終わる道程
「九さん…、それ以外に無かったのかい?」
勿論、答えなんて聞かなくても分かっている。
それ以外に無かったから、九はそれを選んだのだ。
それでも、問い掛けずにはいられなかった。
いや、聞こえていないだろうから、問い掛けたわけではない。
呟かざるを得なかった、それが本当だろう。
特異性を有する全ての者が持つ、最後にして最悪の一手。
普通ならば、殺されるような状況だとしても使わないだろう。
何故なら、自分が自分でなくなるのだから。
自分という意思が消えないままに、自分であった何かが最後の思いを遂げる為だけに動いている。
それは、どう考えたって虚しい事だ。
「九さんは最後に何をやろうとしたんだ?」
それも、当然、分かっている。
自分と合流しようとしてくれたのだ。
彼の思いを無駄には出来ない。
ここで、組織を終わらせるわけにはいかない。
「立て直す!生存者は全て集まれ、九さんの犠牲を無駄にするな!」
だが、自分の声に応じる者は誰一人としていない。
その代わりに、絶望が視界を埋めていた。
残された数は僅かなれど、その全員が全員、九と同じ選択をしてしまっていたのだ。
何故だろうか、その末路は特異性を有する全ての者が忌み嫌い、殺された方が遥かにマシだという代物なのに、伝染するのだろうか、感染するのだろうか。
「九さん、私には重荷だよ。これを好転に利用するなんてさ…」
本能で動く化物達に、私の特異性は有効なのだろうか。
まあ、有効でなければ、死ぬだけだ。
死ぬくらいならば、いっその事、そう思って、そう考えて、何だか、笑ってしまう…。