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刹那の絆  作者: シャーパー
9/150

一花咲かす為に

目覚めた瞬間、榊周一郎(サカキシュウイチロウ)は左手のサイコロを投じていた。


10。


そして、右手のサイコロも躊躇なく投じる。


6。


サイコロが消えるのを見て、満足げに頷く。


「さあ、鬼が出るか、蛇が出るか、どうじゃろうな」


出たのは、朽ちかけた鎧を纏い、錆びてボロボロになった巨大な剣を持った偉丈夫だった。


「我が名は、死骸地(シガイチ)(オウ)。貴様が我が主となる者か?」


「ワシは、榊周一郎じゃ。お前さんと組んで、この世界の支配者になりたいと思っておる」


「支配者…。それは、我欲を満たさんが為か?」


鋭い質問に、だが、榊はたじろがなかった。


「死ぬ前に一花咲かせたいと思っておる。野望じゃな、それを欲と捉えられたならば、ワシは不満じゃが、怒りはせんよ」


「すでに、潰えた身としては理解できない思考よ。だが、貴様は我を召喚し、共に歩もうとする者。ならば、この命を賭して、我は貴様に勝利を授けよう」


「感謝するよ、異世界の騎士よ。先程、夢で会った珍妙な奴、質問があるんじゃが…」


「呼ばれて参上、ホホイのホイ!」


相変わらず、ふざけた奴だった。


ただ、参加者の誰も体験した事が無いだろうし、知り合いでもないわけだから、情報を引き出す相手が唯一であるには違いない。


「カミムよ、感謝するぞ。我は素晴らしき召喚士に巡り会えた」


「いやいえいよ、こっちの細工じゃなくてそっちの運命なんで、礼は結構コケコッコー!」


カミムという名前を認識した上で、死骸地の王とも面識があると分かった時点で、これがかなり大掛かりな事であるのだろうと分かった。


いや、そんな事はとっくの昔に分かっていたはずだ。


今さらになって、自分を飾ろうとする必要はない。


飾られていないからこそ、最後に一花咲かせてやりたいのだから。


「他の召喚士に接近した場合、どうやって確認すれば良いんじゃ?一般人かもしれない相手に対し、ワシは死骸地の王に剣を振るわさねばならんのか?」


「ビジョン写真画像が頭の中に出ますねぇ。ただし、それは召喚士のみ。召喚士の頭にのみ出てて、召喚士の事だけが分かりますねぇ、ええ、ええ」


「つまりは、そこがワシの重要な役割というわけじゃな。その浮かんだ人物像を死骸地の王に上手く伝えると」


「うーんむ、その通りではあるんですからでしょうけどだけど、正直に言いましょうか?」


「聞きたいものじゃな」


「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや、やいやい言っても結局は同じ事ですから、黙さず語らず秘密にしておいたらと考えました!」


カミムをまともに相手にしたところで、正直、意味が無い。


「もう良いよ。後は、ワシらだけで考える」


「ではでは、またご利用のほどはいつでもお呼び下さいませよ、旦那」


「カミムが何を語らずに去ったか、お前さんには分かるかのぅ?」


「分かるが、我自身が語るべき事ではない」


「そうか、…ふむ、ならば、構わんよ」


一呼吸、間を置いてから、死骸地の王がぶっ込んでくる。


「では、行こうか、我が主よ。戦争を始めようぞ」


咄嗟に反応できず、黙ったままで見つめていると、それにも構わずに剣を振るった。


テーブルの上に置いてあった食器が粉々に砕けて弾け飛ぶ。


「温く澱んだ日常は終わりだ。これからは戦場に入る、覚悟を決めろ」


「やはり、一花咲かすには最高の相棒じゃよ、お前さんは」


先手必勝、それを刻んで、刻み付けて、榊と死骸地の王は始まるのだ…。

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