敗走すらも許されざる者
敵が無限に増殖していくように感じられた。
同時に、味方の数が明らかに目減りしていっているのも分かっていた。
だが、俺にはどうすれば良いのか、それが分からなかった。
そもそも、この召喚士はどれほどの戦力を抱えているのだ。
従えている数が尋常ではなく、あまりに多い。
戦力を無為に減らし、何も得る事が出来なくて、その状態でこの決断は最悪の極致ではあったが、贅沢は言っていられなかった。
「…撤退する」
「撤退、ですか?」
「ああ、そうだ、撤退だ、逃げるんだよ!」
出来ないなんて、そんな事を言わすつもりはなかった。
まだ、数は残っているのだ。
すでに、万には満たないかもしれないが、それでも、数千が動けるのだ。
逃げるくらいは当然、出来るはずだ。
そして、俺は自分の結論に愕然とする。
12345人もいたのだ。
それが、今では万にすらも満たないのか。
2割以上も削られたのだ。
しかも、俺は何も得ず、敵に顔を知られてしまっただけだ。
「まだ、逃げ切れれば、勝てないってわけじゃない。そうだろう、なあ、そうだよな?」
答えはない。
少女達は困惑したように顔を見合わせたりなんてしない。
ただ、答えないだけだ。
何だ、何だというのだろう、もう、万事休すだとでも言いたいのだろうか。
「残っている正確な数を言え!動ける奴、戦える奴、一緒に逃げられる奴、その数を言えよ!」
「6343人です」
気が遠くなりそうになった。
「半減してるのか、マジかよ…」
「まだ、半減はしていません。ただ、それも時間の問題かと」
「誤差の範囲内だろうが!」
キレても、叫んでも、少女達は動じない。
「今、ちょうど半減しました」
「は、はは…」
乾いた笑いが自然と漏れる。
「…教えてくれ。逃げられるか?」
「全員集合する許可を下さい」
もう、余計な事は言わない。
全員集合しなければ、事態は悪化するのだろう。
「これからは、俺の許可を求める必要はない。常に、お前達が最善だと思う手を即座に打ってくれ」
目の前の少女が銃を捨て、俺を軽々と担ぎ上げた。
俺自身が走って逃げるよりも、この方がマシという事なのだろう。
召喚士とは何だ、召喚王とは何だ、こんなの、介護されてるのと変わらないじゃないか…。