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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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125 森の魔物の討伐① 修


「冒険者たちには帰るように言ってきたけど、ボスのファンが見学したいって言うから連れてきたわ」


「私はファクスという者です。邪魔にならないように逃げ回りますのでどうかご一緒することをお許しください」


 ファクスはひどく神妙な表情で深々と頭を下げた。


「……まぁ、一方的に魔物を狩るだけだから逃げ回る必要なんてないけどね」


 ファクスの肩にのっているスライムの模造品を一瞥したシルルンは怪訝な表情を浮かべている。


「……いつまでそうしてるのよ。追いかけるわよ」


 シルルンが歩を進めても、頭を下げ続けているファクスにリジルが声を掛ける。


「りょ、了承と解釈してよろしいのでしょうか?」


 ファクスは戸惑うような表情を浮かべている。


「そうよ。ボスはダメならはっきり言うわよ」


「は、はい!!」


 ファクスは弾けるような笑顔を見せてリジルの後を追いかける。


 シルルンたちが中衛を追いかけて進軍していくと、ブラ隊とゼフトたちが反転して跪いていた。


 立っているのはリザだけである。


 散開して魔物の動向を探っていた【怪盗】たちも集結してシルルンの前で跪く。


 即座にリジルが跪くと、慌ててファクスも皆に倣って跪いた。


「ここから五十メートルほど先に魔物の群れが展開しています」


 メットが跪いたまま報告し、腕を組んだシルルンが頷いた。


 シルルンが前方を『魔物探知』で探ると、三百匹ほどの魔物の群れを捉えてシルルンの口角に微笑が浮かぶ。


 目の前のシルルンが醸し出す威圧感に、ファクスは驚きを隠せなかった。


 噂でのシルルンは、小動物のような性格だと聞いていた彼は全くの間違いだと思ったのだった。


「……たいした魔物はいないけど、クラブ種の身はうまくて高く売れるらしいから気をつけて倒しいてほしい」


「つまり、一撃で倒せる強者のみがクラブ種の相手をしろという解釈でよろしいでしょうか?」


 シルルンの傍らで跪くメイがシルルンに尋ねる。


「……売れる状態なら一撃じゃなくても構わない。魔法なんかで燃やしたり爆砕させると売れないからダメだね」


 その言葉に、皆が真面目な硬い表情で頷く。


「はっきり言って今回の討伐はクラブ種を売るぐらいしかやることがないからね……じゃあ、皆はメイの指揮の下に動いてほしい」


 皆の視線がメイに集中し、メイは立ち上がる。


「ブラ隊の皆さんは正面へ、リザさん、ゼフド、アキは右側へ、アミラさんたちとロシェールさん、ラフィーネさん、ヴァルラさんは左側に展開して魔物を殲滅してください」


 メイは即座に指示を出し、皆が指示通りに展開する。


 それと同時にペットたちがシルルンの傍に集結する。


「ラーネとシャインは遊撃でいいけど、皆が苦戦するような強い魔物が現れたらフォローをお願いするよ」


 ラーネとシャインは頷いて嬉々として戦場に駆けて行った。


「いくデス!!」


 プルがブラックの頭の上に着地して、口の中からスゲェ剣を取り出すとブラックたちは出陣した。


「いくデチ!!」


 プニニが純白の騎士の肩に跳び乗ると、純白の騎士は戦場に向かって歩き出す。


 プニが不安そうにオロオロとそれを見ている。


「……俺は大丈夫だから行っていいよ」


 見兼ねたシルルンがプニに微笑を向ける。


「……いってくるデシ!!」


 複雑そうな表情を浮かべるプニは、意を決してふわふわと飛行して純白の騎士を追いかけた。


「むっ、なんで動かないのよ……」


 タマに乗って出陣しようとしたビビィだが、マルが追従せずにその場から動かないのでビビィは困惑しながらもマルを無理矢理押してみるがビクともしない。


 シルルンはどうして動かないのか思念でマルに聞いてみると「今日はマスターと一緒に戦いたい」と返事がきた。


「マルはこっちで戦うから、ビビィにはピヨをつけるよ」


 ビビィは泣きそうな顔でマルを見つめていたが、ピヨが傍に近づくと一転して笑顔を見せる。


 どうやらビビィはヒヨコ色のピヨも気に入って目をつけていたようで、マルの代わりにピヨを前衛に配置して出陣したのだった。


 残ったペットたちがシルルンを見つめている。


「まぁ、焦ることはないよ。周辺の魔物を殲滅したら東に進軍するからね」


 ペットたちは頷き、シルルンは魔法の袋からぶどう酒を取り出してそのままラッパ飲みする。


「わはは、いきなり酒ですかい大将……」


 シルルンは無言で魔法の袋からぶどう酒を取り出してバーンに手渡す。


「こりゃあ粋ですなぁ大将」


 バーンもぶどう酒をラッパ飲みした。


 最前線であるにも拘わらず、まるで緊張感のない二人を目の当たりにしたファクスは絶句する。


 展開したシルルンの仲間たちは強く、周辺の魔物の群れを何の問題もなく倒していく。


 全員がミスリルの装備だということもあるが、鉱山の拠点の上層から下りてくる魔物のほうが遥かに強いからである。


 プルは触手を伸ばしてスゲェ剣を振り回して魔物を斬り刻んでいる。


 だが、スゲェ剣に付加されている『燕返し』の効果を発揮することができずに宝の持ち腐れだった。


 純白の騎士は魔物を簡単に切断することができるホワイトミスリルソードの切れ味に驚いていたが、その強さはレベル97とはいえ、レッサー スケルトンなのでブラ隊の【剣豪】や【格闘家】よりも劣っていた。


 だが、肩にのっているプニニからすれば純白の騎士は格段に強くなっており、肩の上でピョンピョン跳んで喜んでいる。


 しかし、プニからすれば純白の騎士は強くなったかもしれないが、プニニ自体は何も変わっておらず、一撃でも受ければ死に直結するので気が抜けない状況が続いていた。


 ほどなくして、皆が周辺の魔物の群れを殲滅し、シルルンは戦った仲間たちやペットたちを下がらせた。


 シルルンは先ほどの戦いに参加しなかったペットたちを率いて、東の方角に進軍を開始する。


 前衛にはメーア、ミドル、ガーネット、マル、バイオレットを配置し、中衛にはシルルン、バーン、スカーレット、エメラリーが並び、その上空にはドーラとペーガがふわふわと飛んでいる。


 シルルンの肩にはプルルだけがのっており、残りの者たちは後衛で休憩中なのだ。


 前方から五十匹ほどのアント種の群れが接近しており、斥候から戻ったリジルがシルルンの元に駆けて来る。


「ボス、あの五十の後ろには二百ほどのアント種の群れが追従してるわよ」


 リジルは涼しげな顔でシルルンに報告し、休憩するために後衛に歩いていった。


「前方の五十はともかく、その後ろの二百は厳しいのではないでしょうか?」


 ブラが険しい表情を浮かべている。


「……確かにな、シルルン様が動くんなら何も問題はないと思うが、そうなるぐらいなら俺たちが動いたほうがいいだろう」


 ゼフドの言葉にアキも頷く。


「……まぁ、あんたたちはアダックのダンジョンに行ってないから分からないと思うけど、全く問題ないと思うわよ」


 リジルはしたり顔で言った。


 その言葉に、リザとロシェールも無言で頷いている。


 突進してくる五十匹ほどのアント種に対して、マル、バイオレット、エメラリー、ミドルが進軍の足を止めることなく遠距離攻撃を放ち、十匹ほどのアント種が即死、あるいは動きが鈍ったが、残りがそのままの勢いで突っ込んでくる。


 前衛のメーアが『炎のブレス』を吐き、アント種は灼熱の炎に体を焼かれて三十匹ほどが一瞬で炭になり、残ったアント種にメーアがサンダーの魔法を唱えて稲妻が降り注ぎ、アント種は黒焦げになってアント種は全滅した。


 シルルンの肩から跳び下りたプルルがピョンピョンと跳ねてアント種の死体の傍に移動して、アント種の死体を全て『捕食』してからシルルンの肩に戻る。


「なっ!?」


 仲間たちは驚きのあまりに血相を変える。


「ね? 強いでしょ?」


 リジルは勝ち誇ったようにドヤ顔で言った。


「……だが次の二百はそうはいかんだろ?」


「まぁ、あの群れにはクラブ種がいなかったから同じような結果になると思うわよ」 


 シルルンの周りをふわふわと飛んでいるドーラとペーガは視界に入ったアント種二百を見つめていたが、一直線にアント種の群れに向かって飛行した。


 空からドーラが『炎のブレス』を放ち、灼熱の炎に包まれた五十匹のほどのアント種たちが瞬時に灰と化し、ペーガが『風閃』を放ってとんでもない突風がアント種を貫いて百匹ほどが体をバラバラに切り裂かれて沈黙した。


 残ったアント種の群れは混乱状態に陥り、ドーラとペーガが空から容赦なく攻撃魔法を唱えて攻撃し、アント種の群れは何もできずに全滅した。


「……な、なんなんだあの火力は!?」


 ゼフドたちは雷に打たれたように顔色を変える。


「ふふふ、ミニシリーズのマーニャ、ドーラ、メーア、ペーガは無茶苦茶強いのよ」


 リジルは満足そうな笑みを浮かべている。


 帰還したドーラとペーガはシルルンの首筋にしがみついて甘えており、シルルンはドーラとペーガの頭を優しく撫でる。


 ドーラとペーガはとても嬉しそうだ。


 シルルンたちは魔物の群れと遭遇しても足を止めずに殲滅しながら進んでいくが、遥か前方にクラブ種の群れが佇んでいた。


 クラブ種はシルルンも初めて遭遇する魔物で、全てが通常種の群れで数は十匹だ。


「……シ、シルルンさん!! あえて言わせてもらいますがあの魔物は危険です!! 通常種が上位種ほどの力を持つ魔物なんですよ!!」


 ファクスは緊張に一層顔を強張らせて訴える。


「……」


(確かに通常種とは思えないほどステータスの値が高いけど倒すだけなら仲間達でも可能だね。だけど売れなくなるかもしれない……)


 『魔物解析』でクラブたちを視たシルルンは表情を曇らせる。


「……数が多いから俺が倒すよ」


 シルルンは魔法の袋から水撃の弓を取り出し、クラブたちに狙いを定めて『十六連矢』を放った。


 だが、水弾の数は九発だった。


 『十六連矢』は十六発以上の矢を放つことは不可能だが、数を減らすことは可能で彼は意図的に九発の水弾を放ったのである。


 九発の水弾は吸い込まれるようにクラブたちに一発ずつクルティカルで着弾し、高い防御力を誇るクラブたちの装甲を易々と貫通して九匹のクラブは活動を停止した。


「……そ、そんな馬鹿なっ!?」


 ファクスは放心状態に陥る。


「……全弾命中したの?」


「……す、水弾が曲がったように見えたけど」


 これにはシルルンの仲間たちも驚きを隠せなかった。


「……すげぇな大将、一発かよ……」


「一匹はわざと残したから戦ってみるかい?」


 バーンの強さを知らないシルルンは探るような眼差しをバーンに向ける。


「あいつは硬いからな……綺麗に倒せなくてもいいか?」


「じゃあ、これを使うといい」


 シルルンは魔法の袋から二本の短剣をバーンに投げ渡す。


 彼はクラブの硬い装甲を貫くには、バーンが所持する鋼の短剣では厳しいと考えたのである。


「……これはダイヤモンドダガーじゃねぇか……入って間もないのにいいのか?」


 シルルンが無言で頷くと、バーンは無邪気に目を輝かせて微笑んだ。


「やっぱ最高だぜ大将は!!」


 バーンはそう叫んで凄まじい速さでクラブに目掛けて突進した。


 クラブの全長は三メートルほどで、通常種が上位種ほどの強さと言われる所以は、『鉄壁』と『剛力』を併せ持っているからである。


 バーンを待ち構えているクラブはバーンが射程距離に入ると『アクアブレス』を放つ。


 無数の泡がバーンに襲い掛かり、誰もが距離を取って躱すか、あるいは足を止めて回避に専念するかと思ったが、バーンは彼らの予想に反して無数の泡の中に身を投じた。


「なっ!?」


 その暴挙に誰もが思わず目を疑った。だが、シルルンだけは感嘆の声を漏らしていた。


 バーンの動きが泡を見てから躱しているのではなく、どこに泡が飛んでくるのか知っているような動きに彼には見えたからである。


 難なくクラブに肉薄したバーンは両手に持つ短剣で、関節部分を狙ってクラブの右鋏と右脚を切断してクラブは奇声を発した。


「わはは、なんて切れ味だ!! 俺の短剣とはえらい違いだぜ!!」


 クラブは体から血を噴出しながら左の鋏でなぎ払いの一撃を繰り出したが、バーンが短剣で左の鋏を斬り落とした。


「……そのざまではもうまともな攻撃はできんだろ」


 しかし、クラブは後方に跳躍しながらアースの魔法を唱えて、無数の岩や石がバーンに襲い掛かり、バーンは迫りくる岩や石に目掛けて突撃して無数の岩や石の中を突き抜けた。


 彼は避けようのない巨大な岩は短剣を振るって軌道を変えたのである。


 地面に着地したクラブは、目の前になぜバーンがいるのか理解できずに面食らったような表情を浮かべている。


 だが、切断されたはずのクラブの右鋏と右脚がなぜか回復しており、クラブは右鋏を振り上げる。


「……思い出したぜ。そういやこいつは『再生』を持ってやがったんだ」


 バーンは二本の短剣でふんどしのやや上に存在する心臓こあを滅多刺しにして完全に破壊し、右鋏がバーンに届く前にクラブを絶命させたのだった。


「……ふぅ~危ねぇ……紙一重じゃねぇか……このダガーじゃなかったら俺の首が飛んでたかもな……」


(そもそも上位種相当の魔物を綺麗に倒せという大将の注文自体が無茶なんだよ)


 バーンはそう思いながら踵を返したが動きを止める。


「……だが、そこがいい」


 バーンは虚空を見つめて口から涎を垂れ流している。


 戻ってこれないほどのダメージを受けていたのかとシルルンの仲間たちは心配そうにバーンを見つめている。


 しばらくすると我に返ったバーンが何事もなかったようにシルルンたちの元に帰還した。

 

「ちょいと危なかったが綺麗に倒せたほうだろ大将?」


「胴体への集中攻撃だから問題ないよ」


「フフ……あなたたちの中で近接戦だけに限定すればバーンが一番強いんじゃないかしら」


「なっ!? それは聞き捨てなりませんぞラーネ殿……」


 ロシェールは心中穏やかではないという表情になっており、ゼフトとアキも不服そうに頷いている。


「……ていうか誰なんだこの妖艶な姉ちゃんは?」


 ラーネは小人のままで生活しているので、彼女の存在を彼が知らないのも無理はなかった。

 

「私はラーネ……マスターの懐刀よ……」


 ラーネは恍惚な表情を浮かべて体をくねくねさせる。


「ほう……俺は聖騎士の姉ちゃんともってみてぇが、先に妖艶な姉ちゃんとってみてぇな……」


(大将の懐刀ならどれだけ強いんだ?)


 頭の芯が痺れるような感覚を覚えたバーンは、虚空を見つめて口から涎を垂れ流している。


「……いやいや、勝てる訳ないだろ!!」


 全員が口を揃えて言ったがバーンには聞こえていなかった。


 少しの間をおいて、正気に戻ったバーンが平然と喋りだす。


「どこでる? 俺はいつでもいいぜ?」


「さっきも言ったが勝負にならんと思うがな……」


 ロシェールの言葉に、皆も同意を示して頷いている。


「それほどの相手ならってみたいと思わないのかお前らは?」


「戦っても何もできずに勝敗が決するだけだからな。お前はラーネ殿の強さを知らないからそう言えるんだ」


「……俺はそんな相手にでくわしたことがないからってみたいとなおさら思うぜ」


「まぁ、経験しないと分からないこともあるんじゃないかな……バーンは稀な能力を持ってるみたいだからそれがどこまで通用するか試してみたいんだろうね」


「……なんで大将は俺が稀な能力を持っていると知ってるんだ?」


 たった一度戦っただけで見抜かれていることにバーンは驚きを禁じ得なかった。


 彼は食うに困って傭兵ギルドで【傭兵】に転職した口だ。現在でも彼のように仕方なく【傭兵】に転職する者は後を絶たない。


 そのため、何の知識もなく戦場に身を投じることになるので、戦闘知識を叩きこまれる軍の【兵士】よりもその死亡率は高い。


 だが、彼は早い段階で【傭兵】から派生する可能性がある、【彷徨う庸兵】という上級職業に自力で目覚めたことによって頭角を現した。


 【彷徨う庸兵】は『経験値2倍』を所持しているからである。


 『経験値2倍』の恩恵を得て強さを増していった彼は、さらに『集中の彼方』にも自力で目覚めたのだ。


 この能力によって数秒先の未来が視える彼は、クラブの『アクアブレス』を難なく躱すことが可能だったのである。


「泡の躱し方に驚いたからバーンの能力を視させてもらったよ……俺は全ての生物の能力を視ることができるからね」


「……そ、想像以上にすげぇな大将は」


「バーンは俺が『瞬間移動』を持ってると勘違いしてると思うけど、『瞬間移動』を持っているのはラーネなんだよ。それでも勝算はあるのかい?」


「なっ!?」


 絶句したバーンは思わずラーネに視線を向ける。


「……ちなみにラーネが本気を出せばその攻撃力は一万ぐらいだからもうエンシェント級なんだよ」


 これには皆も戦慄して息を呑んだ。


「……わはは!! 分からんことだらけだぜ。そもそも俺自身の攻撃力がいくらなのか知らねぇし、エンシェントってなんなんだ?」


「バーンの攻撃力は俺には分からないけどメイなら分かるよ」


 シルルンが視線をメイに向けると、メイは頷いて『人物解析』でバーンを視た。


「バーンさんの攻撃力は六百六十で『強力』を加味すると九百九十になります」


「……ってことは俺の十倍かよ!?」


 バーンはガツンと頭に衝撃を受けたような顔をした。


「フフッ……エンシェントの存在は知らなくて当然なのよ」


 エンシェントを知らないバーンとロシェール、ファクスがラーネの方に顔を向ける。


「エンシェントは優れた上位種一匹だけが辿り着けるその種の最強の個体のことよ。種を護る存在だから巣の外に出てくることはほとんどないから知られてないのよ」


「ということはエンシェントはラーネ殿ぐらいに強いということか……」


「まぁ、大規模な巣と数がいないとエンシェントはいないと思うけど、鉱山で遭遇したエンシェント ハイ ホーネットは『空間消去』を持ってたからヤバかったね……あれに勝てるのは勇者ぐらいしかいないだろうね」


「フフッ……イーグル種のエンシェントを倒しておいてよく言うわよ……私は一撃でやられたのに……」


「なっ!?」


 驚愕したバーン、ファクスは我知らずにシルルンに視線を転じたが、シルルンが勇者級の強さだと知ったロシェールは、両手で頬を押さえて恍惚な表情を浮かべながら体をくねくねさせている。


 彼女は自分が勇者の剣なのだと勝手に解釈しているのだ。


「あれはスピードを得意とする者同士の戦いだったから相性が良かっただけで、エンシェント ハイ ホーネットには勝てる気がしないけどね……」


「『瞬間移動』を持ってないんなら大将とってみたいな……」


 バーンは屈託のない笑みを浮かべながらシルルンを見つめている。


「……動けるかいバーン? 動けるなら戦ってもいいけどね」


「なっ!? か、体がビクともしねぇ……こ、これは『威圧』……じゃあないよな……なんで動けないんだ……」


 バーンの顔が困惑に染まる。


「動けないなら戦うのはまだ早い……まぁ、俺も特殊な能力を持ってるってことだよ」


 シルルンが『念力』の力を開放すると、唐突に動けるようになったバーンが感嘆の声を上げる。


「……す、すげぇなその能力……どう考えても最強だろ!!」


(おそらく精神操作系か魔眼の類だろうな)


 バーンは興奮して鼻息が荒い。


「そうでもないよ……実際、ギャンという奴にスライムに変えられてプルとプニがいなければ俺は負けてたからね……」


「えっ!?」


 皆は信じられないといったような形相だ。


「いったい何者なんですかそのギャンという男は!?」


 殺気立ったゼフドが声を荒げた。


「山賊の一味らしいよ」


「馬鹿なっ!? そのような者がなぜ……」


「ギャンは弱い魔物に変化させる能力を持ってたみたいで俺はスライム、ワーゼやスコットはレッサー スパイダーに変えられたんだよ。まぁ、強くなればなるほど特殊な魔法や能力を持つ確率が高くなるから、ある意味、ジャンケンみたいな戦いになるんだよ」


「……そ、それでそのギャンはどうなったんですか?」


「フフッ……ハイ ヘドロの剣で斬られてるからおそらく死んでるわよ」


「ハイ ヘドロの剣?」


 皆が怪訝な表情を浮かべている。


「即死を含む状態異常が二十ぐらいついてる剣のことよ。あの時ギャンは即死しなかったけどのたうち回っていたから精神が焼き切れて死んでるはずよ。けれども生きていたら怒り狂ってマスターを狙ってくるかもしれないわね……」


「……」


 誰も言葉を発しなかったがシルルンの警護を強化する必要があるというのが共通認識で、その警護をするのは自分だと彼らは思うのだった。

面白いと思った方はブックマークや評価をよろしくお願いします。


クラブ レベル1 全長約3メートル

HP 600

MP 200

攻撃力 300

守備力 250

素早さ 100

魔法 シールド アース コンフューズド

能力 鉄壁 剛力 再生 アクアブレス 魔法軽減



傭兵 レベル1 

HP 400~

MP 0

攻撃力 80

守備力 60

素早さ 80

魔法 無し

能力 無し



彷徨う庸兵 レベル1 

HP 700

MP 0

攻撃力 250

守備力 250

素早さ 200

魔法 無し

能力 堅守 経験値2倍



バーン 彷徨う庸兵 レベル56 

HP 1300

MP 0

攻撃力 660+ダイヤモンドダガー×2

守備力 600+鋼の胸当て 鋼のブーツ

素早さ 760+防御の腕輪+1

魔法 無し

能力 堅守 経験値2倍 強力 回避 集中の彼方

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