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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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115/302

115 シルルンが買った土地② 修


挿絵(By みてみん)


 首都トーナの街の図


 紫色の土地がシルルンが買った土地。


挿絵(By みてみん)


 シルルンの土地の拡大図


 注 建物は実際の大きさとは異なり、あくまで分かり易いようにしています。

 

 


 シルルンたちはスライム小屋の裏側に向かって歩いていく。


 トーナの街はメローズン王国の都市の中でも珍しい作りになっており、三つの区画に分かれている。


 仮にトーナの街の防壁が魔物に破壊されたとしても、各区画が堅牢な防壁で囲われて独立しているので、トーナの街を陥落させることは困難を極める。


 ちなみに、トーナの街の一辺は二百キロメートルほどあり、メローズン王国の都市の中でも平均的な大きさだ。


 シルルンたちはスライム小屋の裏に到着し、シルルンは地面の土を手に取った。


 土は全く湿り気のない砂漠の砂のようだった。


「まぁ、全く作物が育たない一平米一円の土地だからこんなもんだよね」


 シルルンは納得したような顔をした。


 シルルンたちはスライム小屋の裏側から北の方角に百メートルほど移動した。


「穴を掘ってみてよ」


 その言葉に、瞳を輝かせたブラウンたちは凄まじい速さで地面に穴をあけていき、掘り出した土が山のように積み上がっていく。


 穴の深さが十メートルに達したところでシルルンは、穴の中に飛び下りて地面に手で触れた。


「もう地盤に達してるから深さはこれぐらいでいいよ。あとは目印としてこの剣が刺してある範囲まで掘ってほしいんだよね」


 シルルンは魔法の袋から錆びた剣を三本取り出してブラウンたちに見せた。


 ブラウンたちは頷き、シルルンは『反逆』をブラウンたちに発動した。


「!?」


 体の異変にブラウンたちは戸惑っていたが、シルルンの力によるものだと理解して凄まじい速さで穴を広げていく。


 ブラックは積み上がった土を『捕食』しており、シルルンは瞬く間に北、東、西に移動してそれぞれの地面に錆びた剣を刺した。


 ちなみに、シルルンが錆びた剣を地面に刺した範囲は、道を跨いだ西の土地の全てだ。


 シルルンはグレイを連れてスライム小屋の裏側に移動した。


 周辺の土はすでに消え去っているので、スライム小屋や宿屋や雑貨屋になる予定の建物の地面の土だけが残っており、サラサラと崩れ始めている。


「グレイは建物の下の土を石に変えてほしいんだよ。プルとプニは石を出して」


「分かったデス」


「デシデシ」


 プルたちが口から石を吐き出すと、グレイは建物の下の土とプルたちが吐き出した石を混ぜながら一瞬で建物の下を石に変えた。


「うん。これで石に変えた地面と地盤が繋がったから強度が上がったよ。あとはブラウンたちが掘ってるところを石に変えてほしいんだよ」


 満足げな表情のシルルンは『反逆』をグレイに発動した。


「!?」


 一瞬驚いた素振りを見せたグレイはすくにシルルンの力だと理解して、凄まじい速さで周辺を石に変えていく。


 シルルンは跳躍して石に変わった地面の上に上り、地面に座り込んで酒を飲み始めた。


 三十分ほどが経過すると、ペットたちは作業を終えてシルルンの元に帰還した。


 『反逆』を解いたシルルンは魔法の袋から鉄の塊を大量に取り出して地面に置き、プルたちの頭を優しく撫でた。


 プルたちは嬉しそうにしており、クレイやブラウンたちは嬉々として次々に鉄の塊を体内に取り込んでいる。


「あとは建物二軒と石に変えた土地を囲むように防壁を作ってほしいんだよ」


 シルルンは建物の大きさをグレイたちに説明し、防壁の作製はゆっくりで構わないと補足した。


 グレイは一瞬で二軒の建物を作製し、グレイとブラウンたちは防壁を作製するために東の方角に歩いていった。


 シルルンがグレイに頼んだ建物の大きさは、一軒が横幅と奥行きが百メートルで、もう一軒が横幅と奥行きが五十メートルだ。


 大きいほうの建物はスライム小屋の裏に建っており、この建物もスライム小屋になる予定だ。


 そして、もう一軒の小さいほうの建物はシルルンの家の裏に建っていた。


 シルルンたちは小さいほうの建物の中に入って、シルルンは魔法の袋から大きいほうの魔法陣を取り出して建物の中心に敷いた。


 これにより、鉱山拠点のシルルンの部屋の隣にある部屋に、もう片方の魔法陣を敷くことによって双方向の転移が可能になるのだ。


 シルルンたちは建物から退出して、宿屋と飲食店になる予定の建物に移動した。


 すると、すでに建物の前にメイたちが立っていた。


「どんな物がいる?」


「店の規模が大きすぎるので書き出してあります」


 メイは羊皮紙をシルルンに見せた。


「うん、かなりの数だね。じゃあ、買いに行こうか」


 シルルンたちはラーネの『瞬間移動』で姿が掻き消える。


 第二区画の雑貨屋の前に出現したシルルンたちは雑貨屋に入った。


 メイのリストに書かれた備品をシルルンたちは購入していき、シルルンは貴重品を飾るガラスケースを大量に購入した。


 前回シルルンはこの店で大量に商品を購入しているので、店員に魔法の袋の説明をせずに商品を購入することができたのだった。


 シルルンたちはラーネの『瞬間移動』で宿屋と飲食店をする予定の建物の前に出現、建物の中に入った。


 魔法の袋からシルルンが雑貨屋で購入した備品を次々に地面に置いていくと、メイはメタルゴーレムに指示を出し、メタルゴーレムは指示通りに備品を設置していく。


 ちなみに、一階が飲食店で二階が宿屋になる予定だ。


 設置を済ませたシルルンたちは雑貨屋予定の建物の中に入る。


 シルルンは魔法の袋から棚やテーブル、ガラスケースを次々に地面に置いた。


 メタルゴーレムはメイの指示通りに棚やテーブルを並べていく。


「シルルン様、この雑貨屋では何を主に売るつもりなんでしょうか? それによってレイアウトなどが変わります」


 メイは探るような眼差しをシルルンに向ける。


「う~ん、何でも売るつもりだよ。だから、ガタンが売ってる武具やポーションとかも売ってもいいと思ってるし、とりあえずメイは二階担当でこれをメインに売ることを考えてみたら」


 シルルンは魔法の袋から麻袋をメイに手渡した。


「こ、これは宝石ですね」


 メイは驚きの表情を見せる。


「うん。鑑定書もついてるから売る値段もメイが決めていいよ」


「はい、分かりました」


 メイは嬉しそうに微笑んだ。


 ガラスケースを大量に抱えたメタルゴーレムとメイは二階へと消えていった。


「……一階で何を売ろうかな」


 (とにかく集客力が上がるような商品を置かないとスライム屋にもお客は来ないからなぁ……)


 シルルンは険しい表情を浮かべて逡巡する。


 そして閃いた彼はラーネの『瞬間移動』で掻き消える。


 第二区画の武器、防具屋の前に出現したシルルンたちは、武器、防具屋の中に併設された鑑定屋に足を運んだ。


 鑑定屋には順番待ちの人がおらず、、シルルンたちはすぐに店員に声を掛けられてカウンター席に腰掛けた。


「それでは、鑑定するアイテムをお出しください」


「……」


 (眼鏡をかけてなくて良かったよ)


 シルルンは安堵の溜息を吐いた。


「最初に言っておくけど今から鑑定してもらうアイテムは競売には出さないからね」


 シルルンは毅然とした態度で言った。


 彼は前回の鑑定時に眼鏡をかけた女鑑定師が突然逆上した理由をリジルから聞いていたのだ。


「……は、はい」


 意味が理解できない女鑑定師は面食らってぽかんとする。


「お客さんは僕ちゃんしかいないからまとめて出してもいいかな?」


「……えぇ、差し支えありません」


 辺りを見渡した女鑑定師は小さく溜息をついた。


「じゃあ、これをお願い」


 シルルンは魔法の袋の中から淡く白く輝く剣と盾、そして鎧一式をカウンターの上に置いた。


 武具一式を目の当たりにした女鑑定士は明らかに目の色が変わって息を呑んだ。

 

「こ、これはアダマンタイトソード!?」


 緊張した面持ちで女鑑定師は『アイテム鑑定』で剣を視て、思わず大声で叫んだ。


「うん、知ってる」


 シルルンは当たり前のように言った。


「えっ!? なっ……」


 女鑑定師は面食らったような表情を晒している。


 しかし、彼女はプルたちが動いているのを目の当たりにして大きく目を見張った。


「ほ、本物のダブルスライム……」


 女鑑定師は思わずそう呟いた。


 だが、女鑑定師が大声で叫んだことにより、手間待ちだった鑑定師たちが慌ててシルルンの元に駆け寄ぅた。


「ほ、本物だ……」


「マジでアダマンが一式揃ってるぜ……」


「私は長く鑑定士をやっているけど初めて見たわ!!」


「す、すげぇ!! すげぇぞすげぇ!!」

 

 『アイテム鑑定』でアダマンタイトの武具一式を視た鑑定師たちは興奮して場が騒然となる。


「……」


 (やべぇ、なんでこうなるんだよ……)


 苦々しげな表情を浮かべるシルルンは素早く武具一式を魔法の袋に収納し、鑑定料の銀貨五枚をカウンターの上に置いた。


「鑑定師がこの場で騒いでなんとする!!」


 カウンターの置くから歩いてきた老紳士が鑑定師たちを一喝する。


「申し訳ありませんダブルスライム殿、どうぞこち――」


 老紳士はシルルンを別室へ案内しようとしたが、シルルンたちはラーネの『瞬間移動』で姿が掻き消えた。


 残された老紳士と鑑定師たちは呆然と立ち尽くしたのだった。


















「なんでこうなるんだよ……」


 シルルンたちは鉱山拠点のシルルンの部屋の前に出現し、シルルンは不満そうにしている。


 すると、ガダンがシルルンに向かって歩いてきた。


「王よ!! 指示がありました扉の設置が完了しましたぞ」


「えっ!? もう終わったの? 早いね……」


「はい、王の指示なので特別に急がせました。この鍵は王の部屋の鍵とその隣の部屋の鍵です。隣の部屋の鍵は王に二本渡しておきます」


「うん、ありがとう……」


 ガダンから鍵を受け取ったシルルンは考え込むような表情を浮かべている。


「……王よ、何かお悩みがおありなのですかな?」 


 見兼ねたガダンは神妙な表情でシルルンに尋ねた。


「……うん、ちょっと考え――!?」 


 シルルンは喋る途中で閃いた。


「そういえばガダンは商人だよね!! 『アイテム鑑定』をもってる人はいないかな?」


「無論、儂は商人ゆえ、鑑定師はおりますぞ」


「……だよねぇ!!」


 (何で気づかなかったんだよ)


 シルルンは自嘲気味に微笑んだ。


「鑑定師は拠点ここにいるのかな?」


「もちろん、いますがどうされたのですか?」


 ガダンは怪訝な表情を浮かべる。


「うん、『鑑定』してほしい品物があるんだけど、その鑑定師はディード(鑑定書作成)の魔法か『証書作成』はもっているかな?」


 ちなみに、鑑定書を作成するにはディードの魔法か『証書作成』が必要なのである。


「この拠点に連れてきている鑑定師は一番能力が高い者を連れてきているので、もちろん所持しておりますぞ」


「そうなんだ。じゃあ、その鑑定師をここに連れてきてほしいんだよ」


「分かりました。しばしお待ちを……」


 身を翻したガダンは拠点の外に慌しく走って行った。


 シルルンは自室の部屋の前でしばらく待っていると、ガダンと一緒に女性が走ってきた。


「王よ、この者の名はカンナといい『鑑定』と『証書作成』を所持しております」


「初めましてシルルン様、カンナと申します。よろしくお願いします」


 深々と頭を下げたカンナは真っ直ぐにシルルンを見つめて微笑んだ。


 彼女は長い黒髪の色白で真っ白なローブに身を包んでおり、その姿は気品漂う美しい女性だ。


「うん、よろしくね」


 シルルンは無邪気に瞳を輝かせた。


 だが、カンナはシルルンの瞳を見て違和感を覚えていた。


 全ての男は彼女を目の当たりにすると欲情し、いやらしい目で舐め回すように見るのが当たり前だったからだ。


 爽やかそうな優男でも目の奥には隠すことの出来ないいやらしさがカンナには感じられたのだ。


 そんなカンナに対してその様な素振りをみせなかったのはガダンだけで、ガダンは無我の境地に至った仙人なのだとカナンは思っていた。


 しかし、目の前のシルルンはカンナを見てもその目にはいやらしさが皆無だとカンナには感じられた。


 そのため、彼はガダンのように無我の境地に至った仙人か、あるいはホモのどちらかだと考えたカンナは後者だと思い、彼女の中ではシルルンはホモだと確定したのだった。


「そ、それで私は何を『鑑定』すればいいのでしょうか?」


「うん、これを『鑑定』してほしいんだよ」


 シルルンは魔法の袋から武具一式を取り出して地面に置いた。


「こ、これはアダマンタイトで作られた武具ですね」


 カンナの顔が驚愕に染まる。


「す、素晴らしい品ですな……」


 ガダンは興奮して鼻息が荒い。


「うん、とりあえず鑑定書を作成してほしいんだよ」


「わ、分かりました」


 カンナは『証書作成』でアダマンシリーズの一つ一つに鑑定証を作成していく。


「次はこれを『鑑定』して鑑定証を作成してほしいんだよ」


 シルルンは魔法の袋から金色に輝く武具一式を取り出して地面に置く。


「これはオリハルコン!?」


 カンナは信じられないといった表情を浮かべている。


「お、王よ……これをどうするおつもりなのですかな?」


 ガダンは探るような眼差しをシルルンに向ける。


「あはは、丁度いいね。ガダンもついてくればいいよ」


 シルルンは鑑定書が作成されると武具を魔法の袋にしまった。


「じゃあ、行こうか」


「あ、あのぅ、私もついて行ってよろしいでしょうか?」


「うん、いいよ」


 シルルンたちはシルルンの部屋の隣の部屋に移動し、鍵を使って扉を開けて中に入る。


「……なるほど、ここを宝物庫にするおつもりなのですな?」


 (しかし無用心すぎる……)


 ガダンは首を捻って得心のいかないような表情を浮かべている。


「あはは、そんなわけないじゃん」


 部屋の中央まで移動したシルルンは魔法の袋から大きな魔法陣を取り出して地面に敷いた。


「こ、これは魔法陣!?」


 ガダンは雷に打たれたように顔色を変える。


「うん、そうだけど転移ができる魔法陣なんだよ」


「――そんなものは聞いたこともありませんぞ!?」


 ガダンは放心状態に陥った。


「あはは、そうなんだ。でも僕ちゃん他にも【転移の水晶】っていう転移できる魔導具も持ってるよ」

 

 シルルンたちは魔法陣に歩を進めて、その姿が掻き消えた。


「……な、なんということだ!?」


 (これがあれば輸送業界に革命が起きる!!)


 ガダンは驚きを禁じ得なかった。


 目の色を変えたガダンは慌ててシルルンを追いかけて魔法陣を踏むとカンナも後に続いた。


 広い部屋に出現したガダンたちは辺りを見渡すがシルルンの姿はなかった。


 ガダンたちは部屋から出ると、シルルンは外で待っていた。


「お、王よ……ここはいったいどこなのですかな?」


「うん、ここはトーナの街だよ。僕ちゃん安い土地を十六億平米買ったんだよね」


「……トーナの街」


 ガダンは鋭い眼差しで周辺を探る。


 彼は巨大な防壁の位置から区画を割り出し、シルルンの土地にすでに防壁が設けられているのを目の当たりにして結論に至った。


「王よ、ここに第四区画を作るおつもりですね」


 ガダンは正面からシルルンの目を覗き込んだ。


「へっ!?」


 (ガダンは何を言ってるんだよ?)


 シルルンは呆けたような顔をした。


 彼が自身の土地を防壁で囲んでいるのは、他の区画の真似をしているだけで深い意味はなかった。


「王よ!! 是非儂にも第四区画の創造を手伝わせてくだされ!!」


 ガダンは顔が興奮で赤らんで鼻息が荒い。


「えっ? うん……元からそのつもりだよ」


「うぉおおおおぉ!! ありがとうございます!! このガダン、全身全霊で取り組まさせてもらいますぞ!!」


 (第四区画の創造にすでに儂も組み込まれていたとは……さすが王だ!!)


 血を沸き立たせるガダンはそれと同時に、痺れるような陶酔感を味わっていた。


「う、うん……じゃあ、これが鍵だよ」


 シルルンは若干引き気味に鍵をガダンに手渡した。


「ありがとうございます!!」


「この魔法陣は無制限に双方向に転移できるけど、魔法陣よりも大きい物は転移できないから気をつけてね」


「む、無制限!?」


 テレポートの魔法ですら大量の魔力が必要なことを知るガダンはガツンと頭に衝撃を受けたような顔をした。


 彼はそれと同時に、ルビコの街で営業している商店を第四区画に移転することを決断した。


 シルルンたちは雑貨屋予定の建物に向かって歩き出し、ガダンたちもその後を追いかける。


「今、営業してるのはスライム屋しかないんだよね」


「なるほど」


 ガダンは興味深げに頷いた。


 シルルンたちは雑貨屋予定の建物に到着して建物の中に入った。


「ここは雑貨屋で隣が宿屋と飲食店をするつもりなんだよ」


 すると、二階からメイとメタルゴーレムが下りてきて、シルルンたちに向かって歩いてきた。


「王よ、儂もここに出店してもよろしいのですか?」


「うん、いいよ。場所なんかはメイと話し合って決めたらいいよ」


 ガダンとメイは同意を示して頷いた。


 シルルンは魔法の袋からアダマンタイト製の武具一式とオリハルコン製の武具一式、大きなガラスケースを二つ取り出して地面に置いた。


 ガラスケースに武具を収納したシルルンは建物の中心に二つのガラスケースを並べて展示した。


「なるほど……さすが王ですな。これで集客するのですね……ですが、これほどの武具を誰が護るのですかな?」


「う~ん、今考えてるのはメタルゴーレムとマーニャたちかな。マーニャたちは見た目も可愛らしいからお客も怖がらないと思うし、むしろ、集客が上がるような気もするからね」


「……なるほど、今すぐには無理ですがルビコの街を拠点にしている儂の採取隊千三百名を呼び寄せましょうか?」


「千三百!? すごい数だね……でもいいのかい? 採取隊は魔物の素材を集めてるんでしょ?」


「無論、ここに配置するのは三百名ほどで残りは鉱山に回すつもりです。儂はルビコの街から撤退し、ここに拠点を移すと決めたのです」


「えっ!? マジで!?」


「はい、儂はここで勝負したいと考えておるのです」


 (これまでは値段を下げ過ぎないように気を使っていたが、ここでなら限界まで値段を下げて商売ができる) 


 ガダンは期待に胸躍らせて目をギラつかせている。


「……そ、そうなんだ。じゃあ、武具の護りは頼んだよ」


「はっ、任せてくだされ」


「あっ!? ガダンに言うのを忘れてたよ」


「……何をですかな?」


 ガダンは訝しげな顔をした。


「うん、ガダンは僕ちゃんの奴隷だから税金が免除されるんだよね」


「なっ、なんですと!?」


 ガダンはショックを露にした。


「うん、僕ちゃんシャダル王から勲章をもらったから税金を払わなくていいんだよ」


 シルルンはふふ~んと胸を張る。


「くくく、それでは勝ったも同然ですな……我が王は武だけにあらず!!」


 (トーナの街の商業が崩壊したとしても、それはシャダル王の浅はかさが原因だということだ)


 ガダンは意地の悪い微笑みを口元に浮かべている。


 こうして、シルルンの第四区画は着々と発展していくのだった。

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