苛立ち募る
使い捨てにされるのは、御免だった。
召喚されたと思ったら、まさか、自分の召喚士がすでに他の召喚士に従っているなんている状況を、誰が想像できるのだろうか。
そして、その状況に追いやられた時、アタシの生存本能は強烈に刺激された。
勿論、カミムからの説明によって、自分を召喚した岸田梢という女が死んでしまったら、自分も道連れにされるのは分かっていた。
ただ、それ以上に、朝倉戒斗という少年が、残酷にこちらを処理しようとしたら、それこそ、一巻の終わりだという事が確信できたのだ。
だから、もう、彼に取り入るしかなかった。
初めての命令には、最大限の力を尽くした。
その結果が、今だ。
梢と2人、他の召喚士を探させられている。
ミアという小娘がどんな力を持っているのかは知らないが、確実に戒斗の中でアタシがあの小娘よりも下に格付けされてしまったという事だ。
「ねぇ、アンタはさ、あのミアって小娘の力がどんなのか知らないの?」
「分からないです。ドアを破壊する力だとは思うんですけど」
ドアを破壊する力ではなく、ドアを破壊した力だろう。
まあ、どちらにしても、この役立たずの召喚士発見器に何らかの成果を期待したのが間違いだった。
そもそも、この能無しがアタシを召喚して、あの戒斗とミアにぶつけていたら、今頃、立場は全く逆だったはずなのだ。
「せめて、ね、戦って負けたなら分かるんだけど、さ!」
「すみません…」
ミアと違って、梢は言い返してこないからつまらない。
いや、当然、生意気に言い返してくるミアが面白いと言っているわけではないのだが、張り合いがないのだ。
「で、まだ発見できないの?」
「…ええ、まだですね」
答えに間が合った、気がする。
考えてみれば、戦わずに膝を屈してしまうような糞雑魚だ。
敵を見つけても見つけていないと言い張ってやり過ごそうとするかもしれない。
「アンタね、分かってんの?」
「は、はい…?」
「アンタが敵を発見したって事は、こっちが敵に発見されたって事よ。放置してたら一方的に攻撃されまくって、血反吐をばら撒いて八つ裂きにされんのよ」
梢が青褪める。
糞雑魚の糞雑魚っぽい変化に、反吐が出る。
「んで、敵はどんな奴?」
「老人です…」
「ざっと見回して、それらしい奴は居る、居ない、どっち?」
「えっと、あの…」
怯えた様子で周囲を見回している。
特に反応がないところを見ると、視認できる範囲には居ないのだろう。
では、隠れているのか、潜んでいるのか、梢と同じようにやり過ごそうとしているのか。
「とにかく、結果を戒斗に報告、早く!」
「はい…」
敵の発見を報告しながら、梢の様子が徐々に自信を取り戻していっているように感じられた。
戒斗が彼女を励ましたのだろうが、それが妙に苛立つ。
「ほら、報告が終わったんなら、敵を探しに行くわよ」
「いえ、ここで待機しておくようにとの命令です」
そんな命令を唯々諾々と受け入れてしまったのか、鋭い舌打ちを響かせる。
しかし、それに対して、梢は先程までとは打って変わったように、動揺した素振りを全く見せようとしない。
「何たる奴隷根性、最悪の性根だわ」
批判的に言い放ちつつ、だが、戒斗の命令に逆らえない事は、誰よりもアタシ自身が正確に理解してもいた…。




