北を制せし者
「これでようやく、北海道は制したかな」
僕は隣りにいるミアに向かって言ったように見せかけて、本当は事実を確認する為だけに呟いた。
「貴方は本当に凄いよ!私、貴方に召喚されて、本当に良かった!」
ミアの言葉は、それも事実を確認する為にしかならなくて、あまり意味はない。
まあ、仮に、自分以外の誰かがミアを召喚していたとしたら、彼女は今の身分になれなかっただろうから、嬉しく思うのは当然だろう。
「嬉しいね。僕も召喚できたのがミアで良かったと思ってるよ」
ミアがギュッと腕にしがみついてくる。
鬱陶しいとも、可愛いとも思わない。
ただ、頭を撫でてやったら、随分と気持ち良さそうに目を閉じている。
今では、彼女に武力として期待できるものはあまり無い。
すでに、20人の召喚士を従え、武力に秀でている者も数多くいる。
だが、そうであったとしても、ミアは特別だった。
異世界からの来訪者はそれぞれ、自分と召喚士の2人を守らなければならない。
それに対して、ミアは自分だけを守れば良いのだ。
当然、他の20人からも守られている自分なのだから、ミアだけは自由に動ける立場であるというわけだ。
「ねぇ、これからどうするの?」
北海道は終わったのだから、次は東北の召喚士を従えに行く。
最終的には関東が主戦場になると考えていたのだが、実際は関西が最激戦区のようだった。
「まあ、地道に行くよ。現状、召喚士の中で、僕達ほどの戦力を抱えた集団は存在しないはずだ。一人一人、的確に倒していけば、関西に達する頃には勝負が決定しているはずだよ」
「貴方がそう言うなら、きっとその通りになる」
当たり前だ。
現時点ですら、召喚王になるのは僕しかいないと言っても過言ではない。
関西で激しい戦いを演じている面々には悪いが、派手なだけで無計画な凡愚達には僕に従う以外の道は無いのだ…。