巨躯の思惑
「こんな手があったならよ、最初から使っとけって!」
肩に乗せた野村隼人が無邪気に騒いでいる。
だが、私としては彼ほどに無邪気ではいられない。
そもそもの話、こんな序盤で合体を強いられるのは、明らかに計算外であった。
召喚王を目指す過程の最終局面において、盤面を強引にひっくり返してしまうほどのインパクトが、この合体にはあったはずなのだ。
それをこんな序盤で見せて、尚且つ、ここからはもう、この姿で戦い続ける事を強いられるだろうから、事態は最悪に近い。
それなのに、何を無邪気にはしゃいでいるのだろうか。
まあ、彼はすでにただの象徴にすぎないのだ。
いずれは召喚王にしてやるが、今は放置するだけだ。
騒ぎすぎて落っこちられても厄介だから、無造作に摘んで胸ポケットに入れる。
「おい、お前、どういうつもりだ!」
こちらを見上げて騒ぐ野村隼人と、視線が合った。
肩に乗せていた時は、微妙に視線が噛み合わなかったのが、彼にとっては幸いだったのだろう。
「私に何か言いたいの?」
「…いや、何て言うか、…お前って、その、何だ?割と、あったんだな…」
何の話をしたいのか、まるで見当がつかない。
とにかく、大人しくなってくれたのは有難い。
さあ、この世界を蹂躙し尽くそう。
その後で再び、私は12345人に分岐するのだ。
理想の形、理想の姿、理想の未来を目指して…。