7.真名
全然更新出来なくてごめんなさいm(_ _)m
「アカハ、おはよう」
「おはよう蒼麟」
朝。謎の鳥がギューギュー鳴いている。
一体何の鳥なんだろうか。此処へ来てもう一月半なのにまだあの鳴き声には慣れない。
「蒼麟。あの鳥、何?」
「ああ、あれはねぇ、フロッグバードだよ。朝になるとあの鳥の鳴き声が聞こえるんだ」
「……へぇ。ギューギューうるさいね」
「そう?アカハのとこではなんて鳴いてたの?」
「雀がチュンチュンって鳴いてたよ」
「チュン……変なの」
「……そうなんだ」
どうやらこの世界の感覚はボクらのそれとかけ離れているらしい。
「ね、ねえ蒼麟、そろそろ行こう?」
「うん、そうだね」
蒼麟と連れ立って食堂へ行く。そこにはもうバルトが待っていた。
おはよう、と声をかけて席に着く。
「アカハ、ユーリからの伝言だ。食事の後裏庭に来い。今日から訓練をする、だと」
「わかった!」
「なるべく動きやすい格好で……っと、その必要はなかったな」
「ああ、うん」
そういえば、初日の朝食の後バルトに服を貰ったんだ。誰かのお下がりらしくところどころ擦り切れてて、しかも実用性を重視してるから飾り気がない。でもまあ、清潔だからいいんだけどね。
普段はその服で過ごしている。ただまあ、制服は一応正装にと、とっておいてもらっているんだ。
もちろん、洗濯は済んでいるさ。
にしても此処の食事は本当に美味しいな。
「バルト、ご飯いつも美味しいよね。誰が作ってるの?」
「そういえば紹介まだだったな。……料理長!」
と、指を鳴らすバルト。少し経ち、足音が響いて来た。
「失礼します」
「入れ。……こいつがうちの料理長だ」
「お初にお目にかかります。ルリア・フェルミアと申します」
「えっと……。アカハ・コウヅキです。初めまして」
「ソウリンです」
「……っ!そ、それは真名でございますか⁉︎」
「まな…………?」
聞きなれない言葉に首を傾げバルトを見やると、少し焦ったような顔をしていた。
「わ、忘れていた。すまないルリア、この者達に説明を」
「わかりました、バルト様。勇者殿、真名とはその名の通り真の名のことです。術に組み込められれば誰だって必ず術者に操られてしまいます。ですから、真名はそのように気軽に教えてはだめなんです」
簡単な説明を聞き、確認する。
「んー。じゃあ本名は名乗っちゃダメなんだね」
「まあ、そういうことです」
「じゃあバルトも本名じゃないの?」
「ああ、まあそういうことだ。ただ、お前らになら教えてやれるとは思うのだが」
「ふーん……。あ、でもルリアさん。何でボクが真名を名乗ったってわかったの?」
「ぅ……、それは、秘密です」
少し気になるけど、ルリアさんは目を伏せてしまった。
「えっと……。ならいいよ、言わなくて」
「……ありがとうございます」
言いたくないことは言わなくてもいい、これがボクのスタンス。詮索は嫌いだから。
「ルリアさん」
「なんでしょうか」
「名前ってさ、すぐに変えられるものなの?」
「ええ。私もルリアという名は此処に来てから名乗り始めたものですし」
「じゃあ……、ボクはアーチャって名にするよ」
「そうか、アーチャか。だがアカハよ、姓も考えた方がいいのではないか?」
「あ、そうだね。でも苗字なんて…」
…………。全く考えつかない。
「俺が考える。……ケイルフォードはどうだ?」
暫く悩んでいると、バルトが助け船をだしてくれた。
「それ、いい!そうするね!ボクは今日からアーチャ・ケイルフォードって名乗る!」
「それなら大丈夫でしょう。では、よろしくお願いします、アーチャ殿」
「よろしく、ルリアさん」
握手をかわしていると、服がクイッと引っ張られた。
「ん?蒼麟?」
「ねえ朱葉、僕にも仮名、頂戴?」
「えっ……」
考えてみると、蒼麟がボクに何かねだるということは今まであまり無かった。
「う、うん……。でも、蒼麟じゃ嫌なの?」
「そ、そうじゃ無くて、その……」
「何?」
「……アカハと同じがいいんだ」
とクリクリした目でねだってくる。流石に断れないなぁ……。
「蒼麟……。わ、わかったよ……。じゃあちょっと待ってね」
んー。今咄嗟に思いついたのはレオンなんだけど……。ただ蒼麟とレオンに共通点なんかないんだよな。
「バルト、名ってさ、真名との関わりが無くてもいいの?」
「構わない。所詮は仮名。それにソウリンは真名という程魂に染み込んではいない訳で、術に操られることは今は殆ど無いだろう」
「今は?どういうこと?」
「いつかソウリンの名が魂に定着するということだ。まぁ、名付けの三月後ぐらいだろうな」
魂に定着……。うん、よくわからないから流しておこう。いつか自然になるらしいしね。
「……へぇ。じゃあ、蒼麟、名、きまったよ。蒼麟は……レオンって名乗ってね!レオン・ケイルフォードって」
「ありがとう、アカハ!アカハと同じ姓が貰えて嬉しいよ」
「あ、うん……」
まあ苗字の方はただ単に思いつかなかっただけなんだけどね。でも喜んでくれて嬉しいな。
「では改めて。勇者アーチャ殿、これから先もよろしくお願いしますね。それからレオン殿、守るべきものは手放してはなりませんよ」
「うん。よろしくね、ルリアさん」
「……!もちろんですルリア殿、決して手放しません!」
「ええ、その心意気です」
若干、仮名を言う時アクセントが強かったような……。ルリアさん、何かありそうな気がするんだよなぁ。
それに、蒼麟に掛けた言葉。“守るべきもの”って、一体なんなんだろう。
なんて思いながら握手する……時に、目を覗き込まれた。
「なに?」
「絶対、真名を教えないでくださいね?奪われたものは……取り戻せませんから」
「は、はい……」
そう、強くいうルリアさん。どんな事があったのかは知らないけど、有無を言わさないその口調に気圧されてしまう。
見るものに覚悟を問うような、暗く強い、眼。
それは、深い哀しみが表れているかのようだった。
5月って、忙しいですね。
体育会に中間テストに…。
まあ、暑いですが更新はがんばって行きたいと思います!
2016/04/30 修正
修正点
・真名の部分を少しばかり変更(魂の定着についての記述)
・…が奇数の箇所を偶数に
・その他、諸々