127 森の魔物の討伐③
トーナの街から南下した場所にある森には、英雄リックを中心に冒険者達が集まって魔物と戦いを繰り広げていた。
彼らは森の南東エリアを任されており、隊長たちの指示が飛ぶ。
「下がるな!! 押し返せ!!」
「突っ込むぞ!! ついて来い!!」
「……固まるなっ!! 魔法の的になるぞ!!」
中央にはリック隊、右翼にゾル隊、左翼にミゴリ隊が布陣しており、各隊が100人ほどの冒険者を率いて魔物を迎撃している状況だ。
冒険者たちの前には600匹ほどの魔物の群れが押し寄せているが、リック達の数も400人ほどいるので騒ぐほどの差ではないが、彼らは連戦を強いられているので体力的にきつい状態だった。
この状況にリック隊の傍に布陣する【賢者】のゾピャーゼが難し気な表情を浮かべていた。
ゾピャーゼ隊の他9人は【大魔導師】という特殊な隊なのだが、このような大規模戦闘には無類の強さを誇り、それゆえにリックは彼らを遊撃に用いているのだ。
「……ここに拠点を作るのは難しいと思うのですが」
ゾピャーゼが重苦し気にリックに話を切り出す。
「あぁ、そうだな……戦ってみて俺も痛感したよ。この群れを倒したらいったん拠点に戻るつもりだ」
彼らの拠点はここから東に10kmほどの場所にあり、そこが第二拠点で200人ほどの冒険者が護りについている。そこからさらに30kmほど東の場所に第一拠点があるのだ。
「それを聞いて安心しましたよ。それでは私たちはミゴリ隊の応援に向かいます」
「よろしく頼む」
ゾピャーゼ隊はテレポートの魔法でその場から姿が掻き消える。
リックたちは負傷者を出しながらも魔物の群れを着実に倒していき、魔物の殲滅に成功する。
だが、リックが後退の指示をだそうとしたその時だった。北の方角から巨大な魔物が率いる魔物の群れが接近していたのである。
「チィ、あれはハイ クラブとロブスター……斥候は何してやがったんだ!?」
ハイ クラブが率いる100匹ほどの魔物の群れから一番近い右翼を指揮するゾルが忌々しげな表情を浮かべている。
「や、やべぇ……」
「クラブ種は通常種でも上位種並みの強さなのに上位種なんかに勝てる訳がないだろ……」
「……そ、それもあるがあの群れにはロブスターがいるだろ……そっちのほうがやばいだろ……」
「なっ!?」
冒険者たちはハイ クラブが率いる魔物の群れを見て絶句し、怯えるように後ずさる。
「ハイ クラブは俺が殺る!! 気合が入ってる奴は俺に続け!!」
ゾルが高らかに宣言してハイ クラブに目掛けて突撃し、ゾル隊の【大剣豪】5人も後に続くが残った冒険者たちは後退した。
「ゾル隊は戦うようですがどうするおつもりですか?」
ゾピャーゼは探るような眼差しをリックに向ける。
「……それにしてもゾル隊は行動が早いな。俺も精鋭を率いて向かうつもりだがゾピャーゼはどうする?」
「もちろん私も行きますよ」
「そうか……それならミゴリ隊にも精鋭を率いてクラブの群れの討伐に力を貸してくれと伝えてくれないか?」
「分かりました。ミゴリ隊にはそう伝えますよ」
そう言ってゾピャーゼはテレポートの魔法を唱えてその姿が掻き消えた。
リックは斥候を早く引き上げさせたのは自分の責任だと自責の念に駆られながらも、自身の隊の【大剣豪】2人と【魔法戦士】2人を率いてハイ クラブが率いる魔物の群れに進軍して残りは後退させる。
ゾピャーゼから知らせを受けたミゴリも【大剣豪】4人を率いて進軍して残りは後退し、ゾピャーゼ隊はテレポートの魔法でリックの元まで一気に飛んだ。
ゾルは凄まじい速さでハイ クラブに目掛けて突進して正面から大剣を振り下ろしたが右の鋏で受け止められる。
ハイ クラブの全長は6メートルを超える巨体で、はっきり言って並の最上級職では勝てる見込みがないほど強い魔物なのだ。
ゾルはハイ クラブの後ろに回り込んで甲羅に大剣を振り下ろして斬り裂いた。
だが、ロブスターがゾルの左側から突進し、ゾルは跳躍してロブスターの背甲に乗って大剣を振り下ろし、ロブスターの胴体を斬り裂いてから跳躍して地面に着地する。
ロブスター(ザリガニの魔物)の全長は10メートルを超えており、そのステータスは上位種であるハイ クラブに拮抗し『剛力』と『鉄壁』を併せ持つ強力な魔物なのだ。
ゾルはハイ クラブとロブスターを相手に単独で戦いを繰り広げ、ゾル隊の【大剣豪】5人が20匹を超えるクラブの群れに突っ込んだ。
リック隊とミゴリ隊もクラブの群れに突撃しようとするがハーミット クラブ(ヤドカリの魔物)の群れ20匹ほどに遮られてそのまま戦闘になる。
ハーミット クラブの全長は3メートルを超えており、クラブと同様に『剛力』の能力と『鉄壁』の能力を併せ持つが巨大な貝殻を背負っているので守備力は高いがその動きは遅い。
ゾピャーゼ隊はテレポートの魔法を唱えて魔物の群れの側面に出現し、一斉にファイヤの魔法を唱えて灼熱の炎に包まれた30匹ほどのレッサー クラブが奇声を上げて焼け死んだ。
「私たちだけで残りの30匹を倒しますよ」
ゾピャーゼがテレポートの魔法を唱えて姿が掻き消えると、大魔導師たちもテレポートの魔法を唱えてその姿が掻き消えた。
ゾルはハイ クラブとロブスターの巨大な鋏の猛攻を躱しながら、ハイ クラブに攻撃を絞っていたが与えたダメージは『再生』の能力の前に回復されていた。
「チィ、ロブスターが邪魔だな……」
ハイ クラブは『アクアブレス』を放って無数の泡がゾルに襲い掛かり、ゾルは左に跳躍して躱したがロブスターが狙い澄ました『水刃』を放って巨大な水の刃がゾルに襲い掛かり直撃したかのように見えた。
だが、ゾルは巨大な水の刃を躱しており、その身体は黒いオーラを纏っていた。
ゾル隊の【大剣豪】5人はクラブ20匹を自分たちに引きつけるために、一斉に『斬撃衝』を放って風の刃を放ったがこれが悪手だった。
風の刃はクラブを斬り裂いたが1匹も倒せておらず、逆に一斉に『アクアブレス』を放たれる。
『アクアブレス』は範囲攻撃なので、回避不能なほど広範囲に無数の泡が【大剣豪】5人に襲い掛かって直撃し、泡が爆発して身体のあちこちから血を流しながら【大剣豪】4人は散開する。
すでに1人は多数の泡を受けて身体中から大量の血を流して地面に倒れており、その身体は右腕と左脚が吹き飛んでなくなっていた。
ハーミット クラブ20匹と戦うミゴリ隊も至近距離から一斉に『斬撃衝』を放って手痛いしっぺ返しをくらい、死者は出ていないものの全員が重傷だった。
ミゴリ隊が重傷ですんだのはリック隊が半数を引きつけていたからだ。
「ハーミット クラブは鈍足だ!! ミゴリ隊は距離を取って回避に専念してゾピャーゼ隊の到着を待て!!」
リックがミゴリ隊に指示を出し、ミゴリは頷いて半数のハーミット クラブを引きつけながら後退していく。
10匹のハーミット クラブは一斉に『アクアブレス』を放って無数の泡が襲い掛かるが、リックたちとは距離が離れており泡を躱すのは難しくない。
動く砲台と化しているハーミット クラブに接近できないリック隊は、互いに遠距離攻撃を繰り返して持久戦へと移行する。
ゾピャーゼ隊は慎重にレッサー クラブ30匹を引きつけながら誘導する。
戦闘職からすればレッサー クラブもハーミット クラブも鈍足かもしれないが【大魔導師】たちからすれば自分たちとそれほど変わらない速さで、しかも、下位種といえども当たり所が悪ければ一撃で死ぬからだ。
「ここですね。ファイヤ!」
ゾピャーゼがファイヤの魔法を唱えて【大魔導師】たちも一斉にファイヤの魔法を唱え、灼熱の炎が密集したレッサー クラブを包み込み、断末魔の声を上げることなく一瞬で炭になって崩れ去り、レッサー クラブ30匹は殲滅されたのだった。
「それではリックの元に飛びますよ」
ゾピャーゼ隊はテレポートの魔法を唱えて姿が掻き消えた。
『決死』を発動したゾルは黒いオーラを纏い凄まじい速さで動きながらハイ クラブを集中的に斬り裂くが、『剛力』を所持する【暗黒剣士】の集中攻撃でも倒しきれない事実にゾルは驚きを禁じ得なかった。
動揺したゾルは攻撃対象をロブスターに変え、集中攻撃して解体していき、あと少しで倒せると思った矢先、ロブスターは殻を脱ぎ捨てた。
「馬鹿なっ!?」
鋏や脚を斬り落としたはずのロブスターの身体が復元したかのように元に戻っており、その身体は一回り大きくなっているのを目の当たりにしたゾルは驚きのあまりに血相を変える。
ロブスターは殻を脱ぎ捨て『脱皮』したのだ。
『脱皮』の能力は殻を脱ぎ捨てると身体が復元され体力もスタミナも全快し、身体も一回り大きくなって強さも増すのだ。
ちなみに甲殻類が脱皮することは知られているが、ロブスターの脱皮は殻だけでなく内臓も一緒に脱皮するので現段階では不老とされているのだ。
ゾル隊の【大剣豪】4人とミゴリ隊は痛みに顔を歪めながらも魔物の群れを引きつけながら後退し続け、リック隊は遠距離攻撃に終始するが1匹も倒せていなかった。
「お待たせしました」
リック隊の元にゾピャーゼ隊が出現する。
「ミゴリ隊が重傷なんだ……頼めるか?」
「分かりました。あなたたちは私が戻るまでリック隊に協力して下さい」
【大魔導師】たちは頷いてゾピャーゼはテレポートの魔法を唱えて掻き消えた。
「俺たちは君たちのサポートにまわる。存分に魔法で攻撃してくれ」
リックたちは無数の泡を遠距離攻撃で破壊して【大魔導師】たちに近づけさせない。
【大魔導師】たちは一斉にファイヤの魔法を唱えて5匹のハーミット クラブに灼熱の炎が集中するが1匹も倒しきれず、『再生』の能力で回復される。
「『魔法軽減』で何発かは無効にされているようだな……試しに数を絞って魔法で攻撃してみてくれ」
リックの言葉に頷いた【大魔導師】たちは一斉にファイヤの魔法を唱えて2匹のハーミット クラブに灼熱の炎が集中し、一瞬で燃え尽きた。
「よし……これなら倒せるな。魔力のほうは大丈夫か?」
「……そんなことを気にしている状況じゃないだろ」
【大魔導師】たちは不敵な笑みを浮かべながらハーミット クラブに一斉にファイヤの魔法を唱えて2匹ずつ焼き殺していき、10匹のハーミット クラブは殲滅したのだった。
「ゾル隊の元に急ぐぞ!!」
状況を確認したリックは20匹ものクラブに負われているゾル隊を見つけて駆け出した。
「手酷くやられたようですね」
「ゾピャーゼ!?」
ハーミット クラブを引きつけながら後退するミゴリ隊にゾピャーゼはヒールの魔法を唱えて傷を回復していく。
「助かったよゾピャーゼ。ここは私たちでなんとかなるからゾル隊のほうに行ってくれ」
ミゴリ隊は後退しながらも『斬撃衝』を1匹に集中攻撃する戦術でハーミット クラブを倒しており、その数を7匹まで減らしていた。
「分かりました」
ゾピャーゼはテレポートの魔法を唱えてその姿が掻き消えた。
身体中から発する激しい痛みに顔を歪めながら、ただひたすら後退するゾル隊。
振り切ろうと思えば可能だが、それをすると他の者たちに襲い掛かることが確実で、引きつけながらの後退が故に『アクアブレス』の餌食になりその数を3人まで減らしていた。
だが、唐突にクラブの群れが炎に包まれてその動きが止まった。
リックたちがクラブの群れの背後から攻撃を仕掛けたのだ。
灼熱の炎に身体を焼かれて怒り狂ったクラブの群れは反転してリックたちに突撃する。
大魔導師たちはファイヤの魔法を唱えて、2匹のクラブに灼熱の炎が集中して一瞬で炭になって消え失せた。
それを確認した大魔導師たちはテレポートの魔法を唱えて遥か後方に出現する。
「……た、助かったのか」
呆けたような顔をしたゾル隊3人だが、一転して仲間2人を殺された怒りで身を震わせる。
「反転してくれて助かりました。ずっと機を窺っていたのですがあの状態では回復できませんからね」
ゾル隊3人の元に出現したゾピャーゼがヒールの魔法を唱えて傷を癒していく。
「ありがてぇ……これで奴らと戦える……」
ゾル隊3人は遠ざかっていくクラブの群れを怒りをこめて睨みつける。
「……クラブは生半可な攻撃では倒せません。ですので1匹に攻撃を集中して倒すしかありません。おそらく私の仲間たちも火力を集中させてハーミット クラブの群れを殲滅させたと思います」
「作戦は任せる……とにかく俺たちは奴らを倒せればなんでもいいからな……」
「では、追いかけますよ。リックたちが攻撃していないクラブ1匹に攻撃を仕掛けて1匹ずつ仕留めていきましよう」
ゾル隊3人はクラブの群れを追いかけて背後から『斬撃衝』を一斉に放ち、風の刃がクラブを切り裂いて胴体から血飛沫を上げてクラブは動きを止める。
「ファイヤ!」
ゾピャーゼがファイヤの魔法を唱え、灼熱の炎がクラブを包み込んで『再生』するよりも早く、炭になり崩れ去った。
「今のは運が良かったです。クラブは『魔法軽減』を所持していますので毎回上手くいくとは限りませんから今の手順で攻撃を繰り返しましょう」
「……まずは1匹」
ゾピャーゼの言葉に頷いたゾル隊3人は口かどに笑みが浮かぶ。
すでにクラブの群れは半数ほどがリックたちに倒されており、全滅させるのも時間の問題だった。
ゾルは再びロブスターを集中攻撃するが、『脱皮』したことにより強さが増しており解体するのに時間が掛かる。
鋏や脚を全て斬り落として止めの一撃を胴体に叩き込もうとした瞬間、ロブスターは再び殻を脱ぎ捨て身体が復元される。
「馬鹿なぁ!? ありえん……」
完全復元するような能力を何度も使えるはずがないと考えていたゾルは雷に打たれたように顔色を変える。
どちらを攻撃すればいいのか心に迷いが生じたゾルは防戦一方になる。
ゾルは逡巡して3度目はないはずだとロズスターに攻撃を集中させるが2度の『脱皮』で強さが増しており、鋏や脚を切断しても最早、『再生』のほうが上回っており追い込むことすらできなくなっていた。
しかし、リックたちがクラブ種を殲滅して駆けつけ、大魔導師たちが一斉にファイヤの魔法を唱えてロブスターは灼熱の炎に身体を焼かれて耳をつんざくような奇声を上げた。
「――っ!? 余計な真似をしやがって!! 早く逃げろっ!!」
ゾルが険しい表情で声を荒げた。
その一瞬をハイ クラブは見逃さずに『アクアブレス』を放って無数の巨大な泡がゾルに襲い掛かるがゾルは横に跳躍して躱した。
だが、それによりゾルはロブスターの動きを止めることができず、怒り狂ったロブスターが凄まじい速さでリックたちに目掛けて突撃して巨大な鋏を叩きつけた。
巨大な鋏が直撃したリックは後方に大きく弾き跳ばされ、なんとか反応できたリック隊の【大剣豪】2人は後方に跳躍して躱したが、反応できなかった『魔法戦士』2人は身体が砕け散って即死した。
その光景を目の当たりにしたミゴリ隊、ゾピャーゼ隊、ゾル隊はあまりの出来事に放心状態に陥る。
「ぐぅ……なんて一撃だ……」
全身の骨が砕けたような激しい痛みに顔を顰めたリックはヒールの魔法を唱えまくって体力を回復させて立ち上がった。
「何をやっている!? 早く逃げろ!!」
ロブスターの胴体に大剣の連撃を叩き込んだゾルが怒りの形相を浮かべて声を張り上げた。
弾かれたかのように我に返ったミゴリ隊、ゾピャーゼ隊、ゾル隊はこんな化け物を相手に今まで1人で戦っていたのかと驚愕の眼差しをゾルに向ける。
「……ここはゾルが言うように撤退しましょう。私たちでは足を引っ張るだけです」
ゾピャーゼの言葉にその場にいる全員が神妙な顔で頷いて後退し始める。
ゾルはロブスターに狙いを定めて大剣の連撃を放ち、距離が離れるとファイヤの魔法を唱えてロブスターに連続的なダメージを与え続けて倒そうとするが、唐突に身体に纏った黒いオーラが消え失せた。
「チィ……時間切れか……」
ゾルは悔しそうな顔を浮かべて大剣を地面に叩きつけ、身を翻して逃走したのだった。
「……どうやら第三拠点作りは失敗したようだな」
第二拠点に帰還する冒険者たちが肩を落として歩く姿を見つめるルーミナ将軍が呟き、総指揮者であるリックの姿を見つけて歩き出した。
「いったい何があったんだ?」
生気がない表情を浮かべるリックに拠点作りに失敗しただけではこうはならないだろうと思ったルーミナ将軍が声を掛けた。
「……私の隊の仲間が2人……命を落としました……」
「な、なんだと!? いったい何を相手にしたんだ!?」
英雄に名を連ねる者の仲間が殺されるほどの魔物がこの森にいるのかとルーミナ将軍は驚きのあまりに血相を変える。
「ハイ クラブとロブスターです。ですが仲間が殺られたのはロブスターです」
「……ロブスターだと!? 通常種なのにそんなに強いのか!?」
「命を落とした私の仲間は2人とも【魔法戦士】でしたが一撃で身が砕かれ殺されたようで、私もその一撃を受けましたが盾と鎧がなければおそらく私も死んでいたでしょう……」
「……ロブスターを『鑑定』で視ましたが『剛力』を反映させるとその攻撃力は3200という驚異的な数値でした」
ゾピャーゼは恐ろしく真剣な顔つきで言った。
「3200だと……」
その異常な数値にルーミナ将軍は驚きを禁じ得なかった。
「隊長っ!! 生きてたんですね!!」
ゾルの姿を視認したゾル隊が声を張り上げてゾルの元に駆け寄った。
「あぁ、なんとかな……」
「……それで倒せたんですか?」
その言葉に聞き耳を立てていた冒険者たちは期待の眼差しをゾルに向ける。
「……いや、無理だった。あれを倒すには俺クラスの腕の奴がもう1人いるな……」
ゾルは忌々しそうな表情を浮かべており、冒険者たちは落胆した。
「ザックとダリーはどうした?」
「……クラブに殺されました」
ゾルの仲間たちは悲痛な表情を浮かべて視線を逸らした。
「なっ!? 馬鹿なっ!?」
ゾルはガツンと頭に衝撃を受けたような顔をした。
「彼がハイ クラブとロブスターを1人で止めていたのです。彼がいなければ私たちは全滅していたでしょうね」
「ほう……それはすごいな」
ルーミナ将軍は好奇な目でゾルを見つめた。
「……これは私の推測ですが『物理反射』を持つラーグがいれば勝てたでしょうね」
「耳が痛い話だな……私は王に森の魔物の討伐を優先するべきだと進言したんだがな……」
「王命であればラーグたちがこちらに参戦するのは難しいでしょうね」
「……無理だろうな。だが、もう一度、王に進言してみるつもりだ。私の見立てではラーグたちが対する魔物にはどうせ勝てないからな……」
「なるほど……ラーグたちも大変なようですね。ですが、ラーグ不在ではロブスターを倒せませんので私たちはこの拠点から動けませんよ」
「私からロレン将軍に伝えておく……話は変わるが南西にシルルン隊が到着したようだ」
「……なぜ南西に? 彼とゾルが組めばロブスターに勝てるかもしれないのに……」
「全くだ……なぜこうも上手くいかないんだと私も思うところだ」
ルーミナ将軍は苦々しげな表情を浮かべてその姿が掻き消えた。
面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。
ハイ クラブ レベル1 全長約6メートル
HP 1500
MP 550
攻撃力700
守備力600
素早さ300
魔法 シールド アースコンフューズドアンチマジック
能力 鉄壁 剛力 再生 アクアブレス 魔法耐性 治癒 水吸収 水閃 猛毒
ハイ クラブ レベル14 全長約6メートル
HP 2450
MP 800
攻撃力950
守備力900
素早さ450
魔法 シールド アース コンフューズド アンチマジック
能力 鉄壁 剛力 再生 アクアブレス 魔法耐性 治癒 水吸収 水閃 猛毒 物理耐性 毒無効
ロブスター レベル1 全長約10メートル
HP 1500
MP 300
攻撃力700
守備力400
素早さ250
魔法 シールドウォーター アース アンチマジック
能力 鉄壁 剛力 脱皮 再生 物理軽減 魔法耐性 水刃
ロブスター レベル19 全長約12メートル
HP 3100
MP 1100
攻撃力1050
守備力850
素早さ350
魔法 シールドウォーター アース アンチマジック
能力 鉄壁 剛力 脱皮 再生 物理軽減 魔法耐性 水刃 毒耐性
『脱皮』により強化されたロブスター
ロブスター レベル19 全長約20メートル
HP 6000
MP 1550
攻撃力1600
守備力1400
素早さ500
魔法 シールドウォーター アース アンチマジック
能力 鉄壁 剛力 脱皮 再生 物理軽減 魔法耐性 水刃 毒耐性




