表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那の絆  作者: シャーパー
114/150

離れゆく玩具

「何だよ、これ…、何が起こってんだよ、なぁ、おい、レーネ!」


いつものように、レーネの名前を叫ぶ。


ただ、いつも通りにはもう、彼女は答えない。


彼女が答える権利はすでに、他者が持っているからだ。


彼女が見つめる先にいる老人は、どこか呆けたようにぼんやりとしていた。


本当に、こいつが俺の命をも握ってしまっているのだろうか。


こんな呆けた老人の巻き添えで殺されるなんて真っ平だ。


ただ、老人の死が自分の死と同義であるのは、レーネを召喚なんて出来た時点で明らかだった。


「レーネ、何で殺せなかったんだよ、殺しといてくれりゃ、俺がこんな苦難に遭わずに済んだのによ…」


答えないレーネに近づき、その幼い肢体をギュッと抱き締める。


いつものように、俺の俺が激しく屹立する。


「その娘を離せ、豚畜生」


「従えられたとしても、レーネは俺のモンだろうが!」


「違うよ。彼女もお前さんも、ワシの道具じゃ」


雪雨というガキがいないのに、それでも、老人の眼光は鋭く、激しく、居丈高で、俺の全身を震わせる。


踏んできた場数が違うなんていう事は、従えられてからの短時間ですぐに理解できた。


それでも、そうであったとしても、レーネを手放すのは惜しかった。


彼女は無抵抗な俺だけの玩具だったから。


「レーネよ、今の主であるワシが命じよう。その拘束を解き、雪雨の援護に入ってくれ」


「はい…」


レーネの声が、抱き締めた中から聞こえる。


それでも、俺は彼女が決して、俺を粗雑には扱わないと思っていたから、抱き締める力を強める。


だが、次の瞬間、鋭い痛みが、幾つも走る。


思わず、腕を緩めた先から、幾許かの鮮血を帯びた彼女が姿を見せる。


俺を斬ったのだ、刻んだのだ、その理解が及んだ時、恐慌を覚えた。


彼女は俺を痛め付ける権利を得たのだ。


「あ…、お、俺は…」


「行ってきます」


レーネの言葉は、俺に向けられたのだろうか、老人に向けられたのだろうか、別れだったのだろうか、決意だったのだろうか…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ