表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/302

134 上層② 修

 シルルンとシーラは森の中を東に進んでいくと開けた場所にでた。


「どうやらここで森は終わりみたいだね。とりあえず、この辺で休憩にするよ」


 シルルンは適当な場所に座り込んで、魔法の袋から干し肉を取り出して食べ始める。


「私はこの森から出たことがないのでドキドキします」


「あはは、そうなんだ。干し肉食べる?」


「……いえ、人族の頃は食べていましたがこの身体になってからは肉は食べたいと思わないんですよ」 


「やっぱり、草食なんだね。じゃあ、今の内に果物をいっぱい取っておきなよ」


 シルルンは魔法の袋から麻袋を大量に取り出して、シーラに渡した。


「分かりました」


 シーラは麻袋を前脚の爪で掴んで森の方に飛んで行った。


 シルルンは干し肉を食べながら森の方を見ていると、人影が見えた。


「へぇ、スタッグ ビートル種しかいないと思ってたけどドライアドもいるんだ」


 スタッグ ビートル種が木に実っている果物を食いつくし、別の木に移動するとドライアドがその木に移動して木に手を当てるとみるみるうちに果物が実りだした。


「すげぇ……あれじゃあ、どんだけ食ってもなくならないね……」


 シルルンは干し肉を食べ終わり、どの魔物をペットにして中層に下りるかを考えていたが、不意に自身のステータスが気になって偽装の指輪に念を込めた。


 だが、表示された項目の1つが癪に障って思わず彼は拳を地面に叩きつけて、地面に大穴があいた。


 表示された名前の項目が、ルンルンと表示されていたからだ。


 シルルンもルンルンもそれほど変わりはないと思うが、彼は怪しい男に怒りを覚えていた。


 シルルンは名前をシルルンに変更し、職業の項目で目が留まる。


「【魔物を統べる者】っていう職業はないんじゃないの?」


 また怪しい男がいい加減に書き換えていると思った彼は、逡巡した挙句に【大魔物使い】に変更した。


 レベルやHPは1と表示されており、MPは0で攻撃力、守備力、素早さは1と表示されていたが、シルルンはいじらずにそのままにしておき、能力の項目を見てみるが空欄だった。


「う~ん、さすがに【大魔物使い】なのに能力がないのはおかしいよねぇ……」


 シルルンは偽装の指輪に念を込めて、能力を全て表示させると20を超える能力が表示された。


「……確か『弓神』と『大魔物使い』を持ってるのがバレると不味いんだよね」


 シルルンは『弓神』と『大魔物使い』を消して、他の能力もどんどん消していく。


「なんだこれ?」


 シルルンは『魔物融合』と『魔物号令』で目が留まる。


「僕ちゃんこんな能力は持ってなかったはずなのに……」


 シルルンは『魔物融合』の効果を視てみると、魔物と魔物、魔物と物を融合させる能力だということが判明する。


「あはは、面白い能力だよね……『魔物合成』と違ってやり直せるのがいいよ」


 そして、彼は『魔物号令』の効果を視てみると自分より弱い魔物に一時的に命令できる能力だった。


「……この能力は使いどころが分からないねぇ……自分より弱い魔物に命令できても意味ないじゃん……」


 シルルンはガッカリしながら『大魔物使い』が所持する能力以外は全て消して、魔法の袋からブドウ酒を取り出して、飲みながらシーラの帰りを待つ。


 だが、暇だったシルルンは見える範囲にいるスタッグ ビートル100匹ほどに『魔物契約』で「誰か話せるかい?」とコンタクトを取ってみたが返答はなかった。


「……どうやら自我意識がある個体はいないようだね」


 基本的には上位種ですら自我意識がある個体は稀なのだが、プルたちを奪われて彼は慎重になっていた。


 シルルンは念じただけで巨大な透明の結界を作り出して、10匹のスタッグ ビートルを透明の結界で包み込んで一瞬でテイムに成功し、10匹のスタッグ ビートルがシルルンの前に並んだ。


「まずは通常種10匹でいいよね」


 シルルンは10匹のスタッグ ビートルに「この袋に果物をいっぱい入れてもってきて」と思念で命令し、魔法の袋から大量の麻袋を取り出して地面に置くと、スタッグ ビートルたちは前脚の爪で麻袋を掴んで森に方に飛んで行った。


 シーラが果物でいっぱいになった麻袋を10袋ほど前脚の爪で掴んでシルルンの元に戻ってきた。


「たくさん取ってきました」


「一日に何個ぐらい食べるの?」


「私だと10個ぐらいですね」


「じゃあ、1袋100個ぐらいだとして100日分ってところだね」


 そう言いながらシルルンは『念力』で10袋の麻袋を掴んで魔法の袋に入れた。


「……すごい、その袋にはいっぱい入るんですね」


「あはは、魔導具なんだよ」


 そこにスタッグ ビートルたちが次々と飛来し、果物が入った麻袋を置いて空の麻袋を前脚の爪で掴んで森の方に飛んで行く。


「……ど、どうして仲間たちが果物を置いていくんですか?」


「僕ちゃんは【魔物使い】だから魔物をペットにできるんだよ」


「……シ、シルルンさんはすごいんですね」


 しばらくすると100枚ほどあった麻袋が全てなくなり、スタッグ ビートルたちがシルルンの前に並ぶ。


 シルルンはスタッグ ビートルたちに「一日に何個くらい食べる?」と思念で聞いてみると平均で50個ほどだと判明し、100袋では2日分でしかなかった。


「……しばらくここから離れられないね」


 だが、唐突に魔物の反応を捉えたシルルンは訝しげな目を東の方向に向ける。


 東から300匹ほどの魔物の群れが接近しているからだ。


「初めて見るけどナーガ種とラミア種の群れだね」


 ナーガ種はハルバードと鎧を装備しているが、ラミア種は杖を持っているが上半身は丸出しだった。


 魔物の群れは森に向かって突撃するが、森の中からスタッグ ビートル種が一斉に襲い掛かって迎撃し、ドライアドたちは森の奥に身を隠して戦いを静観している状況だ。


「あの蛇みたいな魔物は果物を狙って頻繁に襲ってくるんですよ」


「えっ!? 果物を狙ってるんだ?」


 スタッグ ビートル種を殺して食うためだと思っていた彼は驚きを禁じ得なかった。


 魔物の群れを率いているのはナーガ種とラミア種の上位種で森の手前で足を止め、多数の通常種のナーガがスタッグ ビートル種を迎撃しており、レッサー ナーガが森の中に進入して木に登り、果物を袋に詰め込んでいる。


「シーラたちの上位種は動かないのかい?」


「……大型の仲間は緑の人たちと一緒にいるんですよ」


「……だんだん分かってきたよ。シーラたちはドライアドを食べないから共生してるんだよ。果物を貰う代わりに上位種はドライアドたちを護ってるって訳か……」


「そ、そうだったんですか……」


「うん、たぶんそうだと思うよ」


 両者の強さは拮抗しているが、上位種がいる上に後方にいるラミア種が傷ついたナーガ種を回復しているのでナーガ種たちのほうが優勢だが、数ではスタッグ ビートル種が圧倒的に上回っている。


 森の中ではレッサー ナーガたちとレッサー スタッグ ビートルたちが戦いを繰り広げており、果物を袋に詰め込んでいるレッサー ナーガをレッサー スタッグ ビートルが大顎で挟んで一撃で身体を両断し、身体が上下に分かれたレッサー ナーガは胴体から血飛沫を上げて地面に落ちて即死するという光景が散見される。


「よし、決めた!! 僕ちゃんはスタッグ ビートル種につくことにするよ」


 シルルンは「上位種以外を攻撃しろ」と命令し、10匹のスタッグ ビートルは一斉に飛び立った。


 地上で戦うナーガたちとスタッグ ビートルたちは激戦を繰り広げており、ナーガが振るうハルバードの一撃は凄まじい威力で『鉄壁』を所持するスタッグ ビートルですら直撃すれば瀕死に追い込まれるのだ。


 だが、スタッグ ビートルの大顎の一撃も必殺で、首や胴体に決まればナーガといえども命はない。


 上空ではスタッグ ビートルたちがエクスプロージョンの魔法を唱えて攻撃しているが、ラミア種がファイヤの魔法を唱えて応戦している。


 スタッグ ビートルたちは厄介なラミア種を倒そうと果敢に攻めるが、ハイ ラミアがマジックシールドの魔法を展開してラミア種を護っており、魔法攻撃は効果が薄く、ラミア種に接近し過ぎるとハイ ナーガが振るうハルバードの餌食になるのだ。


「……通常種同士ならスタッグ ビートルのほうが強いけど、やっぱり上位種がいないのが痛いね」


「でも、ある程度すれば引き上げるんですよ。だから私は果物をあげたらいいと思うんですよ。そうすれば仲間たちも死なないですみますし」


「……う~ん、双方共に数が増え続ければ結局は戦争になると思うけどね」


「えっ!? なぜですか?」


「果物の数が無限じゃないからだよ。増え続けた数に対していつか果物の数が追いつかなくなると思うんだよ。それにナーガ種とラミア種は数が増えたらエレメンタル種やウィンディーネ種を標的にするかもしれないしね」


「あっ、それはダメですね……」


「まぁ、魔物に拘わらず、肉食や雑食の生物は他者を殺して生きてるからしょうがないよ」


「……」


「そろそろ僕ちゃんも戦おうかな……」


「えっ!? あの戦いに加わるんですか!?」


「うん、まぁね……」


 シルルンのペットたちは前衛であるナーガたちを果敢に攻撃しているが、それは戦場全体で言えばほとんど影響がなかった。


 シルルンは思念でペットたちを呼び戻して10匹のスタッグ ビートルがシルルンの前に並んだ。


「うん、どの個体も致命傷はないようだね……」


 満足したシルルンは10匹のスタッグ ビートルに『反逆』を発動し、身体中から溢れ出す力にスタッグ ビートルたちは戸惑っている。


「一気にいくよ……まず、ハイ ナーガ、その次はハイ ラミアを倒す」


 シルルンがゆっくりとハイ ナーガに向かって歩き出し、この力はマスターから与えられたものだと理解したスタッグ ビートルは喜びに打ち震えながら付き従う。


 ハイ ナーガは近づいてくるシルルン達を全く警戒しておらず、シルルンは瞬く間に魔法の袋から薄い青色のミスリルの弓を取り出して、一瞬で狙いを定めて風の刃を放つ。


 風の刃はハイ ナーガの胴体を貫いて、あいた穴から血が噴出してハイ ナーガは激痛に顔を歪めた。


「突撃!!」


 シルルンの命令に対して、スタッグ ビートルたちは凄まじい速さで飛び立ち、異変に気づいたハイ ラミアがハイ ナーガの元に駆けるが間に合わず、スタッグ ビートルたちが一斉に襲い掛かり、大顎で身体中を切断されて血飛沫を上げながらハイ ナーガは肉片となって地面に崩れ落ちた。


 急停止したハイ ラミアは信じられないっといった表情を浮かべるが、身を翻して手下たちに撤退の指示を出そうとしたが、唐突に口から吐血した。


 シルルンが風の刃を放ってハイ ラミアの胴体に風穴をあけたからだ。


 すぐさまハイ ラミアはヒールの魔法を唱えて傷を塞ぐがそれは無意味だった。


 一斉に襲い掛かったスタッグ ビートルたちに大顎で身体をバラバラにされたからである。


 残ったナーガ種とラミア種は上位種を失って混乱している。


「退路を絶て!! 1匹も逃がすな!!」


 ペットたちに背後を取られたナーガ種とラミア種は前後から挟撃されて為す術なく全滅したのだった。


「あはは、よくやったよ」


 シルルンは『反逆』を解いて満足そうに笑いながらスタッグ ビートルたちの頭を撫でていく。


 スタッグ ビートルたちはうれしそうにしている。


 シルルンはスタッグ ビートルたちを引き連れてシーラの元に向かう。


「す、すごいですシルルンさん!!」


「あはは、このぐらいなんでもないよ。このエリアを下りたところには万を超える魔物がいるから、もっと戦力を集めないといけないよ」


「……えっ!? ま、万?」


 シーラは驚きすぎて放心状態に陥った。


「ありがとうございました。あなたは人族なのに強いんですね」


 いつの間にか近づいていたドライアド3人がシルルンに頭を下げる。


「あはは、ペットたちのいい経験値稼ぎになったよ」


「何かお礼をしたいのですが……」


「ん~、だったら10本ぐらいの木と果物をたくさんくれないかな? 僕ちゃんのペットの餌にしたいんだよね」


「それでしたらこの種を差し上げます」


「種?」


 シルルンは受け取った種袋の中を見てみると様々な色の種が入っていた。


「その種は土があればどんな場所でも発芽して木になります。そして種の色により実る果物の効果が違います」


「えっ!? 果物に効果があるんだ!?」


 ただの果物だと思っていたシルルンは驚きの表情を見せる。


 そしてシルルンはドライアドに果物の色の効果を聞いて絶句した。


赤 高栄養

緑 HP回復

青 MP回復

黄 スタミナ回復

紫 状態異常回復


「……そりゃあ、ナーガ種やラミア種が奪いにくる訳だよ」


「木に実っている果物もいくらでもお持ち帰り下さい」


 そういって頭を下げてドライアドたちは去っていった。


 シルルンは【ドライアドの種】を手に入れた。


「……これは取れるだけ取らなきゃいけないね」


 プル、プニという強力なヒーラーがいない現状では、この果物の存在は天の助けだと彼は思わずにはいられなかった。


 シルルンは麻袋も限りがあるので「1枚の麻袋を使いまわして果物をここに集めろ」と思念で命令し、ペットたちは麻袋を前脚の爪で掴んで森のほうへ飛んでいった。


「ん? あれはアメーバ種じゃん……」


 いつの間にか200匹ほどのアメーバ種が現れて、死体を『捕食』している。


「戦いが終わればいつの間にか出てきて、死体を食べ終わるといなくなるんですよ」


「へぇ、敵対してないんだ……まぁ、スタッグ ビートル種は強いから戦いを挑んでも空から魔法を撃たれて全滅するだけだから賢い選択だよ」


 シルルンは念じただけで巨大な透明の結界を作り出し、死体を『捕食』している通常種のアメーバ10匹を巨大な透明の結界で包み込んで一瞬でテイムに成功する。


 テイムされた10匹のアメーバはシルルンの元に駆けつけようとするが、シルルンは「食べ終わってからでいい」と思念で伝えた。


 こうして10匹のアメーバもシルルンのペットになったのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


レッサー スタッグ ビートル レベル1 全長約1メートル

HP 130

MP 20

攻撃力90

守備力70

素早さ 50

魔法 無し

能力 強力



スタッグ ビートル レベル1 全長約2メートル

HP 780

MP 120

攻撃力270

守備力180

素早さ170

魔法 エクスプロージョン

能力 剛力 堅守 魔法耐性 能力耐性



レッサーナーガ レベル1 全長2メートル

HP 110

MP 20

攻撃力100+鉄のハルバード

守備力50+鉄の鎧

素早さ70

魔法 無し

能力 強力 巻きつき 毒強食



ナーガ レベル1 全長3メートル

HP 800

MP 100

攻撃力400+鉄のハルバード 鉄の弓

守備力200+鉄の鎧

素早さ200

魔法 無し

能力 統率 巻きつき 猛毒 豪食 回避 物理軽減



ハイ ナーガ レベル1 全長6メートル

HP 1800

MP 300

攻撃力 800+鋼のハルバード 鋼の弓

守備力 400+鋼の鎧

素早さ 400

魔法 無し

能力 統率 剛力 猛毒 豪食 回避 物理耐性 堅守



レッサー ラミア レベル1 全長約1.5メートル

HP 60

MP 120

攻撃力30+木の杖

守備力30

素早さ60

魔法 ファイヤ ヒール

能力 統率 人型魅了(異性のみ)



ラミア レベル1 全長約2メートル

HP 300

MP 500

攻撃力 60+木の杖 鉄の弓

守備力 150

素早さ 140

魔法 ファイヤヒールキュア スロー ウインド パラライズ

能力 統率 人型魅了(異性のみ) 魔法耐性



ハイ ラミア レベル1 全長3メートル

HP 850

MP 1800

攻撃力 200+木の杖 鋼の弓

守備力 250

素早さ 350

魔法 ファイヤ ヒール キュア スロー ウインド パラライズシールド マジックシールド コンフューズド ペトリファイ ポイズン

能力 統率 人型魅了(異性のみ) 魔法耐性 幻覚

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングに参加しています。 リンクをクリックしてもらえるとやる気が出ます。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ