胸の話
頭が痛い。
昨夜は少し飲み過ぎてしまった。
これも、杏奈が酒に付き合えないと言ったからだ。
俺の酒を断るのかと絡もうとしたが、バレンの視線が恐ろしくて止めた。
だから、1人で飲む酒は異様な速度で進み、今は猛烈に頭が痛い。
こめかみを強めに押しながら、ゆっくりと身体を起こす。
まだ、誰も起きていないようだった。
そう、誰も起きていないのだ。
これは、天が与えてくれた好機だった。
抜き足差し足忍び足、といった感じで、杏奈に近付いて行く。
ゴクリと生唾を飲み込み、たわわに実った大きな果実に両手を伸ばしていく。
鷲掴みして揉みしだいて、それでどんな目に遭うとしても、本望だ。
「オジサン、それは駄目だよ」
後ろから、声が聞こえた。
そして、それによって起こったのは、杏奈とバレンの目覚めだった。
「何があったのかと問うのも馬鹿らしくなるな」
落胆の溜息と共に、両手を引っ込める。
杏奈の訝しげな視線には、ゾクゾクしてしまう。
ただ、少年の方を見やるのは何となく憚られたので、特に何らの意味もなく、テレビをつけた。
そこに流れた映像に、俺は唖然としてしまう。
「何なんだ、これは…?」
CGで作り込まれたかのように、同じ顔が無数に群がっていた。
映画か何かの映像だろうかと考えたが、ニュース番組でそれはないだろう。
「召喚士だ」
「召喚士だね」
「召喚士ですね」
3人が次々と口にする。
「でも、こんなに目立つ真似をして、どういうつもりなんだ?」
「敵を誘き寄せるつもりか」
「もしくは、突発的に起こってしまったと考えるのが自然ですよね」
何やら、妙に杏奈とバレンの息が合っている。
「そんなに遠くないみたいだから、行ってみようよ。仲間を増やす事が出来るかもしれないよ」
「おいおい、冗談を言うな。自分から敵に近付いて行くだなんて、正気の沙汰じゃないぞ」
「リョウの決定は絶対だ。君達にはちゃんと従ってもらわないと困るな」
「和吉さん、私達は彼を召喚王にする為に頑張るんですよ。分かってもらえますよね?」
少年の無思慮も、老人の我侭も、関係なかった。
ただただ、杏奈の大きな胸だけを凝視する。
「分かった、分かった」
結局、俺の意見や意向なんて一考にも値しないのだろうし、俺だって今後の方針などに関心なんて全く無い。
ただただ、ただただ、ただただ、杏奈の胸を揉みたいだけなのだ、顔を埋めたいだけなのだ。
だから、ジッとずっと、俺は杏奈の大きな胸だけを凝視し続けていた。
「和吉さん、行きますよ?」
杏奈の声は胸から聞こえるような気がする。
そう思うだけで、至福の時が近いような気がして幸せだった…。




