再会する2人
「随分と物騒な世の中になったものですねぇ」
スマホの画面に表示されているニュースはどれも、最近、頻発している不可思議な事件についてだった。
それを見ながら呟き、そして、待ち合わせの相手を待つ。
関西にある、とある寂れた温泉街。
その中でも、客が1日に平均で1人にも満たないんじゃないだろうかと思われる甘味処が指定された場所だった。
店の入口に向けていた視線を、再び、スマホの画面に固定させる。
さらに、情報を集めようとした時、視界が翳った。
顔を上げると、懐かしい男の姿が視界に入る。
「悪いな、山田君、待たせたか?」
「いえ、早く来ていただけですから。お久し振りですねぇ、九さん」
「ああ、久し振りだな」
あの事件であんな別れ方をしてしまった以上、再会した瞬間に一触即発の事態になる事だってありえた。
だが、とりあえず、それは回避されたようだ。
それでも、九は向かいに座ろうとはせず、脇に立ったまま、剣呑な雰囲気を纏っていく。
正直、彼の人となりを知らなければ、それが戦闘開始の合図であると錯覚してしまうのではないだろうか。
「山田君、聞きたい事がある」
「座りませんか?立ったままだと、店員さんが注文を取りに来れないですよ」
視界の端で、店員が困った様子でこちらを見やっている。
「客が店員に遠慮する必要はないだろう。それよりも、質問しても良いか?」
強引だ。
何を聞かれるかは想像できるだけに、素直に座ってくれれば良いのにと思ってしまう。
「分かりました。何でも素直に答えますねぇ」
「では、単刀直入に聞こう。今、日本各地で、いや、世界各地で起こっている特異性の喪失と特異性を持つ者同士による苛烈な戦いは、君の差金か?」
やはり、それか。
予想の範疇に収まってしまう九に対し、僅かながら失望を覚えてしまう。
「いや、僕は関与していませんよ。まあ、誰がやっているか、心当たりはありますけどねぇ」
「その心当たりを聞かせてくれないか」
「まずは、質問に答えたんで、席に座ってくれませんかねぇ。それとも、全てを見せていない相手と同卓になるのは嫌ですか?」
「いや、座らせてもらおう。そちらの要件もあるだろうし、これ以上、立っているのも疲れる」
びっこを引きながら、九は向かいの席に座る。
疲れるというのも、強ち嘘ではないのかもしれない。
ホッとした表情の店員が、水とおしぼりを置いた。
2人ともがコーヒーと、甘味処では味にとても期待できないであろう代物を頼む。
コーヒーが来るまで、お互いに口は開かなかったのは暗黙の了解という事で良いのだろうか。
まあ、九の家があるこんな寂れた温泉街まで訪ねて、今さら世間話であるまい。
2人の間に漂う緊張感は伝わらなかったらしく、店員はコーヒーを慣れた手つきで置いて普通に立ち去った。
何となく、別に飲みたかったわけではないが、2人してカップに口をつける。
「意外に…」
「ええ、悪くないですねぇ」
ここで美味いコーヒーが飲めるとは意外だった、
まあ、ここからの話は別に意外な展開が起こらないだろうから、コーヒーのアクセントは悪くなかった、そう思う事にした…。




