10 森でテイム 修修
首都トーナの街にある冒険者ギルドの一室で、男はベータの報告を受けていた。
男の名はスラッグ。トーナ支部のギルドマスターである。
ベータの調査報告は衝撃的な内容だった。
スラッグは直ちに大規模な調査隊を編成して、大穴を調べる必要があると考えた。
それと同時に各地にある街にも状況説明を実施して、森への入場制限、立ち入り禁止を徹底させなければならないと彼は思うのだった。
「……調査不足は否めないが事は緊急を要する」
深刻な表情を浮かべるスラッグは王への急使を飛ばしたのだった。
目を覚ましたシルルンはムクリと上体を起こす。
「おはよう」
シルルンの横で下着姿で寝ていたリザがにっこりと微笑む。
シルルンは驚いたがリザが下着姿だからではない。
彼は家が貴族だったので小さい頃からメイドや女奴隷と生活していたので女の裸は見慣れているのだ。
そのため、彼が驚いた理由は就寝したときにはいなかったリザが、どうやって男子寮に忍び込んだのかということである。
「あっ、そうだ。時間に遅れそうだよ」
シルルンは森にテイムに行く約束を思い出し、手早く身支度を済ませる。
床で遊んでいたプルとプニがシルルンの肩に乗り、シルルンはそのまま部屋を出ようとする。
「ちょっと待ってよ。どこに行くのよ?」
リザは視線をシルルンの背中に向けるとクロスボウが見えたので、慌てて着替えて装備を整える。
「森に用があるんだよ」
シルルンは足早に部屋を出て行って馬小屋で黒馬に乗り、集合場所に到着するとテックとミーラがすでに待っていた。
彼らの傍らにはハイ ウルフが一匹ずつ控えている。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
テックが深々と頭を下げる。
「おはよう。じゃあ、行こうか」
シルルンは黒馬を走らせると、テックとミーラはハイ ウルフの背に乗ってシルルンを追いかける。
「そちらの女性はどなたでしょうか?」
テックは視線をシルルンの後ろに乗っているリザに向けて尋ねた。
「あはは、ついていくって聞かないんだよ」
シルルンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
今回の森の探索はプルとプニのレベルアップも目的の一つなので、彼は冒険者であるリザの加入を無理に断る理由はなかった。
「リザよ。冒険者やってるのよ。今回はよろしくね」
「テ、テックといいます。こちらこそよろしくお願いします」
テックは恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「ミーラです。よろしくお願いします」
ミーラはペコリと頭を下げて、リザが片手を挙げて応えた。
シルルンたちはトーナの街から南東にある森に向かって進み始めたのだった。
いい加減な地図を追加^^
シルルンたちは森の外周にあるキャンプ村に到着していた。
森はトーナの街から馬で二日ほどの距離があり、二百五十キロメートルほどの距離がある。
移動中のシルルンたちは魔物に襲われることはなかったが、テックとミーラがハイ ウルフに乗っているので、村人や商人たちとすれ違うと驚愕して逃げ出したり、腰を抜かす人たちがいただけだ。
彼らがキャンプ村に寄ったのは黒馬を預けるためで、森の中での戦闘を考慮すると馬を連れていくのは不向きで、キャンプ村に訪れる冒険者や狩人もここで馬を預けていくことが多い。
シルルンたちはキャンプ村で魔物の情報を集めた後、昼食を済ませて森に踏み入った。
テックとミーラの目的はテイムの修練だが、可能ならレッサー マンティス(カマキリの魔物)とレッサー ビートル(カブトムシの魔物)のテイムだ。
キャンプ村で得た情報では、いずれの魔物も森の中央付近での遭遇情報が多かった。
ちなみに、森の直径は五百キロメートルほどである。
シルルンたちは油断なく森を進んでいくと三匹のレッサー アントたちが佇んでおり、シルルンたちには気づいていなかった。
「どっちかテイムする?」
シルルンは視線をテックとミーラに向ける。
だが、テックとミーラは頭を振った。
「なら一匹だけ弱らせて二匹は倒してよ」
(弱らせた一匹はプルとプニのレベルUPに貢献してもらうよ)
シルルンはほくそ笑む。
「いきなさいシレン!!」
ミーラはハイ ウルフに攻撃を命じる。
シレンというのはハイ ウルフの名前だ。
すると、シレンは凄まじい速さでレッサー アントたちに襲い掛かり、シレンの前脚の爪の攻撃で瞬く間にレッサー アントたちは砕け散って即死した。
「ていうか……一匹残してって言ったじゃん」
シルルンは不満そうな顔をした。
「す、すみません……」
ミーラは恥ずかしそうに赤面している。
「……」
(この様子だと大まかな命令しかできないみたいだね……ミーラがこのレベルならテックも似たような感じだろうね)
シルルンは表情を曇らせる。
テックとミーラは自身でハイ ウルフたちをテイムしておらず、譲渡という形でマスターになったためにハイ ウルフたちとの親愛度が低かった。
プルはシルルンの肩からピョンと跳び下りて、レッサー アントの死体の一部を『捕食』した。
「か、可愛らしいのにあんなグロイのを食べるのね……」
リザは絶句する。
プルはなんでも『捕食』しようとするが、プニは命令しないとほとんど『捕食』しない。
同種のスライムでも食べ物の好みは違うのだ。
シルルンたちは中央に向かって一直線に進んでいると、上空から唐突に魔物が襲い掛かってきた。
レッサー ホーネット(蜂の魔物)で、数は三匹だ。
「「ガード!!」」
テックとミーラはペットたちに命令して後方に下がる
リザは抜刀して前面に出たが空を見上げており、レッサー ホーネットたちは遥か上空を飛行している。
「空からの攻撃は厄介だね」
(鋼のクロスボウなら楽に仕留めることができるけど、矢は百本しかないからこんな雑魚には使えないね……)
シルルンはミスリルダガーを手に持って構えた。
レッサーホーネットたちは上空で急旋回して一匹はリザに、残りの二匹はシルルンに向かて突撃した。
リザは剣を真横に振るってレッサー ホーネットの体を両断し、レッサー ホーネットは体が上下に分かれて血飛沫を上げながら地面に落ちた。
レッサー ホーネットたちはシルルンに対し、左右に分かれて襲い掛かる。
だが、シルルンはバックステップでレッサー ホーネットたちを避けた。
攻撃が空振りして互いに衝突しかけたレッサー ホーネットたちがシルルンの前で交差する。
その瞬間をプルとプニは見逃さなかった。
「ビリビリデス!!」
プルは『ビリビリ』を放ち、電撃が左に飛び去ろうとしたレッサー ホーネットに直撃し、身体が麻痺したレッサー ホーネットは地面に衝突する。
「ブリザーデシ!」
プニはブリザーの魔法を唱えて、氷と冷気が右に飛び去ろうとしたレッサー ホーネットの背中の羽に命中し、羽が凍って失速したレッサー ホーネットが地面に墜落する。
体が二つに分かれたレッサー ホーネットはまだ動いており、上半身が地面を這ってリザに襲い掛かるが、リザはレッサー ホーネットの上半身に剣を突き刺して止めを刺し、痙攣している下半身をバラバラに斬り裂いた。
「ファイヤデス!!」
プルはファイヤの魔法を唱え、激しい炎が麻痺して動けないレッサー ホーネットの体を包んで燃え上がる。
「ブリザーデシ!!」
プニはブリザーの魔法を唱え、氷と冷気が羽が凍ったレッサー ホーネットに直撃して凍った範囲が更に広がった。
「あはは、プルたちだけでいけそうだね」
(僕ちゃんが加わったらプルとプニの経験値が減るから悪手だし)
シルルンは満足げな笑みを浮かべている。
だが、彼は自分も弱いことを失念していた。
「ファイヤボールデス!!」
プルはファイヤボールの魔法を唱え、大きな火弾が炎に焼かれてのたうち回るレッサー ホーネットに直撃し、レッサー ホーネットは炭に変わって動かなくなった。
「ブリザーデシ!」
プニはブリザーの魔法を唱え、氷と冷気が羽が凍ったレッサー ホーネットに直撃し、上半身は完全に凍ったが、それでもレッサー ホーネットは下半身を動かしてプニに襲い掛かろうとする。
「ファイヤデス!!」
プルはファイヤの魔法を唱え、激しい炎がレッサーホー ネットを包み込み、上半身が温度差で砕け散ってレッサーホー ネットは力尽きた。
「す、すごい……」
テックとミーラは呆けたような表情でプルたちの戦いを見ていた。
彼らはプルたちを使役するシルルンの手腕に驚きを隠せなかったのだ。
だが、実際はプルたちが勝手に動いているだけだが、そんなことはテックとミーラは知らない。
プルはシルルンの肩からピョンと跳び下りて、レッサー ホーネットの死体の前までピョンピョンと跳ねて移動して、体を変形させて『捕食』しようとした。
しかし、リザはプルを手で制してレッサー ホーネットの死体から毒針を抜き取った。
「毒針は危ないから食べちゃダメよ」
リザはプルに教えると満足そうに笑ったのだった。
その後は魔物に遭遇することなく、日が暮れ始めたのでシルルンたちは野営に適した開けた場所を探して野営の準備に取り掛かる。
シルルンだけなら木の上で構わないが、女性が二人もいるので野営することになったのだ。
男と女に分かれて見張りと休息を交替しながらシルルンたちは野営する。
「キュアの魔法に目覚めたデシ!!」
プニは嬉しそうに思念でシルルンに報告した。
「あはは、それは助かるよ」
(毒消しは十個持ってきてるけど、回復手段は多いことに越したことはないからね)
シルルンはプニの頭を優しく撫でる。
プニは嬉しそうだ。
翌日、シルルンたちは森を進んで行くと開けた場所に出た。
すると、そこには魔物の群れの姿があった。
レッサー ピルバグ(ダンゴムシの魔物)だ。
彼らはシルルンたちに気づいているが逃げ出す様子もなく、ひたすら落ち葉や枯れ木を食べている。
草食系の魔物はむやみに近づかなければ襲ってくることはほとんどない。
ちなみに、ダンゴムシは落ち葉などを食べて土壌を豊かにする掃除屋なのだ。
「どうする?」
シルルンは探るような眼差しをテックに向けた。
「練習にちょうどよいのでテイムしてみようと思います」
テックは真剣な表情で答えた。
「マジで?」
シルルンは一瞬眉を顰めた。
「いけっ!! トーラス!!」
テックがハイ ウルフに命令する。
トーラスというのはハイ ウルフの名前だ。
トーラスは一番近いレッサー ピルバグを前脚の爪で薙ぎ払い、レッサー ピルバグは危険を察知して丸くなって防御力を上げたが、ボールのように吹っ飛んで岩に直撃して体が半壊したが、まだ動いている。
レッサー ピルバグはHPと守備力が共に高く『堅守』を所持する魔物だが、さすがに相手が悪かった。
ちなみに、『堅守』は守備力が一・五倍に上昇する能力だ。
トーラスはレッサー ピルバグに止めを刺さずにテックの元に戻ってくる。
レッサー ピルバグはひっくり返って起き上がれず、テックはゆっくりとレッサー ピルバグに向かって歩いていく。
テックは意識を集中し、黒い鎖が三本出現してレッサー ピルバグに絡みつく。
レッサー ピルバグは鎖を引き千切ろうと暴れ回るが、テックはさらに意識を集中して鎖に念を込めて鎖を強化する。
次第にレッサー ピルバグの動きが鈍くなり、レッサー ピルバグは魔力を全て消失して動かなくなった。
「ぐっ……」
テックは額の汗を腕で拭って悔しそうな顔をした。
テイムの型は鎖型と包囲型があり、鎖型は比較的新しく中級者までが使用する型で、包囲型は中級者以上が使用する型とされている。
どちらの型でも魔物から魔力を奪って従属させる効果があるが、魔物は魔力を全て消失すると死に至っていずれ消滅する。
だが、死んだ魔物をすぐに解体した場合はなぜか肉や素材は消滅せず、上位種以上の魔物は魔力を全て消失しても死に至らずに弱体化するだけだ。
人族の場合、魔力を持っている者は稀だが、魔力を全て消失すると激しい頭痛や嘔吐の症状がみられて死に至ることが多い。
そのため、遥か昔の魔法学者ラメーンは【魔法使いは魔物の混血じゃね?】という学説を発表して物議を醸した。
これは魔法使いは魔力が尽きると死に至るので、魔物との混血だという学説だ。
やがて、ラメーン本人が魔法を使えると知られると、魔法を使えない者たちに捕って民衆の前で吊るされて殴り殺された。
これを皮切りに、魔法を使えない者と魔法を使える者との大規模な戦争に発展した。
しかし、魔法学者のウードンが【魔力は関係なくね?】という学説を発表した。
ウードンは大気からの魔力を遮断する結界内に、魔物十匹と人族の魔法使い十人を入れるという実験をした。
すると、大気から魔力を吸収できない魔物は消え去り、魔法使いは残ったという結果に基づく学説だった。
この学説により、世界は疑心暗鬼に陥った。
さらに魔法学者のソーバが【証明できなくね?】という学説を発表した。
この学説は実にシンプルで、そもそも魔法を使えない者と魔法を使える者は、どちらが先に誕生したのか証明できないというものだ。
これを証明できない以上、どちらが祖先なのか分からないので争っても意味はなかった。
この学説により、世界は迷走し、やがて終戦したのだった。
テックはレッサー ピルバグを弱らせずにテイムを試みたが、鎖を簡単に断ち切られた。
この結果に、彼は弱らせてからテイムするしかないと考えて、再びトーラスにレッサー ピルバグを攻撃させてテイムを繰り返す。
シルルンは時間が掛かりそうだと思いながら、近くに生えている木を背にして座り込むと、リザもシルルンの横に座った。
ミーラもシレンにレッサー ピルバグを攻撃させてテイムを試している。
シルルンはあまりに暇すぎて眠っていたが、目を覚まして視線をテックたちに向けた。
すると、レッサー ピルバグは三十匹ほどいたが、半数まで減っていた。
シルルンは寝ぼけた顔で鞄からねじ巻き式の懐中時計を取り出して、時間を確認すると二時間が経過していた。
精神力を著しく消耗したテックとミーラは、シルルンたちの近くに崩れるように倒れ込む。
「申し訳ありませんが少し休憩します」
テックは酷く疲れた顔をしており、ミーラはまだ肩で息をしている。
三十分ほど経過すると、テックとミーラは再びテイムを開始した。
「ねぇ、あの二人はハイ ウルフを従えてるのに、下位種のテイムに成功しないのはなんでなの?」
リザは不思議そうにシルルンに尋ねる。
「相性が悪いんだろうね。それと鎖で抑え込むことしか考えてないから結果として魔物が死ぬんだよ」
(まぁ、結界で押さえ込みながら魂を掴むのがテイムなんだけどね)
シルルンは苦笑する以外になかった。
「じゃあ、魔物を変えればいいじゃない?」
「あの二人はテイムの修練も目的なんだよ」
「なるほどね……」
リザは納得したような顔をした。
シルルンは眠たそうに欠伸をして、再び眠りにつく。
そして、一時間ほどが経過すると、ついにテックがレッサー ピルバグのテイムに成功した。
テックは激しい疲労でふらふらだが、達成感からか晴れやかな表情を浮かべている。
それを目の当たりにしたミーラは悔しそうな表情を浮かべていた。
テックはすぐに半壊したレッサー ピルバグにポーションを流し込んで傷を回復させた。
ピルバグ種の餌は落ち葉や草、枯れ木なので飼うのは楽そうだ。
ミーアはどうやってテイムに成功したのか細かくテックに質問し、テックは快く質問に答えていた。
さらに一時間が経過し、シルルンはリザに起こされる。
シルルンは視線をテックたちに転じると、テックの傍でレッサー ピルバグが落ち葉を食べていた。
「あれ? 成功したんだ」
(相性が悪いのによく成功したね)
シルルンは目をパチクリさせた。
「はい、長くお待たせしてすみませんでした」
テックは申し訳なさそうに頭を下げる。
シルルンは視線をミーラ、レッサー ピルバグの群れの順に転じた。
すると、ミーラの傍にはレッサー ピルバグの姿はなく、レッサー ピルバグの群れは三匹まで減っていた。
「出発する前に僕ちゃんが残った三匹をテイムしてみるよ」
(三匹いれば壁役になるかもしれないからね)
シルルンはレッサー ピルバグたちに向かって歩き出す。
「それならトーラスで攻撃して弱らせましょうか?」
テックはトーラスを連れてシルルンを追いかけるが、シルルンは『集中』を発動して透明の球体を作り出し、透明の結界でレッサー ピルバグを包み込んで、一瞬でテイムに成功した。
「えっ!? きゅ、球体包囲型……」
テックは信じられないといったような表情を浮かべている。
シルルンは同じことを二度繰り返し、残り二匹のテイムも一瞬で成功する。
「そ、そんな!?」
(球体は最上位なのに……)
ミーラの顔が驚愕に染まる。
シルルンは身を翻してテックたちに向かって歩き出すと、テックは驚いたような顔をした。
「さすがにテイムは無理だったみたいだね……」
(だけど、あまりに見極めが早い……球体包囲型を使えるなら失敗したとしても何度もトライするのが普通だと思うのに……)
テックは尊敬の眼差しをシルルンに向けていた。
だが、シルルンの後ろにはレッサー ピルバグたちが追従していた。
「そんな馬鹿なっ!?」
テックとミーラは放心状態に陥った。
彼らはシルルンのあまりに異常なテイム技術に、畏敬の念を感じずにはいられなかったのだった。
トーナ城の執務室には、険しい表情で手紙に目を通している男の姿があった。
男の名はシャダル。メローズン王国のシャダル王、その人である。
スラッグの手紙には、森の地下に大規模な魔物の巣が存在する可能性があると書かれており、シャダルは額に手を当てて俯いていた。
スラッグは大規模な調査隊を大穴へ派遣するということだが、大穴に下位種の魔物がすでに入り込んでいる時点で、大規模展開されているとみるのが妥当だろうと彼は考えていた。
問題は地下の巣の拡張状況であり、仮に北上しているのならその先にあるのは首都トーナの街だ。
シャダルはすぐにでも軍を派遣したかったが、状況的に難しい判断に迫られていた。
西の隣国のポラリノールが魔物の手に落ちてから、魔物の軍勢が間断なく攻め込んできており、シャダルは大軍を派遣してそれを阻止していた。
さらにメローズン王国から東にある領土は魔物が支配しており、彼は東にも大軍を派遣して魔物の進行を阻んでいる。
しかも、警戒すべきは魔物だけではなく、北の隣国のサンポル王国が怪しい動きをしているとの報告をシャダルは受けていた。
そもそも、ポラリノールが滅んだ原因の一端はサンポル王国にあるのだ。
そのため、シャダルは北にも大軍を派遣していた。
つまり、南以外は大軍を派遣している状況下で、さらに国内にも大軍を派遣しなければいけない状況なのだ。
シャダルはこれらを踏まえた上で貴族たちに国中の街や村で募兵を行うように勅命を発令し、大穴に軍を派遣したのだった。
森の外周には大小、合わせてキャンプ村が多数あり、その全てに冒険者ギルドの調査隊が派遣されて入場規制を敷いており、森に関わって生きる男たちが集まって話をしていた。
「森の調査をするから森に入るなってどういうことなんだよ」
「全くだ」
「なんでも、森に大穴が数箇所出現したらしいぜ?」
「らしいな。大穴に引きずり込まれるって話だ」
「すでに行方不明者が千人超えたらしいぜ」
「アホか!! 俺たちはこの森で食ってんだぜ!! 余計なお世話なんだよ!!」
巨大な鉄製のハンマーを肩に担いだ冒険者風の男が言い放つ。
その言葉に、冒険者風の男たちが頷いた。
「まぁ、交渉次第じゃ入っていいらしいぜ? ただ何かあっても助ける余裕はないってことだ」
狩人風の男はしたり顔で言った。
「上等じゃねぇか!! 端からギルドの世話なんかいらねぇんだよ!!」
冒険者風のスキンヘッドの男が怒りの形相で声を張り上げる。
だが、馬に乗った男が慌てた様子で、男たちに向かって駆けてくる。
「おい!! 軍がこっちに向かってるぞ!! すげえ数だ!! 五千はいるぞ!!」
声を耳にした男たちの視線が騎乗した男の方角に集中する。
「!?」
大軍が森に突入していく光景を目の当たりにした男たちは、ただならぬことが森で起こっていることを確信したのだった。
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テイムの型
鎖型
3本以上の黒い鎖を対象に絡ませて、魔力を奪い弱体化させるテイムの技である。
鎖の数を増やすことで、テイムの成功率を上げることも可能だが、鎖自体の剛性が脆く、絡ませ方が悪ければ対象に抜け出されてしまう。
包囲型
四面体
四面体で囲んでテイムする。
対象から魔力を奪い、その魔力をもって四面体を強化できる。鎖型とは比較にならないほど剛性強度が強い。主に四面体は初心者向きである。
四面包囲型の欠点は頂点と面と面を繋ぐ辺の剛性強度が弱く、主に頂点を対象に破られる危険性がある。
六面体~
六面体で囲んでテイムする。
上級者が使用することが多い。欠点であった頂点がなくなり、どの方向からの攻撃も対応できるが、辺が脆く対象が強ければ面ごと吹き飛ばされ、抜け出されることもある。使い手は、二十面体まで面数を上げて剛性強度を上げる者もいる。
球体
球体で囲んでテイムする。
最上級者が使用する最終形態。欠点であった辺がなくなり、どの方向からの攻撃も一定に保ち、面ごと抜かれることがなくなった。
属性
包囲型には色があり、その色により属性が違い、対象に合わせて使い分けるのが理想だが、物理耐性以外の属性を付与させるのは難度が高い。
透明 物理耐性
青色 物理耐性と魔法耐性
赤色 物理耐性と能力耐性
黄色 物理耐性と天使耐性
緑色 物理耐性と精霊耐性
黒色 物理耐性と悪魔耐性
紫色 全耐性
これ以外の色 不明
レッサー アント レベル1 全長約1メートル
HP 90~
MP 10
攻撃力 60
守備力 70
素早さ 20
魔法 無し
能力 統率 以心伝心 毒牙
レッサー ホーネット レベル1全長約1メートル
HP 90~
MP 10
攻撃力 60
守備力 40
素早さ 70
魔法 無し
能力 統率 以心伝心 毒針
レッサー ホーネットの毒針 3000円
レッサー ホーネットの蜂蜜 3000円
レッサーピルバグ レベル1 全長約1メートル
HP 180~
MP 5
攻撃力 25
守備力 100
素早さ 25
魔法 無し
能力 堅守
素材売値
レッサー アントの殻 1000円
レッサー ホーネットの毒針 3000円
レッサー ホーネットの蜂蜜 3000円
レッサー ピルバグの殻 2000円




