わたしは誰かの決めた道を進む
自分よりも5つも幼い少女が、今、自分を含めた3人の視線を一身に集めている。
もしも、自分が同じ立場だったとしたら、それだけで身を竦ませて何も考えられなくなってしまっているところだろう。
だが、自分とは違い、彼女は強い。
「ダンウさん…」
「ああ、どうした?」
「私の考えを聞いてもらえますか?」
「ああ、言ってみろ。この場を決めるのは、お前だ」
そのやり取りを見て、アストリットが舌打ちを響かせる。
彼女はこういうのが嫌いなのだろう。
だが、アストリットの反応など、自分以外は誰も気にしていない。
だからこそ、わたしくらいは気にして上げないと、彼女がかわいそうだ。
「さっきの人達が、カミムさんとぶつかって、何かが変わるかもしれないですよね?それを待ってから、改めて召喚王を目指すか、決めたいと思うんです」
「迂遠な。もし、妾が召喚士の1人ならば、混乱の隙きを突いて一気に頭角を顕すわ。そうなってから、召喚王を目指したいなどと宣っても、後の祭りという事になりかねないわね」
「お前が決めたなら、それで構わない。この狂女はカミムを疑わないという馬鹿さ加減を露呈しているが、俺は奴を胡散臭いと思っていたからな」
「妾が馬鹿で狂っていると?」
「では、逆に問うが、お前にとってカミムは信用に値する男だったか?」
「少なくとも、強大な力を持った男だわ。100人の召喚士に、異世界の駒を充てがえるくらいにはね」
「で、信用したのか?」
これは最初から、アストリットには分が悪い勝負だった。
あの奇矯な男、頭がおかしいとしか思えない言動のカミムを、信用できる人間なんているわけがない。
「妾がカミムを信用していようと、決定に変わりはないのでしょう?それならば、突き詰めても意味ないわ」
まあ、結局、そうなってしまうだろう。
弾雨さんが弓花ちゃんを見て、彼女が頷いたので矛は収められた。
「では、暫く、時の趨勢を見守ろう。まあ、すぐに動く事になるだろうがな…」
弓花ちゃんが大きく頷いて、わたしに手を差し出してきた。
その手を握り、歩き出す。
アストリットには悪いが、戦いなんて無い方が良いのだ、きっと…。