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ESTALUCIA  作者: 蜂矢澪音
1章 十七番目の番人
10/33

9.死虫と師匠とゴブリンと

戦闘シーン、難しいです…。




遠くを睨むように見つめ、魔力を高めているユーカ。ボクにはまだわからないけど、その視線の先に『死虫(ジ・エンド)』という魔物がいるのであろう。


「アカハ、よく聞いて。死虫(ジ・エンド)は危険な虫よ。体長は1.5〜3m、大きな鎌と背中の棘には致死性の毒があるわ。ランクCの魔物ね」

「ランク?」

「オーガはE、トロールはDね。普通二段階離れていれば、強さが桁違いになるわ。それこそ、瞬殺レベルなくらい」

「そうなんですか」


オーガにトロールか。……亜人じゃないんだね。


「で、死虫の討伐部位は触覚ね。あれはいい剣になるのよ。外殻も損壊してないなら持って帰った方がいいかも知れないわね。急所は、腹の装甲と背中の硬い部分との隙間の柔らかい部分よ。そこに攻撃を当てれば撃墜できるわ」

「魔術でもいいんですか?」

「ええ、もちろんよ。……もうすぐくるわ」

「あっ!」


やっと索敵範囲に入った。この周辺にいる生物は、ユーカとボクと死虫(ジ・エンド)、それか幾つかの弱い気配だけだった。


「ん?何か気づいた?」

「いえ。死虫って、大きいんですね」

「ん?えぇ、そうね」

「一番小さくて2m……かな?」

「そ、そうね……」

「ゆ、ユーカさん!あれですか?」

「……そうよ。アカハ、構えて」


ユーカの冷静な、しかし緊張を孕んだ声が聞こえる。時間が何倍にも膨れ上がったような気がした。


ヒュンッ!


矢が、飛ぶ。一匹の死虫に当たり、墜落した。ユーカが放った矢だった。姿こそ見えてはいるがまだ此方との差は十分にあるにもかかわらず、だ。

12の目が一斉に、ボクとユーカの方へ向く。


「アカハっ!2匹、頼むわよ!」

「はい!わかりましたっ!」


羽音をたてて6匹の虫が鎌を振り上げ飛んでくる。


火弾(ヒート・ブラット)!」


魔術を構築して一匹に向かって放つ。…だが。


「避けた!?」

「アカハ、此奴はオーガとは違うの!多少だけど知性があると考えていていいのよ!」

「わかりました……。だったら!!」


いま出せる最高出力の岩弾を一つ。魔力を練るときに遠隔操作ができるようにする。


岩弾(ロック・ブラット)


硬質で黒い滑らかな小さい岩が空を切るように飛んでいき、死虫の僅かな急所の部分に一分の狂いも無く吸い込まれていく。


「捉えたよ、逃がさないから」


ぐしゃり。


嫌な音がして、死虫が地に落ちる。


「アカハ、うしろよ!」


ユーカの声が聞こえ、慌てて魔術を構築して放つ。……が、死虫の頑丈な鎌に阻まれて本体に到達しない。そうこうするうちに、死虫の鎌が迫ってくる。


「なんで……!?っどうしよう……」

「なんでもいいから攻撃するのよ!」

「わ……、わかりましたっ」


勢いで返事をしてしまったけど、全く解決策が思いつかない。

あっ!


「……これでいいかな!光弾(ライト・ブラット)!」


先程の岩弾とはうってかわって光り輝く大きな球が現れる。眩い光の奔流は近づく死虫の体を覆い尽くしてゆく。


「これで、大丈夫かな……?」


そういった瞬間だった。


カチカチカチ……


光の幕から音が聞こえた。


「……え?」


予想もしていない事に思わず思考が止まる。

やがて光が収まり現れたのは……毒々しい青色をした、死虫の様な何かだった。

てらてらと青く輝く表面は、絶えず何かどろっとしている物が纏わり付いているかの様で。その悍ましい姿に、ボクの体は硬直した。


「アカハァァァ!離れてぇぇぇぇぇ!」


ユーカの叫び声に、やっと体が動く。慌てて飛び退き、距離をとった。


「ユーカさん、あれは?」

「あの虫は……!あれは……死藍(エンドフライ)、よ」

死藍(エンドフライ)……?」

「ええ。彼奴の体に触れない様に。一瞬で死ぬわ。遠くから一気に仕留めるわよ!」


死藍、か。

体に不釣り合いな大きくなった鎌を振りかざし此方を睨めつける死藍。周りを見ると、他の死虫達はユーカが全て処理していたようだった。


「アカハ、私の矢で牽制するわ。アカハは隙を見て、魔術で攻撃するのよ」

「わかりました!」

「構えて。来るわ」

「はいっ」


魔力は残り2/3くらい。最高出力とはいえ初等級魔術、魔力消費は然程多く無いのだ。……まぁ、今回は一つずつで、複雑な形に変えてないからっていうのもあるんだけどね。

バルトの前でやったように、しっかりとイメージを固める。モデルは、小さな針。3cmの針にでき得る限りの熱とエネルギーを込める。


「いい!?」

「はい」


ヒュルル、と風切り音がする。ユーカの矢が飛んでいく、音。

それを合図に3者が動く。

まず、死藍。少し離れていたユーカの方へ飛ぶ。

そして、ユーカ。死藍をうまく避けながら矢を放ち続ける。

ボクはユーカが引きつけている間後ろに回り込み、小さく熱い火の針が何時でも撃てるように待つ。


その時が、来た。


「アカハ、いけ!」

「はいっ」


死虫が進化しようと、急所くらいはおなじだ。そこに向けて、火弾(ヒート・ブラット)を放つ。

今度は、刺さった。


ぐちゃ。


死藍の体が地に落ちる。

青い体が潰れ、針の周りの部分が焼けている。何時しか周囲には死の気配が渦巻いていた。


「やった!」

「アカハ、討伐部位を取るわよ。死藍はくれぐれも青い粘膜に触らないようにね?」

「はい、わかりました!」


魔蟲系魔物などが死んだ時は、討伐部位を刈り取ると、何故か討伐部位以外の体が消えるらしい。

まぁ、討伐部位以外の素材も討伐部位を取るまでなら何とか取れるんだけどね。

それと、一部の魔蟲系魔物と魔蟲系以外の大抵の魔物は討伐部位を取っても消えないらしい。ここはまだ謎のままなんだって。

魔物の処理の一連の作業を終え一息つく。作業中に何かが聞こえたような気がするが、きっと気の所為なのだろう。


「あ、ユーカさん、あれ、その……ゴブリン、ですよね?」

「ん、ええ、そうよ」


その時ボクは、確かに聞いた。


『救世主殿……!』


という、ゴブリンの声を……。

2016/04/30 修正

修正点

・魔物の素材に関しての記載を変更

・…が奇数の箇所を偶数に

・その他、諸々


2016/06/01 修正

修正点

・魔物の素材に関しての記載を再度変更

・経験値の取得方法についての記載を消去

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