。


「はわわわわっ!? い、いっぱいきましたよ!!」


 シーラが声を張り上げるのと同時に、危険を察知したうさポンがシルルンの首の後ろからシャツの中に避難した。


「ん? 黒コボルトも交ざってるね。まぁ、レベルが低いからどれだけきても問題ないよ」

 

 黒コボルトは顔が犬で小柄で、黒ゴブリンよりは強いが黒オークよりは弱い微妙な亜人だ。


 黒亜人の増援は500匹ほどで通路は遠くまで埋め尽くされていたが、精鋭たちを突破することができず、40匹のスタッグ ビートルが空中からエクスプロージョンの魔法を撃ちまくり、急激に数を減らしていく。


「あはは、やっぱりスタッグ ビートルは強いから安心して見てられるよ」


「……私たちってそんなに強いんですか?」


「うん。種族としてはかなり強い部類だと思うよ。特に上位種になったら『剛力』と『鉄壁』を持ってるし、攻撃魔法も使えて軽減系の能力もあるから隙がないんだよ」


「……そうなんですね」


「それより、ここの黒亜人はなんで低レベルばっかりなんだろう」


「えっ!? そうなんですか?」


「うん、レベル1とか2ばっかりなんだよね。この洞穴のどこかに魔力ポイントがあるのかな?」


「私には森で感じていた魔力がここでは感じられませんけど……」


「……そうなると低レベルの黒亜人がどうやってここまで登って来られたのか疑問なんだよね。下には万を超える魔物が争っているからね」


「た、確かに言われてみればそうですよね」


「う~ん……」


 シルルンが逡巡しているとシルルンのペットたちが、黒亜人の群れを皆殺しにして戻ってきた。


「あはは、ご苦労さん」


 シルルンはアメーバたちに「死体を食べてもいいよ」と思念で指示を出し、スタッグ ビートルたちを『魔物解析』で視ていく。


 アメーバたちは嬉しそうに黒亜人の死体を『捕食』していく。


「うん、ダメージは受けてないようだけど、魔法を使ったから魔力は減ってるね」


 シルルンは魔法の袋から青い果物を50個取り出してスタッグ ビートルたちに与えるとスタッグ ビートルたちの魔力が全快し、シルルンも紫の果物を食べて目の潤みが回復した。


 アメーバたちが死体を『捕食』するのを待ってから、シルルンたちは進軍を開始する。


 一本道なのでシルルンたちは迷うことなく進んでいくが、通路には黒亜人の死体が点々と転がっている。


「……仲間の死体を食うのは知ってたけど同士討ちまでするのかよ」


 アメーバたちは地面に転がっている黒亜人の死体を奪い合って『捕食』しており、シルルンたちがしばらく進むと十字路になっていた。


 だが、真っ直ぐのルートには魔物の群れが待ち構えていた。


「う、後ろのほうに大きいのがいますよ……」


「うん。あれは黒オーガだね。他の黒亜人と比べると格段に強いけどレベルが低いから問題ないよ」


 前方に待ち構えている魔物の群れは100匹ほどで黒オークばかりだが、後方に5匹の黒オーガが控えている。


「じゃあ、十字路には侵入しないでスタッグ ビートル40匹は魔法で攻撃して残りは後退するよ」


 シルルンは後方に下がってからアメーバたちに壁を這わせて天井に移動させ、精鋭スタッグ ビートルたちにはシルルンの後ろで待機させている。


 40匹のスタッグ ビートルはシルルンの命令通りに十字路に進入せずにエクスプロージョンの魔法を唱え、十字路の先で待ち構える黒オークの群れの半数以上が爆発に巻き込まれて砕け散った。


 この状況に黒オーガたちに戦慄が駆け抜ける。


「……今までと戦い方が違いますね。なぜですか?」


「左右のルートに魔物を伏せてあるからだよ」


「えっ!? それって十字路に侵入してたら正面と左右から攻撃を受けてたってことですか?」


「うん、まぁね。もしくは背後を取られて挟撃されてたかもしれないね」


「シ、シルルンさんはすごいですね」


「あはは、たいしたことないよ。僕ちゃんは『魔物探知』を持ってるから分かるだけの話だからね」


 黒オークの群れはエクスプロージョンの魔法によって何もできずに全滅したが、黒オーガたちは魔法の射程圏外まで下がっており、彼らは唐突に耳をつんざくような奇声を上げた。


 シルルンはすぐさま自身の前まで40匹のスタッグ ビートルを後退させると、左右のルートから黒オークの群れがなだれ込んで来た。


 だが、天井に待機していた50匹のアメーバが一斉に『溶解液』や『強酸』を吐き掛ける。


 何も知らずに突っ込んできた黒オークの群れは次々と溶かされて、降り注ぐ『溶解液』や『強酸』をなんとか回避した黒オークの群れは、40匹のスタッグ ビートルにエクスプロージョンの魔法で攻撃されて1匹もシルルンたちの前に辿り着くことができなかった。


「……お前のやり方はえげつないな」


「えっ!? そうかなぁ……」


 再び左右のルートから黒オークの群れが突入してくるが、シルルンたちの前までは辿り着けずに全滅する。


「残ってるのは黒オーガだけだけど、正面と左右のルートに5匹ずついるけど動く気配がないね」


「そりゃ学習するだろ……ここに来たら死ぬだけだからな」


「あはは、そうだね。じゃあ、あれを試してみようかな」


 シルルンは振り返って、待機させていた精鋭スタッグ ビートルの内、2匹に『魔物融合』を発動する。


 眩い閃光に包まれた2匹のスタッグ ビートルは一瞬で融合が完了して1匹になった。


「うぉおおぉ!? カッコイイね!!」


 融合したスタッグ ビートルは大きさも姿も変わってはいないが、青いオーラを纏っていた。


 シルルンは『魔物解析』で融合したスタッグ ビートルを視てみる。


「な、なんだこれ!? 『魔物融合』ってこんなに強くなるんだ!?」


 予想以上に高いステータスになっていたのでシルルンは雷に打たれたように顔色を変える。


 『魔物融合』は種族、体の大きさ、強さが違っても融合することは可能で、種族や体の大きさが違う場合は中間的な姿や大きさになり、強さが違っても基本的にはステータスの値が合算されるのだ。


 だが、相性の良いペアの場合、ステータスが大きく上昇する場合があるのだ。


 その場合、合算ではなく乗算、つまり、2倍になるのである。


 『魔物融合』はこのような相性の良いペアを発見するのが醍醐味なのである。


 しかし、シルルンの場合は【大魔物使い】と【魔物を統べる者】の両方の職業に就いており、『魔物融合』を発動時に無意識に『超集中』も使用していることで、相性の良いペアだった場合はステータスの値が3倍になるのだが、そんなことはシルルンは知らない。


「あぁ? そのクワガタはそんなに強いのかよ?」


「2匹ともレベル30で攻撃力は500だったけど、融合したら1500になってるんだよ!! 『剛力』を持ってるからそれを合わせると攻撃力3000になるんだよ」


「あぁん? 3000ってすごいのかよ?」


「ちなみにダイヤの攻撃力はレベル1の時は100だったよ」 


「なっ!? この俺が100だと!?」


 ダイヤはあまりにも低い数値にショックを受けて放心状態に陥った。


「よし!! 一気に行くよ!!」


 シルルンは残り8匹の精鋭スタッグ ビートルにも『魔物融合』を発動し、5匹の青いオーラを纏ったスタッグ ビートルがシルルンの前に並ぶ。


「目標は黒オーガだよ!! 突撃!!」


 5匹のスタッグ ビートルは凄まじい速さで飛んでいき、各ルートにいる黒オーガたちは何も反応することができずに体を解体されて肉片に変わったのだった。


 周辺の魔物が全て倒されてアメーバたちは死体を奪い合いながら『捕食』し始め、5匹のスタッグ ビートルはシルルンの元に戻ってきた。


「あはは、よくやったよ」


 シルルンは5匹のスタッグ ビートルの頭を撫でていく。


 スタッグ ビートルたちはとても嬉しそうだ。


「じゃあ、いったん戻ろうか」


 アメーバたちが死体を全て『捕食』した後、シルルンたちは洞穴から撤退したのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


コボルト レベル1

HP 35

MP 10

攻撃力 10+鉄の剣

守備力 6+皮の鎧

素早さ 8+皮の靴

魔法 無し

能力 無し

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[一言] スタッグビートル2匹を融合召喚! 現れろ、スタッグビートル!! ん?
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