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スライムスライム へなちょこ魔物使い  作者: 銀騎士
鉱山 採掘編

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101 ダンジョン都市アダック⑫ 修


「いったい、どうなってやがるんだ……」


 男は右のルートを突破してきた冒険者たちを見つめて絶句した。


 彼らは三隊で連合を組んでここにたどり着いたにも拘からず、冒険者たちがのん気に休憩し始めたからだ。


「魔族の群れがいるのに全く動揺していない」


「素直に受け止めればあの冒険者たちは魔族たちより強いということになる」


「馬鹿を言うな。一匹でも勝つことが不可能なぐらいに魔族は強いんだぞ。それが二十匹だ……勝てるわけがない」


「じゃあ、なんであの冒険者たちはあんなところで休憩してるのよ?」


「分からん……分からんから困惑してるんだろ」


 男の仲間たちが意見を述べるが答えは出なかった。


 そのため、彼らは休憩する冒険者たちを放置することにしたのだった。


 男たちは魔法陣から出現する魔物たちを瞬殺する女魔族たちを緊張した面持ちで眺めていた。


 しばらくすると、白い転移石がドロップしたことにより、女魔族たちは魔法陣を踏んでその姿が掻き消えた。


「……ふぅ、行ったか」


 男はほっとしたような顔をした。


 男の仲間たちの顔にも虚脱したような安堵の色が浮かんでいる。


「正直、女魔族に話しかけたれたときは死んだと思ったが、聞いていた話と違い魔族は約束を守るもんなんだな……」


 男は困惑したような表情を浮かべている。


 彼は女魔族に「私の質問に正直に答えれば何もせずに見逃してあげるわ」と言われたのだ。


 男は戦えば百パーセント勝ち目はないと考えて、質問に対して正直に答えた。


 その質問の内容は二十一階への下り方だった。


「でも、私たちが二十一階階に下りれたとしたら、またあの魔族たちに遭遇するんじゃないの?」


「そうかもしれんがあの女魔族たちは約束は守った。他の魔族たちのことは分からんが、少なくともあの魔族たちはこちらから仕掛けなければ襲ってはこないだろうと思うがな……」


「そうだといいけど……」


「じゃあ、せっかくここまで辿り着いたのに引き返すのか?」


「そ、それは……」


「確証がない以上、慎重になるべきだと俺も思うけどな」


「いや、確証なんかあるわけないだろ」


 冒険者たちは進むか退くかで口論になり、仲間が二分するほどの大激論に発展した。


 だが、そこに空気も読まずに割って入る者がいた。


「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど君たちは戦わないのかい?」 


 男は驚いて声の主に視線を転ずると、そこにいたのは両肩にスライムをのせている少年だった。


 しかも、少年の装備はまるで近所に遊びに行くような格好だった。


 言うまでもなくシルルンである。


「……今、それを話し合っているところだ」


「じゃあ、先に僕ちゃんたちが戦ってもいいかい?」


「……お前たちは魔族を見てなんとも思わないのか!?」


「うん、思わないね」


 シルルンは即答した。


「なっ、なんだと!?」


 男の顔が驚愕に染まる。これには男の仲間たちも唖然としたのだった。


「それで、先に戦ってもいいのかい?」


「あぁ、それは構わない。俺たちの話し合いはまだまだ続きそうだからな」


「あはは、それじゃあ、先に戦わせてもらうよ」


 シルルンは踵を返して歩いていき、男はそれを呆然と見送ったのだった。


「どうだったシルルン?」


 リザは探るような眼差しをシルルンに向ける。


「先に戦ってもいいって言ってたよ。なんか魔族がいたから進むか退くかで言い争ってるみたいだよ」


「魔族がいれば普通はそうなるわよね……」


「だろうな。私なら即、撤退だ……」


 リザの言葉に、ロシェールは同意を示して頷いた。


「あはは、そうなんだ」


 シルルンは魔車や食料などを魔法の袋にしまって、シルルンたちは魔法陣の前に移動した。


 だが、魔法陣から魔物が出現する気配はなかった。


「シ、シルルン……この距離で大丈夫なの?」


 魔法陣との距離が五メートルも離れておらず、リザは戸惑うような表情を浮かべており、リジルたちも不安そうな表情を浮かべている。


「あはは、リザたちはもっと離れてていいよ」


「なっ!? 私たちも戦うわよ」


「今回は数を倒さないといけないからダメ。リザたちは後ろに下がって僕ちゃんたちが倒しきれなかった魔物をリザが指揮して倒してほしいんだよ」


「……分かったわ」


 リザはリジルたちに声を掛けて後方に下がる。


 しばらくすると、男冒険者が一人でシルルンに向かって歩いてきた。


「俺たちも戦うことにした。だから共同戦線を張らないか?」


「共同戦線?」


 シルルンは怪訝な眼差しを男に向ける。


「そうだ。魔法陣の中央に白い転移石をはめ込むと魔法陣の中にいる者すべての者が転移する仕組みだ。つまり、白い転移石が一つ落ちればここにいる全員が二十一階に転移できるってことだ」


「なるほどね」


 シルルンは合点がいったような顔をした。


 ちなみに、魔法陣の大きさは五十メートルほどだ。


「共同戦線を張るからといって互いを助け合う必要はない。魔法陣から出てきた魔物を倒していくだけだ」


「白い転移石以外の戦利品は倒したほうのものってことだよね?」


「そういうことになる。このやり方だと互いに消耗が少なくて効率的だと思わないか?」


「思わないね。はっきりいって僕ちゃんたちだけで戦ったほうが魔物を倒すのは早いからね」


「くくくっ、やはり相当な自信家のようだな」


 男冒険者は満足げに微笑んだ。


 彼の仲間たちは進むか退くかを討論しているうちに話はシルルンたちの話に移行した。


 進軍派はシルルンたちが右のルートを突破している事実や、女だけだがバランスのいいパーティ編成を挙げた。


 そして、タイミングよくシルルンだけが魔法陣の前に残ったことにより、シルルンが十匹以上の魔物を使役できることが露見した。


 これにより、進軍派はシルルンの職業が大魔物使いである可能性が高いと主張すると、撤退派は共同戦線を張ってシルルンたちと一緒に地下二十一階に下りるなら進んでもいいという条件つきで了承したのだった。


 撤退派が条件をつけたのは魔族たちと鉢合わせしても、シルルンたちが同行していれば勝算があると考えたからだ。


「まぁ、順番的に君たちが先だったし、その条件なら共同戦線を張ってもいいよ」


 シルルンはあまり気乗りはしないが仕方ないと諦めた。


「分かった。それではよろしく頼む」


 男冒険者はシルルンの前に手を差し出した。


「うん」


 シルルンと男冒険者は握手を交わし、両者は共同戦線が張られたことを仲間たちに伝えたのだった。


 シルルンは魔法陣の前でしばらく待っていると、魔法陣から魔物が姿を現した。


 だが、現れたのはスケルトン一匹だった。


「なんだそりゃ!?」


 シルルンは拍子抜けしたような顔をした。


 男冒険者も白けたような表情を浮かべており、シルルンたちや男冒険者たちは肩すかしを食らったような雰囲気になった。


 スケルトンは男冒険者たちに向かって歩き出したが、男冒険者が剣で一撃で倒した。


 その後もスケルトンばかりが魔法陣から出現し、時間だけが過ぎていく。


「魔族たちが木偶車を狩りつくしたってことはないよな?」


 男冒険者は不可解そうな顔をした。


「……それはないでしょう」


「魔族たちが戦っていたときはポンポン出てきてたからな」


「だよなぁ、じゃあ、なんでスケルトンしか出てこないんだよ……」


 男冒険者は表情を曇らせる。


 だが、魔法陣から出現した魔物を目の当たりした男冒険者たちは驚きのあまりに血相を変える。


「いきなり青かよ!?」


 男冒険者は即座に仲間たちに指示をだし、三隊の冒険者たちは戦闘体勢に移行した。


 姿を現したのは木偶車の青だ。


 シルルンは『魔物解析』で木偶車の青を視た。



木偶車 青 レベル5 全長約5メートル

HP 1850

MP 900

攻撃力 960

守備力 450

素早さ 440

魔法 ヒール ウォーター ブリザー

能力 統率 物理軽減 魔法軽減



「へぇ、強い部類の上位種ぐらいの強さがあるよ。あの冒険者たちは勝てるのかな?」


 シルルンは心配そうな表情で冒険者たちを見つめるのだった。


 木偶車の青は冒険者たちを視認すると凄まじい速さで冒険者に目掛けて突撃した。


 だが、全身鎧に身を包んだ重装魔戦士が大盾を構えて木偶車の青の突撃を受け止めると同時に、二人の大剣豪が『斬撃衝』を放ち、二発の風の刃が木偶車の青に直撃した。


 さらに重装魔戦士が槍で突きを放って槍が木偶車の青の胴体に直撃したが、『物理軽減』により槍の一撃は効かなかった。


「あはは、まともにぶつかっても大丈夫なんだね。心配して損したよ」


 シルルンは杞憂だったと微笑んだ。


「木偶車の青の突撃を受け止めたのはおそらく最上級職の重装魔戦士で、風の刃を飛ばした二人は大剣豪で間違いないと思います」


「へぇ、そうなんだ。じゃあ、最低でも最上級職が三人はいるんだね」


「はっ、そういうことになります」


「じゃあ、放置しても大丈夫だね」


 シルルンは視線を魔法陣に転じた。


 すると、魔法陣から木偶車の緑が出現し、木偶車の緑はシルルンたちを視認してゆっくりと動き出した。


「マル、タマ、キュウで迎撃、リザとロシェールで攻撃かな」


 マルたちは木偶車の緑に目掛けて突撃し、リザとロシェールはシルルンの言葉に頷いてマルたちを追いかけた。


 木偶車の緑はマルに向かって突進したが、マルたちは三方向に分かれてトリプルアタックを木偶車の緑に繰り出した。


 だが、『物理軽減』よってダメージは無効化される。


「『毒霧』なの!!」


 マルは『毒霧』を放って、緑色の霧が木偶車の緑を包み込んだが木偶車の緑は微動だにしなかった。


 しかし、体の異変に気づいた木偶車の緑は反転して魔法陣に逃げ込もうとしたが、すでにリザたちが回り込んでいた。


 リザたちは剣の連撃を放って木偶車の緑は斬り刻まれて消滅し、魔鉄をドロップしてリザが魔鉄を拾った。


 マルたちとリザたちはシルルンたちの元に戻る。


「ボス!! また出てきたわよ!!」


 リジルは表情を強張らせて声を張り上げた。


 魔法陣から出現したのは木偶車の青が四匹だった。


 木偶車の青たちはシルルンたちと冒険者たちを視認すると、二匹ずつに分かれてシルルンたちと冒険者たちのほうにゆっくりと動き出す。


「ブラック、マーニャで迎撃」


「承知!!」


「ま~っ!!」


 ブラックとマーニャは嬉しそうに木偶車の青たちに向かって突撃した。


「ボ、ボス……ま、また出てきたわよ……」


 リジルの表情が恐怖で彩られた。


 さらに魔法陣から姿を現したのは、木偶車の青が六匹と二つのアンデッドの群れだった。


「……あれは青の特化型……ちょ、ちょっと出てくるのが早すぎないかしら? さっきまではスケルトンしか出てこなかったのに……」


 リザは不審げな顔をした。


「これではまるで戦力を整えていたようにしか思えんな……」


 ロシェールはいかにも解せないといった表情を浮かべている。


 木偶車の青が四匹と片方のアンデットの群れがシルルンたちの方に向かって進みだし、残りの魔物が冒険者たちの方に向かって進みだした。


 シルルンは『超集中』を発動して時を止めて『魔物解析』で魔物たちを視ていく。


 すると、アンデッドの群れは全てがスケルトンナイトで数は十匹だ。


 木偶車の青は二匹が特化型だった。



木偶車 青 レベル6 全長約5メートル 攻撃タイプ

HP 2000

MP 770

攻撃力 1560

守備力 440

素早さ 840

魔法 ヒール ウォーター ブリザー

能力 統率 物理軽減 魔法軽減



木偶車 青 レベル7 全長約6メートル 守備タイプ

HP 2800

MP 1200

攻撃力 880

守備力 1670

素早さ 440

魔法 ヒール ウォーター ブリザー

能力 統率 物理軽減 魔法軽減



「う~ん……スケルトンナイトの群れに対して前衛がマルたちで、中衛にリザとロシェール、後衛に九人組とバイオレット。プルとプニは臨機応変に対処してくれたらいいよ」


「木偶車の青はどうするのよ?」


 リザは訝しげな眼差しをシルルンに向けた。


「木偶車の青の二匹が特化型の攻撃タイプと守備タイプなんだよね。それぞれ攻撃力と守備力が千五百を超えてるから四匹とも僕ちゃんが倒すよ」


「なっ!? せ、千五百!?」


 仲間たちに戦慄が駆け抜ける。


「特化型の青は強いとは聞いていたけどそんなに強いんだ……」


 アニータは具体的な数値を聞いて愕然としている。


「一人で大丈夫なのシルルン?」


 リザはシルルンの顔を正面から見据えた。


「うん、四匹程度なら問題ないよ」


「……そう、分かったわ」


 リザは複雑そうな表情を浮かべている。


 マルたちはスケルトンナイトの群れに目掛けて突撃し、リザたちもその後を追いかける。


 ブラックは視認できないほどの速さで一瞬で木偶車の青に肉薄して『痺れの息』を吐いた。


 『痺れの息』を受けた木偶車の青は体が麻痺して動けなくなり、ブラックに『強酸』や『溶解液』を連続で吐かれて何もできないまま溶け落ちて消滅した。


 マーニャは凄まじい速さで木偶車の青に突撃して前脚の爪の連撃を繰り出して、前脚の爪を受けた木偶車の青はヒールの魔法で回復しようとしたが間に合わずに消滅した。


 ちなみに、『全特攻』がのったマーニャの前脚の爪の一撃は二千七百に達している。


 ブラックとマーニャはドロップした魔鋼を拾ってシルルンの元に戻る途中、十六発の水弾が彼らの横を通過した。


 シルルンが『超集中』を発動しながら水撃の弓で『十六連矢』を放ったからだ。


 十六発の水弾は意思でもあるかのように四発ずつに分かれて木偶車の青たちに直撃して、その大半の水弾がクリティカルして木偶車の青たちは即死して消滅した。


「す、すごい……い、今のはいったい……」


 リジルは驚きのあまりに血相を変える。


「連続で撃ってないのに一瞬であんなに水弾が飛ぶなんて……」


 アニータは不可解そうな顔をした。


「あはは、『十六連矢』と『弓術必中』の合わせ技だよ」


 シルルンはフフ~ンと胸を張った。


 実際には『超集中』も発動しているが、彼は『超集中』のことを話すつもりはなかった。


 ちなみに、弓豪や弓神が所持する『三連矢』などの能力は一度に三発の矢を放てる能力だ。


 そのため、『十六連矢』は一度に十六発の矢を放てることになる。


「『十六連矢』って……確か最上級職の弓神が所持する最大の攻撃能力ですよね?」


「まぁ、それは僕ちゃん知らないんだよ」


 シルルンは白々しい口笛を吹いている。


「そ、そうなんですか」


(もうここまでくると最早化け物だわ……)


 アニータはシルルンに対して畏敬の念を抱かずにはいられなかった。


 シルルンは思念で「木偶車の青が落としたアイテムを拾ってきて」とスカーレットとエメラリーに指示を出した。


 スカーレットとエメラリーは頷いてアイテムに向かって駆けていき、ブラックとマーニャがシルルンたちの元に戻ってきた。


 ブラックとマーニャがシルルンに魔鋼を渡し、シルルンはブラックとマーニャの頭を撫でる。


 ブラックとマーニャは嬉しそうだ。


 シルルンは視線をスケルトンナイトと戦いを繰り広げているリザたちに転じた。


 すると、リザたちは危なげなくスケルトンナイトを倒していた。


 スケルトンナイトの群れはマルたちを攻撃してもダメージをあたえることはできなかった。


 逆にマルに『毒霧』を吐かれて数匹のスケルトンナイトが毒に侵されて地面をのたうち回り、スケルトンナイトたちは魔法攻撃に転じてブリザーの魔法を唱えたが、マジックシールドを前面に展開したプニが素早く『飛行』してブリザーの魔法を防いでマルたちを護っていた。


 ダメージをあたえられずに痺れを切らしたスケルトンナイトの群れはマルたちを突破して、中衛のリザとロシェールに攻撃を仕掛ける。


 だが、リザとロシェールに斬り裂かれてスケルトンナイトたちはその大半を失ったが、それでもリザたちを突破した。


 しかし、女重戦士たちが待ち構えており、スケルトンナイトたちの攻撃は女重戦士たちにダメージをあたえることができず、女魔法師たちやバイオレットの攻撃魔法や能力攻撃の連打を浴びて全滅したのだった。


 結局のところ、この変則的な編成は全てが前衛ともいえる。


 リザは慌てた様子でシルルンたちのほうに振り向いたが、戦いはすでに終わっていた。


 スケルトンナイトの群れを倒したリザたちはシルルンたちの元に移動した。


「そっちはもう片付いたのね……」


 リザは呆れたような表情を浮かべている。


「うん、お疲れさん……で、この剣と盾は綺麗だと思わない?」


「……確かに綺麗ね。水晶の剣に見えるわね」


 リザは軽く目を見張る。


「ダイヤモンドソードとダイヤモンドシールドよ。硬さはミスリルのHQハイクオリィよりも上で、市場にもほとんど出回らない極上の一品よ」


 アニータは地面に置かれたダイヤモンドソードとダイヤモンドシールドを見つめて恍惚な表情を浮かべている。


「ど、どこにそんなものがあったのよ!?」


「たぶん、特化型の青が落としたんだよ」


 スカーレットとエメラリーが拾ってきた四つドロップ品の内の二つが、ダイヤモンドソードとダイヤモンドシールドだったのだ。


「なっ!?」


 リザはシルルンの強運に驚きを隠せなかった。


「まぁ、外れの部類なんだけどねこの剣と盾は……剣はリザが使うといいよ」


「……で、でも、下級職の私には扱えないんじゃないの?」


 リザは戸惑うような表情を浮かべている。


「この剣と盾はマジックアイテムじゃないから誰でも扱えるわよ」


 その言葉に、リザは地面に置かれたダイヤモンドソードを素早く手に取って空を斬る。


「……ありがとう。ありがたく使わせてもらうわ」


 リザは会心の笑みを見せた。


「うん」


(ロシェールの盾は激しく拉げてるからあげてもいいけど、あげたらまたケンカになるかもしれない……)


 シルルンは複雑そうな表情でダイヤモンドシールドを魔法の袋にしまった。


 ロシェールの鋼の盾はリャンネルの槍の攻撃やオーガの斧の攻撃を受けてボロボロなのだ。


「で、これも落ちたんだよね」


 シルルンの掌の上には白い石が二つあった。


「こ、これって白い転移石じゃないの!?」


 リザの顔が驚愕に染まる。


「うん、そうなんだよ……もっと数を倒さないと落ちないと思ってたんだけど、いきなり落ちたから共同戦線を張った意味がない……」


 シルルンは頭を掻きながら苦笑し、リザとロシェールはシルルンの恐ろしいほどの強運に驚愕して言葉を失ったのだった。


「まぁ、あっちの冒険者が魔物を倒すまで僕ちゃんたちは待ってるしかないよ」


 シルルンたちは魔法陣に視線を向けたが、先ほどまでとは違って魔法陣から魔物が出現する気配がなかった。


 だが、冒険者たちのほうは非常に不味い状況だったが、シルルンは冒険者たちは大丈夫だと思い込んでおり、全く気にしていないのだった。

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