谷川の思惑
「それで、これからどうするのだ?」
俺の質問に対し、襟櫛と山田が顔を見合わせる。
正直、彼らには答えを期待していない。
結局、何かを決めてしまうのはいつも、この男だけなのだ。
「組織を叩く、叩き潰す。俺としては、組織との共存もありだと思っていたが、向こうが無しだと言うならば、頭を垂れてまで許しを請う気はない」
「俺は元々、そのつもりでしたよ。カズト氏が決めた事だから反対はしなかったけど、雑魚のくせに山田氏を殺そうとしたり、俺達を潰す理由を考えたり、本気で気に喰わないですよ」
先程の敗北からだろうか、襟櫛の好戦性は殺意衝動にまで進んでいる。
それを上手く操縦しているのか、或いは持て余しているのか、両方か、カズトの表情からは読み取れない。
「九は僕が倒しますねぇ、彼には借りがありますからねぇ」
まだ、倒すなんて言葉で濁している辺りに、山田の甘さが見え隠れする。
カズトが叩き潰すと言った以上、九は倒す対象ではない、殺す対象になったのだから。
「谷川の意見は?」
「異論はない」
こういう大人の会議に、子供達が参加する事をカズトは止めたりしない。
だが、同時に意見を求めたりもしない。
元々、子供達はカズトの決定に反対したりはしないのだが。
まあ、自分達が仲間外れにされるとかだったら、その限りではないのだが。
「じゃあ、決まりだ。最初に送り込まれる組織の尖兵を倒し、そいつに組織の本拠地を吐かせる。その後、一気に組織を潰す」
「最初に誰が来ますかね、山田氏?」
「九は来ますねぇ、番井と真南の事は分かっているでしょうから」
「奴は本拠地を吐きそうにないから、他の奴次第か」
「いやいや、吐かせますよ、僕が無理矢理にでもねぇ」
襟櫛と山田の話を聞いている途中で、袖を引っ張る唯に気づいた。
「どうした?」
「今回って、カズトさんの側には誰がつくの?」
俺と襟櫛が前線に出るのは確実だろう。
山田も九と戦いたいと熱望している以上、後方待機というわけにもいかないだろう。
先程の戦いのような緊急事態にでも陥らないカズトは基本的に、後方で待機している。
子供達の中でも前に出たい奴は知っているし、そいつらは危険がない限りは出してやる。
基本的に、俺がお守りをする事にはなるのだが、それは構わない。
そうだとして、カズトの側に居るのは、彼の役に立つ奴だ。
「時雨と、郁人か」
全体を『ビルメン』で把握できる時雨をカズトは重宝する。
そして、後方を叩かれた場合、その時雨を逃す役目を『加速』を使う郁人が担うというわけだ。
「いつもの2人だね。茜も一緒じゃ駄目?」
茜は戦いに出ない子供達をまとめる役目を負っている。
それをカズトの側に置いて、何の意味があるというのか。
「いや、茜にはいつも通り、お前達をまとめる役目があるからな」
「それは、私と健一がやるから!」
唯と健一はいつも、茜の補佐を頼んでいる。
彼らは納得しているように見えていたが、或いは不満を覚えていたのだろうか。
特に、唯と茜は親友のようなものだと思っていたのだが、女というのは幼くても複雑なものなのかもしれない。
「今回、お前達が上手く出来なかったら、茜をまとめる役目に戻すぞ?」
「うん、それでいい。だから、カズトさんに頼んでくれる?」
「分かった。カズトには俺から言っておこう」
茜の特異性では、カズトの側にいる意味がそこまで無いのだが、それは適当に押し通せば良い。
まあ、俺自身ですらも意図が分からない事を、カズトがどのように解釈するのか、それが楽しみでもあった…。




