傲慢の油断
「戦力の集中と分散を1人でやってのけやがったか、愉快だぜ、なぁ?」
「巨大な女の子と一緒の顔をした女の子がいっぱい…」
「奴らを奴隷にしてやったら、面白いぜ」
「そうですね…」
テトの実力を疑うわけではないが、2組を同時に殺してしまうほどの強者にわざわざ挑む必要があるのだろうか。
「おいコラァ、ババァ、テメェまさか、俺様が負けちまうとか、そんな風に思ってんじゃねぇだろうな、アァ?」
「…私は、少なくとも、貴方が誰かに負ける姿なんて、想像も出来ないです」
「分かってんじゃねぇかよ、テメェも。この俺様があんな雑魚に負けるかっての」
当たり前だ、勝手に負けられては困る。
テトに復讐する権利は、私だけにある。
あんなどこの馬の骨かもしれない少女に、その役を奪われてなるものか。
「テメェはここで見てやがれ」
「えっ?私を置いて行くの…」
「当たり前だろうが、このヴォケがっ!テメェを連れて行っても足を引っ張んだろうが、そんくらい分かれよ、間抜けが!」
「…すみません」
深々と頭を下げて、許しを乞う。
「次からはちゃんと考えてから喋りやがれ、クソがっ」
吐き捨てるような言葉には、優しさの欠片もない。
頭を下げたままだったので、テトの表情は窺えない。
やがて、歩き去った彼に対し、私は走り出した。
ようやくだ、ようやく、私は自由になれたんだ。
テトが何を出来て、そして何を出来ないか、それをずっと観察していた。
今、逃げ隠れる私を見つけ出せるような力を彼は持ち合わせていない。
そうだ、復讐の時が訪れたのだ…。