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ノスタルジックに死す

作者:Lotus
ゆらゆらと、カップから沸き上がる湯気が揺れる。

「…にっが。」

カップに口をつけていた人物はポツリと零した。

音を立てながら椅子を引き、立ち上がると、入れ忘れていたミルクと砂糖を取りにキッチンへ向かう。

ブラックコーヒーは苦手で、いつもミルクと砂糖は絶対に欠かさないのに。

少し自嘲しながら砂糖の瓶とミルクのパックを持って机に戻り、その2つを置くと椅子に腰掛けた。

少し軋んだ、乾いたような音に、普段は気にしないくせに今はわずかに不愉快そうに眉を寄せた。

まるで覇気のない表情のその人物は、するりと目元を触り、小さく溜息をついた。

少し腫れている目元を優しく撫でたり強く押したり。

元に戻そうと努力してみるが、腫れは冷やさないことには中々戻らないと分かっている。

それでも、この寒さだ。

布団から出ても床に足をつけると、あまりもの冷たさに布団に引っ込んでしまうというのに、冷やすためとはいえ冷たいものなんて触りたくない。

全てが億劫になり、気が滅入る。

でも、たぶんきっと、理由は寒さだけじゃない。

人物は目元を触っていた手を離し、今度は大きく溜息を吐いた。

カップに口をつける。

「…にがい。」

机の上に置いただけで、砂糖とミルクを入れていないことを思い出す。

カップからは、もう、湯気は出ていなかった。
アウトローの声
2015/03/19 10:37
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