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ただ、終わりを実感する時
そうか、と納得する。
もうすでに、自分に自分を動かす力はない。
ただ、見ているだけだ。
見ているだけなのだが、見ている姿には納得させられた。
「そうか、山田君、君がねぇ…」
彼の特異性は、世界の法則を捻じ曲げる。
例えば、それが相手を洗脳する事によって成し遂げられるものであれば、今、すでに自分を失ってしまった自分には通じなかっただろう。
だが、彼の特異性はそんな生温いものではない。
文字通り、世界を変えてしまうのだ。
「あの時は、君の幼さに勝たせてもらったというわけか」
笑う、終わりは近い。
「立派な大人になったものだ、山田君」
その時、一瞬、目が合ったような、そんな錯覚をする。
親しかった頃の彼ならば、そんな時、どうしていただろうか。
彼は、そうだ、彼はどことなく掴みどころのない、そういう男だった…。