教育的参戦
俺を召喚したのは、どことなく掴みどころの無い男だった。
名前は、吉澤龍一。
同じ33歳という事が分かった後は、何となく自然と打ち解けてしまったが、それでもまだ時々、理解に苦しむシーンもある。
とにかくだ、彼には召喚王になりたいという意欲はない。
ただ、無抵抗に負けて誰かに従うとか、そういうのも嫌らしい。
現状を正確に把握して、その上で楽しみたいんだと嘯いた彼は、今、目の前に存在する現状を正確に把握できているのだろうか。
老人1人に少女2人、それよりも幼い少年が1人。
それを軽々と捌きながら、カミムは笑顔でこちらに向かってくる。
「また、珍客ですね。ビュリック、お前も加わるか?」
俺は簡単に頷かず、吉澤の方を見やる。
「カミム、聞きたい事があります」
「ビュリック、どうする?今こそが千載一遇の好機かもしれないぞ」
殊更に吉澤を無視して、カミムが俺を挑発してくる。
千載一遇の好機、というのも実際どうなんだろうか。
相手にしている4人は、それぞれが実力者だ。
しかし、カミムはそれを意に介している風もなかった。
「カミム、貴方を殺してしまった場合、この召喚王を決めるというゲームの行く末はどうなってしまうのでしょうか?」
「おい、ビュリックよ、隣の馬鹿が呆けた顔で何かほざいてるぞ。今、ビュリックが加わったくらいで俺が死ぬかよ、阿呆が。その間抜けをちゃんと躾けておいてくれ、ビュリック」
あくまでも会話の相手は俺というわけだ。
吉澤の瞳に貪婪な光が灯る。
掴みどころのない男ではあったが、少なくとも俺は彼に真摯に向き合ってきた。
だからこそ、こういう挑発に対して彼がどうなってしまうのか、今までそれを見る機会がなかったのだが、存外、彼は煽られるのを嫌うようだった。
「ビュリック、あの道化と会話がしたいんです。私の話だけを聞けるように教育して下さい」
「やれやれ、まあ、そうなるか…」
拳に鋼鉄の塊を装着する。
さあ、この星を壊してみようか…。