最強の組み合わせ
不貞腐れているように見せながら、実は機嫌が良いのだろうと思われた。
自分以外の召喚士を探しながら、各地で起こる事件を追い掛け回して、ようやく遭遇する事が出来たのだ。
自分としては、召喚士だけだったのが不満ではあったが、今は戦場に向かっていると分かっているわけだから、同じように機嫌を良くする事も出来た。
竜胆蓮という名の私の召喚士は、正直、召喚士の中で最強なのだろうと思われた。
いや、勿論、自分を倒すのは無理ではあるし、相手にもならないのは分かっているが、凡百の敵ならば個人で今までは制圧できていただろう。
「糸雪、また、見つけたよ」
声が踊っている。
次は、自分の声も踊ってしまうだろうか。
敵と戦いたかった。
惨めで鈍い召喚士の首を斬っただけでは、到底、満足なんて出来ていないのだから。
その時、竜胆蓮の眉間を正確に狙った何かが飛来し、当然ながら、長刀で斬り捨てる。
「今、何か飛んで来た?」
アレが見えるという事が、そもそも、非凡なのだ。
さっき、私に首を斬り飛ばされた召喚士では、一生かけてもアレを見れないだろう。
「狙われていますよ」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、狙って来た奴は殺さないとね」
逃げるとか、守るとか、そういう思考法には辿り着かないのだろう。
敵の位置は分かる、動かずにこちらの様子を窺っている。
そして、その敵は無数にいた。
「足を止めて下さい、一斉に来ますよ」
一応、忠告はしてみるが、竜胆蓮は足を止めたりしない。
そして、そんな事は分かっていたから、特段の問題でもない。
飛来してくる攻撃の全てを斬り伏せながら、竜胆蓮の歩みを妨げたりはしない。
ただ、この状況ならば、本来は焦ってくるだろうはずの敵が、まるで焦りを見せようとしない理由は何だろうか。
そう、まるで最初から仕組まれていた事を淡々と実行しているだけのような攻撃だ。
「糸雪、誘導されてるね、これ」
竜胆蓮が足を止める。
彼は自分の意思で進み続ける事は躊躇しないが、他者の都合で操られるような事を自分の意思などとは考えない。
「それで、どうしますか?」
竜胆蓮はゆっくりと全景を見回し、口の端に笑みを零す。
「あそこだね、進まれたくない場所は」
指差して見つめた先は、自分の考えと完全に同じで、自分の召喚士が竜胆蓮であった事を、本当に幸運だと考える。
「行きますか?」
「ああ、行こう。勝ってたつもりだったのに、一気に形勢が逆転した時、敵がどのように慌てるか、少し面白そうだね」
すでに、敵も動き始めている。
慌てているのだろうか、それとも、現状ですらも想定内なのだろうか、それは未だ分からない…。