12345
出社してからサイコロを振ったのが、そもそもの間違いだった。
まあ、家で振っていたとしたら、それはそれで厄介な事態に巻き込まれただろうから、結局、どこで振ったとしても同じなのかもしれないが、今、人生で最も最悪な事態に俺は巻き込まれていた。
サイコロで出た数字は、9と7だ。
それに意味があるのかは知らないが、それによって召喚された存在には意味があった。
意味がありすぎた。
召喚したのは、中学生くらいに見える茶髪少女だ。
まあ、会社の中にその年代の少女が入り込む余地はなかったので、それだけでも問題は問題なのだが、本当に重要なのはその数だった。
俺はてっきり、1人を召喚するものだと思っていたのに、召喚された茶髪少女は何人もいた。
「えっと、何…?」
「私達はジゼルです。召喚して下さった事に感謝します。貴方を召喚王にする為に、私達全員をお使い下さい」
「…あぁ、えっと、俺は、野村隼人だ。これから、まあ、よろしく、な…」
会社の中は同じ顔の少女でごった返していた、会社の外にも同じ顔の群衆が出来ていた。
「何人くらいいるんだ…?」
「12345人です」
「へぇ、…そいつは凄いな」
1万人以上の味方を得たわけだったが、他の召喚士も似たような状況なのだろうか。
しかし、そうだとすれば、100人の召喚士がそれぞれ1万人強の異世界人を召喚するとして、一気に100万人以上の増殖があるというのは、本当にどうなのだろうか。
想像していた以上に、これは戦争をしろという事だったのだろうか、空恐ろしくなる。
「この世界の情報を得るには、どのような方法を選択するのが適切でしょうか?」
「えっ?…あ、ああ、そうだなぁ、テレビを見るとか、新聞を読むとか、ネットで調べるとか、じゃないかな?」
「選択肢は3つですね、テレビと新聞とネット」
「他にもあるんだけど、まあ、大体はそれで分かると思うよ」
「では、3000人ずつをそれぞれに配し、残りで貴方を守ります」
「あっ、うん、分かった…」
3345人の少女に守られる男っていうのは、何だか、凄く恥ずかしい気がする。
会社外に群れていた少女達が次々と各所に散って行く姿を眺めながら、溜息を吐き出す。
遠くの方から、上司や同僚の叫び声が聞こえる。
どうやら、俺の事を強かに罵倒しているようだったが、これで社会的には終わってしまったようだった。
「不穏分子を排除しますか?」
「いや、えぇ、不穏分子なのかなぁ…」
どちらかと言うまでもなく、この会社内では自分が不穏分子だろう。
「この状況じゃ、召喚王ってのを目指すしかないかぁ…」
本当は、召喚だけしておいて、適当に身を隠してやり過ごし、勝者が決まった後に命乞いでもしようかと思っていたのだが、それも叶わぬ夢になってしまったようだった。
「よし、やるか!」
無数の視線が、自分の方に向いた。
「ここを拠点に、召喚王を目指す。建物内にいる不穏分子を排除しろ」
どこから取り出したのか、少女達は銃火器を持っていた。
銃声と悲鳴の中、俺は彼女に別れのメールを打っていた…。




