真実を掴むまでの
「俺の名前はカズト、そっちの名前を聞かせてもらってもいいか?」
非戦闘員の少女達が顔を見合わせ、戸惑っているようだった。
谷川の存在が威圧感を与えるかもと思い、彼が出て来るのを止めたわけだったが、残念ながら自分も似たようなものだったらしい。
襟櫛と山田を確認すると、流石に彼らは余裕で時間を稼いでいた。
「別に俺としては、戦いを望んでいるわけじゃないんだ。お互いの理解を深められたなら、手を引いても構わない。それとも、そちらの仲間が殺されるまで、高みの見物を楽しんでおくかい?」
年上の方が口を開こうとした時、まだ、小学生くらいの少女が俺の前に歩み出てきて言う。
「私は、八神弓花です。こちらは、本田茉莉さんです。向こうの女の子がアストリットさんで、あちらの男の人が弾雨の殺戮死神さんです」
最後の奴は何なのだろうか、異名なのか。
「じゃあ、八神さん、もしくは本田さんの方かな?どちらが、俺との話し合いに応じてくれるかな?」
「ユミカ、でいいです。私がリーダーだから、私が話します」
ますます、意味が分からない。
一番弱く見えるユミカが、全員を従えているとでもいうのか。
或いは、彼女は残り3人に守られる対象といったところなのだろうか。
そうすると、本田茉莉という少女にも警戒する必要があるのかもしれないが、どう考えてもせいぜい世話係といった役割が相応しい。
「じゃあ、単刀直入に聞く。あの2人が使ってるのは何だ、特異性じゃないよな?」
「あの2人は違う世界からやって来た人たちです」
そういう振り出しから始まった話は、俺の想像を軽く超えていて、途中で目眩を覚えるほどだった。
「カミム、か…」
全てを仕組んだ男、その名前を聞いて、俺は嫌な予感を覚えていた。
情報屋をしていた頃、俺はそいつと接触した事がある。
アストリットも弾雨の殺戮死神も、異世界の人間であり、自分の世界での特異性のような特別な力を使っているのだろう。
ただ、カミムは違う。
奴は、特異性を持っている。
しかし、奴の特異性はここまで大掛かりな事が出来る代物であっただろうか。
奇矯な男であったのは認めるが、それはただの誇大妄想主義者といった類だ。
まあ、どちらにしろ、この集団と戦っていても、何の意味もない事だけは理解できた。
「山田氏、撤退だ。襟櫛も満足したら、戻ってくれ」
少し忙しくなる、そんな予感がしていた…。