1 占拠 修
大陸の中で何者も統治していない広大な森があった。
その森の最奥には洞窟があり、少年はその洞窟を占拠することにした。
少年の名前はシルルンという。
シルルンの両肩には二匹のスライムがのっており、ピンク色がプルという名前で、白色がプニという名前である。
洞窟占拠時には魔物たちの抵抗があったが、プルとプニが容易に叩き出した。
というのも、この一帯には弱い魔物しか生息していないからである。
洞窟から追い出されたスライムたちや魔物たちは、洞窟の前で不満げに文句を言っていたが、プルとプニが洞窟前に姿を現すと一斉に四散する。
シルルンがこの洞窟を占拠した理由は、洞窟の最奥に湧き出る泉があるからだ。
しかし、スライムたちや魔物たちにはその泉が重要だった。
その理由は、体力が僅かに回復することを知っているからだが、そんなことはシルルンは知らないのである。
「あはは、落ち着いたらスライムたちを中に入れてあげてもいいけどね」
シルルンは優しげな表情でプルとプニの頭を撫でる。
「はいデス!!」
「デシデシ!!」
プルとプニは嬉しそうだ。
彼らは言葉を発しているが、シルルン以外には聞こえることはない。
その理由は、シルルンが【魔物使い】であり、魔物使いにテイムされた魔物はマスターの種族の言語を理解できるようになり、思念での会話が可能になるからである。
なぜ、シルルンがこの洞窟を占拠して暮らす事にしたのか?
それは彼がやる気のない男で、とっとと隠居したかったからである。
大陸の中央から遠く離れた、西の辺境の地であるエルザフィールで。
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