奥の手
「このままでは全滅します、最終手段を行使します」
「おい、ちょっと待て、最終手段って何だ?ちょっと不穏な響きだったぞ!」
自分を担いでいる少女は、俺に対して何も答えない。
確かに、俺は彼女達に俺の許可を求める必要はないと、そう言った。
だが、嫌な予感がしたのだ。
コイツら、本気でヤバい事をするつもりだ。
それは、直感だっただろうか。
「奥の手があるとしたら、それを見せるのはいつですか?」
その問い掛けに対する答えは勿論、俺にだって分かっていた。
「今だよ。逆転の一手なんてもんは、逆転できる時に打たなきゃ意味がない」
そして、その答えを出したからには、もう、彼女達を止める術はなかった。
舌打ち、それが諦めの印だった。
「やれよ、やっちまえよ!ただしな、逆転できない手だったりしたら、承知しないからな!」
「貴方はとても運がいい。召喚王になれますよ、おめでとうございます」
大言壮語ではなく、絶対的な自信なのだろう。
さあ、戦力が半減どころか、恐らくは8割以上を失っているであろうこの現状から、何をどうやってどのようにして逆転するつもりだというんだ。
俺を担いでいる少女に、隣に立つ少女が近寄る。
そして、次の瞬間、彼女達は合体した。
いや、何と言うか、合体したとしか言えない奇妙な事になったのだ。
「お、おい…」
「1…2…3…4…5人の私達は元々、1人の巨大な塊でした」
彼女がそう言いながら、他の彼女達は次々と合体していく。
最初は無傷な者達ばかりだったが、やがて傷付いた者達も、そうして、最後には死体や肉片すらも、次々と眼下で合体していく。
俺にも流石に理解できた。
コイツらが、自分の分身を失っていっても決して動揺を示さなかった理由。
最終的に、こうやってたった1つの肉体に合体していくからだ。
「どうですか?これが私、これがジゼルです」
とてつもなく巨大な少女が、俺を肩に乗せて屹立していた。
「殲滅力も、はい、この通り」
脳を轟かせるような声が、耳を劈く。
そして、彼女が持ったままだったせいか、巨大化した銃火器が凄まじい音と共に大地を薙ぎ払っていく。
ああ、なるほど、これは確かに、俺が召喚王になっちまうようだ…。