変わっていく俺と・・・
ずっと押し黙っていた墨高夏菜が、全員に視線を向けられて弾き出されるように口を開く。
こういう時、どうやっても、菜々に召喚された俺は、最期に意見を言う立場になってしまう。
それが、時に都合が良く、場合によっては有難くない。
ただし、今は悪くない。
「アタシも…」
そこで、一瞬、止まる。
やがて、彼女は言う。
「アタシは、とにかく、様子を見に行ってみるべきだとは思う。傍観するのも、積極的に参戦するのも、その場の空気を感じてから決めるべきだと思うんだ。誰かに見せられた光景だけで、結論を下すべきじゃない、そんな気がする」
俺は少し、ほんの少しだけ、虚を突かれた思いだった。
単純に、俺は死骸地の王と同様に、参戦を提案しようと考えていた。
だが、墨高夏菜の提案は、存外、悪くない。
「俺も同意見だ。自分の目で見て判断する、それが最善だろう」
菜々は少し迷ったようだったが、やがて口を開く。
「桐島さんと夏菜さんの意見が正しい気がします。他の人達もそれで良いですか?」
とにかく、戦うとも戦わないとも決まっていない以上、死骸地の王も榊周一郎も日高仄香も反対は表明しなかった。
「じゃあ、行きましょう。自分の目で真実を確かめに」
そう言われて、菜々の言葉でそれを聞いて、俺は仮に戦いを回避する方を彼女が選んだとしても、それはそれで良いかもしれないと感じた。
温くなった、いや、それが心地良いのだから、構わないだろう。
笑顔で俺を見る菜々の頭をポンと軽く叩いてやると、彼女はきょとんとした顔で小首を傾げる。
彼女が幸せなら、俺はそれだけで満足なのだ…。