ゲームの楽しみ方
「このケースは、流石に想定していなかったですね…」
「さっさと始末して、ポイントを得ておくべきだったな」
「えっ?」
一瞬、ビュリックの言葉が理解できなかった。
やがて、彼が目の前で自分の召喚士を殺した剣士の話をしているのだと理解し、苦笑を閃かせる。
「いや、彼らの事は想定できていましたよ。まあ、あの状況下における話し合いなんて、こういう悲劇的な結末を迎える可能性は少なからずありますからね」
今度は、ビュリックの方が理解できなかったようだ。
彼は訝しげにこちらを見つめ、首を傾げてから言う。
「さっきの件じゃなかったとしたら、何が想定外だったんだ?」
「ああ、すみません。今、私の頭に映っている顔がね、ちょっと想定外でして」
「新たな召喚士を見つけたのか?」
「ええ。見知った顔なんで、ちょっと驚いてしまって」
「旧知の仲か?」
「いえ、カミムですよ。主催者が参加者というのは、少しく意外ではないですか?」
「カミム、か…。いや、あの男ならば、何を仕掛けてきたとしても、驚くには値しないだろう。アレは、そういう男だ」
「それで、貴方はどうしたら良いと思いますか?主催者を殺してしまえば、このゲームは終わる?それとも、あの男の事だから、自分の死すらもゲームの内で、淡々とポイントが加算されるのみ?」
「お前は召喚王になれないとしても、別に構わないんだろ?」
「ええ、そうですね。自分から望んだわけではなく、巻き込まれてしまっただけですから。それが、何か?」
「だったら、試してみよう。カミムを殺して、どうなるかを見てみよう」
「面白いですね。こんな意味不明なゲームに巻き込まれたからには、存分に楽しませてもらわないと損するというものです」
このゲームで負けるつもりはなかったが、勝つ意欲もそこまではない。
そんな自分に、ビュリックを召喚できたのはとても有難かった。
何故なら、自分が多少の下手を打っても、ビュリックはそれを覆してくれるほどの力があったから…。