男と少女達の戦争
「おい、状況はどうなっているんだ、説明しろ!」
動揺を隠せず、俺は叫んでしまっていた。
それも無理はないだろう、窓から見える外の景色は戦いに染まっていた。
こちらの数量が、敵の単数によって薙ぎ払われていく。
その光景は、脅威をすらも通り越していた。
「この世界の情報分析を一時的に中断し、戦力を集中させる許可を頂けますか?」
「いや、だから、状況を…」
俺の言葉を遮るように、視線が一斉にこちらを凝視する。
「わ、分かった、戦力を集中させて事態を解決しろ…」
「了解しました」
その言葉に応じるかのように、続々と少女達が建物へと集まってくる。
先程、薙ぎ払われた中からも、無傷ではない少女達が立ち上がっては次々と群がる。
何が起こっているのか、まるで分からない。
ただ、状況がそれほど楽観視できるものではないのだろうという事くらいは分かる。
1人の老人が歩いてくる。
先程、こちらの戦力を薙ぎ払った老人だ。
「殺せ…」
動かない、静寂、俺を無視するな。
「殺せって言ってんだよ、早くしろよ!」
その瞬間、少女達は攻撃を再開する。
同時に、それを全て防ぎながら、老人がこちらを見て笑う。
そう、まるでそれは、見つけたぞと言わんばかりに。
俺は窓から離れ、恐慌と共にオフィス内を駆け抜ける。
逃げなければならない、殺される。
少女達が道を開けながら、だが、付き従ってくる。
彼女達はどうしたいのだろうか、俺を殺したいのだろうか。
そこまで考えて、足を止める。
「召喚王に、…なれんのか?」
普通に暮らしていたのだ。
普通に普通の大学を出て、普通に彼女が出来て、普通にいつかは結婚しても良いかなと考えて、普通に仕事をしていたのだ。
あんな夢を見なければ、サイコロを振らなければ、召喚王になろうとしなければ、俺は普通に生きていけたのに。
焦げ付きそうな思考の中、俺は頭の中に思い浮かんだままで消えない顔の正体を理解する。
そうだ、敵の召喚士を殺してしまえば、あの老人自体を殺す必要はなくなる。
「召喚士を殺す、そうだ、このガキを殺す、俺の頭に浮かんでいるガキを殺せばいい、分かるか?」
「私達の頭には、召喚士が浮かんでいません。情報を求めます」
「ガキだ、ガキ、何歳くらいだ、こいつは、ガキ、このガキは、えっと、小学生くらいか、10代前半ってところだな、分かるか?」
「該当する年頃の少年が、空に浮かんでいます。風を操る女に抱えられています」
「そいつだ!間違いない、そいつを殺れ!」
そのガキはすでに他の召喚士を従わせているという事なのだろう。
使える駒が2つもあるというわけなのだろうから。
だが、こちらには万を超える駒がある。
一対一では相手にならずとも、狙うべき対象が特定できさえすれば、勝てないわけがない。
「老人の方は?」
「牽制しておけ、適当に。ガキを殺したら、そいつも死ぬ」
その時、俺は嫌な予感を憶えた。
仮に、老人の召喚士はどこかに隠れていて、風を使う女の召喚士がその少年で、従えられたからという理由で前線に出されている場合、少年を殺しても老人は死なない。
ただ、そんなのは考えても、答えの出ない問題だ。
だったら、とにかく、少年を殺してみればいい。
それで、老人がまだ動くようであれば、一時的に撤退して老人の召喚士を見つけて殺す。
深く息を吐く。
「老人の位置は?こっちに接近してたりするか?」
「前進は許していません。牽制しつつ、戦線を維持します」
「上出来だ」
ジゼルは決して無能ではない。
やれといえば、やれるのだ。
そう、俺はここから召喚王を目指す…。




