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ノスタルジックに死す  作者: Lotus
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アウトローの声


初めてのシリーズものなので訂正ばっかりしていくと思いますが、どうかよろしくお願いします。

昨晩、振られた。

実は、薄々気付いてはいたのだ。

そろそろだろうなと。



「振られたあ。」


「お、もうそんな時期?」





今の彼氏と付き合うようになってから早4年。


初めて振られたのは1年記念日の夕方のことだった。

突然のことで何が何だか訳が分からず呆然と立ち尽くした。

「どうして?」そう問うても何も答えてはくれず、彼は私の目の前から去って行った。

しばらく途方に暮れて、3日間泣くに泣いたが、4日目の朝、家に訪ねて来たのは私の前から行方を暗ませた筈の彼だった。

「大好きだよ、愛してる」そう言って玄関で私を強く抱き締めた。

彼は、花束を持っていた。


なぜ突然「別れよう」と言ったのか、音信不通の3日間どこで何をしていたのか聞いても答えてもらえることはなかった。


それから、毎年記念日になると、彼は必ず別れを告げて3日間姿を消すという意味不明の行動を繰り返した。

毎回、4日目に花束を持って戻ってきてくれる。

別れを告げられる時間帯も4日目に訪ねて来てくれる時間もばらばらで統一性はいっさいなかった。




私は、彼なりのマンネリ解消なのだろうと思うことにした。


彼は、とても口数が少なく、声を上げて笑うことも滅多にない。

私の馬鹿みたいな冗談をいつも微笑みながら聞いてくれる。

そんな、クールだけど温かみのある穏やかで優しい人だ。







「今回はどんなシチュエーションだったの?」


「今年は、前日からうちにお泊りしてて、朝からダラダラして、お昼食べてから映画行って、買い物ぶらぶらして、記念日お祝いのディナ~!」


語尾にハートマークがつくくらいの私の(恐らく)ニヤついた笑みを見て、みーちゃんは苦々しい顔をした。


「いつ言われたの?」


「なんか、今年はすごくギリギリに言われた。去年は昼間だったし一昨年は朝だったけど。」


「別れる気はないの?」


「私達ラブラブなんですう!!」


睨み付けてやるとみーちゃんはふんと鼻を鳴らしてコーヒーを啜った。


「振られてるのに。」



その声がとても冷淡に聞こえた気がして何も言えなかった。

言われてる内容はいつでも言い返せることなのに。


みーちゃんは時々、すごく冷たく感じる。

それはふとした言葉の端々から、ちょっとした態度の合間から、稀にの表情の隙間から。


そんな時、私はすぐに何も言えなくなる。本能が言ってる。恐い。

私は、彼女に何かを言われるのを恐れている。





「みーーこ!!」


また来た。みーちゃんのオトモダチ。


はーあっとわざとらしく溜息をついてやった。


「ねえ、またこんなとこにいるう。私達と一緒に向こうでお茶しよーよ!」


また思いっきり無視りやがってこいつ!

私がいるのに!


最初の頃は私も話しかけたりはしてみたが、ことごとく無視され、あからさまに嫌いアピールをされていた。

もともと、合うタイプの子じゃないから別にいいけど。


「私はここでいい。ありがとう、また今度ね。」


「もお、みーこはいっつもそう言うんだから…」


渋々帰って行く姿を見送りながら、みーちゃんは私に言った。


「明日、お互い授業ないでしょ。いつものケーキ屋さん行こ。2時に集合。遅れないこと!」


ニッと笑って「私、授業だから行くね」とそのまま立ち上がる。


「分かった!じゃあ明日ね!」


私の返事を聞くと手をひらひら振りながら颯爽と去って行ってしまった。


私は、少しぎすぎすとした雰囲気だったのが和らいでいたことに内心ホッとした。









みーちゃんとは中学1年生からの仲だ。

高校は同じ所に入った。

大学も一緒で、なんだかんだずっと一緒にいる。


でも、みーちゃんは私が彼氏と付き合うようになってから、私に対して少し変わった気がする。

前は、冷たく遠く感じたことはなかったのに。



私も行こう、と椅子を引いて立ち上がって大学のテラスを後にした。

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