世界最強の俺様
下らねぇ女だ、下らねぇ世界だ。
俺様を召喚しやがるのは、どんな大層な奴かと思ったら、平和ボケした女だった。
甲高い声で喚くから、一気に赤子までしてやって調教する。
調教は成功で、だから、今はガキにしてやった。
「下らねぇ…」
「えっ?」
「アァ?俺様がテメェに話しかけたかよ、アァ?」
「す、すみません…」
下らねぇ女だ、コイツが召喚王になろうがなるまいが知った話じゃないが、俺様が誰かに負けるなんていうのは我慢ならねぇ。
だから、結果的にコイツは召喚王になっちまうってわけだ。
「下らねぇ、下らねぇ、オイコラ、次の敵はまだかよ、アァ?」
「ま、まだ、顔は浮かびません…」
舌打ちを響かせ、ビビらせておく。
「役立たずが」
「す、すみません…」
「テメェなぁ、謝りゃいいってもんじゃねぇだろ、アァ?」
「はい…」
誰かを従えるってのも一興なのかもしれねぇと考える。
手間は増えやがるが、敵に遭遇しねぇ間の暇つぶし程度は可能になる。
「次の奴だぁ」
下らねぇ女、小林紀子とか名乗ったか、何も応えやがらねぇ。
「おい、聞いてんのか、アァ?」
「はい、聞いてます」
「次の奴、奴隷にすんぞ」
「分かりました…」
「分かったんなら、とっとと見つけろよ、カスが。使えねぇ屑だな…」
それから、ずっと無言で歩く。
わざと足を早めたら、小走りで付き従ってくる女が面白かったりもしたが、すぐに飽きた。
「まだか!」
「アレは…」
女が呆けた顔で、テレビとかいうのを指差していた。
この前、殺し損ねたジジィが、同じ顔をしたガキどもと派手な戦いを演じる様子が映っていた。
「ジジィじゃねぇか、アァ?」
どうにも、自分が殺し損ねた奴が元気に動き回っている姿というのは、癪に障るし、胸糞悪かった。
「あのガキどもも召喚されたって口だろうな。ガキどもを奴隷にしたら、使い捨ての駒が一気に増えやがるじゃねぇか。悪くねぇ、悪くねぇぞ!」
「行きますか?」
「たりめぇの事ォ聞ィてんじゃねぇ!案内しろォ!」
興奮して気が立っている。
だが、次の瞬間、沸騰し切っていた俺様の熱は一気に冷めた。
左腕が肘から斬り落とされた。
「アァ?ってか、何だ、何が起こりやがった、アァクソッ!」
どこから攻撃を受けた。
いや、そもそも、敵の接近に何故、気付く事が出来なかった。
女を睨むが、驚きを見せて震えてるだけで、そこに何らかの作為があるようには見えない。
敵を確認できない、この状況はヤバい。
俺様はもう、攻撃を喰らわない自信があった。
だが、女が殺られれば、俺様も死ぬ。
腕は後で修復できるが、女に死なれては困る。
優先順位は勿論、俺様の腕が遥かに高くても、俺様の命と同義の女を見殺しには出来ない。
「アァ、ウゼェ!」
全方位を一気に攻撃対象へと移行する。
これで、暫くは時間を稼げる。
そう思ったのも束の間、腹部に引っ掻いたような傷が生じる。
本当は上半身と下半身を両断でもするつもりだったのだろうが、それは叶わなかったというわけだ。
「俺様を舐めてんじゃねぇぞ!」
首に僅かな痛みを感じ、相手の途惑いが伝わってきた気がした。
俺様を殺すなら、最初の一撃でやっておくべきだった。
この状態の俺様を殺せる奴はこの世に存在しない。
そう、世界最強の俺様は誰にも殺されはしないのだ…。




