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安藤ナツ、やっぱり出張する。

 安藤ナツが技術六課の一員となって二月程経つと、流石に部署のメンバーの大半と顔合わせが済んだ。平均年齢がかなり高く、三十代の先輩二人が最も年の近い先輩であり、それ以上となると五十代の先輩方ばかりだった。


 後継者不足もここに極まれり、と言った所だろう。


 だからこそ、二十歳そこそこのナツに白羽の矢が立ったとも言える。


 期待の新人である。


 そんな期待の新人ナツは、大して作業内容を教えられないまま、出張に行くこととなった。これがゲームや漫画なら、練習不足の新人が大活躍して逆転勝利となる場面であるが、残念ながらナツの能力はそこまで高くない。ことを自覚していた。


 上司もそこまでの成果を望んではいない。


 現在出張中の先輩の下で、仕事を勉強して来いとのことであった。アーロンさん風に言うならば『使い方は、実戦でな』と言う奴である。


 また出張先は既に設置開始から一月経過しているににも関わらず、度重なる不適合の発見により、作業は遅々として進んでおらず、製造部の設置作業の経験のあるナツはそちらの手伝いも期待されていた。


 出張先は本社から二時間ほど車で移動した場所にあった。


 また余談になるのだが、基本的に技術六課の移動手段は社用車である。荷物の多さや、現地での移動を考えると、どうしても車の使用が好ましいからだ。


 中部地方の田舎町から山口県の端まで車で九時間以上。それがナツの単独運転記録である。神戸のサービスエリアで同情する他部署の先輩がビールを飲み始めた時、深い絶望を覚えたものだ。やはり酒は嫌いだ。


 当時はまだ珍しかったスマートフォンで、今は解散してしまったロックバンドのアルバムを聴きながら、ナツは一人出張先に向かう。



 この時ナツは、出張先で先輩社員と激しい口論の末、電車で本社へと帰ることになるなどと、夢にも思っていなかった。


 今でも、夢であればいいと思う。


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