自由行動
時すでに遅し、そう、野村隼人の決断は遅きに失した。
ただ、それでも、そうであったとしても、この世界に召喚されてから初めての自由行動を許されたのだ。
数が半分以下になったとはいえ、元々、私達は私達だけで行動するのを得意としていた。
それが与えられたのだから、もう、言い訳は出来ない。
遅すぎた決断であったとしても、逆転できないわけではない。
現状を考える。
敵は、4つ。
それぞれが連携しているか、否か、それは分からない。
連携しているとするならば、あまりに連携が雑すぎて、本来の連携からは程遠い拙さ、未熟さだ。
とにかく、4つは連動していないと考えるべきだろう。
まず、最初に戦端を開いた老人だが、これは空を飛行していた女に守られていた少年が、その女が突然に絶命した影響によって落下してしまい、それを助ける為に動いているので、とりあえずの脅威としては考えなくても良いだろう。
どうして、あの女が絶命したのかは分からないが、それを調べている余裕はない。
そして、あの老人を召喚したのが落下少年である事は明白だったが、それを殺す為に割く人員の余裕はない。
軽視していたが、野村隼人の見解は正しかったというわけだ。
少年を殺してしまえば、老人は止まる。
次の敵、建物内で戦っている集団だ。
特異性だったか、それを操る集団だったが、こちらは戦力としては最も警戒に値せず、考慮する必要もない。
そして、単独で動いていて、ついさっきまでは戦力として終焉を迎えかけていた老人がいる。
突如、老人は豹変し、覚醒なのか、暴走なのか、今は最大の脅威になっている。
最後に、新たに現れた2人の男だ。
この存在と老人の位置が近く、引き合わせた場合に何が起きるのかは試してみる価値があるように感じる。
「では、それで」
逃げられるだろう。
担ぎ上げた野村隼人には、何も伝えない。
彼はもう、ただの象徴だ。
私達は私達だけで、この世界を…。